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本編
11.皇女エステファニアのひとりの夜※
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朝食と着替えを済ませて、エステファニアは仕事に向かった。
今日はロブレ王家と縁が深い東の隣国の貴族が来るということで、エステファニアも会談に出席することになっている。
貴賓室に行くとシモンがすでにいたので、その隣に座った。他には、まだ侍従たちしかいない。
シモンが話しかけてきた。
「おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?」
「ええ、おかげさまでぐっすりと。あなたは楽しめました?」
「……ええ」
珍しく目が泳いだシモンに、エステファニアはくすくすと笑った。
「遠慮することはありませんわ。思う存分に楽しんでください。わたくしも久しぶりに眠れて調子が良いんですの」
そう言うと、シモンはまたいつもの笑みを浮かべる。
「そうですか、それは良かったです。できればあなた様にもこうしてきちんと眠っていただきたいのですが、向こうに入り浸ることもできませんから。……ですがそうですね、今日はまた向こうに行くことにします。どうぞごゆっくりお過ごしください」
「まあ。ありがとうございます。そうさせていただきますわ」
そしてその夜の寝室で、エステファニアはシモンが寝る時間になっても来ないことを確認してから、ベッドに入った。
――久しぶりに、しようかしら。
目を瞑り、空想に浸る。
今日はどうしようか。久しぶりだからか、上手く妄想が捗らない。
頭の中でなにかヒントを探して……そうだ、せっかくだから、シモンと正反対の男性でも思い浮かべよう。
黒髪で、日焼けした肌の、筋骨隆々な男だ。
かつて抱かれたいと思っていた、皇族と血縁があるような名門貴族。それでいこう。
その男は、エステファニアのつま先にキスを落とした。敬愛と欲を刻むようにその唇は脚をつたい、上ってくる。
それが秘部に辿り着く頃には、期待で濡れそぼっていた。
エステファニアはナイトドレスの裾を捲り上げ、下着の中に手を差し入れた。
自分で蜜壺に触れるとそこは濡れていて、愛液を指先で掬い、その上の秘核に塗りつける。
「んっ……はぁっ……」
ここ最近はシモンが同じ部屋にいたし、睡眠不足でとてもそんな気分になれなかったので、久しぶりの一人遊びだった。
身体はやはり飢えていたのか、どんどん高まっていく。
もう片手を胸に這わせ、薄手のナイトドレスの上から布越しにその先端を撫でた。
「ん、んっ……」
ないとは思うが、シモンが入ってくるかもしれない。
もし見られても何をしているのかばれないように、声を潜め、掛け布団の下で自らを慰める。
脳内の男は節くれ立った力強い手でエステファニアの脚を開かせて、その硬い皮膚とは正反対の、柔らかい舌でエステファニアの急所を舐った。
それに合わせて、エステファニアの秘核を撫でる指が早くなる。
反対の手は乳頭を摘み、強弱をつけて潰したり、引っ張ったりした。
「んっ、ふうっ……ん、んんんっ……!」
ビクビクと脚が震える。
しばらく続けたが、今日も絶頂というものには辿り着けなかった。
少し過激な恋愛小説で知った方法で自らを慰めているのだが、なかなか上手くいかない。
それでも、現実を忘れて快楽に浸る時間はエステファニアを充分に癒してくれた。
満足したエステファニアは汗を流しながらベッドの上に四肢を投げ出し、はあはあと荒い呼吸を繰り返す。
白き結婚を望んだエステファニアだが、人並みに性欲はあった。いや、もしかしたら、その辺の女性よりも強いのかもしれない。
エステファニアは、神託により婚姻を結ぶまでの睦事を禁止されていた。
神託で言われるまでもなく、皇女が婚前交渉など許されない。
だから何も変わらないはずなのだが……人間とは、強く禁止されれば、その事象への欲求が強まるものだ。
エステファニアは神託によって性事を禁止されたことで、逆にそれを強く意識して生活していた。
婚姻を結んで解禁となり、自分に相応しい男性の腕に抱かれることを考えながら、一人で眠る夜を過ごしてきたのだ。
しかし、神が認めた自分を抱くことができる唯一の人物は、ロブレの王太子という、エステファニアの長年の理想から外れる男だった。
自分の大事にしてきた身体を……初めてを捧げるのが、大した歴史のない新興の王家だなんて。そんな現実を受け入れられず、エステファニアは白き結婚を望んだ。
そのことに後悔はないが、女の悦びを知らないまま生涯を終えることを、惜しく思う気持ちはあった。
だが……妻をろくに相手にしない兄たちの姿を思い起こせば、どうせ誰と結婚しようとも、行き着くところは同じだったのかもしれない。
エステファニアは哀愁と久しぶりの心地良い疲労の中で、瞼を閉じた。
今日はロブレ王家と縁が深い東の隣国の貴族が来るということで、エステファニアも会談に出席することになっている。
貴賓室に行くとシモンがすでにいたので、その隣に座った。他には、まだ侍従たちしかいない。
シモンが話しかけてきた。
「おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?」
「ええ、おかげさまでぐっすりと。あなたは楽しめました?」
「……ええ」
珍しく目が泳いだシモンに、エステファニアはくすくすと笑った。
「遠慮することはありませんわ。思う存分に楽しんでください。わたくしも久しぶりに眠れて調子が良いんですの」
そう言うと、シモンはまたいつもの笑みを浮かべる。
「そうですか、それは良かったです。できればあなた様にもこうしてきちんと眠っていただきたいのですが、向こうに入り浸ることもできませんから。……ですがそうですね、今日はまた向こうに行くことにします。どうぞごゆっくりお過ごしください」
「まあ。ありがとうございます。そうさせていただきますわ」
そしてその夜の寝室で、エステファニアはシモンが寝る時間になっても来ないことを確認してから、ベッドに入った。
――久しぶりに、しようかしら。
目を瞑り、空想に浸る。
今日はどうしようか。久しぶりだからか、上手く妄想が捗らない。
頭の中でなにかヒントを探して……そうだ、せっかくだから、シモンと正反対の男性でも思い浮かべよう。
黒髪で、日焼けした肌の、筋骨隆々な男だ。
かつて抱かれたいと思っていた、皇族と血縁があるような名門貴族。それでいこう。
その男は、エステファニアのつま先にキスを落とした。敬愛と欲を刻むようにその唇は脚をつたい、上ってくる。
それが秘部に辿り着く頃には、期待で濡れそぼっていた。
エステファニアはナイトドレスの裾を捲り上げ、下着の中に手を差し入れた。
自分で蜜壺に触れるとそこは濡れていて、愛液を指先で掬い、その上の秘核に塗りつける。
「んっ……はぁっ……」
ここ最近はシモンが同じ部屋にいたし、睡眠不足でとてもそんな気分になれなかったので、久しぶりの一人遊びだった。
身体はやはり飢えていたのか、どんどん高まっていく。
もう片手を胸に這わせ、薄手のナイトドレスの上から布越しにその先端を撫でた。
「ん、んっ……」
ないとは思うが、シモンが入ってくるかもしれない。
もし見られても何をしているのかばれないように、声を潜め、掛け布団の下で自らを慰める。
脳内の男は節くれ立った力強い手でエステファニアの脚を開かせて、その硬い皮膚とは正反対の、柔らかい舌でエステファニアの急所を舐った。
それに合わせて、エステファニアの秘核を撫でる指が早くなる。
反対の手は乳頭を摘み、強弱をつけて潰したり、引っ張ったりした。
「んっ、ふうっ……ん、んんんっ……!」
ビクビクと脚が震える。
しばらく続けたが、今日も絶頂というものには辿り着けなかった。
少し過激な恋愛小説で知った方法で自らを慰めているのだが、なかなか上手くいかない。
それでも、現実を忘れて快楽に浸る時間はエステファニアを充分に癒してくれた。
満足したエステファニアは汗を流しながらベッドの上に四肢を投げ出し、はあはあと荒い呼吸を繰り返す。
白き結婚を望んだエステファニアだが、人並みに性欲はあった。いや、もしかしたら、その辺の女性よりも強いのかもしれない。
エステファニアは、神託により婚姻を結ぶまでの睦事を禁止されていた。
神託で言われるまでもなく、皇女が婚前交渉など許されない。
だから何も変わらないはずなのだが……人間とは、強く禁止されれば、その事象への欲求が強まるものだ。
エステファニアは神託によって性事を禁止されたことで、逆にそれを強く意識して生活していた。
婚姻を結んで解禁となり、自分に相応しい男性の腕に抱かれることを考えながら、一人で眠る夜を過ごしてきたのだ。
しかし、神が認めた自分を抱くことができる唯一の人物は、ロブレの王太子という、エステファニアの長年の理想から外れる男だった。
自分の大事にしてきた身体を……初めてを捧げるのが、大した歴史のない新興の王家だなんて。そんな現実を受け入れられず、エステファニアは白き結婚を望んだ。
そのことに後悔はないが、女の悦びを知らないまま生涯を終えることを、惜しく思う気持ちはあった。
だが……妻をろくに相手にしない兄たちの姿を思い起こせば、どうせ誰と結婚しようとも、行き着くところは同じだったのかもしれない。
エステファニアは哀愁と久しぶりの心地良い疲労の中で、瞼を閉じた。
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