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第2話

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 結婚式は形だけのもので、参列者はごく近い親族だけだった。

 リリアもフォン伯爵と参列していたが、見かけ上は、私たちの結婚を心から喜んでいるように見えた。

 両親は、私が結婚したことに、喜びよりも安堵感が強くでていた。ラルクに対して低姿勢、とにかく感謝をして、絶対に離婚しないように警告を受けた。

 確かに、私は働きもせず、引きこもって読書ばかりしていた。思っていた以上に、親に疎まれていたみたいだ。

 伯爵家に嫁いだリリアとは、まるで扱いが違う。昔から、リリアばかりが光り輝いている。私は、日陰の雑草のようなものだ。


 

 それから1年が経った。

 嘘の結婚生活は、私には、あまりにも残酷であった。

 ラルクは私には指一本触れず、食事も部屋も別々だった。

 リリアが来るときだけ、アリバイに私を呼び寄せる。

 私は実の妹なので、リリアが料理を教えに来ると言って通い始めても、フォン伯爵すら疑いはしなかった。

 結婚して何もできない姉を手伝ってやっている、何でもできるリリアを得意に思って送り出しているようだ。

 リリアは、まるで自分の家のように、家具を新調し、ラルクとの寝室を当たり前のように自分のものにした。

 リリアが選んだベッド、椅子、カーテン、食器。私が選べたものは、自分の部屋の物だけだった。

「姉様、ごめんなさいね、でもわかってちょうだい。私とラルクは愛し合っているの。本当は、2人の家を持ちたかった、それが姉様がいてくれたおかげで、叶うことができたわ」

 リリアはラルクの腕をとり、ラルクの胸にしなだれかかって、上目遣いで私に言った。

 ラルクは私のもの、あなたは、ただのお人形。そう牽制されているようだった。

 リリアは、完全に私を見下していた。

 私をメイドか奴隷のように扱って、喜んでいた。彼女は、笑って虫を踏みつぶすような、残酷な一面がある。

「ラルク、会いたかったわ」

「俺もだよ、リリア、愛してる」

「私も一番貴方を愛してる」

「さあ、早くベッドに行こう」

 2人は私がいないかのように、私に見せつけていちゃつき、部屋へと入っていく。

 部屋から漏れてくる、リリアの喘ぎ声が、気持ち悪くて、自分の部屋で毛布にくるまり、耳を塞ぐが、鼓膜にこびりついて消えてくれない。

 許せない、こんなに協力をして、こんなにラルクに尽くしているのに、こんな仕打ち、酷すぎる。

 せめて、友達のように、対等に接し、節度や配慮のある対応をしてくれても良いのに。

 まるで、私なんていないようだ。

 伯爵夫人であるのに、ラルクも、この家も、リリアは手に入れようとしている。

 悔しい、、、。

 初めて、そんな感情が私に湧いてくる。

 こんな仕打ちをされて、限界だ。

 私の精神が滅びるか、それとも、リリアとラルクが滅びるか、どちらが先か、だ。

 私は毛布から這い出て、リリアとラルクの喘ぎ声をしっかりと聞いた。

 もう逃げていては駄目だわ。

 さあ、復讐しましょう。







 

 
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