1 / 11
1✿入学式
しおりを挟む桜の花びらが舞う中を真新しい制服に身を包み、今日から始まる高校生活に緊張と期待で胸を躍らせながら歩いていく新入生達。
そんな中で、どう見てもその場に似つかわしくない絶望感を背負いながら重い足取りで歩く姿が一人・・・青凪 紫陽。
「見て見て!あの人!格好良くない?」
「ほんとだ!格好いいー!でもなんか・・・ものすごい負のオーラが。」
「確かに。イケメンなのに勿体無い~。入学式早々どうしたのかな?」
いつもなら女子の目線に気づくやいなや爽やかな王子スマイルを見せるところだが今の紫陽にはそんな余裕は微塵もない。何故なら・・・
「おぉーい!紫陽。どしたどした??まさかお前、新入生代表挨拶があるからって緊張してんのかぁ?」
そう笑いながら後ろからガシガシと肩を回して来たのは親友の雅紀だった。
「・・・・じゃない。」
「ん?何か言っ」
「俺じゃねぇんだよっ!!」
「は??いやだってさ、今まで勉強でお前に勝つやつなんかいなかったろ?中学んときだってずーっと学年トップだったし。」
そうなのだ。今まで紫陽は勉強も運動も常に一番。金にも女にも困った事なんてなかった。当然高校も首席合格に違いないと高をくくっていたにも関わらず、待てど暮せど今日まで新入生代表挨拶の知らせが来なかった。つまりは紫陽は首席合格ではなかったということだ。
「ま、まぁまぁ。高校始まったばっかなんだしさ!入試で一番じゃなくたってこれからいくらでも巻き返せるだろ?」
「・・・そうだな。終わったことを嘆いてたって仕方ない。一体どんな奴が首席合格だったか入学式で確かめてやる!!」
「そうそう!つーか、お前差し置いて一位取るとか絶対勉強しか頭にないようなガリ勉君に決まってる!」
「確かにな!」
雅紀に宥められて少し気が楽になった紫陽は、先程までスルーしていた女の子達の目線に微笑み返しながら今度は颯爽とした足取りで入学式へ向かっていった。
____________
だだっ広い体育館の中に並べられた沢山の椅子に座る全校生徒に教師、保護者達。そして粛々と進められていく入学式・・・。
「新入生代表挨拶。」
ついにこのときが来た。
(一体どんな奴だ?男か?女か?)
紫陽はソワソワしながら壇上に上がる生徒を待っていた。
「新入生代表、1年1組華園 葵。」
「はい。」
名前を呼ばれ、透き通るような声で返事をして壇上にゆっくりと向かっていったのは・・・まさに『才色兼備』という名に相応しい美少女だった。
「わぁ、綺麗~!モデルみたい!」
「やばくね?俺狙っちゃおうかなー」
「お前馬鹿か?あの顔で首席合格とか高嶺の花過ぎるだろ!!」
「華園だけに?笑」
(なんだよ女かよ。しかも同じクラス?ただの地味なガリ勉じゃなくてあんな美人だったとはな。まぁ、イモ臭いガリ勉男子に負けたよりそっちの方がまだマシ・・・ん???)
紫陽がそんなことを思いながらふと教員席の方に目を向けると、そこには何故か驚愕しているような教師達の姿があった。華園 葵のクラス担任にいたっては青ざめた顔でわなわなと肩まで震わせている。
(なんだ・・・?)
そんな教師達とは裏腹に涼しい顔をして壇上に上がった華園 葵は、全校生徒の模範とも言える姿で堂々と挨拶を終えると、また自分の席へと戻っていった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される
ぶんぐ
BL
社畜リーマンは、階段から落ちたと思ったら…なんと異世界に転移していた!みんな魔法が使える世界で、俺だけ全く魔法が使えず、おまけにみんなには避けられてしまう。それでも頑張るぞ!って思ってたら、なぜか冷徹王子から口説かれてるんだけど?──
嫌われ→愛され 不憫受け 美形×平凡 要素があります。
※溺愛までが長いです。
※総愛され気味の描写が出てきますが、CPは1つだけです。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる