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 城を出た二人は、高台を目指して、ゆっくりと歩き始めた。

 ミネアは、あくまで王子を守る役目であると思いながらも、王子が時折り見せる、優しげな微笑みに、ときめいていた。

 高台へと歩く道のり、タンジア王子は、常にミネアが転ばないか、疲れていないかを気遣って声をかけた。そして、枝や雑草で歩きにくそうな場所は、必ず王子が脇を通り、ミネアに安全で綺麗な道を通した。

(本当なら、私がそうしないといけないのに。。)

 タンジア王子は、泥でぬかるんでいる道があると、まずは自分がぬかるみを通り、ミネアに手を差し伸べた。

「大丈夫です。私は、武術の心得があります。こんなぬかるみ、大丈夫なのです」

 ミネアは、タンジア王子を睨むように見て言っても、

「それでも、この手を取ってもらえたら、私は幸せだ」

 王子にそう言われては、ミネアは王子の手を取るより他はなくなる。何よりも、女の子扱いされることが、嬉しかった。

(なんなんだろう。この感情は。。)

 ミネアは、かつて抱いたことのない、胸の熱さを感じていた。

 王子はミネアの手を取り、引き寄せた。ミネアは、王子の吐息が頬に触れるたび、胸が熱くなるのを感じた。

(女執事が言っていたように、タンジア王子には、何か計画があるはず。。ミネア、勘違いしてはダメ!)

 ミネアは必死に自分に言い聞かせ、王子の後を着いていく。

 
「ああ、海だ。やはり、海は綺麗だ」

 高台の頂上に到着すると、タンジア王子は、両腕を上げ、海の風を吸いながら言った。

 確かに、高台からは、煌めく海が一面に見下ろせた。

「そうですね。海は、良いです」

 ミネアは目を細め、故郷の海を思い出して言った。ランビーノに育てられた港町。ミネアにとっては、懐かしい風景であった。

「なあ、ミネア」

 タンジア王子は、ミネアが海を眺め、安らかな表情になっていることを見逃さなかった。

「はい?」

 ミネアは呼ばれ、タンジア王子を見上げたそのとき、タンジア王子は、ミネアの口づけを奪った。

「え?」

 ミネアは、一瞬、何が起こったか、わからなかった。

 タンジア王子は、ミネアを見つめる。

「一目惚れをした。結婚してくれないか」

 ミネアは、タンジア王子の言葉の意味を理解は出来なかった。

「え?」

(これは、何の作戦なの?)

 ミネアは、混乱をして、タンジア王子を突き離した。タンジア王子は、哀しそうな表情をして、ミネアを見つめた。

「好きだ。」

 王子は強引にミネアを引き寄せ、もう一度、ゆっくりと口づけを交わした。
 
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