鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが~ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい!~

ガクーン

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炎の魔女 その1

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「ははっ、まさか炎の魔女とこんな所で会えるなんて……」

 アルスは一旦呼吸を整えてから言う。

 そんなアルスの頭の中は既にミネルヴァを今後どのように使っていくかという議題でいっぱいいっぱいであり、目の焦点はミネルヴァに合っていない。

「まさか……、炎の魔女って私のことかい?」

 ミネルヴァは自身に指を向け、首を少しかしげながらアルスへと質問する。

 あっ、そうか……

 まだ王国戦争が始まってないから、そんな名前で呼ばれてないのか。

 アルスは既に知られた名だと思い込み、発言していたのだったが、まだ王国戦争前だという事に気がつき、頭を抱える。

 ミネルヴァ・バンデスト。

 王国戦争で活躍した傭兵の一人で、女性という身でありながら、傑出した戦闘能力の高さと、彼女の愛槍から繰り出される技から名づけられたのが『炎の魔女』。また、優れた統率能力を持ち、自ら先頭に立ち集団を率いて戦場を大暴れする様子から、多くの人々に恐れられていた人物でもあった。

 他にも女性の傭兵で魔女関連の名前を名づけられた者たちも多々いるのだが、その者たちはまたの機会で紹介しようと思う。


 そんなアルスはしまったと思いながら、どう言い訳をしようか悩んでいると。

「まぁ、その話はいいよ。それで? 私はこれから何をすればいいんだい? 出来れば戦闘関連の仕事を振ってくれるとありがたいんだけどね」

 ミネルヴァはその話に興味がないらしい。また、血の気が多いのか、戦闘したくてうずうずしているといった様子で、これからの予定を聞いてきた。

「ミネルヴァさんにはエバンに、戦闘に関してのスキルを身に付けさせてあげてほしいんです」

「エバン? あぁ、そこにいる坊やの事かい。それぐらいならお安い御用さ。で、いつまでにどのレベルまで仕上げればいいんだい?」

 ミネルヴァはエバンを一目見て頷く。

 そうきたか。

 アルスは前々から思い描いていた事を頭に浮かべ、薄ら笑みを浮かべる。

「半年以内にミネルヴァさんに勝てる……」

「へぇ、言うじゃないか「とは言いませんから、せめてミネルヴァさんに相手に3分程度、持ちこたえられるレベルには」……、なるほどね」

 ミネルヴァは一瞬、好戦的な笑みを浮かべるが、アルスが直ぐに言い直したので、笑みを引っ込める。そして、エバンをもう一度見やり、悩む素振りを見せる。

「アルスは……、私の強さを知ってて言ってるのかい?」

 あぁ……

 ミネルヴァの目が物語っている。私を舐めているのか……、と。

 そりゃそうだ。彼女は自身の強さを一番分かっている。この場で一番強いのは彼女だし、王都に規模を拡大したとしても、彼女と張り合えるのは、名の知られた猛者の中のごく一部だけだろう。


 そんな彼女に対して俺は言ったのだ。エバンをミネルヴァと同等レベルまで強くしてほしいと。

 そんな彼女の考えを察してしまい、身震いが止まらないアルスであったが、それ以上に彼はエバンの可能性を信じていた。

「もちろんです」

 アルスの目に嘘偽りは決してない。その事を感じたミネルヴァは、自身から発していた殺気を和らげ。

「ははっ。ほんと私もなめられたもんだね。それに、そこの坊やが私と同じぐらいには強くなれるって信じてるんだ?」

「いえ……」

「なんだって?」

 ミネルヴァは怒気を声に混ぜてアルスに詰めよろうとする。が……

「ミネルヴァさん以上に強くなりますから」

 その返答にミネルヴァは豆鉄砲を食らったみたく、ポカンとした表情を見せる。そして、楽しいおもちゃにやっと出会えたと言わんばかりに凄味がある笑みを見せながらアルスへと近づき、耳元へと顔を近づけ。

「ふふっ、そう来なくっちゃね。アルス。君の事本当に気に入ったよ」

 アルスの頭を撫でながら答える。一見、草食動物が肉食動物に追い込まれている絵にも見えるが、アルスは一歩も動じていない。まるで、それが当たり前かのように。

 そんな、修羅場のようにも思える場には、もう一人、動じることなく冷静に観察する者がいた。

「ミネルヴァさん。それ以上はやめてください。これからは貴方もアルス様の元で仕える身、主人を敬うのが最低限、礼儀なのではないですか?」

「言うじゃないかい。私はアルスの事は認めたけどね、エバン。君の事はまだ認めていないよ」

 エバンとミネルヴァが火花を散らしていると。

「そこまで。エバン、これからは曲がりなりにもミネルヴァさんが師匠となるんだから、少しは大目に見てあげて。そして、ミネルヴァさん。エバンを挑発するのはやめてください。これからは一蓮托生の仲間なんですよ?」

 アルスが二人の仲裁にはいる。

「はい。すいません」

「ちょっとからかっただけじゃないかい。分かってるよ、すまなかったね」

 何とか二人を仲直りさせて、ウルドへ話しかけるアルス。

「ウルドさん。ミネルヴァさんを仲間に引き入れたいと思います。それで、金額の方は……」

 アルスが恐る恐るお金についてウルドに聞く。

 ミネルヴァさんほどの武力の持ち主だ。聖金貨数枚。いや、十数枚は取られ……

「いえ、お金は必要ないですよ「へっ?」」

 アルスは不意を突かれた様子で、ポカンとした表情を見せる。

 ミネルヴァさんが……、タダで仲間に?

「ここは、仲間を必要としている者同士をめぐり合わせるために作られた場所なのでね。むしろ、その子を仲間に迎え入れてもらったことに私が感謝をしなければなりません……」

「い……、いやいや! こちらこそ、ミネルヴァさんに出会えたという幸運を感謝しなくてはならないというか、ウルドさんに感謝しなくてはならないというか……」

 アルスは嬉しさと、驚きで今、自分が何を話しているのかも理解していない。ただ、この場にいる皆に感謝を伝えないと。という、原動力がアルスの口を勝手に動かしている。

「ほっほっほ。アルス様は本当に良いお方だ。そんな若いアルス様に老いぼれが一つ。忠告してもよいかな?」

 忠告? 一体なんだろう……
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