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60.並んだ希望
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バニルたちとの楽しい一時を思い出として胸に充填し、夕食も済ませたあとで俺は自室にこもってあることを成し遂げようとしていた。
蒼の古城の第一層が開かれ、さらにベリテスがいなくなる明日までに封印のペンダントをスキルに変えようと考えていたのだ。俺としては、ダンジョンに行くまでの僅かな間に新しいスキルをあれもこれもと得ようとするより、これをスキルに変えたほうが遥かに有用だと思えたんだ。
「――くうぅ……」
あれから4000回くらい《スキルチェンジ》の試行を重ねたわけだが、五芒星が二つに分かれて見える程度には目が霞んでいた。成功率0.005の壁はなんとも分厚い。もう今日はあきらめるべきだろうか。
でもここまで来たら《スキルチェンジ》自体の熟練度がDからCになってないかと思って石板を見てみたら、なっていた。これはつまり……?
「おおっ……」
やっぱり、熟練度がCになったことで基本スキル《スキルチェンジ》のランクがFからEになっている。ってことは、成功率だって上がってるはず。
試しに《成否率》を使ってみると、ペンダントのスキル変換確率が0.005から0.025まで向上していた。基本スキルのランクが上がったことで、変換成功率が5倍も上昇したことになる。これは大きいな。俄然やる気が出てきた。
「――来たっ……!」
確率が上がってから1000回以上はやったと思うが、ついに成功して石板に新たなスキル名が刻まれた。どれどれ……。
派生スキル《シール》Aランク
熟練度 Fランク
発生中の症候群、及び心身の痛みを抑えることができる。
これはかなり大きいかもしれない。何故なら、熟練度が低いうちは一時ではあるだろうが、ペンダントを外して狂戦士になったとしても意識はあるわけで、これを使うことによっていつでも平静に戻れるというわけだ。
間違って外したり事故で外れたり、さらには暴れているときに味方を攻撃しそうになったときとか、そういう場合にも使えるだろうし、痛みも心身というからにはトラウマが起きたときに限らず、怪我したときなんかにも使えるだろうから便利そうだ。
また、ペンダント自体もつけているだけで狂戦士症を抑えることができるわけだし、フラッシュバックによる副作用の痛みはあるものの、戦闘ではなく日常生活の中で役立つものであって役割が被るようなこともない。
熟練度がSSSクラスになれば別かもしれないが、さすがにそれは難しいし自分から手放すことはないだろう。
何よりデザインが地味に気に入ってるんだこれは。銀の五芒星の縁取りの周りには、心を安らげる効果のあるという水色の妖眼石が五つ埋め込まれ、中心には知力やスタミナが上昇する効果があるといわれる特に貴重な魔鉱石――竜胆石――が黒光りしている。今じゃほとんど採取できなくて、ダンジョンで稀に見かけるものだという。
さて、目的のスキルを覚えることができたし、ここで今まで習得した派生スキルを見てみるか。
「……うわっ」
スキルが習得順に並んでてごちゃごちゃしていたので、ランク順に並べてみる。指で文字を移動させることができるから簡単に入れ替えが可能なんだ。よし、こんなもんでいいか。
Aランク《シール》
Bランク《成否率》
Cランク《反転》
Dランク《結合》《エアボックス》
Eランク《恵みの手》《夢椅子》《忠節》《ハンドアックス》《ハンドブレイド》《ハンドスピア》《ハンドクラブ》《エアブルーム》《エアウェア》
Fランク《幻草》《幻花》《ファイヤーウッド》
こうして改めて見てみるとまだまだ少ない気もするし、もう少し頑張ってみるかな。というわけで周囲を見渡すと、ベッド上で倒れている子熊のぬいぐるみが目に入った。そういやこいつにはやってなかったな。《成否率》で見てみると、《スキルチェンジ》の成功率は100とあった。そんなもんか。ベッドに近寄り、変われと念じるとやはり一発だった。
派生スキル《人形化》Eランク
熟練度 Fランク
対象物そっくりの小さな人形に化ける、あるいは化けさせることができ、体が不死状態となる。
これ、ランクは低いがなかなか面白いスキルじゃないかな? 自分だけじゃなくて、他人まで変化させることができるというのは今後生きてきそうな気がする。正直、人形になって何をするのかって感じだし、あくまで気のせいなのだが。
試しに自分に使ってみると、一気に視点が低くなっていって驚いた。ベッドの下が巨大なトンネルに見える。おそらく人形になったことで床に落ちたのだろうが、ダメージはまったくない。体を動かすことはできないし喋ることも無理だが、目は見えるし思考も可能だった。
「うあっ……」
熟練度が低いためかすぐに元に戻ったが、視界が目覚ましく変わったせいかめまいがしてきた。大ピンチのときとか、これを使えば切り抜けることも可能なんじゃないか? ただ動けないから、あらかじめ相手に知られてると逆に窮地に陥りそうではあるが。
次はあいつをスキルに変えよう。天井から俺を監視する結構明るいやつ。《成否率》だとこれも変換確率は100と出た。
派生スキル《導きの手》Eランク
熟練度 Fランク
手から火を出すことができる。
いわゆる魔法系スキルだな。教会兵の中にこれ系の凄いやつがいるって噂だ。よく考えたら《恵みの手》もその部類に入るのか。試しに使ってみると、なんとも心もとない――蝋燭の灯りのような――火が出てきてすぐに消えてしまった。とはいえ、熟練度があればこれも結構使えるような気はする。
「あ……」
ふと思い立って、俺は石板を取り出した。難易度は高そうだが、これをスキルに変えてみるか。《成否率》によると、スキルに変わる可能性は2.5だった。そこそこ良いスキルにはなるみたいだな。
何度か試行すると、《ステータス》というスキルに変わった。Cランクスキルで、自分の見たい情報が即座に脳裏に浮かぶのだそうだ。すぐに消えてしまうが、一部分だけが知りたいってことも多いしデメリットはあまり感じなかった。
……さて、そろそろ寝るとしようか。明日は、ここまで覚えたスキルの中で使えそうだと思ったものの熟練度を上げていこうと思う。カルバネたちや『ウェイカーズ』のこともあるし、ダンジョンの第一層にも行かないといけないわけで、少しでも上げておくとしよう。
蒼の古城の第一層が開かれ、さらにベリテスがいなくなる明日までに封印のペンダントをスキルに変えようと考えていたのだ。俺としては、ダンジョンに行くまでの僅かな間に新しいスキルをあれもこれもと得ようとするより、これをスキルに変えたほうが遥かに有用だと思えたんだ。
「――くうぅ……」
あれから4000回くらい《スキルチェンジ》の試行を重ねたわけだが、五芒星が二つに分かれて見える程度には目が霞んでいた。成功率0.005の壁はなんとも分厚い。もう今日はあきらめるべきだろうか。
でもここまで来たら《スキルチェンジ》自体の熟練度がDからCになってないかと思って石板を見てみたら、なっていた。これはつまり……?
「おおっ……」
やっぱり、熟練度がCになったことで基本スキル《スキルチェンジ》のランクがFからEになっている。ってことは、成功率だって上がってるはず。
試しに《成否率》を使ってみると、ペンダントのスキル変換確率が0.005から0.025まで向上していた。基本スキルのランクが上がったことで、変換成功率が5倍も上昇したことになる。これは大きいな。俄然やる気が出てきた。
「――来たっ……!」
確率が上がってから1000回以上はやったと思うが、ついに成功して石板に新たなスキル名が刻まれた。どれどれ……。
派生スキル《シール》Aランク
熟練度 Fランク
発生中の症候群、及び心身の痛みを抑えることができる。
これはかなり大きいかもしれない。何故なら、熟練度が低いうちは一時ではあるだろうが、ペンダントを外して狂戦士になったとしても意識はあるわけで、これを使うことによっていつでも平静に戻れるというわけだ。
間違って外したり事故で外れたり、さらには暴れているときに味方を攻撃しそうになったときとか、そういう場合にも使えるだろうし、痛みも心身というからにはトラウマが起きたときに限らず、怪我したときなんかにも使えるだろうから便利そうだ。
また、ペンダント自体もつけているだけで狂戦士症を抑えることができるわけだし、フラッシュバックによる副作用の痛みはあるものの、戦闘ではなく日常生活の中で役立つものであって役割が被るようなこともない。
熟練度がSSSクラスになれば別かもしれないが、さすがにそれは難しいし自分から手放すことはないだろう。
何よりデザインが地味に気に入ってるんだこれは。銀の五芒星の縁取りの周りには、心を安らげる効果のあるという水色の妖眼石が五つ埋め込まれ、中心には知力やスタミナが上昇する効果があるといわれる特に貴重な魔鉱石――竜胆石――が黒光りしている。今じゃほとんど採取できなくて、ダンジョンで稀に見かけるものだという。
さて、目的のスキルを覚えることができたし、ここで今まで習得した派生スキルを見てみるか。
「……うわっ」
スキルが習得順に並んでてごちゃごちゃしていたので、ランク順に並べてみる。指で文字を移動させることができるから簡単に入れ替えが可能なんだ。よし、こんなもんでいいか。
Aランク《シール》
Bランク《成否率》
Cランク《反転》
Dランク《結合》《エアボックス》
Eランク《恵みの手》《夢椅子》《忠節》《ハンドアックス》《ハンドブレイド》《ハンドスピア》《ハンドクラブ》《エアブルーム》《エアウェア》
Fランク《幻草》《幻花》《ファイヤーウッド》
こうして改めて見てみるとまだまだ少ない気もするし、もう少し頑張ってみるかな。というわけで周囲を見渡すと、ベッド上で倒れている子熊のぬいぐるみが目に入った。そういやこいつにはやってなかったな。《成否率》で見てみると、《スキルチェンジ》の成功率は100とあった。そんなもんか。ベッドに近寄り、変われと念じるとやはり一発だった。
派生スキル《人形化》Eランク
熟練度 Fランク
対象物そっくりの小さな人形に化ける、あるいは化けさせることができ、体が不死状態となる。
これ、ランクは低いがなかなか面白いスキルじゃないかな? 自分だけじゃなくて、他人まで変化させることができるというのは今後生きてきそうな気がする。正直、人形になって何をするのかって感じだし、あくまで気のせいなのだが。
試しに自分に使ってみると、一気に視点が低くなっていって驚いた。ベッドの下が巨大なトンネルに見える。おそらく人形になったことで床に落ちたのだろうが、ダメージはまったくない。体を動かすことはできないし喋ることも無理だが、目は見えるし思考も可能だった。
「うあっ……」
熟練度が低いためかすぐに元に戻ったが、視界が目覚ましく変わったせいかめまいがしてきた。大ピンチのときとか、これを使えば切り抜けることも可能なんじゃないか? ただ動けないから、あらかじめ相手に知られてると逆に窮地に陥りそうではあるが。
次はあいつをスキルに変えよう。天井から俺を監視する結構明るいやつ。《成否率》だとこれも変換確率は100と出た。
派生スキル《導きの手》Eランク
熟練度 Fランク
手から火を出すことができる。
いわゆる魔法系スキルだな。教会兵の中にこれ系の凄いやつがいるって噂だ。よく考えたら《恵みの手》もその部類に入るのか。試しに使ってみると、なんとも心もとない――蝋燭の灯りのような――火が出てきてすぐに消えてしまった。とはいえ、熟練度があればこれも結構使えるような気はする。
「あ……」
ふと思い立って、俺は石板を取り出した。難易度は高そうだが、これをスキルに変えてみるか。《成否率》によると、スキルに変わる可能性は2.5だった。そこそこ良いスキルにはなるみたいだな。
何度か試行すると、《ステータス》というスキルに変わった。Cランクスキルで、自分の見たい情報が即座に脳裏に浮かぶのだそうだ。すぐに消えてしまうが、一部分だけが知りたいってことも多いしデメリットはあまり感じなかった。
……さて、そろそろ寝るとしようか。明日は、ここまで覚えたスキルの中で使えそうだと思ったものの熟練度を上げていこうと思う。カルバネたちや『ウェイカーズ』のこともあるし、ダンジョンの第一層にも行かないといけないわけで、少しでも上げておくとしよう。
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