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第二章
第十二話 感涙
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和寿に手を引かれてロビーへ行くと、ワタルはソファに座らされた。和寿はワタルの隣に座ると、バイオリンと弓をソファの座面にそっと置いた。ワタルは、和寿はバイオリンをものすごく大事にしてるんだな、と、泣きながらも、感心していた。
彼はワタルに、何で泣いているのか訊かない。ただ、さっきまでバイオリンの顎あてに置いていたハンカチを、裏返しにしてから渡してきた。
「ごめん。これしかないんだ。拭きなよ」
「でも……」
「いいから、気にするな」
ワタルは頷き、ハンカチを受け取ると、遠慮なく拭かせてもらった。あっという間に絞れるくらいになってしまい、一体、どれだけ涙は出てくるのだろう、と呆れていた。
数分で落ち着くと、急に恥ずかしくなって、「ごめん」と小さな声で言った。和寿は、ワタルの肩に手を回し、軽く叩いた。
「何、あやまってるんだ? オレさ、今、感動してるんだけど。さっきのおまえの涙はさ、オレの音楽を聞いて、何か感じてくれたから、だろ?」
ワタルは頷き、
「何だかわからないんだけど、すごく、すごく感動して、鳥肌立っちゃって。最初から最後まで。上手く言えないけど。そしたら、涙が止まらなくなっちゃって。すごく恥ずかしい」
和寿は、ワタルの頭を撫でながら、優しく微笑んだ。
「ありがとう。オレは、本当に嬉しい。なあ、ワタル。音楽ってすごいよな。オレ、やっぱりプロになる。絶対なる。それで、世の中にこんな素敵な音楽があるんだって教えてあげたい。何だかわからないのに出る涙って、本当の、心の奥から出てきた涙だろう。オレは、その力を信じる」
和寿は正面を向いたままワタルの頭を撫で続け、熱く語った。が、急に声の調子を変えて、
「おまえがプロのピアニストになってくれないなら、いいよ、それでも。オレは、無伴奏の曲ばっかり弾くから」
「え?」
驚くワタルに和寿は笑い、「冗談だよ」と言った。
「今日は来てくれてありがとう。本当にありがとう。嬉しかった」
和寿は立ち上がり、「ここで待っててくれ。楽器をケースにしまわないと」と言って去って行った。触れられた肩と髪に、彼の感触が残っていた。
彼はワタルに、何で泣いているのか訊かない。ただ、さっきまでバイオリンの顎あてに置いていたハンカチを、裏返しにしてから渡してきた。
「ごめん。これしかないんだ。拭きなよ」
「でも……」
「いいから、気にするな」
ワタルは頷き、ハンカチを受け取ると、遠慮なく拭かせてもらった。あっという間に絞れるくらいになってしまい、一体、どれだけ涙は出てくるのだろう、と呆れていた。
数分で落ち着くと、急に恥ずかしくなって、「ごめん」と小さな声で言った。和寿は、ワタルの肩に手を回し、軽く叩いた。
「何、あやまってるんだ? オレさ、今、感動してるんだけど。さっきのおまえの涙はさ、オレの音楽を聞いて、何か感じてくれたから、だろ?」
ワタルは頷き、
「何だかわからないんだけど、すごく、すごく感動して、鳥肌立っちゃって。最初から最後まで。上手く言えないけど。そしたら、涙が止まらなくなっちゃって。すごく恥ずかしい」
和寿は、ワタルの頭を撫でながら、優しく微笑んだ。
「ありがとう。オレは、本当に嬉しい。なあ、ワタル。音楽ってすごいよな。オレ、やっぱりプロになる。絶対なる。それで、世の中にこんな素敵な音楽があるんだって教えてあげたい。何だかわからないのに出る涙って、本当の、心の奥から出てきた涙だろう。オレは、その力を信じる」
和寿は正面を向いたままワタルの頭を撫で続け、熱く語った。が、急に声の調子を変えて、
「おまえがプロのピアニストになってくれないなら、いいよ、それでも。オレは、無伴奏の曲ばっかり弾くから」
「え?」
驚くワタルに和寿は笑い、「冗談だよ」と言った。
「今日は来てくれてありがとう。本当にありがとう。嬉しかった」
和寿は立ち上がり、「ここで待っててくれ。楽器をケースにしまわないと」と言って去って行った。触れられた肩と髪に、彼の感触が残っていた。
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