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8巻

8-1

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 プロローグ


 剣聖の里に迫る、《演出家ディレクター》率いる魔神王まじんおうの軍勢。
 クルトをはじめとした工房の面々に加え、老帝ヒルデガルド、剣聖の里、ホムーロス王国の連合軍は、見事撃退に成功する。
 しかしその直後、老帝ヒルデガルドの領土の防衛拠点であるラプセラドが、魔神王一人によって陥落かんらくした。
 その報せを聞いただれしもが、魔神王との闘いが激化すると予見したのだが――
 なんと魔神王はその後、一切の消息を絶つことになる。
 絶対的な王を失った魔神王の軍勢は、まるで柱を失った建造物のごとく内側から崩壊、もはや組織の体裁ていさいを保てなくなる。そして戦いを継続できなくなり、その後行われた魔族の王たちによる会合――ヴァルプルギスナハトにおいて、魔神王国の代表が降伏を宣言。
 その領土は分割され、一部は獣王じゅうおう魔竜皇まりゅうこうの領土となるものの、その多くは老帝ヒルデガルドのものとなった。
 発言権が増した老帝ヒルデガルドはヴァルプルギスナハトにおいて、さらに人類との和平を提言する。魔竜皇は中立の立場を貫くため賛成とも反対とも言わずに投票を棄権。獣王も好戦的な性分だが、前回のヴァルプルギスナハトにおける老帝ヒルデガルドへの貸しがあるため賛成の立場を取らざるをえず、結果、魔族と人類の和平交渉が進むこととなった。


 そして、ラプセラド陥落から半年後の現在――場所は教皇の間。
 ここは、教皇がたった一人の護衛とともに祈りをささげ、神から啓示けいじを与えられるために存在する。そして本来であれば枢機卿すうききょうたちですら入ることが許されないその部屋に、はいた。
 その私の前には、この部屋の主であり護衛対象である教皇の後ろ姿がある。
 今の彼からは人の前に出る時の威厳らしきものがあまり感じられない。それどころか、心労で胃を痛めていそうで、胃薬を処方したくなるくらいに弱っている。まだ六十歳だというのに、七十歳くらいまで老け込んでいるように思えた。
 そして、そんな教皇の前に一人――この神聖な場に似つかわしくない者がいた。
 似つかわしくないと言えば、冒険者が着るような服をまとっている私もかなり非常識なのだが、しかし教皇の前にいる者はそういう常識、非常識の範疇はんちゅうを超えている。
 正反対と言えばいいのだろうか? 神聖なこの場において、禍々まがまがしい気のようなものをその全身からあふれさせていた。
 私はそれを見て、少し妙な気分になった。
 まさか、魔族と敵対するポラン教会のトップである教皇が、最も神聖なこの部屋でこんな者と――誰も予想しないはずだ。
 私は気付かれないうちに、視線をその男からずらす。
 彼は自分が見られたことに気付いていたかもしれない。しかしそれでもなお、私のことを気にした様子はなかった。路傍ろぼうの石程度にしか見ていないのだろう。
 何しろ、その相手というのは、漆黒しっこくよろいに身を包んだ――魔神王なのだ。
 半年前の人魔戦争を境に、突如として表舞台から姿を消した魔族の王が目の前にいても、私には死の恐怖はなかった。
 そういう感情ははるか昔に失っている。
 だからこそ、この場で護衛をしていられる。
 そんな私の前で、教皇が魔神王に問いかける。

「魔神王。魔族の役割を忘れたのですか?」
『忘れたわけではない。いや、その役目を果たさなくてはいけない』
「…………はぁ……やめることはできないのですか?」

 ため息交じりに告げる教皇――だが、その足は震えていた。
 彼は捨てきれていないのだ。
 死の恐怖を。

『できぬ。いにしえからの盟約に我は従うだけだ』
「時間をいただけませんか? まだ人類には可能性が――」
『止めても無駄だということを理解しているのだろう?』
「…………」

 教皇は何も言わない。
 それは肯定を意味していた。

『我はただのシステムに過ぎん。今こうして貴様の前にいるのも、その範疇だ』

 教皇が何か言うひまもなく、魔神王の姿は気配とともに消え失せ、そこには禍々しいオーラを放つ漆黒の宝玉だけが転がっていた。
 教皇は盛大なため息をつき、その宝玉を拾い上げる。

「教皇になるのではなかった……」

 それは、私が見てきた教皇のほとんどが言うセリフであった。
 教皇になった者は、全員が大賢者の弟子となり、世界の秘密の一端を――ポラン教会の役目を知らされてしまうのだから。

「何か仰ったらどうですか?」

 一人でしゃべっているのが馬鹿らしくなったのか、教皇は私に向かってそう言った。
 それに対し、私は表情を崩しておちゃらけた口調で言った。

「いやぁ、うちが教皇様に対して口をきいてもいいものかって、つい黙り込んでしまったわ」
「あなたは相変わらずですね、えっと、今の名前はバンダナ殿でしたかな?」

 教皇がいろいろとあきらめたような笑みをこぼし、私にそう声をかけた。

「私が教皇になった三十年前も、そうして今のように飄々ひょうひょうとした姿で現れ、すべてを壊していったのですから」

 教皇が過去を懐かしむように言う。
 私にとってはわずか数年前の感覚の記憶なのだが、彼にしてみれば人生の半分を振り返らなければならないほど昔の出来事のようだ。

「そういえば、その喋り方は?」
「ああ、これはうちがつい最近まで潜入してた冒険者グループに馴染なじむための口調や。やけど、ついくせになってしまってな」
「なるほど。いえ、それは似合っていると思いますよ」
「おおきに。ま、しばらくはこのままでいかせてもらうわ。気が向いたら元に戻すかもしれへんけどな」
「気が向いたら……ですか。それまで世界が無事なままと思いますか?」

 教皇が私に尋ねる。
 その質問に私がどう答えても意味がないことくらい、彼ならわかっているはずだ。

「ははっ、そんなんうちがわかるわけないやん。それで、教皇はんはどうするん? 例の場所に行くんか?」
「行かなければならないでしょう。死ぬ危険があるとわかっていても、私にはそれをする義務があります。バンダナ、あなたには護衛をお願いしますよ」
「うぃうぃ、まかしとき」

 私がそう言うと、教皇はため息をついて部屋の出口へと向かった。

「では、行きましょう。魔族との和平、見届けなければいけません」


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 魔神王の軍を打ち破ってから、半年が経った。
 その半年間で、僕――クルト・ロックハンスは王都に商会を作ってワインや雑貨などを販売していた。
 少ないながらも利益を出すことに成功し、なんと、国王陛下から直接お褒めの言葉を頂き、工房主アトリエマイスター代理として少し自信が付いてきた。
 それから、この世界についての秘密も、ユーリシアさんから聞かされていた。
 この世界が元々は古代人によって創られた第二の世界で、最初の世界は禁忌きんきの怪物と呼ばれる存在によって破滅してしまったこと。最初の世界とこの世界とをつないでいるのが、大賢者の住む賢者の塔であり、大賢者は世界を管理する存在であること。そして、ユーリシアさんも大賢者と契約を交わし、大賢者の弟子となったこと。
 信じられないことばかりだったけど、ユーリシアさんがうそをつくはずがないので、それは事実なのだろう。

「本当にいろいろとありましたね……あれ? ユーリシアさん? リーゼさん?」

 僕たちは今、とある船の甲板かんぱんにいるんだけど、周囲を見回してみると、ユーリシアさんとリーゼさんは甲板の隅で何か話していた。ユーリシアさんの腕には、はしゃぎすぎて眠っているアクリが抱えられている。
 どうやら二人は、出発前に商会の経理をしている人から預かった書類を読んでいるらしい。

「(どうするんだ、リーゼ。クルトの商会、半年で大都市を運営できるくらいの利益を上げてるぞ。さすがにクルトの正体がバレるのも時間の問題じゃないか!?)」
「(まぁ、クルト様が造ったワインは、今や『神の雫ネクタル』と呼ばれ、天文学的な値段で取引されていますからね。ですがそのせいで、一部の貴族が無理に購入したものの支払いを履行りこうできず、商会の傀儡かいらいになってこちらの意のままに動いてくれます。それに、お父様――陛下も協力してくださっていますから、クルト様の存在が表に出ることはありませんわ)」
「(貴族が傀儡だってっ!? おい、クルトに少し自信を付けさせるための商会で、なんでそんなことになっているんだよ)」

 どうも込み入った話をしているようなので、僕は二人をそっとすることにした。
 するとそこに、僕の幼馴染で今は魔族の王様の一人、老帝と呼ばれているヒルデガルドちゃんがやってきた。

「あ、ヒルデガルドちゃん。どうかな? 旅には慣れた? 船酔いしていない?」
「大丈夫よ。ほとんど揺れないから酔うこともないし」
「そう、それならよかったよ。さすがボンボール工房主アトリエマイスター様だね」

 この船はボンボール工房主アトリエマイスター――諸島都市連盟コスキートの工房主アトリエマイスターが造った最新型のものだ。僕も少し手伝いをしたけれど。

「でも、まさかあんな場所で会談をするとは思ってなかったよ。最初はエルフの里の予定だったのに」

 当初、人類と魔族の和平会談は、魔領近くの大森林にあるエルフの里で、ホムーロス王国と剣聖の里、魔族の代表だけで行われるはずだった。
 しかし、その和平会談に諸島都市連盟コスキート、砂の国トルシェン、グルマク帝国、ポラン皇国も参加を表明したのだ。さらに、ポラン皇国は自国が会議の舞台を整えるからと、シーン山脈での会談を要求。各国及び魔族はそれを受け入れ、移動することとなった――とミミコさんに教えてもらった。
 トルシェン、グルマク帝国、ポラン皇国の会談の参加者は陸路で移動しているため、この船に乗っているのは、ホムーロス王国、諸島都市連盟コスキート、剣聖の里、魔族から指名された人間とその護衛だけだ。
 ちなみに魔族の代表として、ヒルデガルドちゃん以外にもソルフレアさん、チッチさんが乗っている。それから、立派なたてがみ白虎びゃっこの耳を持った獣人である獣王様と、その配下の人二人も。
 なぜか僕まで、所属する工房の工房主アトリエマイスター、リクト様の代理で参加することになったのだけれども、完全に場違いな気がする。
 とはいえ、ここにいるのは僕が知っている人が多いので、そういう意味では気が楽だ。

「……気が楽……か」
「どうしたの?」
「いや、ゴルノヴァさんたちのパーティを追放されてからそろそろ一年になるんだけど、いろんな人と知り合いになったなって思って。しかも、みんなすごい人ばかりで」

 考えてみれば、ユーリシアさんも、イシセマ島の島主の従妹いとこだし、ヒルデガルドちゃんは魔族のトップの一人。娘のアクリは人工的に作られたとはいえ、本当は人々に信仰される大精霊なのだ。
 それに、リーゼさんも、僕に隠していると思うけれど、きっと貴族かそれに繋がる家の人なんだろうなって思っている。さすがの僕でも、そのくらいは勘付いている。
 もしかしたら――ううん、これはリーゼさんが言うまで詮索せんさくするのはやめておこう。

「あら、クルトも十分凄いじゃない」
「そうだとうれしいな」
「ええ。自分を卑下ひげする回数が少し減ったしね」
「それって凄いことなのっ!?」

 僕はヒルデガルドちゃんにからかわれていることに気付き、むっとした表情を作る。と言っても本気で怒っているわけではない。
 確かに、少し自信が付いたと自分でも思っているからだ。
 ユーリシアさんの力を借りたとはいえ、武道大会ではそこそこいい成績を残せたし、商会に僕が作った商品をおろして、利益も出している。
 雑用しか取柄とりえがなくて戦闘能力が皆無だと、元々いたゴルノヴァさんのパーティを追い出されたあの頃よりは、確実に成長している。
 まぁ、戦闘能力がからっきしないのは相変わらずだけれども。

「クルト工房主アトリエマイスター代理っ! 探しました、そんなところにおられたんですか!」

 そう言って、ふくよかな体つきをした四十歳くらいの男性――ボンボール工房主アトリエマイスターが汗を流しながら走ってきた。

「あ、ボンボール工房主アトリエマイスター! お邪魔しています」
「邪魔だなんて、そんなことは絶対にありません!」

 なぜか大きな声で僕の言葉を否定したボンボール工房主アトリエマイスター

「クルト工房主アトリエマイスター代理には、この船の設計に多大な尽力を頂きまして――まさか、このような船を――」

 と、ボンボール工房主アトリエマイスターは両手を広げて言った。

「空飛ぶ船、飛空艇ひくうていを造ることができるとは思ってもいませんでした」

 飛空艇――そう、この船は空を飛んでいた。
 空を飛ぶ船なんて、僕には発想もできない。そもそも、ハスト村は数十人しか住んでいない小さな村だから、空を飛んで移動するだけなら気球で事足りたからだ。

「本当ですね。さすがです、ボンボール工房主アトリエマイスター
「いえ、本当に私は何もしていませんよ」

 ボンボール工房主アトリエマイスター謙遜けんそん気味に言った。


 ボンボール工房主アトリエマイスターがヴァルハの町を訪れたのは、四カ月前のことだ。
 以前僕が留学させてもらった見返りに、僕の所属するリクト様の工房の見学をしたいという申し出があったのだ。その時はリクト様が不在だから断ろうとしたんだけど、相手をするのは代理の僕でも構わないということで断り切れず、訪れてもらうことになった。
 ボンボール工房主アトリエマイスターが見学したがった一番の理由は、気球だった。
 きっかけは、僕が剣聖の里で皆さんに教えた気球の仕組みが公開され、世界中に広まったこと。元々ボンボール工房主アトリエマイスターは海洋船舶の研究をしていたんだけど、船の需要が無くなるのではないかと不安に思い、僕のところに話を聞きにきたということだ。
 結果、気球は大量運送には向かないので、まだまだ船の需要が無くなることはないと告げると、ボンボール工房主アトリエマイスターは安心してくれた。
 その時のボンボール工房主アトリエマイスターと僕の会話はこんな感じだ。

『しかし、クルト工房主アトリエマイスター代理。気球というものは凄いですね。船を浮かせるような気球が造られたら、私は太刀打たちうちできません』
『気球に船をっ!? そんなの考えたこともありませんでした。凄い発想ですね……ちょっと設計図を作ってみていいですか?』
『設計図って、何のですか?』
『空を飛ぶ船の設計図です』

 そして、僕は設計図を描いてみた。
 風の魔法晶石まほうしょうせきだけだと長時間の航空には耐えられないので、船舶に取り付けるのは魔道具エンジンとプロペラ。本当は、前回の戦いで使った、重力を操作して無重力空間を作る魔道具――ウラノおじさんが造ってのこしてくれていたものを使いたかったんだけど……ミミコさんから、「この装置については誰にも言わないでほしい」って言われているから、浮力部分の補助にも魔法晶石を使うことになった。
 一度浮かせて動かしてしまえば、高度維持については航空力学的にほとんど魔力を消費することなく移動できる、という船の設計図だ。
 まぁ、素人が適当に描いたものだから、きっとボンボール工房主アトリエマイスターからしたら子供の落書きみたいなものだと思ったんだけど……

『これは……うむ……しかし……』

 僕の説明を聞いても、ボンボール工房主アトリエマイスターの表情は優れない。
 確かに船体部分を造るのって時間かかるよね? 帆船はんせん規模だと二日くらい?
 お忙しいボンボール工房主アトリエマイスターには無理か。

『だったら、既存の帆船に取り付ける形のものはどうでしょう?』

 僕はそう言って、別の設計図を用意する。
 こっちは空を飛ぶ魔道具部分だけなのですぐに描け、それを見たボンボール工房主アトリエマイスターは目を丸くしていた。

『なんとっ、これほどまでに画期的な魔道具を――』
『何言ってるんですか。気球を利用して空飛ぶ船なんて発想、僕にはなかったんです。既にあるものを組み合わせて新しいものを生み出すのって、凄いことなんですよ! ボンボール工房主アトリエマイスターの発明は凄いです!』
『し、しかし、これを私一人の手柄とするのは……発表するなら、せめてクルト殿の発明の連名に……』

 連名? ちょっと設計図を描いただけなのに?
 本当ならここで断るところだ。だけどボンボール工房主アトリエマイスターもこう言ってくださってることだし――

『なら、お願いしていいですか?』

 ちょっとお願いしてみた。


「まさか、本当に連名にして発表してくださるとは――」
「ええ、それはもちろんです、はい……(本当はクルト殿の名前を先に書いて発表したかったのだが)」
「どうなさいました?」
「いえ、なんでもありません(なぜかローレッタ殿とリーゼロッテ王女の双方から、私の手柄にするようにと言われたなんて言えるはずがない)」

 なんでもないと言っているけれど、ボンボール工房主アトリエマイスターはぶつぶつと何か言っている。

「本当に大丈夫ですか?」
「え……えぇ、大丈夫です、本当に」

 ボンボール工房主アトリエマイスターはそう言うと、船酔いでもしたのか、青い顔でもう一度僕に挨拶あいさつし、その場を去っていった。

「本当にクルトは、他人を幸せにしているか不幸にしているかわからない人生を進んでるわね。あの人、隣にいた私のことを気にする余裕もないみたいじゃない」

 ヒルデガルドちゃんが、背中を丸めてふらふらと歩いていくボンボール工房主アトリエマイスターを見て言った。

「……酷いよ、ヒルデガルドちゃん。でも、確かにヒルデガルドちゃんを不老にしてしまったのは悪いと思ってるけど……」
「確かに不老になったのは私にとって不幸だったけれど、今は少し幸せよ」

 ヒルデガルドちゃんはそう言って微笑ほほえんでくれた。
 それが僕にとって救いだった。

「そう言えば、ヒルデガルドちゃん。少し身長が伸びたんじゃない?」
「千二百年ぶりの育ちざかりだから当然よ。そのうち、クルトの身長を追い抜くわよ」
「僕だって少しは伸びてるんだから、簡単に追い抜かれないよ」

 そう、ヒルデガルドちゃんは千二百年前、僕の調薬ミスにより、不老となっていた。だけどあの戦争の後、僕が剣聖の里の近くの山で素材を採取して調合した薬により、不老ではなくなっている。
 今は日々の成長を喜び、みんなに隠れてお城の寝室の柱に印を入れては、その成長を記録している……というのは、彼女の部下であるチッチさんがこっそり教えてくれた。

「クルト、何笑ってるの?」

 その光景を想像して思わず笑ってしまった僕に、ヒルデガルドちゃんは何かを察したのか、にらみながら尋ねてきた。

「ううん、なんでもないよ。ちょっと幸せだなって――」
「パパァァっ! シーナおねえちゃんとたんけんしてきたの!」

 そう言ってアクリが飛空艇の探索から帰ってきた。
 アクリに振り回されたであろう、冒険者パーティ『サクラ』の一員であるシーナさんが、少し疲れた様子で僕に微笑みかける。

「よかったね。シーナお姉ちゃんにお礼を言った?」
「うん!」

 僕は元気に挨拶をするアクリを抱き上げて、一緒に甲板から景色を眺めた。
 そこには、僕の故郷であるシーン山脈が、遠景となって広がっていた。


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