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愛しいひと(2)※
しおりを挟む「うん……」
可愛い夫のおねだりに、サクラは振り返ってセレスタンのズボンを下ろした。
下着の中から陰茎を取り出すと、それはすでに芯を持ち始めている。
そしてさらに硬くなり、反りかえった。
それだけ自分を求めているんだと、サクラの口元がゆるむ。
素直に自分への欲を示すそこが愛おしかった。
「ん……」
先端にキスをして、亀頭を口の中に迎え入れる。
温かい口で包み込み、よしよしと舌先で撫でまわした。
すると喜びを表すように先走りが流れ出て、それを舐めるとびくんと跳ねる。その反応にまた嬉しく思いながら舌を這わせた。
「……僕の祖先にね、魔族と交わった人がいるんだ」
気持ち良さそうな吐息を漏らしながら、セレスタンは話し始めた。
「それで、うちの家系には時折魔の瞳を持つ人――というか、半魔がたまに生まれるんだよ。魔の瞳は、相手の意識を自分に都合よく塗り替える力があって……だから僕たちは目を隠すし、誰も目を見ようとしないんだ」
――ああ、それで彼は、ずっとひとりぼっちだったんだ。
その話を聞いたサクラの胸に沸いたのは、恐れではなく、同情と切なさ、愛しさと使命感だった。
この世界の常識を知らないサクラにとって、半魔というものがどういった扱いなのかは分からない。けれどきっと、良いものではないのだろう。
貴族としてこんな立派なお屋敷に住んでいるから、きっと社会的には認められつつも、差別や偏見に悩まされてきたのだろう。
そんな彼が、この世界の常識に囚われないサクラに惹かれたのは、当然のことかもしれない。
――やっぱり、この人にはわたししかいないんだ。
サクラは、異世界転移して良かったと思った。
ここに来なければサクラはセレスタンに出会うことができなかったし、セレスタンはずっとひとりぼっちだっただろうから。
ちゅう、と口内の陰茎に吸い付くと、それはどくんと脈打って精液を吐き出した。
美味しいとは思えないが、彼の欲の証だと思うと、とても愛おしく感じる。
サクラは、こくこくと喉を鳴らしてそれを飲み干した。
それを褒めるように、セレスタンがサクラの髪を撫でる。
「サクラは僕のことが大好きなのに、それでも元の世界に帰ろうとするだなんて……よっぽど恵まれていたんだろうね」
羨むような声色に、サクラの胸がきゅうっと締め付けられた。
サクラは、自分が家族に愛されて育った自覚がある。
けれどきっと、セレスタンはそうではなかったのだろう。
今まで彼が得られなかった分、これからは、自分が愛を与えていきたい。
――あれ? でも、もしかしてこれも、瞳の力で……?
ふと、サクラの脳裏にそんな思考がよぎった。
いいや、そんなことない。この、セレスタンを愛しいと思う気持ちが、作り物だなんて……。
あれ。でもたしか、セレスタンではない、他の人にこんな感情を持っていたような……。
「サクラ」
セレスタンの手が顎に添えられ、上を向かせられた。
サクラの大好きな、セレスタンの綺麗な瞳が目に入る。
先程までサクラを襲っていた不安な気持ちが霧散していった。
そうだ。サクラにはセレスタンしかいないし、セレスタンにはサクラしかいない。
この世界に来て本当に良かったと思う。
元の世界は、ろくなところではなかったから。ずっと苦しいことばかりだった。
けれど、ここは違う。セレスタンがいて、サクラを愛してくれる。
どうしてさっき、元の世界に帰る方法なんて相談していたんだろう。
戻る必要なんてまったくないのに。
なんだか、変な感じだ。
「サクラ、大好き。ずっと僕と一緒にいて」
「うん……わたしも大好き。ずっと一緒だよ」
セレスタンがサクラを押し倒し、中に性器を入れてくる。
慣らされていないけれど、サクラのそこはもう何の抵抗もなくセレスタンを受け入れた。
痛くはないけど、めりめりと膣壁を広げられる感覚はあった。
そしてそれが、セレスタンが中に入ってくる実感を与えてくれて、気持ち良い。
快楽と嬉しさに、先ほど感じていた違和感も消えていく。
セレスタンさえいてくれれば、それで幸せ。
あとはなにもいらない。
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