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1巻
1-2
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町に戻ってきた僕は、重い足取りでハロワに向かった。
仕事の報告をしないといけないからだ。
「やはりダメでしたか、仕方ありませんね」
三日目でリストラになって戻ってきた僕だったけれど、ハロワのお姉さんはどこかで予想していたかのように優しく迎えてくれた。
どうやら、僕がクビになる可能性を考えていたらしい。
少し癪だけど、でも事実だから仕方ない。
「しかし、前にも言いましたが、他の才能の適性検査をできる検査技師が来るまで、あと数日かかりますよ」
「そうですよね……」
工事現場の報酬は思っていたよりも割がよく、一カ月働かずに生活できるくらい貰えた――少し貰いすぎな気がするけれど。
そのため、数日くらいならこの町にいることも可能なのだが、働かないとどうも落ち着かない。
「何か僕にできる仕事はありませんか?」
「そうですね……短期でできる仕事となりますと限られてきますが――」
お姉さんが資料を捲って考え込む様子を見せた――その時だった。
「なんでダメなんだよっ!」
そんな大きな声が、求人募集の受付カウンターから聞こえてきた。
「ですから、そのような募集では人は集まらないんですよ」
「やってみないとわからないでしょ!」
乱暴な口調だったけれど、それは女性の声だった。
「クルトさん、少々お待ちください」
お姉さんは僕にそう言うと、声のした方へと向かった。
目で追うと、男性職員と、僕より少し年上――十七歳くらいの可愛い白髪の若い女性が何か揉めていた。
「どうしたんですか?」
「あ、キルシェルさん。実はこの方が鉱夫の募集をしたいと仰っているんですけど、報酬が前払いなしの成功報酬制というんです。しかも鉱山として全く実績のない山でして」
「それは……たしかに難しいですね。お客様、そういう案件でしたら、出資者を募って鉱山開発をなさることをお勧めいたしますが」
さっきのお姉さん、キルシェルさんがそう提案するが、白髪の女性は首を振る。
「そんな時間がないから言ってるんだよ! 一週間以内に税金を払わなかったら、私が所有する鉱山が国に取り上げられちまうんだ」
なるほど、大体の状況はわかってきた。
白髪の女性は山を持っていて、そこの鉱山の開発をしたい。ただし、山の所有権を維持するにはお金がかかるから、鉱山から鉱石を採ってまずは税金分のお金を稼ぎたい、それも急ぎで。ってことか。
それなら――
「あの、僕でもその仕事を受けることはできますか?」
「「「え?」」」
「村にいた頃は鉱山で採掘の手伝いをしたことがありますから……ええと、役に立てるかはわかりませんが」
僕は頬を掻きながら提案した。
それに、一週間以内にお金を稼がないといけないっていうことなら期日もそれくらいだろうし、受けてもいいかな?
って思ったんだけど。
「クルトさん、本当によろしいのですか? 正直、報酬は期待できませんよ」
「大丈夫です」
「ちょっと待って! この頼りなさそうな子じゃなくて、もっと屈強な――ドワーフとか雇いたいんだけど!」
キルシェルさんに確認されて大丈夫と答えたのだが、白髪のお姉さんがストレートにそう言ってきた。
その気持ちはわかるけど、キルシェルさんが首を横に振る。
「ユーリシアさん、残念ながらこの条件では募集をかけることもできません。採掘の適性が高いドワーフを一週間雇おうと思えば、最低でも銀貨十枚、前金としてご用意いただけませんと」
「そんな金…………まぁいい。えっと、クルトだっけ? 採掘の経験はあるんだよね?」
「うん、手伝い程度だけど」
「はぁ……今はゴブリンの手でも借りたいし……ついてきて」
白髪の彼女――ユーリシアさんはそう言うと、僕の手を掴んだ。
「わ、わかりました! お姉さん、ありがとうございました!」
僕は引っ張られながら、キルシェルさんにそう言って頭を下げた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お姉さん、ありがとうございました!」
そう言って去っていったクルトくんを見送ったあと、私、キルシェルは呟いた。
「クルトくんもお人好しね」
いい子にはいい生活をしてほしい。
もしも彼が他の適性検査を受けて何の才能もないとわかった時、何かいい仕事はないかと考えてみる。
(あんなに可愛い男の子なら、歓楽街の仕事に需要はあると思うけど、流石にそれはね……)
自分の愚考を苦笑し、真面目に考えようとした。
「キルシェルさん、振り込み書が来ています」
「はい、手続きをしておきます」
そう思ったところで声を掛けられ、とりあえず通常業務を終わらせようと、さっきユーリシアさんと揉めていた係員から資料を受け取って――目を見開いた。
「金貨二百枚っ!?」
見たこともない大金の振り込みに、いったい誰から誰への振り込みなのか、その名を見た。
そして、私はさらに驚くことになった。
「クルトくんに!? 城壁補修工事報酬!? え? なんで? あの子一体何をしたの!?」
すぐにクルトくんに話を聞こうと、私はハロハロワークステーションの扉を開けて外に出たが、すでに彼の姿はそこになかった。
はぁ、結局わかるのは戻ってくる一週間後か。
でも、クルトくんの筋力で鉱夫の仕事が務まるのかな。
そう思って職場に戻ると、土嚢が部屋の真ん中に置かれていた。
「あれ? 先輩、これはどうするんですか?」
私は通りかかった先輩に尋ねた。
「あぁ、これね、返品するんだよ」
「返品? 大雨対策の土嚢なら必要ですよね」
そう言うと、先輩は首を横に振る。
「これは土嚢じゃないよ。とある工房主が開発した、魔力によって重さが変わるっていう土が入ってるんだ。今までは調べることが難しかった魔力の体内含有量が測定できるってことでうちで取り扱ったんだけど、宮廷魔術師様レベル以上の魔力を流し込まないと変化しないもんでね……結局返品することにしたのさ」
「へ……へぇ、そうなんですか。ちなみに、どのくらい重くなるんですか?」
「そうだね、理論上は数トン単位まで重くなるそうだけど、記録では倍の二十キロが最大だよ」
先輩は笑って、私にこの土を外に出しておくように言った。
実際に運んでみると足が痛くなってくるけれど、足が震えるほどじゃない。
(クルトくん――ううん、まさかね)
私はそう思って外に袋を出した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
僕、クルトとユーリシアさんは、町で水や食料、中古のツルハシなどを買って目的の山へと向かった。
彼女が所有する山は、僕たちがいたサマエラ市と領主町の中間にあり、サマエラ市からは歩いて三時間かかった。
そのため、山に着いた時にはすでに太陽が沈みかかっていた。
「こんな大きな山を持っているなんて、ユーリシアさんはお金持ちなんですか?」
「話聞いてなかったの? 税金が払えないから困ってるって言ったでしょ?」
ユーリシアさんはどこか呆れたように言った。
「この山にそこまで価値はないよ。一応、町と町との間にあるから街道を作る計画もあったんだけど、山の起伏が激しくて頓挫して、そこを薬師だったお祖母ちゃんが安値で買い取ったそうだよ。この山で採れる薬草がいいポーションの材料になるってことで、山ごとね。で、そのお祖母ちゃんが死んじゃって譲り受けたんだけど、私一人じゃ山を維持するお金もなくて困ってるのさ」
「そうなんですか……大丈夫です! 頑張って鉱石を掘ればきっとお金になりますよ! ところで、この山ではどんな鉱石が採れるんですか?」
「掘ってみないとわかんないよ、そんなの」
僕の質問に、あっけらかんとユーリシアさんが答える。
「え?」
「大丈夫! 鉱石の見分け方は教わったから――今のところ小さな鉄鉱石しか見つかってないけど、私の勘が正しければきっとレアな鉱石が見つかるって」
「そう……ですか。それは頑張らないといけませんね」
これはちょっと大変そうだなと僕は思った。
そんな会話をしながら、僕たちは山を登っていく。
木々が生い茂った山は腐葉土が敷き詰められていて、大きな川とかそういうものが見つからない。どこか土砂崩れでも起きて地層がむき出しになっている場所があればいいのだけれど、それがなければ掘ってみないとどんな鉱石があるのか調べにくい。
そして歩くことしばらく、少し開けた場所に出た。
「今日はここで一泊だね。仕事は明日から頼むよ」
「え? 待ってください、ここって」
そこには、布製のテントが張られているだけだった。
慌てる僕に、ユーリシアさんはたき火をおこしながら首をかしげて言う。
「狭いけど、二人で寝るには十分でしょ?」
たしかに広さでいえば、建築現場で働かせてもらっていた時に提供された敷布団が二枚敷けるくらいだけど。でも、そういう問題じゃないよ。
「もしかして、二人で同じテントで寝るんですかっ!?」
「……もしかして、物凄い寝相が悪いとか?」
「寝相が悪いと言われたことはありません」
「なら別にいいよ! 安心して、私も寝相はいい方だから」
ユーリシアさんはそう言って、たき火の準備を続けた。
「そうじゃなくて、ユーリシアさんのような可愛らしい女性と狭いテントで寝るなんて」
「なっ――」
僕の言葉にユーリシアさんが驚きの声を上げた。
「可愛いって、私が? 冗談でしょ?」
「冗談じゃないです。本当に可愛らしいと思ってますよ」
同じパーティだったマーレフィスさんやバンダナさんも美人だったけれど、ユーリシアさんは二人に負けていない、ううん、二人よりも美人だと僕は思った。
もしかして、ユーリシアさんは自分の可愛さに気付いていないんだろうか?
そういえば、自分の正しい評価というものは自分ではわからないものだって聞いたことがある。
それなら、しっかり伝えてあげるのが周りの人間の責務だ。
「本当ですって。僕、世界中を旅してきましたけど、ユーリシアさんみたいな美人さんは王都でも見たことがないですよ」
「あわわ……やめろ、それ以上言うなっ!」
ユーリシアさんは手をバタバタとさせて背負っていた槍を僕に向けた。
「私は十歳の頃から冒険者として働いてきたんだ……こんな私が可愛いわけないだろっ! 冗談は休み休み言えっ!」
「……ごめんなさい――えっと、ご飯を作りますね」
カバンの中にお米があるから、ご飯を炊こうかな。
「ああ、食べ物なら用意してるから。茹でた芋と塩と水だけどね」
そう言ってユーリシアさんは、準備を始めようとした僕に芋を渡してくれた。
町で茹でてきたからだろう、すっかり冷めている。
「これ、ユーリシアさんが作ってくれたんですか?」
「そうだけど、こんなの作ったうちに入らないだろ?」
「ううん、僕、誰かが作ってくれた料理を食べるのは久しぶりなので、嬉しいです」
前にフェンリルを倒した時に村長さんが用意してくれた料理も、結局食べる前に気を失っちゃったから食べられなかったんだよね。
僕はたき火にあたる場所に座ってから、芋に塩をふって食べる。
芋は冷めていて、生茹でで少し硬かったけれど、でも――
「美味しいです」
僕は本心からそう言った。
「それはよかったよ。まぁ、傭兵時代いつも食べていた芋だしね。コツは芋を茹ですぎないことさ。この芋は煮崩れしやすいからね」
どうやら、生茹でだったのはわざとらしい。
それから芋を合計三個ほど食べたところで、眠気が押し寄せてきた。
僕はどうにかそれをユーリシアさんに悟らせまいと首を振ったけれど、それが逆効果だった。
「眠たくなってきたの? まぁ、だいぶ歩いてきたからね。先に寝ていいよ。この辺は魔物もほとんどいないし、街道から遠いから盗賊も住みつかない、安心して寝ていいよ」
「わ……わかりました」
僕はユーリシアさんの優しさに甘えることにして、テントの中に入る。
そうだ、寝よう!
ユーリシアさんより先に寝ればいいんだ。僕が完全に熟睡しちゃえば、ユーリシアさんだってきっと安心して眠れるはずだ。
僕はテントの端で横になり、ふたつあったうちの毛布をひとつ借りて被って、目を閉じた。
寝よう、寝よう、寝よう。
そう思えば思うほど、さっきまでの眠気が嘘のように消えていく。
「もう寝たんだね」
毛布を被ってから十分ほどで、テントの入口からそんな声が聞こえてくるとともに、人が入ってくる気配があった。
そして、僕の横にユーリシアさんが寝転んだのを感じた。
またしばらくして、寝息が聞こえてきた。
……ユーリシアさん、もう寝たのかな?
そう思ってゆっくり目を開ける。
テントの前のたき火は消えていたけれど、僕は夜目が利くので、しっかりとそれを見てしまった。
パンツしか穿いていないユーリシアさんを。
「――――っ!!」
思わず声が出そうになり、慌てて口を手で塞いで反対側を向く。
危ない、もう少しでユーリシアさんを起こすところだった。
女性の中には寝る時は裸になる人がいるって聞いたことがあったけれど、異性と一緒でも裸で寝るなんて……ユーリシアさんって意外と着やせする――
ダメだ、寝ないと、寝ないと、寝ないと……って寝れるわけがないじゃないっ!
僕は物音を立てないようにテントの外へと出た。
「はぁ……ユーリシアさん、無防備すぎるよ――僕だって男なのに」
そう言ってみたけれど、やっぱり男として思われていないんだろうなぁ。
バンダナさんもたまにああいうふうにあけっぴろげなところはあったけれど、色気を見せるのは基本的に僕をからかう時だった。
からかわれているとわかっていたから恥ずかしくても我慢できたけど、でも無垢にあんなことをされたら、僕だっていたたまれないよ。
「……ユーリシアさんの服か」
テントの中は狭かったからか、服はテントの外の荷物の上に置かれていた。
かなりボロボロになっていて、ところどころ穴が開いている。
年季の入った服のようだけれども、このまま採掘作業をしたら絶対に穴が拡がって使い物にならなくなっちゃいそうだ。
「持ってきていてよかった」
僕はそう言って、鞄の中から裁縫セットを取り出した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
灰色の髪の少年――クルトがテントから出ていくのが気配でわかり、私、ユーリシアは小さく息をついた。
……あの子に悪いことしたかなぁ。
ただでさえ、一週間で金貨十枚稼ぐなんていう夢物語に付き合わせているのに。
金貨一枚というのは、衛兵の給料四カ月分相当で、それを十枚……まず不可能だ。つまりこの仕事は、本来悪あがきでしかない。
その上テントから追い出すようなことになるなんて、流石に申し訳ない気持ちにもなる。
しかし、これは男女が一緒に寝る通過儀礼のようなものだ。
男と一緒に寝る時は、最初に釘を刺しておく必要がある。
冒険者時代に数少ない女友達から教わったその言葉を実践するため、初日は下着だけで横になった。
クルトがまだ寝ていなかったのは流石に気付いていたからね。
これで、あの子――クルトの性格を見抜くつもりだった。
もしもクルトが私なんかを見て、それでも欲情して襲い掛かってくるのなら、あそこを蹴りあげて町に追い返すつもりでいた。
仮に裸をじっと見る程度ならギリギリ及第点、突然目を開けて、説教をする程度で済ませる予定だった。
だけど、クルトは私の予想通り、裸を見ると慌てて目を逸らし、その後はこちらを見ようとしなかった。
(いい子だね。何より可愛い――じゃない、からかいがいのある子だ)
見せてあげたのも、ご褒美ということで黙っておいてあげよう――本当は少し、いや、かなり恥ずかしいけど。
そう思っていたところで、クルトが立ち上がった。
私は薄目を開けて身構えるけれど、その心配をよそにクルトはテントの外に出ていく。
(トイレ? ううん、恥ずかしくて出て行ったのか)
私はそう納得してから眠るのだった。
翌朝、目を覚ましてテントの外に出た私は、地面の上に座ったまま眠るクルトを見つけて、改めて申し訳ないことをしたと思った。そして服を着て食事の準備をしようとしたところで――それに気付いた。
昨日まで着ていたはずのボロボロの服がなくなっていて、代わりに、私が着ていた服と同じサイズ、同じ柄、同じ形の新品の服が置かれていたのだ。
不思議に思いながら服を広げた私は、それが新品の服ではなく、穴が開いていたはずの元の服だと理解した。
凝視しなければわからないくらいの繕いの跡で、そこが他の場所と違って泥がついていなかったので、ようやく気付けた。
「一晩でこれをやってくれたの? 月明かりだけで?」
私の質問に、クルトは寝息で答えた。
「……この子、絶対働く場所間違えているでしょ」
こんな鉱山の仕事じゃなくて、町で服屋でもやればいいのに、思わずそう呟いてしまうほどの腕だった。
しかし、私は後にその考えが間違っていたことに気付く。
クルトにとって、鉱山の採掘作業もまた天職だったのだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「クルト、準備はいいね。今週中に税金分、金貨十枚稼がないといけないからね!」
「はい! 任せてください」
ユーリシアさんの確認に、僕は頷いて答えた。
その返事を聞き、ユーリシアさんはツルハシに白い粉をかける。
白い粉の正体はヒカリゴケ――太陽の光を貯め、夜になると光り輝く性質を持つ粉だ。苔という名前ではあるけれど、正確にはキノコの胞子である。
これをツルハシや帽子につけることで、松明代わりに使用する。
店なら銅貨十枚くらいで買えるものだけど、不純物が多く混ざっているってことは、おそらくユーリシアさんが自分で集めて作ったんだろう。
「それで、掘るポイントとか決めてるんですか?」
「全く決めてないよ」
「え? 掘りかけている場所とかそういうのも?」
「全然決めてないよ。今日から開始」
え? 本当に?
「一週間しかないんですよね?」
「そうだよ、一日百メートルくらい掘れば、一週間あれば七百メートルくらい掘れるでしょ」
「……やみくもに掘っても鉱石は出ませんよ?」
「え? そうなの?」
「そうですよ……」
これは困ったことになったなぁ。
本来、坑道を掘る時は、調査をしてから行うことになる。
せめて、掘りかけている坑道があれば、手がかりが見つかると思ったんだけど。
それに、落ちている小石を見ると、このあたりは大昔は火山だったみたいだし、下手に掘って毒ガスが出てきたら危ない。
「とりあえずお金を稼ぐ手段はあります……ついてきてください」
僕はそう言って、ユーリシアさんと一緒に山の奥へと入っていく。
「ねぇ、本当にどこに行くの?」
十分くらい歩いたところで、ユーリシアさんが尋ねてきた。
「すみません、僕の師匠なら目的の場所がすぐに見つかるんでしょうけど、僕だとやっぱり慣れてないから」
「だから、目的の場所ってどこ?」
「もう少しだと思います」
そして、しばらく歩いたところで、僕は目的の場所を見つけた。
そこには大きな岩が転がっていた。だいたい、僕の頭くらいだろうか。
僕は岩を拳で叩いて音を聞きながら、中を調べていく。
仕事の報告をしないといけないからだ。
「やはりダメでしたか、仕方ありませんね」
三日目でリストラになって戻ってきた僕だったけれど、ハロワのお姉さんはどこかで予想していたかのように優しく迎えてくれた。
どうやら、僕がクビになる可能性を考えていたらしい。
少し癪だけど、でも事実だから仕方ない。
「しかし、前にも言いましたが、他の才能の適性検査をできる検査技師が来るまで、あと数日かかりますよ」
「そうですよね……」
工事現場の報酬は思っていたよりも割がよく、一カ月働かずに生活できるくらい貰えた――少し貰いすぎな気がするけれど。
そのため、数日くらいならこの町にいることも可能なのだが、働かないとどうも落ち着かない。
「何か僕にできる仕事はありませんか?」
「そうですね……短期でできる仕事となりますと限られてきますが――」
お姉さんが資料を捲って考え込む様子を見せた――その時だった。
「なんでダメなんだよっ!」
そんな大きな声が、求人募集の受付カウンターから聞こえてきた。
「ですから、そのような募集では人は集まらないんですよ」
「やってみないとわからないでしょ!」
乱暴な口調だったけれど、それは女性の声だった。
「クルトさん、少々お待ちください」
お姉さんは僕にそう言うと、声のした方へと向かった。
目で追うと、男性職員と、僕より少し年上――十七歳くらいの可愛い白髪の若い女性が何か揉めていた。
「どうしたんですか?」
「あ、キルシェルさん。実はこの方が鉱夫の募集をしたいと仰っているんですけど、報酬が前払いなしの成功報酬制というんです。しかも鉱山として全く実績のない山でして」
「それは……たしかに難しいですね。お客様、そういう案件でしたら、出資者を募って鉱山開発をなさることをお勧めいたしますが」
さっきのお姉さん、キルシェルさんがそう提案するが、白髪の女性は首を振る。
「そんな時間がないから言ってるんだよ! 一週間以内に税金を払わなかったら、私が所有する鉱山が国に取り上げられちまうんだ」
なるほど、大体の状況はわかってきた。
白髪の女性は山を持っていて、そこの鉱山の開発をしたい。ただし、山の所有権を維持するにはお金がかかるから、鉱山から鉱石を採ってまずは税金分のお金を稼ぎたい、それも急ぎで。ってことか。
それなら――
「あの、僕でもその仕事を受けることはできますか?」
「「「え?」」」
「村にいた頃は鉱山で採掘の手伝いをしたことがありますから……ええと、役に立てるかはわかりませんが」
僕は頬を掻きながら提案した。
それに、一週間以内にお金を稼がないといけないっていうことなら期日もそれくらいだろうし、受けてもいいかな?
って思ったんだけど。
「クルトさん、本当によろしいのですか? 正直、報酬は期待できませんよ」
「大丈夫です」
「ちょっと待って! この頼りなさそうな子じゃなくて、もっと屈強な――ドワーフとか雇いたいんだけど!」
キルシェルさんに確認されて大丈夫と答えたのだが、白髪のお姉さんがストレートにそう言ってきた。
その気持ちはわかるけど、キルシェルさんが首を横に振る。
「ユーリシアさん、残念ながらこの条件では募集をかけることもできません。採掘の適性が高いドワーフを一週間雇おうと思えば、最低でも銀貨十枚、前金としてご用意いただけませんと」
「そんな金…………まぁいい。えっと、クルトだっけ? 採掘の経験はあるんだよね?」
「うん、手伝い程度だけど」
「はぁ……今はゴブリンの手でも借りたいし……ついてきて」
白髪の彼女――ユーリシアさんはそう言うと、僕の手を掴んだ。
「わ、わかりました! お姉さん、ありがとうございました!」
僕は引っ張られながら、キルシェルさんにそう言って頭を下げた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「お姉さん、ありがとうございました!」
そう言って去っていったクルトくんを見送ったあと、私、キルシェルは呟いた。
「クルトくんもお人好しね」
いい子にはいい生活をしてほしい。
もしも彼が他の適性検査を受けて何の才能もないとわかった時、何かいい仕事はないかと考えてみる。
(あんなに可愛い男の子なら、歓楽街の仕事に需要はあると思うけど、流石にそれはね……)
自分の愚考を苦笑し、真面目に考えようとした。
「キルシェルさん、振り込み書が来ています」
「はい、手続きをしておきます」
そう思ったところで声を掛けられ、とりあえず通常業務を終わらせようと、さっきユーリシアさんと揉めていた係員から資料を受け取って――目を見開いた。
「金貨二百枚っ!?」
見たこともない大金の振り込みに、いったい誰から誰への振り込みなのか、その名を見た。
そして、私はさらに驚くことになった。
「クルトくんに!? 城壁補修工事報酬!? え? なんで? あの子一体何をしたの!?」
すぐにクルトくんに話を聞こうと、私はハロハロワークステーションの扉を開けて外に出たが、すでに彼の姿はそこになかった。
はぁ、結局わかるのは戻ってくる一週間後か。
でも、クルトくんの筋力で鉱夫の仕事が務まるのかな。
そう思って職場に戻ると、土嚢が部屋の真ん中に置かれていた。
「あれ? 先輩、これはどうするんですか?」
私は通りかかった先輩に尋ねた。
「あぁ、これね、返品するんだよ」
「返品? 大雨対策の土嚢なら必要ですよね」
そう言うと、先輩は首を横に振る。
「これは土嚢じゃないよ。とある工房主が開発した、魔力によって重さが変わるっていう土が入ってるんだ。今までは調べることが難しかった魔力の体内含有量が測定できるってことでうちで取り扱ったんだけど、宮廷魔術師様レベル以上の魔力を流し込まないと変化しないもんでね……結局返品することにしたのさ」
「へ……へぇ、そうなんですか。ちなみに、どのくらい重くなるんですか?」
「そうだね、理論上は数トン単位まで重くなるそうだけど、記録では倍の二十キロが最大だよ」
先輩は笑って、私にこの土を外に出しておくように言った。
実際に運んでみると足が痛くなってくるけれど、足が震えるほどじゃない。
(クルトくん――ううん、まさかね)
私はそう思って外に袋を出した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
僕、クルトとユーリシアさんは、町で水や食料、中古のツルハシなどを買って目的の山へと向かった。
彼女が所有する山は、僕たちがいたサマエラ市と領主町の中間にあり、サマエラ市からは歩いて三時間かかった。
そのため、山に着いた時にはすでに太陽が沈みかかっていた。
「こんな大きな山を持っているなんて、ユーリシアさんはお金持ちなんですか?」
「話聞いてなかったの? 税金が払えないから困ってるって言ったでしょ?」
ユーリシアさんはどこか呆れたように言った。
「この山にそこまで価値はないよ。一応、町と町との間にあるから街道を作る計画もあったんだけど、山の起伏が激しくて頓挫して、そこを薬師だったお祖母ちゃんが安値で買い取ったそうだよ。この山で採れる薬草がいいポーションの材料になるってことで、山ごとね。で、そのお祖母ちゃんが死んじゃって譲り受けたんだけど、私一人じゃ山を維持するお金もなくて困ってるのさ」
「そうなんですか……大丈夫です! 頑張って鉱石を掘ればきっとお金になりますよ! ところで、この山ではどんな鉱石が採れるんですか?」
「掘ってみないとわかんないよ、そんなの」
僕の質問に、あっけらかんとユーリシアさんが答える。
「え?」
「大丈夫! 鉱石の見分け方は教わったから――今のところ小さな鉄鉱石しか見つかってないけど、私の勘が正しければきっとレアな鉱石が見つかるって」
「そう……ですか。それは頑張らないといけませんね」
これはちょっと大変そうだなと僕は思った。
そんな会話をしながら、僕たちは山を登っていく。
木々が生い茂った山は腐葉土が敷き詰められていて、大きな川とかそういうものが見つからない。どこか土砂崩れでも起きて地層がむき出しになっている場所があればいいのだけれど、それがなければ掘ってみないとどんな鉱石があるのか調べにくい。
そして歩くことしばらく、少し開けた場所に出た。
「今日はここで一泊だね。仕事は明日から頼むよ」
「え? 待ってください、ここって」
そこには、布製のテントが張られているだけだった。
慌てる僕に、ユーリシアさんはたき火をおこしながら首をかしげて言う。
「狭いけど、二人で寝るには十分でしょ?」
たしかに広さでいえば、建築現場で働かせてもらっていた時に提供された敷布団が二枚敷けるくらいだけど。でも、そういう問題じゃないよ。
「もしかして、二人で同じテントで寝るんですかっ!?」
「……もしかして、物凄い寝相が悪いとか?」
「寝相が悪いと言われたことはありません」
「なら別にいいよ! 安心して、私も寝相はいい方だから」
ユーリシアさんはそう言って、たき火の準備を続けた。
「そうじゃなくて、ユーリシアさんのような可愛らしい女性と狭いテントで寝るなんて」
「なっ――」
僕の言葉にユーリシアさんが驚きの声を上げた。
「可愛いって、私が? 冗談でしょ?」
「冗談じゃないです。本当に可愛らしいと思ってますよ」
同じパーティだったマーレフィスさんやバンダナさんも美人だったけれど、ユーリシアさんは二人に負けていない、ううん、二人よりも美人だと僕は思った。
もしかして、ユーリシアさんは自分の可愛さに気付いていないんだろうか?
そういえば、自分の正しい評価というものは自分ではわからないものだって聞いたことがある。
それなら、しっかり伝えてあげるのが周りの人間の責務だ。
「本当ですって。僕、世界中を旅してきましたけど、ユーリシアさんみたいな美人さんは王都でも見たことがないですよ」
「あわわ……やめろ、それ以上言うなっ!」
ユーリシアさんは手をバタバタとさせて背負っていた槍を僕に向けた。
「私は十歳の頃から冒険者として働いてきたんだ……こんな私が可愛いわけないだろっ! 冗談は休み休み言えっ!」
「……ごめんなさい――えっと、ご飯を作りますね」
カバンの中にお米があるから、ご飯を炊こうかな。
「ああ、食べ物なら用意してるから。茹でた芋と塩と水だけどね」
そう言ってユーリシアさんは、準備を始めようとした僕に芋を渡してくれた。
町で茹でてきたからだろう、すっかり冷めている。
「これ、ユーリシアさんが作ってくれたんですか?」
「そうだけど、こんなの作ったうちに入らないだろ?」
「ううん、僕、誰かが作ってくれた料理を食べるのは久しぶりなので、嬉しいです」
前にフェンリルを倒した時に村長さんが用意してくれた料理も、結局食べる前に気を失っちゃったから食べられなかったんだよね。
僕はたき火にあたる場所に座ってから、芋に塩をふって食べる。
芋は冷めていて、生茹でで少し硬かったけれど、でも――
「美味しいです」
僕は本心からそう言った。
「それはよかったよ。まぁ、傭兵時代いつも食べていた芋だしね。コツは芋を茹ですぎないことさ。この芋は煮崩れしやすいからね」
どうやら、生茹でだったのはわざとらしい。
それから芋を合計三個ほど食べたところで、眠気が押し寄せてきた。
僕はどうにかそれをユーリシアさんに悟らせまいと首を振ったけれど、それが逆効果だった。
「眠たくなってきたの? まぁ、だいぶ歩いてきたからね。先に寝ていいよ。この辺は魔物もほとんどいないし、街道から遠いから盗賊も住みつかない、安心して寝ていいよ」
「わ……わかりました」
僕はユーリシアさんの優しさに甘えることにして、テントの中に入る。
そうだ、寝よう!
ユーリシアさんより先に寝ればいいんだ。僕が完全に熟睡しちゃえば、ユーリシアさんだってきっと安心して眠れるはずだ。
僕はテントの端で横になり、ふたつあったうちの毛布をひとつ借りて被って、目を閉じた。
寝よう、寝よう、寝よう。
そう思えば思うほど、さっきまでの眠気が嘘のように消えていく。
「もう寝たんだね」
毛布を被ってから十分ほどで、テントの入口からそんな声が聞こえてくるとともに、人が入ってくる気配があった。
そして、僕の横にユーリシアさんが寝転んだのを感じた。
またしばらくして、寝息が聞こえてきた。
……ユーリシアさん、もう寝たのかな?
そう思ってゆっくり目を開ける。
テントの前のたき火は消えていたけれど、僕は夜目が利くので、しっかりとそれを見てしまった。
パンツしか穿いていないユーリシアさんを。
「――――っ!!」
思わず声が出そうになり、慌てて口を手で塞いで反対側を向く。
危ない、もう少しでユーリシアさんを起こすところだった。
女性の中には寝る時は裸になる人がいるって聞いたことがあったけれど、異性と一緒でも裸で寝るなんて……ユーリシアさんって意外と着やせする――
ダメだ、寝ないと、寝ないと、寝ないと……って寝れるわけがないじゃないっ!
僕は物音を立てないようにテントの外へと出た。
「はぁ……ユーリシアさん、無防備すぎるよ――僕だって男なのに」
そう言ってみたけれど、やっぱり男として思われていないんだろうなぁ。
バンダナさんもたまにああいうふうにあけっぴろげなところはあったけれど、色気を見せるのは基本的に僕をからかう時だった。
からかわれているとわかっていたから恥ずかしくても我慢できたけど、でも無垢にあんなことをされたら、僕だっていたたまれないよ。
「……ユーリシアさんの服か」
テントの中は狭かったからか、服はテントの外の荷物の上に置かれていた。
かなりボロボロになっていて、ところどころ穴が開いている。
年季の入った服のようだけれども、このまま採掘作業をしたら絶対に穴が拡がって使い物にならなくなっちゃいそうだ。
「持ってきていてよかった」
僕はそう言って、鞄の中から裁縫セットを取り出した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
灰色の髪の少年――クルトがテントから出ていくのが気配でわかり、私、ユーリシアは小さく息をついた。
……あの子に悪いことしたかなぁ。
ただでさえ、一週間で金貨十枚稼ぐなんていう夢物語に付き合わせているのに。
金貨一枚というのは、衛兵の給料四カ月分相当で、それを十枚……まず不可能だ。つまりこの仕事は、本来悪あがきでしかない。
その上テントから追い出すようなことになるなんて、流石に申し訳ない気持ちにもなる。
しかし、これは男女が一緒に寝る通過儀礼のようなものだ。
男と一緒に寝る時は、最初に釘を刺しておく必要がある。
冒険者時代に数少ない女友達から教わったその言葉を実践するため、初日は下着だけで横になった。
クルトがまだ寝ていなかったのは流石に気付いていたからね。
これで、あの子――クルトの性格を見抜くつもりだった。
もしもクルトが私なんかを見て、それでも欲情して襲い掛かってくるのなら、あそこを蹴りあげて町に追い返すつもりでいた。
仮に裸をじっと見る程度ならギリギリ及第点、突然目を開けて、説教をする程度で済ませる予定だった。
だけど、クルトは私の予想通り、裸を見ると慌てて目を逸らし、その後はこちらを見ようとしなかった。
(いい子だね。何より可愛い――じゃない、からかいがいのある子だ)
見せてあげたのも、ご褒美ということで黙っておいてあげよう――本当は少し、いや、かなり恥ずかしいけど。
そう思っていたところで、クルトが立ち上がった。
私は薄目を開けて身構えるけれど、その心配をよそにクルトはテントの外に出ていく。
(トイレ? ううん、恥ずかしくて出て行ったのか)
私はそう納得してから眠るのだった。
翌朝、目を覚ましてテントの外に出た私は、地面の上に座ったまま眠るクルトを見つけて、改めて申し訳ないことをしたと思った。そして服を着て食事の準備をしようとしたところで――それに気付いた。
昨日まで着ていたはずのボロボロの服がなくなっていて、代わりに、私が着ていた服と同じサイズ、同じ柄、同じ形の新品の服が置かれていたのだ。
不思議に思いながら服を広げた私は、それが新品の服ではなく、穴が開いていたはずの元の服だと理解した。
凝視しなければわからないくらいの繕いの跡で、そこが他の場所と違って泥がついていなかったので、ようやく気付けた。
「一晩でこれをやってくれたの? 月明かりだけで?」
私の質問に、クルトは寝息で答えた。
「……この子、絶対働く場所間違えているでしょ」
こんな鉱山の仕事じゃなくて、町で服屋でもやればいいのに、思わずそう呟いてしまうほどの腕だった。
しかし、私は後にその考えが間違っていたことに気付く。
クルトにとって、鉱山の採掘作業もまた天職だったのだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「クルト、準備はいいね。今週中に税金分、金貨十枚稼がないといけないからね!」
「はい! 任せてください」
ユーリシアさんの確認に、僕は頷いて答えた。
その返事を聞き、ユーリシアさんはツルハシに白い粉をかける。
白い粉の正体はヒカリゴケ――太陽の光を貯め、夜になると光り輝く性質を持つ粉だ。苔という名前ではあるけれど、正確にはキノコの胞子である。
これをツルハシや帽子につけることで、松明代わりに使用する。
店なら銅貨十枚くらいで買えるものだけど、不純物が多く混ざっているってことは、おそらくユーリシアさんが自分で集めて作ったんだろう。
「それで、掘るポイントとか決めてるんですか?」
「全く決めてないよ」
「え? 掘りかけている場所とかそういうのも?」
「全然決めてないよ。今日から開始」
え? 本当に?
「一週間しかないんですよね?」
「そうだよ、一日百メートルくらい掘れば、一週間あれば七百メートルくらい掘れるでしょ」
「……やみくもに掘っても鉱石は出ませんよ?」
「え? そうなの?」
「そうですよ……」
これは困ったことになったなぁ。
本来、坑道を掘る時は、調査をしてから行うことになる。
せめて、掘りかけている坑道があれば、手がかりが見つかると思ったんだけど。
それに、落ちている小石を見ると、このあたりは大昔は火山だったみたいだし、下手に掘って毒ガスが出てきたら危ない。
「とりあえずお金を稼ぐ手段はあります……ついてきてください」
僕はそう言って、ユーリシアさんと一緒に山の奥へと入っていく。
「ねぇ、本当にどこに行くの?」
十分くらい歩いたところで、ユーリシアさんが尋ねてきた。
「すみません、僕の師匠なら目的の場所がすぐに見つかるんでしょうけど、僕だとやっぱり慣れてないから」
「だから、目的の場所ってどこ?」
「もう少しだと思います」
そして、しばらく歩いたところで、僕は目的の場所を見つけた。
そこには大きな岩が転がっていた。だいたい、僕の頭くらいだろうか。
僕は岩を拳で叩いて音を聞きながら、中を調べていく。
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