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第2章
第15話 君のいない場所
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時は、静かに流れていく。
才は、自分の好きな曲を書いて、アスピリンのメンバーとバンドの音に作り上げて、ライヴでそれらを披露する。それは、楽しい日々だ。
誰かの話によると、あれから間もなく、三原と山田サエ子は別れたらしい。が、才には、そんなことは、もうどうでもよかった。ただ、思う。
三原は、才のことをどう思っていたのか。それだけ、知りたい。
恭一に代わって初めてのライヴの後で、三原に殴られたあの時、才は三原に思いを伝えた。が、三原は、それについて、何も言ってくれなかった。
(少しくらいは、好きでいてくれたのかな)
あの、中学一年の時の戸惑ったような三原の表情。触れられた感触。まだ、消えることなく、はっきりと覚えている。
何故、選んだのがサエ子で自分ではなかったのか、と才は考える。それは、好かれていなかったということか。それとも、別の理由があったのか。
考えても答えは出ない。それは、わかっている。答えを知っているのは、三原本人だけだ。
(少しくらいは……)
そう考えて、首を勢いよく振った。想いを断ち切るかのように、そうした。
「あれ? サイちゃん。どうしたの?」
恭一に訊かれ、才はただ、笑みを返した。恭一は、首を傾げたが、
「そう。なら、いいんだけど」
美しく笑んだ。才は、やはりこの人をヴォーカルに選んでよかった、と、こういう時に心から思う。
ステージの定位置で、恭一の斜め後ろから彼の背中を見る。それを見ながら、時々、ふいと、昔そこにいた人を思い出す。
(もう、過ぎたことだ)
心の中で、自分に言って、納得させようとするが、どうも上手くいかない。才は、大きく息を吐き出すと、メンバーを順番に見て、微笑んだ。
「じゃ、行こうか」
才が、先頭で歩き出す。高矢・創・恭一の順で、ステージ袖まで来た。四人で手を重ねると、「行くぞ」「おー」と小声で気合を入れて、ステージに出て行った。
今日も、大入り。すごい熱気だった。恭一にヴォーカルが変わってから、客層は変わったが、前よりもより多く入ってもらえるようになった。とてもありがたいことだ。
恭一が最後にステージに出て、音楽が始まった。元々の素質だったのか、恭一も、今は楽しそうにステージで歌っている。日々、レベルアップしている恭一。出会えてよかったと、心から思う。
(ミハラくん。オレは、君のいないこの場所で、頑張ってみるよ)
恭一の背中を見つめながら、才は、いなくなってしまった人に、思いを馳せていたのだった。
才は、自分の好きな曲を書いて、アスピリンのメンバーとバンドの音に作り上げて、ライヴでそれらを披露する。それは、楽しい日々だ。
誰かの話によると、あれから間もなく、三原と山田サエ子は別れたらしい。が、才には、そんなことは、もうどうでもよかった。ただ、思う。
三原は、才のことをどう思っていたのか。それだけ、知りたい。
恭一に代わって初めてのライヴの後で、三原に殴られたあの時、才は三原に思いを伝えた。が、三原は、それについて、何も言ってくれなかった。
(少しくらいは、好きでいてくれたのかな)
あの、中学一年の時の戸惑ったような三原の表情。触れられた感触。まだ、消えることなく、はっきりと覚えている。
何故、選んだのがサエ子で自分ではなかったのか、と才は考える。それは、好かれていなかったということか。それとも、別の理由があったのか。
考えても答えは出ない。それは、わかっている。答えを知っているのは、三原本人だけだ。
(少しくらいは……)
そう考えて、首を勢いよく振った。想いを断ち切るかのように、そうした。
「あれ? サイちゃん。どうしたの?」
恭一に訊かれ、才はただ、笑みを返した。恭一は、首を傾げたが、
「そう。なら、いいんだけど」
美しく笑んだ。才は、やはりこの人をヴォーカルに選んでよかった、と、こういう時に心から思う。
ステージの定位置で、恭一の斜め後ろから彼の背中を見る。それを見ながら、時々、ふいと、昔そこにいた人を思い出す。
(もう、過ぎたことだ)
心の中で、自分に言って、納得させようとするが、どうも上手くいかない。才は、大きく息を吐き出すと、メンバーを順番に見て、微笑んだ。
「じゃ、行こうか」
才が、先頭で歩き出す。高矢・創・恭一の順で、ステージ袖まで来た。四人で手を重ねると、「行くぞ」「おー」と小声で気合を入れて、ステージに出て行った。
今日も、大入り。すごい熱気だった。恭一にヴォーカルが変わってから、客層は変わったが、前よりもより多く入ってもらえるようになった。とてもありがたいことだ。
恭一が最後にステージに出て、音楽が始まった。元々の素質だったのか、恭一も、今は楽しそうにステージで歌っている。日々、レベルアップしている恭一。出会えてよかったと、心から思う。
(ミハラくん。オレは、君のいないこの場所で、頑張ってみるよ)
恭一の背中を見つめながら、才は、いなくなってしまった人に、思いを馳せていたのだった。
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