勘違いの工房主~英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話~

時野洋輔

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7巻

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 プロローグ


 は見る者が見れば、異様な光景でしょう。
 私の視線の先では、ゴブリンを始め、多種多様な魔物たちが列をなしてひたすらに進んでいます。
 本来、ゴブリンやオークのような低級な魔物は、自分より下の種族の魔物を武力で制圧して手駒てごまとして使うことはあっても、対等な立場で協力して行動をともにすることはないのですから。
 ましてや、そこにスケルトンやゾンビのような不死生物アンデッドが混ざることなどありえません。
 しかし、それを為すことができるのが、私――《演出家ディレクター》なのです。
 私の仲間だった《脚本家スクリプター》には、人間や魔族を甘い言葉で思うように動かす力がありました。しかし私には、そんな回りくどいことをせずとも、下級の魔物ならば何十万、何百万と操る力があります。
 私たちの主たる魔神王様にとって、どちらが有用かは言うまでもありません。それが証拠に、私は魔神王様から、この戦いにあたり、ある魔道具をたまわりました。
 もっとも、私の演出プランではこの魔道具の出番はありませんが……しかしながら、それだけ私が魔神王様に愛されているということでしょう。
 私が首無しの馬が引く馬車に乗って移動していると、配下の魔族、吸血鬼ヴァンパイアの一人が接近してきました。

「《演出家ディレクター》様。報告がございます」
「なんですか?」
からの報告によりますと、ラプセラドに老帝ろうてい配下の魔族七千が集結。守備を任されているのは、側近のソルフレアとのことです」

 ラプセラドは老帝――ヒルデガルドの領地にとって守備の要。
 絶対に落としてはいけない要所。

「なるほど、鬼のソルフレアを投入してきましたか。老帝自ら兵を率いると思っておりましたが」

 となると、老帝はさらに奥に? ……いいえ、彼女の性格からしてそれはないでしょう。
 とすると、我々の向かう剣聖の里に?

「ふふ、なるほど。そうですか。あくまで剣聖の里を重要視するというわけですか」

 これは好都合というものです。
 老帝の首、この私の手で取ってみせましょう。
 最大の演出をもって!


 この戦いは魔神王様に全幅の信頼を置かれた私のためのいくさ物語です。 




 第1話 開戦準備と過去のハスト村


 僕――クルト・ロックハンスは、幼馴染おさななじみである魔族のヒルデガルドちゃんと一緒に剣聖の里を歩いていた。
 時間移動のために疲れて寝てしまった娘のアクリは、ドライアドのニーチェさんに預けている。
 僕は、かつてこの場所で生まれ、そして育った。
 記憶の中のハスト村と照らし合わせてみたら、確かに共通する景色も残っているけど、僕が育った家を含め、多くの建物はもうどこにも見当たらない。
 僕の記憶の中ではこの場所で過ごしていたのは十数年前の出来事なのだけれども……実際には千二百年前の出来事だったらしいから仕方がないか。

「クルト、どう? 少しは懐かしい?」
「うーん、懐かしいというより不思議な感じかな。本当に千二百年経っているんだって、まざまざと実感させられるから」
「実際に生きてみたらもっと実感できるわよ」

 ヒルデガルドちゃんは皮肉を込めて笑ったので、僕は素直に「ごめんなさい」と謝った。
 そう、千二百年の時間が流れていることを裏付けるのは、変わってしまった風景だけではなかった。
 彼女――僕にとっては十数年前に村で出会い、そしてつい最近再会したばかりのヒルデガルドちゃんは、実はもう千二百歳を超えている。
 僕と一緒に村にいた頃、彼女は僕のミスで大怪我を負った。
 その時に近くに生えていた草花を使って僕が作った回復薬で、彼女は一命をとりとめたんだけれども、調合を誤っていたせいで、彼女を不老の体にしてしまったんだ。
 簡単な回復薬っていうのは、人が自然に傷を治そうとする力を高める薬だ。
 しかしその効果が強すぎると、傷を治すどころか、細胞を現在の最適な状態に維持いじしようとし、それ以外の肉体の動きを抑制することになる。
 たとえば『老い』という、人なら誰しも受け入れているものでさえも。
 まぁ、こんな不老の力が入った薬、普通なら間違えても作ったりしないんだけど、やっぱり僕も子供の頃はそういう基礎的な部分ができていなかったんだね。

「そういえば、ヒルデガルドちゃんが不老だって知ってから、聞きたかったことがあるんだけど」

 僕は歩きながら、ヒルデガルドちゃんに尋ねた。

「なにかしら?」
「どうして、ヒルデガルドちゃんはずっと不老のままいたの?」
「……どういう意味?」

 ヒルデガルドちゃんが立ち止まり、僕をにらみつける。

「あ、ごめん。怒らないで。でも、不老を元に戻す薬を作るのには、確かに珍しい花が必要になるけれど、僕でも作れる薬なんだし、千二百年もあったら手に入る機会もあったんじゃないの?」

 たぶん、僕が薬の材料を探したら、一カ月くらいで見つかると思う。
 僕がそう尋ねると、ヒルデガルドちゃんは顔を伏せて、小さな声で何かを言った。

「(そんなの簡単に見つかるわけないでしょ、バカクルト。それどころか、こっちは幼い頃から、不老の力を求めるバカ共に狙われて大変だったんだから)」
「え? なに?」

 よく聞こえなかったので聞き返すと、ヒルデガルドちゃんは顔を上げてキッと見てくる。

「そんなの、いつかクルトを見つけて文句を言ってやるために決まってるでしょ!」
「うわ、ごめんなさい」
「もういいわよ、怒ってないからこれ以上蒸し返さないで」
「怒ってるよね?」
「怒ってないっ!」

 ヒルデガルドちゃんは僕にそう怒鳴どなりつけた。
 怒られちゃったけど、千二百年経ってもヒルデガルドちゃんはヒルデガルドちゃんで、少し安心した。
 変わらないのはヒルデガルドちゃんだけじゃない。
 裏庭にあった大きな岩とか遠くに見える山の稜線りょうせんとか、見覚えがあるものもあり、やっぱり僕を安心させてくれる。
 でも、なぜ僕は、千二百年も未来にいるのか?
 そして僕以外のハスト村の人たちはいったいどこに行ってしまったのか?
 大賢者とは何者なのか?
 そして、人工精霊でもある時の大精霊――アクリはどうして生まれたのか?
 そのことを調べるため、僕達はヒルデガルドちゃんが作った魔法陣とアクリの力を使い、千二百年前のハスト村に精神を送り、調査をする予定だった。
 だけどなぜか僕とヒルデガルドちゃんは過去に行くことができず、一方で工房の仲間のユーリシアさんとリーゼさんは、精神どころか、肉体ごと過去に飛んでしまった。
 二人は無事に帰って来られるんだろうか?
 そもそも、本当に過去のハスト村に時間移動できたんだろうか?
 不安は尽きない。
 だけど、ここで悩んでいるわけにもいかない事情があった。
 この剣聖の里に、ヒルデガルドちゃんと敵対している魔族――魔神王の軍勢が迫っているのだ。想定では、三週間後にはこの里に到着する。
 しかも、この里が魔神王の軍勢に落ちれば、里の中にある転移石を使って、僕達が住んでいるホムーロス王国にまで攻めてくるかもしれないという。
 第三席宮廷魔術師であるミミコさんが、即座にタイコーン辺境伯に連絡してくれたお陰で、援軍もこの里に到着している。
 それでも、敵の数は三十万というから、こちらの旗色が悪いのは明白だ。
 本当に大丈夫だろうか?
 やはり不安がぬぐえず、悩みながら歩いていると――

「クルト、危ないわよ」
「え?」

 ヒルデガルドちゃんの言葉が耳に届くと同時に、僕は何かにぶつかった。
 でも、目の前には何もない。
 あ……そうか、すっかり失念していた。

「そういえば、ここって城壁が透明とうめいだったんだ」

 この里はグルリと城壁に囲われているんだけれども、その城壁は視認することができない。
 光を屈折くっせつさせず、完全に透化させる建材を使い、見えない城壁にしているのだ。
 表面もなめらかでほこりなどがまることもないから、注意しないとこうしてぶつかってしまう。
 ただ、雨の日だけは城壁を伝って流れる水が綺麗きれいだった。

「自分の村なのに忘れてたの?」
「うん、子供の頃のことだし」

 僕は鼻を押さえて言った。

「大丈夫? 鼻血出てるじゃない。ハンカチがあるから使いなさい」
「平気だよ。自分のがあるから」

 僕はそう言って、薬を飲んで出血を止め、ハンカチで鼻を拭いた。

「お二人は本当に仲がいいですね」

 そんな僕たちを見て、近くにいたこの里の人たちが近寄ってきた。
 なんでも、彼らのご先祖様はハスト村の住民に恩があるそうだ。
 そのご先祖様というのは、ハスト村がかつてこの土地にあった頃に、近くで武者修業をしていたアーサーさんという冒険者らしい。よく村に訪れては、ゴブリンの襲撃を撃退してくれる、尊敬できるお兄さんだった。
 アーサーさんとは仲良くさせてもらっていたから、それを恩だと感じていたのかな?
 その恩を千二百年経った今でも子孫の人たちは忘れておらず、ハスト村の一員である僕も大切な客人として迎え入れてくれたのだ。

「それにしても驚きました。あのアーサーさんがグルマク帝国の初代皇帝様で、皆さまのご先祖様だなんて」
「私も、始祖様と実際にお会いした話を聞いて驚きです」

 僕の言葉に、里の男性がうなずく。

「始祖様はおっしゃっていたそうです。ハスト村が忽然こつぜんと姿を消し、その消息が一切わからない。ただ、ハスト村は十年に一度、村ごと引っ越し、一定の周期で元いた場所に戻ってくる。世話になった彼らのために、彼らが帰る場所を守らなければいけないと。それが大賢者の弟子である自分の役目であると」
「大賢者の弟子!?」

 男性の話を聞いていたヒルデガルドちゃんが驚き、声を上げた。

「どういうこと!? 大賢者についてなにか知っているの?」
「大賢者とはこの世界を管理する存在であり、失われた大地の民の生き残りと言われていますが、詳しいことは私にもわかりません。そして、大賢者の弟子とは、その大賢者に認められた者であり、大賢者と会ったことのある者だそうです」

 ヒルデガルドちゃんは、不満そうに男性を見る。

「なんで、今まで黙っていたの? 私は千年以上前からこの里に訪れてるけど、そんなこと一度も話してくれなかったじゃない」
「ユーリシア様とリーゼ様が過去に旅立たれることが、このことを話す条件だったのでございます。それまで、私どもは話すことができなかったのです」
「つまり、あなたたちはあの二人が肉体ごと過去に飛ばされることを知っていたって言うの!?」

 怒りをあらわに、ヒルデガルドちゃんが男を怒鳴りつけた。
 僕はそんな彼女をなだめる。

「ヒルデガルドちゃん、落ち着いて。『話さなかった』じゃなくて、『話すことができなかった』って言ったんだよ。ヒルデガルドちゃんなら、その違い、わかるよね」
「……わかってるわ。でも」
「それに、秘密って打ち明けてもらえない方も辛いけど、打ち明けることができないのも辛いと思うんだ。僕だって、ヒルデガルドちゃんやみんなには言っていない秘密があるし……」
「クルトに秘密? あぁ……確かにいろいろとありそうね」

 一瞬驚いた様子を見せるヒルデガルドちゃんだが、すぐに納得したように頷く。

「え!? 僕ってそんなに秘密があるように見えてるの!?」
「クルトが秘密にしているっていうか、クルトの秘密っていうか」

 なぜかヒルデガルドちゃんは明後日あさっての方を向いてつぶやいた。


 どういうことか気になるけど、僕の中でそれ以上考えない方がいいという意識が働く。

「探しましたわよ、クル。何をのんきにデートしているのですか」

 そんな時、僕がかつてお世話になっていたパーティ「ほのお竜牙りゅうが」の一員だったマーレフィスさんが、そう怒りながら近付いてきた。
 デートではないけど、しかしのんきにしていたのは確かだったと反省する。

「ごめんなさい。なにかあったんですか?」
「ええ。これから防衛に関する作戦会議を行うのです。クルとそこの彼女は、本来は過去に精神を飛ばすために会議には不参加の予定でしたが、過去に行けなかったのなら連れてくるようにとミミコ様からの命令ですわ」
「ミミコさんから? わかりました、すぐに行きます。あ、でもアクリが」
「クルト、アクリならあのドリアードの分体と一緒なんでしょ? なら心配ないわ」

 確かに、ヒルデガルドちゃんの言う通りか。むしろ僕とふたりきりでいるより安心だ。
 それに、アクリが起きていたとしても会議の場には連れて行くことができない。

「わかりました。では、行きましょう」

 僕は頷き、マーレフィスさんについていった。


「それで、クルトちゃんはいったいなにをしているの?」
「え? お茶くみですけど」

 僕はミミコさんにそう答えて、紅茶をカップに注ぎ、円卓を囲んで座っている皆さんの前に並べていく。
 会議に僕が呼ばれたのは、お茶くみが必要だったからだと思って、真っ先に厨房ちゅうぼうに向かったんだけど……違ったのかな?

「クルトちゃん、お茶を配り終わったら空いてる席に座って」

 ミミコさんがそう言って、椅子いすに座るように僕を促す。
 そう言われても……と、僕はここにいる会議の参加者を見渡した。
 まず目に入ったのはミミコさん。第三席宮廷魔術師である彼女が、ホムーロス王国の中で一番立場が上の人間であり、僕たち使節団の代表でもある。
 そして、その隣に座っているのが、アルレイド様。ヴァルハで騎士隊をまとめる隊長。隣には現在リクルトの守備隊を纏めているジェネリク様が座っている。この二人が騎士隊の代表だ。
 そして、その横には工房主アトリエマイスターオフィリア様もいる。
 本当なら、僕たちの主人である工房主アトリエマイスターリクト様もこの場にいなくてはいけないんだけど、別の大切な役目があるからという理由でここにはいない。
 剣聖の里からは、族長のルゴルさんと、その息子で族長補佐のゴランドスさんがいる。ゴランドスさんは僕より少し年上で、僕を除いたらこの場で一番若い、赤髪の男性だ。
 そして最後に、ヒルデガルドちゃん。
 一緒にこの里にやってきた、同じ工房に所属しているパーティ『サクラ』のみんなや、他の騎士様、マーレフィスさんもここにはいない。
 そんな場所に僕が座ってもいいのだろうか?
 そう思ったが、ルゴルさんが促してきた。

「どうぞクルト様。あなたはハスト村の代表なのですから」
「……わかりました」

 僕は頷き、空いている席――ゴランドスさんとヒルデガルドちゃんの間に座った。

「じゃあ、せっかくだしクルトちゃんがれてくれた紅茶をいただきましょうか」
悠長ゆうちょうなことを言っている場合ですか、ミミコ様!」

 アルレイド様が立ち上がり、声を荒らげる。

「悠長でいいでしょ。まだこの里が攻められるまで三週間もあるんだし」
「たった三週間です!」
「落ち着いてください、隊長。クルトやヒルデガルド様に事情の説明もしてないんですから。ミミコ様の仰る通り、紅茶を飲みながら説明しましょう」

 ジェネリク様はいつものように砕けた口調でアルレイド様をたしなめるけど、しかしどこか緊張感を漂わせている。どうやら、僕がいない間、会議は一触即発の雰囲気だったらしい。
 アルレイド様はジェネリク様を睨みつけながらも黙って座り、紅茶を一気に半分近くあおった。
 やっぱり熱かったのだろうか? 一度目を見開いた――かと思うと、今度はゆっくりと飲んでくれた。
 他のみんなも紅茶を飲んで最初は驚いた表情を浮かべたが、その後はゆっくりと味わっている。
 ミミコさんが微笑ほほえみながら僕に向かって言う。

「美味しいわ、クルトちゃん。それに心が落ち着く」
「はい。リラックス効果のある茶葉を選びました。皆さん、会議で疲れていると思いまして」

 それにしても、さすがミミコさんだな。
 さっきまでの殺伐さつばつとした雰囲気が一気に消えた。
 あの場でミミコさんが紅茶を勧めていなかったら、冷静に話し合いなんてできなかっただろう。

「それで、何をめていたの?」

 ヒルデガルドちゃんが尋ねると、アルレイド様が答える。

「防衛についてだ。人数にも差がある以上、籠城戦ろうじょうせんではなく、こちらの谷に戦力を集中させたいと思っている」
「反対です。我々の役目はこの地を守ることにあります。敵がどこからやってくるかわからない以上、この地をおろそかにすることはできません」

 ルゴルさんは籠城戦を望んでいるのか。

「籠城戦は、友軍の到着が望める場合に行うべき戦法です。孤軍で行う場合は不利になります」

 しかしアルレイド様は静かにそう言って首を横に振っていた。
 この戦争で、剣聖の里の友軍と言えるのは、ヒルデガルドちゃんの部下たちだ。
 ただ、魔神王の軍勢は剣聖の里への侵攻と同時に、この剣聖の里の西、ヒルデガルドちゃんが統治しているラプセラドという城塞都市じょうさいとしにも侵攻を行っているらしい。
 そちらの防備をおこたれば、ヒルデガルドちゃんの領地が危機的状況に陥るだけでなく、剣聖の里も北と西、双方から攻め込まれることになってしまう。そのため、僕の知り合いでもあるソルフレアさんが率いる隊をはじめ、多くの部隊を配置しており、剣聖の里に回せる部隊には限りがある。
 魔族が支配する魔領には四大派閥というものがあって、老帝ことヒルデガルドちゃん、今回侵攻してきた魔神王、そして獣王と魔竜皇という四人がトップに立っている。しかし獣王と魔竜皇は協定により援軍を出せないため、ヒルデガルドちゃんの部下以外の援軍は期待できないそうだ。
 さらに、アルレイド様は続ける。

「そもそも、この里の壁は籠城戦には向いてない!」

 この里の周囲にあるのは、目には見えない壁。
 なんで透明なのか理由はわからないけれど、僕が子どもの頃からすでにあったものだ。
 壁の内側の様子が丸見えというのは、相手のきょをつくことはできても、それ以上に人員やバリスタなどの兵器の配置が丸見えで戦いにくいらしい。

「敵の中には空を飛ぶ魔物を従えている魔族もいるかもしれない。その場合、果たして谷での迎撃が有効かどうか? それに、敵の真の狙いがまだわからないのだろう?」

 オフィリア様が目を細めて言った。

「オフィリアちゃんの言う通り。魔神王の狙いがホムーロス王国かどうかもわからないんだし」
「どういうことですか? 魔神王の目的は転移石の奪取、その後にホムーロス王国を強襲する計画なのでしょう?」

 アルレイド様が尋ねた。
 魔神王の配下はタイコーン辺境伯と接触し、魔領に近い西側の守りの弱体化を図っていたらしい。

「ええ。そのために私の身柄があの辺境伯に引き渡されたんだもの」

 そうそう、その配下の人がヒルデガルドちゃんを捕まえて、タイコーン辺境伯に引き渡してたんだよね。
 本当に、タイコーン辺境伯の小さい女の子好きには困ったものだと思う。主君である辺境伯のことを悪く言うつもりはないけれど、まさか成長しないヒルデガルドちゃんを自分のものにするために、ホムーロス王国を危険にさらすなんて。
 今は娘であるファミルさんのお陰で、ちゃんと子供の成長を見守れるようになったけれど。
 少し話が逸れてしまったけど、魔神王がこれまでホムーロス王国を手に入れるために陰で画策していたというのなら、今回もその計画の一環だと考えるべきだろう。


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