ジェンダーレス男子は花を愛でる

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6✿テスト当日

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「はい、そこまで!答案用紙回収してください。」

 担任の声と共に実力テストは終了。生徒達は口々にテストの感想を言い合っている。

「あー俺やばいかもー!」
「思ったより難しくなかった!?」
「私赤点かも・・・」

「あ、紫陽君はどうだった!?」

 いきなり女子達に期待の眼差しで話を振られた紫陽は余裕そうな顔をして笑顔で答える。

「んー俺はまぁまぁかな?」

「さっすがー!」
「じゃあ、1位取れそう??」
「紫陽君なら絶対取れるよー!!」


「…それはどうかな?」

 引きつりそうになる顔をグッと堪えてにこりと笑うと紫陽は逃げるように教室を後にした。

(簡単に言ってくれるなよ・・・つーか実を言うと全ッ然テストに集中出来なかった!!!一応答案は全部埋めたけど。)


 紫陽が下駄箱に着くと、ちょうど靴を履こうとしている葵に出くわした。

(うわ、今一番会いたくない奴に・・・)

 そんな紫陽の気持ちを知ってか知らずか、葵がニコニコしながら話しかけてくる。

「テストの手応えはどうー?」

「・・・別に、ふッ普通だよ。」

「へぇ~?僕の口づけに動揺してテストに集中出来なかったことを期待してたんだけどなー。ま、そうじゃなくても1位は僕だろうけどね♪」

「んな訳な・・・は?口づけ?」

(そう言えばあの時されたような?・・・その後の言葉に苛ついてすっかり忘れてた・・・そもそも女子があんな話するせいで華園の過去の方が気になってそれどころじゃなかったし!!!)

 そんな紫陽の反応を見て葵は急に冷めた顔になった。

「何それ・・・全然効いてないじゃん!つまんないのー。まぁ、紫陽君くらい女子にモテモテの王子様だとあれくらいのこといちいち気にしないか~」

 そう言うと葵はそそくさと靴を履き玄関の方へ向おうとした。

「ちょ、、ストップ!!」

 紫陽がその腕を咄嗟に掴んで引き止める。

「・・・何?」

「あ、いや。お前さ・・・」

「あ!!葵く~ん!!」

 急に後ろから葵を呼ぶ女子の声がして慌てて紫陽が手を離すと、葵も何事もなかったかのように笑顔で振り返った。

「先輩!どうしましたか?」

「明日、華道部の見学来れるかな?」

「はい!もちろんです♪」

「よかった!じゃあ明日の放課後、部室で待ってるね~」

「わかりました。宜しくお願いします!」

 どうやら華道部の先輩だったらしい。先輩が去っていき、また二人になると気まずい空気が流れた。

「で?何か用?」

「・・・・お前華道部入るの?」

「は?」

(完全に質問ミスった・・・いや、そもそもこんなとこでいきなりお前の過去が気になるとか言えるかよ!馬鹿か俺はッ)

「は、花好きなんだなと思って・・」

(いや、何言ってんだ俺!!話ごまかそうとしたら変な展開に・・・俺は童貞かッ)


「・・・好きだけど。」

「え?」

「花。花を生けてるときが一番好き。」

 
 てっきり馬鹿にされるかと思った自分の問いかけに思いのほか葵が真面目に答えたものだから紫陽は面食らってしまった。しかも、その葵の顔がびっくりする程綺麗で柔らかい笑顔をしていたので紫陽は不覚にも見惚れてしまっていたのだ。


「・・・で、もういいかな?」

 紫陽がはっとすると、そこには無表情に戻ってしまった葵の顔があった。

「あ、あぁ。引き止めて悪かった。」

「???
じゃあね。テストの結果楽しみだね~」

 葵はそう言って手を振ると玄関の方へ消えていった。


(はッ!!テスト、、、)

「いやもう、テストどころじゃねーよ俺・・・」

 悶々としながら、紫陽はそう呟くと一気にやってきた疲労感を背負いながら下駄箱を後にした。



 こっそり下駄箱に隠れていた雅紀に見られてしまっていたとも知らずに・・・


(紫陽、、マジか?!あんな紫陽初めてみたんだけど・・・)

「あーー面白くなりそう。。笑」






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