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第三章 忘れる悲しさ
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「真宮くん、お疲れ様」
一日の仕事が終わり、店の外に出してあった花と看板を店内へとしまうとシャッターを下ろした。営業時間が終われば真宮の就業時間も終わる。けれど藤崎に少し思うところがあり、相談をしようと考えている事があった。
「真宮くん、時間過ぎちゃうんだけど、この後なにか予定はある?」
「いえ、もう帰って飯食って寝るだけですね」
「じゃあ、その夕食ごちそうするから、時間外とかしていかない?」
ただでご飯が食べられるなら、と意外と子供のような表情を見せた彼を、奥の部屋へと誘った。
真宮の履歴書には趣味の所にブログやホームページの運営、と書いてあったのを藤崎は思い出したのだ。
さんざしを紹介しているページがあるにはあるが、見るからに少し時代遅れだ。藤崎自身もそう思うのだから、初めてそのページを見た人なら少し敬遠してしまうかもしれない。それなのに今日、そのページを見て来てくれたというものだから、本当にうれしく思った。
「えっと、うちのホームページのことなんだけど……」
「ホームページ、ですか?」
「うん。今日、ページを見て来てくれたお客様いたでしょ? これを見てくれたんだと思うんだけど、どうも今の時代にはそぐわないというか……」
「ああ、ちょっと分かりづらいですよね」
二人でテーブルの上に置いたパソコン画面を覗き込みながら話している。藤崎はパソコン関係にはそんなに精通していない。レイアウトなどは友人にやってもらったが、それも六年も前の話で今や時代遅れの洋服を着ているようなページになっている。
それを見た真宮の顔がさすがに曇った。思った以上にあちこち修正しなければいけないのかもしれない。この際だから丸投げしてみるか、といけない思考まで出てきてしまう始末だ。
「それで、真宮くんホームページとか趣味でやってるって履歴書にあったから、僕が直したものがあるんだけど、ちょっと見てもらえるかな?」
「ええ、いいですよ。どれですか?」
「えっと、これ」
カチッとマウスをクリックして、藤崎は夜な夜なコツコツと作っているページを開く。紫色のゴシック文字でさんざし、と画面の一番上にでかでかと出る。背景は色のきついオレンジのガーベラが敷き詰められ、メニュー文字はゴシックの赤で左詰めに並んでいた。ウェルカムという文字がさんざしの下にあるが、その文字はタイトルと同じ大きさで存在感を放っていた。
一日の仕事が終わり、店の外に出してあった花と看板を店内へとしまうとシャッターを下ろした。営業時間が終われば真宮の就業時間も終わる。けれど藤崎に少し思うところがあり、相談をしようと考えている事があった。
「真宮くん、時間過ぎちゃうんだけど、この後なにか予定はある?」
「いえ、もう帰って飯食って寝るだけですね」
「じゃあ、その夕食ごちそうするから、時間外とかしていかない?」
ただでご飯が食べられるなら、と意外と子供のような表情を見せた彼を、奥の部屋へと誘った。
真宮の履歴書には趣味の所にブログやホームページの運営、と書いてあったのを藤崎は思い出したのだ。
さんざしを紹介しているページがあるにはあるが、見るからに少し時代遅れだ。藤崎自身もそう思うのだから、初めてそのページを見た人なら少し敬遠してしまうかもしれない。それなのに今日、そのページを見て来てくれたというものだから、本当にうれしく思った。
「えっと、うちのホームページのことなんだけど……」
「ホームページ、ですか?」
「うん。今日、ページを見て来てくれたお客様いたでしょ? これを見てくれたんだと思うんだけど、どうも今の時代にはそぐわないというか……」
「ああ、ちょっと分かりづらいですよね」
二人でテーブルの上に置いたパソコン画面を覗き込みながら話している。藤崎はパソコン関係にはそんなに精通していない。レイアウトなどは友人にやってもらったが、それも六年も前の話で今や時代遅れの洋服を着ているようなページになっている。
それを見た真宮の顔がさすがに曇った。思った以上にあちこち修正しなければいけないのかもしれない。この際だから丸投げしてみるか、といけない思考まで出てきてしまう始末だ。
「それで、真宮くんホームページとか趣味でやってるって履歴書にあったから、僕が直したものがあるんだけど、ちょっと見てもらえるかな?」
「ええ、いいですよ。どれですか?」
「えっと、これ」
カチッとマウスをクリックして、藤崎は夜な夜なコツコツと作っているページを開く。紫色のゴシック文字でさんざし、と画面の一番上にでかでかと出る。背景は色のきついオレンジのガーベラが敷き詰められ、メニュー文字はゴシックの赤で左詰めに並んでいた。ウェルカムという文字がさんざしの下にあるが、その文字はタイトルと同じ大きさで存在感を放っていた。
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