パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

文字の大きさ
上 下
76 / 130

76.病の向こう

しおりを挟む

「回収でーす。ふんふんふん♪」

 スピカがドロップ品の魔鉱石をスキル《収集》で集めている。相変わらず楽しそうだ。そんな様子を尻目に、俺はルシアと並ぶようにして回廊へと続く階段を上がり始めた。

「凄いじゃない、セクト。見直したわよ!」

「なんか、それまでマイナスだったみたいな言い方……」

「当然でしょ! 一粒で二度美味しいとか変なこと言うから!」

「そんなに嫌だった?」

「う、嬉しいけど恥ずかしいわよ!」

「そ、そっか……」

 嬉しいならいいんじゃと思うが、やっぱりこれくらい強引なノリのほうがルシアらしいし病の状態だなんて考えにくい。

「正直、新しいメンバーがセクトじゃなきゃ、あたしここまで積極的にはなれなかったかも……」

「俺が狂戦士症だから、普通じゃない者同士で気が合いそうとか思った……?」

「バ、バカッ。そんなんじゃないわよ……」

「ん?」

 ルシアは目元に涙を溜めていた。俺のせいで何か嫌なことを思い出しちゃったんだろうか。

「あんたのお人よしなところがお父さんに似てたから……」

「お父さんって、ダンジョンで亡くなったほうの?」

「うん。あたしが小さい頃、よくダンジョンについて話してくれたわ。こんなにも素晴らしいものなんだぞーって。でも、あたしは冒険者とかそういうの大嫌いだった。お父さんと過ごせる貴重な時間を奪うから……」

「……」

「そのあと父親面してきた男は元冒険者で、大体は家にいたけど……粗暴で大嫌いだった。母さんに暴力振るって泣かせてたし、挙句止めようとしたあたしにまで手を出して……そのあと、殴ってすまなかったって謝ってきたから一度は許してあげたけど、その日の夜に犯そうとしてきたのよ。本当にサイテーよあんなやつ! それからはもう、家を飛び出して……アルテリスにいるパン屋さんの親戚を頼って、そこで住み込みで働きながら学校を卒業したの」

「……随分と苦労したんだな」

「そりゃね! その頃、あたしがなんて呼ばれてたか知ってる?」

「……お転婆娘?」

「バカッ! ……逆よ、お人形さんだって!」

「あっ……」

 そうか、そうだった。あの無口で無表情なルシアがデフォルトな状態だったな。

「悔しいけど、あたしはその通り、本当に夢見るお人形さんだった……。普通に、ハキハキ……喋る子に……憧れ、て……」

「ルシア?」

「……ごめ、ん……。また……元に戻った……みた、い……」

「ありゃ……」

 昔のことを話すうちにかつての自分とシンクロしちゃったんだろうな。

「いいよ、この状態でも……。俺、慣れてきたし……」

「……うん……」

 無表情なはずのルシアの口元が、ほんの少しだが綻んだように見えた。俺がそう思いたかっただけかもしれないが。

「ラブラブだねぇ」

「えっ……」

 誰かが割り込んできたと思ったらバニルだった。

「バニル、からかうなよ……」

「ふふっ。私、嫉妬しちゃったかも……」

「その割に笑顔だが?」

「表向きはね……」

「腹の中は違うってわけか。女の子は怖いなあ」

「あはっ。バレちゃったかぁー」

「うー! ミルウも仲間に入れてよう!」

 ……おっと、ミルウまで割り込んできた。頬を膨らませて不満そうに俺たちを見上げている。

「子供はだーめ」

「むー! ミルウ、こんなにエロティックなのに……あふぅっ」

「ちょっ……」

 いや、だからワンピースの裾を自分でたくしあげてパンツをチラつかせながら歩くのはやめてくれと何度も言ったのに……。

「スピカ、ミルウに何か言ってやってくれ。こんなことしちゃいけないって」

「はーい。めーですよ、ミルウさん。こんなことしてたら風邪を引いちゃいます……」

「慣れてるから平気だもん……」

「はあ……」

 俺はスピカにも何か違うだろうと突っ込みたくなる。っていうか、彼女のほうが顔が赤いし風邪を引いてるんじゃないかと思うが、本人は何事もなさそうに笑顔で歩いてるし気のせいなんだろうか。エロティックな空気を変えるためにも、ここは別の話題を振るとしよう。

「そういやスピカ、収集品はどれくらい溜まった? 相当稼いだんじゃ?」

 あの三匹の半漁兵士を倒したときにかなり魔鉱石が出てたからな。最初のほうで手に入れたものと合わせたら結構な数になりそうだ。

「いえいえ、まだなんにも拾ってないですよー」

「へ? 何言ってるんだよスピカ。ちゃんと拾ってたじゃないか」

「セクトさん、大丈夫ですか? きっとお体が疲れてるんですよー」

「……え?」

 冗談を言ってるのかと思ったが、スピカの声も顔も真剣そのものだった。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

処理中です...