ジェンダーレス男子は花を愛でる

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10✿交際宣言

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 紫陽が教室に戻ると、教室はシーンと静まり返った。女子達の言い争いがあったことを知らない紫陽は状況が飲み込めずに立ち止まる。

「な、なに?」

 すると雅紀が駆け寄ってきて、耳打ちしてきた。

「お前が教室出た後、女子達が派閥同士で揉めそうになってさ・・・あ、そういや華園には会えた?お前探しに行ったと思うんだけど・・・」

 そう雅紀が言ったところに丁度、葵が教室に入ってきて紫陽と目があった。

「・・・・ッ」

 葵はあからさまに顔を赤く染めて俯く。

「・・・・え、何?お前ら何かあった?」

 雅紀が葵と紫陽の顔を交互に見ながら2人の異様な空気に思わず突っ込みを入れる。 

「あ~・・・・付き合うことになった。」

 紫陽はあっけらかんとそう答えた。

「・・・・はい?」
「「「えーーーー!?」」」

 雅紀が聞き間違えかと思ったと同時に教室中が驚愕した。


「ちょっと待って、どういうこと!?」
「今付き合うって・・・付き合うってそういうことだよね?え、彼女?」
「いや、葵君は男子だよ!?女になりたい訳じゃないって言ってたよね・・・」

「は??青凪ってゲイだったのか?」
「あんなに女子にモテときながら・・・華園まで・・・」
「ん?お前それちょっと違う感情入ってないか?」

 紫陽のいきなりの交際宣言に男女問わず騒然となった。葵もまさかいきなり公言されるとは思っておらず、どうするべきか固まったまま動けずにいる。

 そんな中、平然とした顔で立っていた紫陽が再び口を開いた。


「なに?何か問題あるかな?」

 有無を言わせぬようなキラキラした王子スマイルで堂々とそう言い放った紫陽を見て一瞬にして皆が押し黙る。


 そしてそれに赤面した女子達が口々に祝福の言葉を投げかけだした。

「い、いや全く!!むしろお似合いだよ!」
「そうそう、紫陽君に釣り合うのなんて葵君ぐらいだし!」
「応援してるよ~おめでとう!!」 

 しかし、女子達の本音はというと・・・

(その辺の女に紫陽君をとられるくらいなら葵君の方が断然いい!葵君なら許す!)
(なにこのBL展開・・・むしろ推せる!)

 一方、男子はと言うと、

「ま、いんじゃね?驚きはしたけど、華園なら男って感じしねぇし・・・」
「青凪やるなー!!笑」
「男前すぎるぜ!!」

 その心は・・・・

(これで青凪目当ての女子が俺らに回ってくる!!)
(青凪めーッ!でも青凪には敵わねぇ・・・青凪なら許す!)


 一変した教室の雰囲気にも葵は何も言えずに顔を真っ赤にしている。

(まぁ、見せかけの恋人なんだけどね・・・それにしてもあいつ赤くなり過ぎじゃねぇ?その方がリアルに見えていいけど。)

 紫陽はそんなことを思いながらにっこり笑うと、

「皆ありがとう!じゃあ、そういうことなんでよろしくね♪」

 そう言って何事もなかったかのように自分の席へ腰を下ろした。


____________


「おーい、紫陽!一体どういうことだよ?どうなったらこんなに急展開する訳?!」

 授業が終わると、真っ先に駆け寄ってきた雅紀に質問攻めにあう。

「いや、まぁ・・・成り行きで?」

(雅紀には恋人のフリだって言ってもいいんだけどな。いちいち説明するの面倒だし・・・まぁ、そのままでいいか。)

「は???まぁ、お互いにそうなったなら別に俺はいいと思うけどさ~実際ちょっとそうなったら面白いと思ってたし?」

「面白いってなんだよ。」

「ははッ!まぁまぁ。それにしても紫陽がねぇ・・・一見、美男美女カップルにしか見えねぇけどさ。男同士だよな・・・」

 感慨深そうにしながらもどこか含みのある言い方をした雅紀を紫陽が睨みつける。

「いや、偏見とかじゃなくって!やっぱ気になんじゃん?男同士のセッ・・痛でッ」

 雅紀が言いかけた言葉を紫陽が筆箱で殴りつけて遮った。

(誰があいつとヤるかよ!見せかけだっつーの!でもそうか・・・傍から見たらそういう風に見られるのか。そこまで考えてなかったな・・・。いや、でも俺普通にあいつとキス出来たんだよな・・・)

 そんなことを思いながら葵の席の方へ目をやると、葵も女子達からの質問攻めにあっていた。


「ねぇねぇ、どっちから告白したのー?」
「もしかして好きだから突っかかってたとか?可愛い~♡」
「紫陽君との恋話聞きたーい!今度女子会しよッ」
「それいいー!私も聞きたい!」

「えっと・・・その・・」

 葵は上手く答えられずにただただ赤面してあたふたしていた。


(何やってんだ、アイツ。)

 見兼ねた紫陽は葵の元に近寄っていき、声をかけた。

「葵。一緒に帰ろっか。」

(((キャー///)))

 キラキラの王子スマイルにいきなりの名前呼び、、腐女子と化した者たちは心の中で手を合わせて喜んだ・・・。

(((ご馳走様です!!)))

 その状況に全くついていけずにその場で固まっている葵。

「ほら、行くよ!」

 その腕を掴みあげて葵のカバンを持って教室から連れ出していく紫陽は、まさに王子様のようだった。


「ヒューぅ。お熱いねぇ・・・笑」

 そしてその光景を雅紀は楽しそうに眺めていた。

(それにしても、どういう風の吹き回しかねぇ・・・まぁ紫陽のことだし何か考えがありそうだけど~♪)







 


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