ジェンダーレス男子は花を愛でる

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9✿まさかの急接近

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 1週間後___。廊下には実力テストの結果が貼り出されていた。

「わぁ、葵君1位だよー!!」
「女子制服死守!よかったーッ!おめでとう、葵君!」

「ありがとう。」

 キャーキャー盛り上がる女子達の祝福に笑顔で応える葵。


(まぁ、予想はついていたけどな。)

 紫陽の結果は2位だった。

「惜しかったな~紫陽!ま、俺なんか名前も載らない圏外だし!元気だせよッ」

 雅紀が笑いながら肩を回してくる。

「あぁ、。まぁ別にそこまで気にしてねぇし・・・」

 もっと悔しがるかと思っていた紫陽の薄い反応に雅紀は首を傾げる。

「お前最近変だよな・・・何かあったか?」

「いや、別に。」

「まぁ、言いたくねぇなら無理には聞かないけどさ~」

 珍しく空気を読んだ雅紀がそれ以上突っ込まずにいると、

「残念だったね、紫陽君♪」

 いたずらっぽく笑いながら葵が声をかけてきた。

「・・・あぁ。まぁまた次頑張るよ。」

 葵の挑発に全く乗る様子もなく、にっこりと王子スマイルを向けると紫陽は教室を出て行ってしまった。

「ちょっと!?調子に乗り過ぎじゃない?」

 その様子を見ていた紫陽派の女子達が葵を睨みつけた。

「そうよ!だいたいあんな風に先生に言われたら紫陽君だって本気出せないに決まってるじゃない!紫陽君優しいから手を抜いてあげたんでしょ!」

「はぁ??」

 それを聞いた葵派の女子達も黙ってはいない・・・。まさに一触即発しそうになっていたところで、


「はい、ストーーップ!!」

 見兼ねた雅紀が仲裁に入った。

「可愛い女の子達がそんな怖い顔しないのー!だいたい、紫陽はそんなことで手を抜いたりしないと思うよ?それに、本人がいないとこでそんな風に喧嘩されたら紫陽も嫌がるだろうしさ。ね?」

 雅紀にそう言われて紫陽派の女子達は渋々口をつぐむ。すると、しばらくその様子を黙って見ていた葵がその場にいた女子達に謝った。

「ごめんね?つい嬉しくなってあんな言い方しちゃったんだ。感じ悪かったよね・・・紫陽君にもちゃんと謝って来るから!」

 そう言って葵は教室を走って出ていった。

(いや、紫陽は別に怒ってなかったと思うけどさ・・・まぁいっか。)

 雅紀はそう思いながらも、とりあえず女子達が喧嘩にならずに済んだことにホッと胸を撫で下ろした。


________


「ちょっと!ハァハァ・・・やっと見つけた!ハァ・・・探したんだけど?」

 紫陽が屋上で寝転がっていると、息を切らした葵がやって来た。

「はぁ?・・・知らねぇし。何か用?」

 それを見た紫陽は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにそっぽを向いて気怠そうにそう言い放った。


「ほんと、女子がいないと全然態度変わるんだね!」

「別にお前に関係ねぇだろ。・・・お前男だし。」

 そう言われて葵はムッとした顔をする。

「・・・手を抜いたのか?」

「・・・は?」

「僕に気を遣って手を抜いたのかって聞いてんだよ!!」

 そう声を荒げて問い詰める葵に紫陽は呆れたような顔をする。


「はぁ?何で俺が手を抜かなきゃなんねーの?そんな余裕ねぇよ。」

(まぁ、お前のせいで集中は出来なかったけどな・・・)

「つーか、なんでお前そこまで俺に突っかかってくるんだよ?」

「なッ!?別に突っかかってる訳じゃ・・・ただお前が1位の座を狙ってるみたいだったから!僕のアイデンティティが掛かってるし?」

 何やらしどろもどろにそう言い返す葵に紫陽は何か言いたげにしながらもそのまま黙り込んでしまった。

(こいつそんなに女子制服にこだわってるのか?やっぱり妹の代わりになるつもりか・・・いやでもその割には普通に中身男なんだよなこいつ・・・代わりになるならもっと女らしくするんじゃ・・)


「・・・何だよ?!」

 何も言わずにじっと見つめてくる紫陽の顔があまりにも整っていて・・・葵は思わず顔を赤らめてしまった。それを誤魔化すかのようにフフンと鼻で笑ったかと思うと、

「あっれ~?もしかして僕に惚れちゃったとか?そんなに見つめちゃってさ・・・。で、でもごめんね?僕はゲイじゃないから!」


「は・・・?いやいや、俺も違いますけど?」

 葵の突拍子もない発言にただ葵を見ながら考え事をしていただけの紫陽も思わず我に返った。


「いや~困るんだよね。最近そういう風に僕のこと見てくる男子が多くて。いくら可愛いからって僕は男子に興味なんてないのにさ~」

(いや、俺の話聞けよ。)

 勝手にその気で話を進める葵にだんだんイライラしてきた紫陽は急に立ち上がったかと思うと・・・ダンッと、葵の顔の真横に手をついた。

「なッ・・・何?!ンッんん」

 葵が驚いて顔を上げると紫陽は葵の顎を持ち上げるようにして唇を塞ぐとその唇を強引にこじ開けるように舌を入れてきた。

「んッ・・・んぅ、ハァ・・ンんッ・・・ちょッ・・ちょっと!?」

 何とか紫陽を押しのけて唇を離した葵は真っ赤な顔をしながらハァハァと息を切らして睨みつける。

「この前の仕返し。」

 紫陽はそう言って不敵に笑ってみせた。

「はぁ?!」

「あーぁ。何か色々考えてるのが馬鹿らしくなってきたわ・・・」

 紫陽はそう言うと何か閃いたような顔をしながら葵を見つめる。

「な、、何だよ?まだ何か、」

「男に言い寄られるのが面倒ならさ、いっそのこと俺と付き合う?」

「はぁ!?何考えて・・」

(どうせこいつのことばっか考えて何も手につかないなら、いっそのこと距離縮めちまった方が早くこいつのこと知れるしな。)

「それに俺らが付き合ってしまえば女子達の派閥もなくなるだろうし、俺も気兼ねなく1位狙えるし?しかも俺の女子避けにもなって一石二鳥いや、三鳥?」

「・・・・」

 自分よりも突拍子もない発言をさらりとしてしまう紫陽に葵は言葉を失った。


「・・・それはつまり、お互いに都合のいい見せかけの恋人になるってこと?」

「そう!あ、でもお前は女子が好きなら勘違いされると困るのか?」

 紫陽はハッとしたように葵を見る。

「いや、僕はともかく・・・それだとお前がゲイ扱いされて困るんじゃないの?女子にモテモテの王子様がさ、、」

「あぁ、別に俺は女子に好かれたくてそうしてる訳じゃねーし。なるべく人に嫌われたくないだけで。」

「・・・ゲイって思われたら嫌われるんじゃない?」

 葵がそう言うと、紫陽は一瞬固まって・・・プッと吹き出すように笑った。

「お前がそれ言う?笑・・・俺が仮に男を好きだったとしても誰の迷惑にもならないだろ?」

 葵が入学式の日に言い放った言葉をそのまま返された恥ずかしさと、そう言って笑った紫陽の顔が眩しいくらい格好良くて、、葵はまた赤面してしまった。


「で、どうする?ま、嫌なら別に無理にとは・・・」

「付き合う!!」

「・・・・ははッ
 じゃあ、そういうことで♪」

 顔を真っ赤にしながらそう答えた葵の頭を紫陽は優しく笑いながらクシャっと撫でると、スッキリした顔で屋上を去っていった。


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