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第20話 写真の中の人
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教室に入ると、自分の席に着き教科書やノートを机に出した。それから、文庫本を置いた。当たり前だが、古本だ。そして、中ほどに写真が挟まっている。それを手にしてじっと見ていると、芽衣子が、「おはよう」と声を掛けてきた。
「おはよう」
挨拶し返すと、彼女は私の手元を見てきた。
「何の写真?」
「えっと……」
「古そうだね」
「そうだね。十年前の写真だから」
十年前という言葉に、芽衣子は「あー」と言い、手を打った。
「ということは、叔母さんの写真なんだ」
「そう。彼女が私と同じ年の時の」
「見てもいい?」
私は頷き、彼女に写真を渡した。興味深そうに見た後、
「これ、私の家の近くにある学校だ」
「へー。そうなんだ。私さ、東京から来たって言ったでしょ。この辺の学校を探しておばあちゃんにどうかなって訊いたんだけど、この学校は反応がいまいちで、むしろ、受けるのを阻止しようとしてた気がする。やんわりと、だけど。で、ここを推してきた。だから、受験したんだけど。もしかしたら、叔母さんが行ってた学校だから、何となく行かせたくなかったのかな、なんて、これを見て思った」
「そうかもしれないね」
芽衣子が、私の意見を肯定してくれたことで、ちょっとほっとした。
話しながらも、まだ写真を見ていた芽衣子が、「あれ?」と言ったので、私はびっくりして、「何?」と訊いた。芽衣子は写真の、ある所を指で差していた。私は芽衣子が差している場所をじっと見た。そして、「そうだったのか」と思わず言った。
「そうみたいだね」
芽衣子が頷きながら言う。私は、今まで気付きもしなかった自分に、腹が立った。
「だから、よっちゃんは、私に訴えてたのか。どうして今までわからなかったんだろう。ああ。もう」
一人でイライラしていた。芽衣子が、私の肩を軽く叩いた。
「ま、でも、その人に事情を訊けば、答えが出そうだってわかったから、良いんじゃない?」
「そうかもね。でも……訊いてもいいんだろうか」
「どうかな。それは、本人に訊いてみるしかないね」
「仕方ない。この人、捜してくる。まだ、時間あるよね」
「ある」
「行ってくるよ」
芽衣子が軽く手を上げ、振った。私は振り返さず、急いで廊下に向かった。職員室に行けば、きっとその人はいるだろう。
桜内俊也。
だから、よっちゃんがトシヤと言った時、どこかで聞いたと思った訳だ。
廊下を走っていると、「廊下は走っちゃダメだよー」と言う人がいる。私は走るのをやめて、その人を見つめた。捜していた人だった。私にじっと見られて、その人は驚いたようで、
「どうしたんだよ。そんなにオレをじっと見て。告白でもしようっての?」
ここでのこの人だ。私は、視線を外さず、
「告白じゃないけど、話がある」
私が真剣なのをわかってくれたのか、小さく頷いた。が、あくまでここでのこの人らしい口調で、
「じゃ、例の場所で」
それだけ言って、自分のクラスへ向かって歩き出した。私も急いで教室に戻った。芽衣子が私に気付いて視線を向けてきた。私は、彼女のそばに行くと、
「例の場所で会うことになった」
「そうか」
「いいのかな」
「いいんだろう。だから、約束してくれたんだろうし」
そこまで話した時、担任と悠花が同時に教室に入ってきた。悠花は、「セーフ」と言って、笑った。私は溜息をつき、「のんきでいいね」と嫌味な感じで言った。
「おはよう」
挨拶し返すと、彼女は私の手元を見てきた。
「何の写真?」
「えっと……」
「古そうだね」
「そうだね。十年前の写真だから」
十年前という言葉に、芽衣子は「あー」と言い、手を打った。
「ということは、叔母さんの写真なんだ」
「そう。彼女が私と同じ年の時の」
「見てもいい?」
私は頷き、彼女に写真を渡した。興味深そうに見た後、
「これ、私の家の近くにある学校だ」
「へー。そうなんだ。私さ、東京から来たって言ったでしょ。この辺の学校を探しておばあちゃんにどうかなって訊いたんだけど、この学校は反応がいまいちで、むしろ、受けるのを阻止しようとしてた気がする。やんわりと、だけど。で、ここを推してきた。だから、受験したんだけど。もしかしたら、叔母さんが行ってた学校だから、何となく行かせたくなかったのかな、なんて、これを見て思った」
「そうかもしれないね」
芽衣子が、私の意見を肯定してくれたことで、ちょっとほっとした。
話しながらも、まだ写真を見ていた芽衣子が、「あれ?」と言ったので、私はびっくりして、「何?」と訊いた。芽衣子は写真の、ある所を指で差していた。私は芽衣子が差している場所をじっと見た。そして、「そうだったのか」と思わず言った。
「そうみたいだね」
芽衣子が頷きながら言う。私は、今まで気付きもしなかった自分に、腹が立った。
「だから、よっちゃんは、私に訴えてたのか。どうして今までわからなかったんだろう。ああ。もう」
一人でイライラしていた。芽衣子が、私の肩を軽く叩いた。
「ま、でも、その人に事情を訊けば、答えが出そうだってわかったから、良いんじゃない?」
「そうかもね。でも……訊いてもいいんだろうか」
「どうかな。それは、本人に訊いてみるしかないね」
「仕方ない。この人、捜してくる。まだ、時間あるよね」
「ある」
「行ってくるよ」
芽衣子が軽く手を上げ、振った。私は振り返さず、急いで廊下に向かった。職員室に行けば、きっとその人はいるだろう。
桜内俊也。
だから、よっちゃんがトシヤと言った時、どこかで聞いたと思った訳だ。
廊下を走っていると、「廊下は走っちゃダメだよー」と言う人がいる。私は走るのをやめて、その人を見つめた。捜していた人だった。私にじっと見られて、その人は驚いたようで、
「どうしたんだよ。そんなにオレをじっと見て。告白でもしようっての?」
ここでのこの人だ。私は、視線を外さず、
「告白じゃないけど、話がある」
私が真剣なのをわかってくれたのか、小さく頷いた。が、あくまでここでのこの人らしい口調で、
「じゃ、例の場所で」
それだけ言って、自分のクラスへ向かって歩き出した。私も急いで教室に戻った。芽衣子が私に気付いて視線を向けてきた。私は、彼女のそばに行くと、
「例の場所で会うことになった」
「そうか」
「いいのかな」
「いいんだろう。だから、約束してくれたんだろうし」
そこまで話した時、担任と悠花が同時に教室に入ってきた。悠花は、「セーフ」と言って、笑った。私は溜息をつき、「のんきでいいね」と嫌味な感じで言った。
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