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11✿偽りの恋人
しおりを挟む学校を出て、微妙な距離を置いて歩く葵と紫陽。
「あんな風に公言するとか聞いてない・・・」
葵は少し怒ったような、泣きそうな顔をして呟いた。
「・・・悪かった。でもお前があんな顔して入ってくるからだろ?それに公言しねぇと見せかけになんねーし。」
「そ、それは・・・そうだけど。」
「ま、女子達も賛同してくれたことだし?なんだかんだ作戦成功~♪あとは適当に学校では恋人っぽく振舞っときゃいけるだろ!」
そう言って気楽そうに笑う紫陽を見て、葵は立ち止った。
「・・・?どした?」
「そこまでして1位になりたかったのか?」
葵の問いかけに紫陽は、んん~と少し考えてからゆっくりと答える。
「まぁ、1位にはなりたいかな。俺んち医者家系だし、俺も一応医者目指してるし・・・。でもそれだけが理由って訳じゃ、、」
「???」
じゃあ何で?と言いたげにこちらを見てくる葵に紫陽は困ってしまった。
(こいつの過去を知ってることは言えないし、言えないからには何も深いことは聞けない訳で・・・あれ?これ、結局行き詰まりじゃね?)
「ま、まぁさ!とりあえず付き合ってるふりする訳だし、お互いのこと少しでも知った方がいいよな!」
(そうだ!この作戦で行こう!)
半ば無理やりではあったが、葵のことを知る方法を考えついた紫陽は咄嗟にそう切り替えした。
「・・・じゃあ、デートでもする?」
「あぁ、そうだな!デー・・・は?デート!?」
ただお互いのことを質問し合えばいいくらいに思っていた紫陽は、まさかの葵の申し出に取り乱してしまった。
「いや、何もそこまでしなくても・・・」
そう言いかけた紫陽だったが、葵がどことなく寂しそうな顔をしているのが見えて、
「よし!しようか。デート。」
思わずそう口にしてしまっていた。
(こいつ・・・見た目女だから調子狂うッ!つーか、何なんだよ・・・男は好きにならないんじゃなかったか?わざわざデートする必要あるか?)
あの屋上の後から、いまいち考えが読めない葵の行動に紫陽は悶々としていた。
「あ、そう言えばお前華道部だっけ?今日はよかったのか?」
「うちの華道部は週1活動だから金曜だけ。」
「そっか。じゃあ今週土日は?空いてる?」
「日曜日は実家で稽古。土曜なら・・・」
葵はそう言って恥ずかしそうに俯く。
(いや、だからお前のその反応は何なんだよ?あの威勢の良さはどこいった!?・・・調子狂うっての。)
「んじゃ、土曜会うか!どっか行きたいとこある?」
「・・・・特には」
「はぁ?お前がデートって言ったんだろ?・・・あぁーもういい!携帯貸して。」
葵の手から携帯を受け取ると、紫陽は自分の連絡先を登録して返した。
「まぁ場所はまた考えとく!とりあえず明日からはその不自然な態度なんとかしろッ!じゃあな。」
そう言い残すと、紫陽は早足で帰っていってしまった。
(あれ・・・一応家まで送って行った方がよかったのか?いや、あいつん家まで行ったら工藤さんと鉢合わせするかもだしな。そうなったら色々気まずい・・・そもそもフリなんだからそこまでする義理ねぇか。。いや、その前にあいつは男だし!!あーーもぅ、ほんと調子狂う!!)
家に着いてからもずっと悶々としてしまっていた紫陽は、1日も経たないうちに恋人のふりを持ちかけてしまったことを後悔し始めていた・・・。
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