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61.独断の代償
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「おい、どういうことだこれは……」
「こ、こんなはずじゃ……」
「「「あぁ?」」」
『インフィニティブルー』の宿舎から少し離れた森の中、オランドはカルバネ、アデロ、ピエール、ザッハの四人に囲まれ、座り込んでブルブルと震えていた。
「こんなはずじゃなかった……。本当だ。あいつは俺の言うことならなんでも聞くウスノロであり、オモチャだったはずなのだ……」
「そのオモチャに軽くあしらわれていたのはどこのどいつだ……?」
「どいつだよ!」
「どいつなんですか!」
「……どいつだ……」
「ひぐっ……お、俺だけど……頼むっ。もう一回……せめてもう一回、チャンスを……」
「こいつ……呆れたもんだ。まだ自分の立場がわからんらしい……」
カルバネが薄笑いしつつ樹木に背中を預ける。
「カルバネさん、もう『ウェイカーズ』との契約は解除すべきじゃ?」
「僕もアデロに同意します。こんなやつに任せるなんて、ほかの連中も同等のレベルとしか思えませんよ」
「……同意……」
「いや、待てお前たち。気持ちはわかるが、少なくとも赤い稲妻とクールデビルとかいうのは本物だ。あのグシアナさんが一目置くほどの存在なのだからな」
「じゃあ、なんでそいつらは来ないんで?」
「忙しかったとかですかね?」
「……実に、不思議……」
「多分、このオランドという男が独断でやったんだと俺は睨んでいる。なあ、そうだろう?」
「ちっ、違うぞ。おお、俺は全権を委ねられたのだ……」
「正直に言え、オランド。グシアノさんに事情を聞けばわかることだぞ」
「うぅ……。そ、そうだ。その通り、俺の独断だ……ひぐっ……」
「……やっぱりな」
「こいつ、嘘つきやがって!」
「オランドをボコりましょう、カルバネさん」
「……ボッコボコ……」
「ひ、ひいぃ。助けてくれ。俺が悪かった。許してくれえ……」
固有能力【腐屍化】の基本スキル《変身》により、腐った死体へと変化するオランド。
「……」
カルバネはしばし思案顔をしたのち、鋭い眼光をオランドに向けた。
「ゆ、ゆるちて……」
「おい、よく聞けオランド。お前はこれから俺たちのスパイだ」
「……ひぇ?」
「か、カルバネさん!?」
「スパイって、一体どういうことですか?」
「……意味、不明……」
「あのな、お前たちよく聞け。このオランドという男はともかく、『ウェイカーズ』の強さに疑いはない。狂戦士症になったセクトですら始末してくれるはずだ。でも問題はそこじゃない。やつらは相当なならず者だと聞く。オランドがそうしたように、独断でセクトだけじゃなくバニルたちまで殺しかねない」
「うえっ。死姦はちょっと……」
「僕もそれは嫌ですね。あの、屈辱を受けてるときのなんともいえない顔がいいのに……」
「……ドスケベ、ピエール……」
「……まあそうですけど? ザッハさん、あなたみたいな気持ちの悪いむっつりスケベや、絶望的にモテないアデロさんよりはマシですけどね」
「おい、何気に俺を侮辱してんじゃねえぞ!」
「「「ゴルァ……」」」
「お喋りはいい加減にしろ」
「「「はいっ」」」
「……とにかく、やつらに好き勝手させないようにこのオランドを送り込むってわけだ。できるな? バニルたちが自然に逃げたと見せかけてこっちに誘導するだけでいい」
「……だ、だが……」
「もしお前が独断で依頼を受けたことがバレたら、タダじゃ済むまい。もし失敗したら、グシアノさんに打ち明けてもらうつもりだ。そうなれば、お前は確実に終わる」
「……ひぃぃ。わ、わっかりましたあ……」
オランドは失禁していた。
「うわ、こいつ漏らしてやがる!」
「臭すぎでしょ……」
「……グエッ……」
「相当恐れてるな。これなら上手くチャンスを生かしてくれそうだ」
「で、カルバネさん、改めて『ウェイカーズ』に頼むとして、あいつらいつどこでやりそうなんで?」
「決まってるだろう。ダンジョンが一番だ。ただでさえモンスターとの交戦中を狙えるし、お宝を得るチャンスだってある。俺たちだってそうするだろう。一石二鳥だからな……」
「「「なる……」」」
「ところで、お前。オランド」
「な、なんだ……?」
「ん、俺に向かってなんだ、だと?」
「な、なんでございますか……」
「さっきゾンビになっていたが、あれなら俺の能力のようにその間は死なないってことだろう?」
「……え。ましゃかあ……」
「まさか? 覚悟ができているからこそ化けたんだろう? さあお前たち、やるぞ。手加減はいらん。存分に痛めつけてやれ」
「「「ヒャッホー!」」」
アデロたちの歓声とオランドの悲鳴が周囲に響き渡った。
「こ、こんなはずじゃ……」
「「「あぁ?」」」
『インフィニティブルー』の宿舎から少し離れた森の中、オランドはカルバネ、アデロ、ピエール、ザッハの四人に囲まれ、座り込んでブルブルと震えていた。
「こんなはずじゃなかった……。本当だ。あいつは俺の言うことならなんでも聞くウスノロであり、オモチャだったはずなのだ……」
「そのオモチャに軽くあしらわれていたのはどこのどいつだ……?」
「どいつだよ!」
「どいつなんですか!」
「……どいつだ……」
「ひぐっ……お、俺だけど……頼むっ。もう一回……せめてもう一回、チャンスを……」
「こいつ……呆れたもんだ。まだ自分の立場がわからんらしい……」
カルバネが薄笑いしつつ樹木に背中を預ける。
「カルバネさん、もう『ウェイカーズ』との契約は解除すべきじゃ?」
「僕もアデロに同意します。こんなやつに任せるなんて、ほかの連中も同等のレベルとしか思えませんよ」
「……同意……」
「いや、待てお前たち。気持ちはわかるが、少なくとも赤い稲妻とクールデビルとかいうのは本物だ。あのグシアナさんが一目置くほどの存在なのだからな」
「じゃあ、なんでそいつらは来ないんで?」
「忙しかったとかですかね?」
「……実に、不思議……」
「多分、このオランドという男が独断でやったんだと俺は睨んでいる。なあ、そうだろう?」
「ちっ、違うぞ。おお、俺は全権を委ねられたのだ……」
「正直に言え、オランド。グシアノさんに事情を聞けばわかることだぞ」
「うぅ……。そ、そうだ。その通り、俺の独断だ……ひぐっ……」
「……やっぱりな」
「こいつ、嘘つきやがって!」
「オランドをボコりましょう、カルバネさん」
「……ボッコボコ……」
「ひ、ひいぃ。助けてくれ。俺が悪かった。許してくれえ……」
固有能力【腐屍化】の基本スキル《変身》により、腐った死体へと変化するオランド。
「……」
カルバネはしばし思案顔をしたのち、鋭い眼光をオランドに向けた。
「ゆ、ゆるちて……」
「おい、よく聞けオランド。お前はこれから俺たちのスパイだ」
「……ひぇ?」
「か、カルバネさん!?」
「スパイって、一体どういうことですか?」
「……意味、不明……」
「あのな、お前たちよく聞け。このオランドという男はともかく、『ウェイカーズ』の強さに疑いはない。狂戦士症になったセクトですら始末してくれるはずだ。でも問題はそこじゃない。やつらは相当なならず者だと聞く。オランドがそうしたように、独断でセクトだけじゃなくバニルたちまで殺しかねない」
「うえっ。死姦はちょっと……」
「僕もそれは嫌ですね。あの、屈辱を受けてるときのなんともいえない顔がいいのに……」
「……ドスケベ、ピエール……」
「……まあそうですけど? ザッハさん、あなたみたいな気持ちの悪いむっつりスケベや、絶望的にモテないアデロさんよりはマシですけどね」
「おい、何気に俺を侮辱してんじゃねえぞ!」
「「「ゴルァ……」」」
「お喋りはいい加減にしろ」
「「「はいっ」」」
「……とにかく、やつらに好き勝手させないようにこのオランドを送り込むってわけだ。できるな? バニルたちが自然に逃げたと見せかけてこっちに誘導するだけでいい」
「……だ、だが……」
「もしお前が独断で依頼を受けたことがバレたら、タダじゃ済むまい。もし失敗したら、グシアノさんに打ち明けてもらうつもりだ。そうなれば、お前は確実に終わる」
「……ひぃぃ。わ、わっかりましたあ……」
オランドは失禁していた。
「うわ、こいつ漏らしてやがる!」
「臭すぎでしょ……」
「……グエッ……」
「相当恐れてるな。これなら上手くチャンスを生かしてくれそうだ」
「で、カルバネさん、改めて『ウェイカーズ』に頼むとして、あいつらいつどこでやりそうなんで?」
「決まってるだろう。ダンジョンが一番だ。ただでさえモンスターとの交戦中を狙えるし、お宝を得るチャンスだってある。俺たちだってそうするだろう。一石二鳥だからな……」
「「「なる……」」」
「ところで、お前。オランド」
「な、なんだ……?」
「ん、俺に向かってなんだ、だと?」
「な、なんでございますか……」
「さっきゾンビになっていたが、あれなら俺の能力のようにその間は死なないってことだろう?」
「……え。ましゃかあ……」
「まさか? 覚悟ができているからこそ化けたんだろう? さあお前たち、やるぞ。手加減はいらん。存分に痛めつけてやれ」
「「「ヒャッホー!」」」
アデロたちの歓声とオランドの悲鳴が周囲に響き渡った。
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