おてんば姫がお忍び中、隣国の王子と恋に落ちたとき、ドラゴンの伝説が再び甦りました。

Yuri1980

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第八話 ラルク王子を操る者

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 カトレアの脳裏に浮かんだのは、サンドリア城の裏庭にある〈家名の祠で〉あった。秘密基地の近くにあるので、いつも気になっていたのだ。

〈家名の祠〉は古く、入り口には蜘蛛の巣がはられ、分厚い埃がたまっていることから、しばらくは誰も入っていない様子だった。

「でも、婆やがいつも言っていたのを覚えてる。‘’古のとき、魔女の毒を解く粉は、家名の祠にあり。扉はドラゴンの後継者のみ開かれる‘’ってね。開くかわからないけど、行ってみましょうよ!」

 カトレアは皆に説明すると、早速ソフィアの家を後にしようと準備を始めた。

「そうね、謎の言葉だけど、意味深ね。行く価値あるわ」

「でも、ドラゴンの後継者って誰だろう?」

「うーん、王家の者であるのは、間違いないわ」

「じゃあ、カトレア姫の可能性もある?」

「おてんばでも後継者になれるのか?」

 サラ、ランドン、ソフィアは、口々に考えを口にしながらも、カトレアの後について行く。

「大丈夫!なんとかなるわ!」

 カトレアは、根拠はないのに自信満々で言った。


△△△△△△△



 祠へ行く道は簡単であった。

 サンドリア国からの攻撃を守るため、兵は主に国境に送られている。

 城や城下町には、警備兵や救急隊を時々見かけるだけだった。

 脱走をしたカトレアを追うまでの余裕はないのだろう、カトレアにとっては好都合だった。

 四人はできるだけ目立たないように、城の裏門からこっそりと入り、祠へ向かった。

「ここよ、ぼろぼろの寺院みたいでしょう」

 カトレアは、祠を指さして、入り口の扉の前に立った。

「あとは、どうやったら開くのか、、」

「ここに、掌の形をした石版があります」

 ソフィアは鋭い観察力で、扉の横につけられた石版を指差した。

「なんだ?これは」

 ランドンは首を捻って唸る。

「たぶん、ドラゴンの後継者が、その手形に合わせて手を合わせれば、扉は開くのだと思います。今まで誰も手形が合わなかったから、古びて誰も気にしなくなったのでしょう」

 ソフィアは古文書を手に取って解説する。

「じゃあ、私が、、、」

 カトレアが自信なさそうに、手形に手のひらを合わせてみる。

「、、、、、」

 何の反応もなく、扉は固く閉まったままであった。

「やっぱり、駄目よね、、私以外の王家、妹を連れてこようかな」

 カトレアが諦めて引き返そうとしたところ、

「待って!扉があく!」 
 
 サラがカトレアの肩を掴んで叫んだ。

「え?」

 手形の石版が光り輝き、扉が開き始めた。

「うそ」

 カトレアは、呆気にとられてぽかんと開いた扉を見た。

「カトレア姫が、金のドラゴンの後継者だったのですね」

 ソフィアは、憧れるようにうっとりとカトレアを見て言った。

「おてんばでも後継者になれるんだな」

 ランドンは、感心しながら頷く。

「とにかく進もう!」

 サラは戸惑っている3人の先頭を切って、祠の中に入っていく。

 慌てて、カトレア、ランドン、ソフィアと続いていく。

 祠の中は真っ暗であった。

 サラが用意しておいたランタンに火を灯す。

「わああ」

 火が照らされると、ドラゴンの像と共に、宝箱が置いてある。

「ルーン文字だわ。えーと、金のドラゴンの後継者に幸あらん。宝を持ち、勇気を持って進め、と書かれているわ」

「じゃあ、宝を開けるね」

 カトレアは恐る恐る宝箱を開けると、中には粉の入った瓶が入っていた。

「これよ!毒をとく粉!まさか、本当にあったなんて」

 ソフィアは、興奮して顔を上気させる。

「すげえ、まじか」

「これで、ラルク王子の憑依がとける」

「やったぜ!」

 カトレアは、ラルク王子に早く会いたくてたまらなくなっていた。

 王子のことを考えると、不思議と胸が高鳴り、会いたくて会いたくてたまらなくなる。

「でも、いったい、誰がラルク王子を操っているのかしら?」

 カトレアは、素朴な疑問を口にしてみる。

「それはたぶん、白のドラゴンの後継者だと思います」

「白のドラゴンの後継者?」

「ええ、たぶんですが、ラリアン王国の、王家の血を引く者。女だと思います」

「そいつを突き止めて、やっつければ災いはなくなるんじゃない?」

 サラは考え深い表情になって発言する。

「そうかもしれません、でも、白のドラゴンの魔力はそれは強く、誰もかなうものがいなかったから、神が封印をしたのです」

 ソフィアは、困惑顔で話した。

 それでも、もしかしたら何か策があるかもしれない。カトレアたちは一筋の希望を見出し、秘宝を手に入れ、サンドリア城に向かった。

 


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