ジェンダーレス男子は花を愛でる

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1✿入学式

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 桜の花びらが舞う中を真新しい制服に身を包み、今日から始まる高校生活に緊張と期待で胸を躍らせながら歩いていく新入生達。

 そんな中で、どう見てもその場に似つかわしくない絶望感を背負いながら重い足取りで歩く姿が一人・・・青凪 紫陽あおなぎ しよう

「見て見て!あの人!格好良くない?」

「ほんとだ!格好いいー!でもなんか・・・ものすごい負のオーラが。」

「確かに。イケメンなのに勿体無い~。入学式早々どうしたのかな?」

 いつもなら女子の目線に気づくやいなや爽やかな王子スマイルを見せるところだが今の紫陽にはそんな余裕は微塵もない。何故なら・・・

「おぉーい!紫陽しよう。どしたどした??まさかお前、新入生代表挨拶があるからって緊張してんのかぁ?」

 そう笑いながら後ろからガシガシと肩を回して来たのは親友の雅紀まさきだった。

「・・・・じゃない。」

「ん?何か言っ」

「俺じゃねぇんだよっ!!」

「は??いやだってさ、今まで勉強でお前に勝つやつなんかいなかったろ?中学んときだってずーっと学年トップだったし。」

 
 そうなのだ。今まで紫陽は勉強も運動も常に一番。金にも女にも困った事なんてなかった。当然高校も首席合格に違いないと高をくくっていたにも関わらず、待てど暮せど今日まで新入生代表挨拶の知らせが来なかった。つまりは紫陽は首席合格ではなかったということだ。


「ま、まぁまぁ。高校始まったばっかなんだしさ!入試で一番じゃなくたってこれからいくらでも巻き返せるだろ?」

「・・・そうだな。終わったことを嘆いてたって仕方ない。一体どんな奴が首席合格だったか入学式で確かめてやる!!」

「そうそう!つーか、お前差し置いて一位取るとか絶対勉強しか頭にないようなガリ勉君に決まってる!」

「確かにな!」

 雅紀に宥められて少し気が楽になった紫陽は、先程までスルーしていた女の子達の目線に微笑み返しながら今度は颯爽とした足取りで入学式へ向かっていった。


____________


 だだっ広い体育館の中に並べられた沢山の椅子に座る全校生徒に教師、保護者達。そして粛々と進められていく入学式・・・。


「新入生代表挨拶。」

 ついにこのときが来た。


(一体どんな奴だ?男か?女か?)

 紫陽はソワソワしながら壇上に上がる生徒を待っていた。


「新入生代表、1年1組華園 葵はなぞの あおい。」

「はい。」

 名前を呼ばれ、透き通るような声で返事をして壇上にゆっくりと向かっていったのは・・・まさに『才色兼備』という名に相応しい美少女だった。

「わぁ、綺麗~!モデルみたい!」

「やばくね?俺狙っちゃおうかなー」

「お前馬鹿か?あの顔で首席合格とか高嶺の花過ぎるだろ!!」

「華園だけに?笑」


(なんだよ女かよ。しかも同じクラス?ただの地味なガリ勉じゃなくてあんな美人だったとはな。まぁ、イモ臭いガリ勉男子に負けたよりそっちの方がまだマシ・・・ん???)

 紫陽がそんなことを思いながらふと教員席の方に目を向けると、そこには何故か驚愕しているような教師達の姿があった。華園 葵のクラス担任にいたっては青ざめた顔でわなわなと肩まで震わせている。

(なんだ・・・?)

 そんな教師達とは裏腹に涼しい顔をして壇上に上がった華園 葵は、全校生徒の模範とも言える姿で堂々と挨拶を終えると、また自分の席へと戻っていった。




 





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