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『ふたり』
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『ふたり』
過去に自分が作成したレポートを開く
それは、主に日記のような役割で、
何か進展があったり
変化があった際にまとめたものだ。
※追記
どうも。
これは、理解するために
制作したレポートになります。
公的に作られたものでは無いので、
口語体が混じったりする部分は
あると思いますが、お許しください。
2月16日
今日は、私に新しい事件が任せられた。
私は、殺人、強盗、性犯罪、傷害、
放火といった「強行犯捜査」を担当とする
刑事課に属しているからだ。
つまりいつも通りのことではある。
何かイレギュラーがあるのだとすれば、
任せられた事件の概要が
不気味だったことだ。
犯人の自白によって
ほとんど解決はしているが、
色々な文書にまとめないといけない為に
犯人に取り調べを行うことを私は任された。
概要をサッとまとめるのであれば、
あるカメラマンの女性が行方不明になった。
関係者を辿ると、ある男性と懇意にしていると
判明した。
その人に会いに行くと、ビンゴ。
私が犯人だという旨の発言をしたので
任意同行してもらい、事情聴取をすると
どんどんと自白に近い事を話し始めた。
それで事件は解決だと思われたが、
一つ問題があった。
犯人はいたって真面目に
発言しているそうだが、
我々では理解できない発言が
いくつかあるそうで、
裁判において心神喪失や
責任能力の有無などで
罪にならない可能性が浮上してきたので
犯人自身も我々もしっかりと
裁かれることを望んでいたので
理解できるように
事細かに話を聞く必要が出てきたことから
比較的に暇な私に、
この事件が回ってきたという事だ。
取り調べは明日からだ。
今日はゆっくりと英気を養おう。
2月17日
今日は彼の事情聴取を行った。
やはりあまり意味の理解はできなかった。
だが彼の発言にはしっかり筋が通っており
心神喪失をしているとは思えなかった。
そして彼の口から事件の概要を主観で
話させた。
内容としてはこうだ
彼の主観をそのままに
録音したものを書き写す。
(私は、)などは
全て彼の事だと思ってほしい。
まず私は、芸術家を職業として
生活しています。
あっ。ですが起こした事件には
あまり関係は無いです。
なんか猟奇犯罪だと
思われるのも嫌ですから。
彼女と知り合ったのは、
約2年前です。
彼女は、写真家でした。
彼女は、風が吹いたら溶けて流されて
いってしまいそうな儚さを感じるのに、
存在の輪郭が強い人でした。
職業柄似ている部分が多かったからか
すぐに知己の仲になりました。
そのような仲になってすぐに
数ヶ月会うことの無い時期が続きました。
私は正直に言わせてもらえるなら
とても寂しかったです。
ですが日が経てば経つほどに
寂しさが募るどころか、
その気持ちは薄れていきました。
ただその時期と比例するように
私にはスランプが訪れました。
まともな考えではないとは
わかっていますが、
彼女と会わなくなったことが、
原因なのではないかなと
当時の私は考えていました。
連絡先は貰っておりましたが、
基本的に女の子に自分から
話しかけられるタイプではなかったので
自分から連絡することなんて
私にはできませんでした。
ですが運命というべきでしょうか。
出先でばったりと出会いました。
運命と題したのは、
私がロマンチックな感性を
持ち合わせているから、
というわけではございません。
彼女が私と出会い、
真っ先に彼女の口から出てきた言葉が
「運命じゃん」でした。
女性関係に明るくない人生ですから、
私は彼女が好きで
彼女も少なからず私に気がある。
この機を逃したら、
一生結婚できないだろうし、
できるならこの人と一生を添い遂げたい。
そう思い始めてから
私は彼女に猛アピールを仕掛けました。
ある時期になってから自分のこの行動は
独りよがりな考えに基づいて
行っていることに
気づき始めましたが、
それでも共通の知り合いから
最近彼女がご機嫌であることを聞き、
自分のしていた事は迷惑では無いどころか
彼女はその行為を
喜んでくれているのだと気づき、
その頃から私は
告白する決心を固め始めました。
結果からポンポンと話すと、
告白は成功いたしましたし、
比較的、すぐに体の関係は結べました。
所詮私も男です。
ある程度満たされてしまえば、
諸問題なんてコロッと気にならなくなり、
その頃には既にスランプから
脱していました。
体の関係を結んだことを強調したのは、
私が肉体目当てな
クソ野郎だからではございません。
お互いに肉体メインの関係では無く
性格や性質が合うからこそ
付き合っていました。
なので…なんというか
彼女の友達曰く、
元から彼女には不感症の気があり、
そのせいか、、、
獣のように行為をすることは、、、
ありませんでした。
そうしてある日彼女と
性行為をいたしました。
人としての理性を保ったままの行為でした。
まぁ、入れた状態で
そのまま会話してしまうような状態です。
ピロートークモドキとでも言いましょうか。
その時に人としても芸術家としても
恥ずかしい限りの陳腐なセリフですが、
「可愛すぎて食べてしまいたい」
という発言をしました。
彼女は、驚いた顔をしていましたが、
「いいよ、食べてください」
と返してくれました。
その時の顔は、
私の発言に対して驚いた。
というよりは、
何か琴線に触れてしまった。
そんな風に見えて仕方がありませんでした。
その顔を見てから私の中では、
食べるという行為が
特殊なモノに変化していきました。
食べる度に、咀嚼する度に
彼女の顔が頭に浮かびました。
そこから…
肩を叩かれ、ビクッとしてしまった。
話の最中だったが上司が耳打ちしてきた。
「こっからや、意味が分からんかったのは」
意識を尖らせて話を聞く。
もう大丈夫ですか?
では、
パブロフの犬というのはご存知ですか?
犬にメトロノームを聞かせる。
そして次に犬に餌を与える。
そうすれば犬は餌を食べながら唾液を出す。
そしてそのプロセスを何度も繰り返す。
すると犬はメトロノームの音を
耳にするだけで
唾液を垂らしてしまうようになった
という話です。
私は、まさにそれでした。
相違点は、
メトロノームに置き換わるのが
彼女の顔だったことです。
私は食べる行為から彼女の顔を思い出す
段階から、
彼女の顔を見ると食べる行為を
思い出すようになりました。
その頃から私の芸術活動や画風が
変わり始めました。
自然災害や、野生の怖さ
を題材にしていた画風から
人の内面や、人が抱く恐怖へと
題材は変化していきました。
ですが不思議と需要があったみたいで
困窮した生活からは抜け出せました。
その精神面が画風に如実に現れてから
私は、「ふたり」になりました。
…すいません。お腹が痛いのでまた
今度でもよろしいですか?
録音はここで終わりだ。
上司曰く、
前回もここで話は終わったそうだが
パブロフの犬やら「ふたり」発言やらで
困惑していたそうだ。
2月20日
話を聞いてから3日経過した。
自分なりに1番の問題とされている
「ふたり」発言を考えてみたが、
人を食べたくなるような欲求は
普通の人間にとっては
抱きたく無いような感情だ。
だからこそ自分の中でその感情を
分離させた。
擬似解離性同一性障害と言ったところ
だろう、
つまり多重人格モドキって言うことだ。
ここでまた彼から話を聞けた。
3日ぶりに見た彼は、変に痩せていた。
極度に腹を壊していたようだ。
ここからは録音だ。
あぁ、もうよろしいですか?
今日話せるのは少しだけです。
私はそろそろ釈放させられるみたいですが、
私は罰を受けたいので、
これだけを言わせてもらいます。
骨は○○山に竹林が生い茂る部分が
少しあります。
そこに投げ入れました。
すいません。袋貰えますか?
彼は、部屋の外に連れられて
袋を手渡されて出ていきました。
廊下で
グォッベチャッ
という嘔吐する音が聞こえました。
さっきの供述から調査すると
彼が言ったのと全く同じ場所に
被害者の女性の骨と
思われる骨が発見された。
個人的に話を聞いていて
不思議に思っていたのが
彼がやったのには間違いないが
罰せられたいと言っているのにも
関わらずそこから何も言わない。
彼は、もしかしたら犯人では
無いのかもしれない。
何も全部を言わない点からそう思った。
2月21日
私が間違っていた。
彼はやっていた。
何が起きたか実際分からなかったから
話さなかったのでは無い。
待っていたんだ。
彼は、一言こう言った。
消化出来ました。
全部話します。
こっからは録音を写した物だ。
私は以前、
「ふたり」になった旨を話しました。
それは何も多重人格やらの
話ではございません。
彼女を食べました。
骨の居場所を話したのも
肉はもう無いですから
話しようがないからですよ。
私の1部と化したからです。
昨日から吐いても吐いても
何も出なくなりましたから。
自分の声が入る
驚きや異質なものへの恐怖より先に
至極冷静に質問できたことに
自分自身吃驚していたことを
思い出す。
「どうして食べた?」
彼は質問されるのを予想していたかのように
つらつらと話し始めた。
私の中である瞬間、食と人が結びつきましたが
だからこそ、と言いますか
食人に興味は湧きましたが、
目の前の愛する人を食すまでには
至っていませんでした。
ですが三大欲求の中のふたつ、
食事と性行為に人が付きまとったのです。
意識しないように、
一線を超えないように、
努力はしましたが、
それでも私は
私は、彼女を食べずには
いられなかったのです。
彼女の事も食べられるものだと認識してから
いつもとは違う、
不思議な魅力を、あるいは不気味な魔性を
感じ始めていました。
だから何の根拠も無く
彼女はおいしいのではないかと思いはじめました。
それでも己が欲を抑止し続けていました。
ただ溜め続けると、どこかで崩壊します。
食べる三日前には既にその欲に
歯止めは効かなくなっていました。
つまり殺す手立てを
立て始めていました。
ですが、彼女はそれに気づいていました。
気づいていたからか
彼女は食べられる
3時間前にこう語りました。
人が人を食べているのを見たことがある。
食は命を自分のものにする行為。
精神も体も、
口にしたものだけで出来上がる。
その食べられた人は
彼の中で存在し続けると思う。
だからか被食願望が芽生えていた。
あの食べられた人が羨ましいと
思ってしまい続けているのだ。と。
その時思いました。
私たちの出会いは運命だったのです。
なので獣のように
裸で貪るように
彼女を食べました。
美味しくはなかったですが
今、私は幸せです。
どこにいても、
何していても、
死んだとしても、
彼女と一緒に
居続けられるのですから。
すごく幸せですよ。
彼は驚いた自分を嘲笑するように
満面の笑みを浮かべていた。
だがそのどぎまぎした自分とは
裏腹に自分の中では
繋がった感じがしていた。
何がというのは人体は普通、
同じ人間を食べることは出来ない。
人体から取り込んだタンパク質の一種が
脳を空にしてしまうからだ。
だが、すぐに吐き出したり、
一気に食べた場合なら
多分そのタンパク質が
体に順応せずにそのまま消化されたり
体外にでるのでは?と。
極度に腹を壊していたのも
食べたからだと思うと、
不思議と辻褄があった気がした。
その後その証言通りに
彼の皮膚からはルミノール反応
が検出された。
2月22日
上司と話し合って
不気味さを引きずりつつ
資料をまとめていた。
その際に、夏目漱石のこころの
「しかし君恋は罪悪ですよ。」
という一節を思い出した。
愛は盲目ともいうが、
これはさすがに度が過ぎるだろ
と思い続けていた。
ここでレポートは終わっていた。
今日からちょうど2年前の翌日に終わった
事件をまとめたものだ。
彼は、裁判を受けていない。
理由は結局誰も本質は
理解できなかったからだ。
LINEが来た。
上司に「飯いこか。」
と誘われた。
どこへ行くかが話題に挙がった。
ここら辺の飯屋をしらべようと思い、
スマホを取り出した。
Googleアプリを開いた。
ホーム画面の検索バーの下に
出る情報やニュースについ目がいった。
ここには、好きなゲームやらの
情報が出てくるからだ。
その中のニュースで
今日でブラジルやスペインで
行われたカーニバルが
今日で終わったというニュースだった。
カーニバルは謝肉祭で
ちょうど2年前に触れた食肉の事件を
思い出した。
その後に食べた牛肉からは、
彼の顔と妻の顔の味がした
過去に自分が作成したレポートを開く
それは、主に日記のような役割で、
何か進展があったり
変化があった際にまとめたものだ。
※追記
どうも。
これは、理解するために
制作したレポートになります。
公的に作られたものでは無いので、
口語体が混じったりする部分は
あると思いますが、お許しください。
2月16日
今日は、私に新しい事件が任せられた。
私は、殺人、強盗、性犯罪、傷害、
放火といった「強行犯捜査」を担当とする
刑事課に属しているからだ。
つまりいつも通りのことではある。
何かイレギュラーがあるのだとすれば、
任せられた事件の概要が
不気味だったことだ。
犯人の自白によって
ほとんど解決はしているが、
色々な文書にまとめないといけない為に
犯人に取り調べを行うことを私は任された。
概要をサッとまとめるのであれば、
あるカメラマンの女性が行方不明になった。
関係者を辿ると、ある男性と懇意にしていると
判明した。
その人に会いに行くと、ビンゴ。
私が犯人だという旨の発言をしたので
任意同行してもらい、事情聴取をすると
どんどんと自白に近い事を話し始めた。
それで事件は解決だと思われたが、
一つ問題があった。
犯人はいたって真面目に
発言しているそうだが、
我々では理解できない発言が
いくつかあるそうで、
裁判において心神喪失や
責任能力の有無などで
罪にならない可能性が浮上してきたので
犯人自身も我々もしっかりと
裁かれることを望んでいたので
理解できるように
事細かに話を聞く必要が出てきたことから
比較的に暇な私に、
この事件が回ってきたという事だ。
取り調べは明日からだ。
今日はゆっくりと英気を養おう。
2月17日
今日は彼の事情聴取を行った。
やはりあまり意味の理解はできなかった。
だが彼の発言にはしっかり筋が通っており
心神喪失をしているとは思えなかった。
そして彼の口から事件の概要を主観で
話させた。
内容としてはこうだ
彼の主観をそのままに
録音したものを書き写す。
(私は、)などは
全て彼の事だと思ってほしい。
まず私は、芸術家を職業として
生活しています。
あっ。ですが起こした事件には
あまり関係は無いです。
なんか猟奇犯罪だと
思われるのも嫌ですから。
彼女と知り合ったのは、
約2年前です。
彼女は、写真家でした。
彼女は、風が吹いたら溶けて流されて
いってしまいそうな儚さを感じるのに、
存在の輪郭が強い人でした。
職業柄似ている部分が多かったからか
すぐに知己の仲になりました。
そのような仲になってすぐに
数ヶ月会うことの無い時期が続きました。
私は正直に言わせてもらえるなら
とても寂しかったです。
ですが日が経てば経つほどに
寂しさが募るどころか、
その気持ちは薄れていきました。
ただその時期と比例するように
私にはスランプが訪れました。
まともな考えではないとは
わかっていますが、
彼女と会わなくなったことが、
原因なのではないかなと
当時の私は考えていました。
連絡先は貰っておりましたが、
基本的に女の子に自分から
話しかけられるタイプではなかったので
自分から連絡することなんて
私にはできませんでした。
ですが運命というべきでしょうか。
出先でばったりと出会いました。
運命と題したのは、
私がロマンチックな感性を
持ち合わせているから、
というわけではございません。
彼女が私と出会い、
真っ先に彼女の口から出てきた言葉が
「運命じゃん」でした。
女性関係に明るくない人生ですから、
私は彼女が好きで
彼女も少なからず私に気がある。
この機を逃したら、
一生結婚できないだろうし、
できるならこの人と一生を添い遂げたい。
そう思い始めてから
私は彼女に猛アピールを仕掛けました。
ある時期になってから自分のこの行動は
独りよがりな考えに基づいて
行っていることに
気づき始めましたが、
それでも共通の知り合いから
最近彼女がご機嫌であることを聞き、
自分のしていた事は迷惑では無いどころか
彼女はその行為を
喜んでくれているのだと気づき、
その頃から私は
告白する決心を固め始めました。
結果からポンポンと話すと、
告白は成功いたしましたし、
比較的、すぐに体の関係は結べました。
所詮私も男です。
ある程度満たされてしまえば、
諸問題なんてコロッと気にならなくなり、
その頃には既にスランプから
脱していました。
体の関係を結んだことを強調したのは、
私が肉体目当てな
クソ野郎だからではございません。
お互いに肉体メインの関係では無く
性格や性質が合うからこそ
付き合っていました。
なので…なんというか
彼女の友達曰く、
元から彼女には不感症の気があり、
そのせいか、、、
獣のように行為をすることは、、、
ありませんでした。
そうしてある日彼女と
性行為をいたしました。
人としての理性を保ったままの行為でした。
まぁ、入れた状態で
そのまま会話してしまうような状態です。
ピロートークモドキとでも言いましょうか。
その時に人としても芸術家としても
恥ずかしい限りの陳腐なセリフですが、
「可愛すぎて食べてしまいたい」
という発言をしました。
彼女は、驚いた顔をしていましたが、
「いいよ、食べてください」
と返してくれました。
その時の顔は、
私の発言に対して驚いた。
というよりは、
何か琴線に触れてしまった。
そんな風に見えて仕方がありませんでした。
その顔を見てから私の中では、
食べるという行為が
特殊なモノに変化していきました。
食べる度に、咀嚼する度に
彼女の顔が頭に浮かびました。
そこから…
肩を叩かれ、ビクッとしてしまった。
話の最中だったが上司が耳打ちしてきた。
「こっからや、意味が分からんかったのは」
意識を尖らせて話を聞く。
もう大丈夫ですか?
では、
パブロフの犬というのはご存知ですか?
犬にメトロノームを聞かせる。
そして次に犬に餌を与える。
そうすれば犬は餌を食べながら唾液を出す。
そしてそのプロセスを何度も繰り返す。
すると犬はメトロノームの音を
耳にするだけで
唾液を垂らしてしまうようになった
という話です。
私は、まさにそれでした。
相違点は、
メトロノームに置き換わるのが
彼女の顔だったことです。
私は食べる行為から彼女の顔を思い出す
段階から、
彼女の顔を見ると食べる行為を
思い出すようになりました。
その頃から私の芸術活動や画風が
変わり始めました。
自然災害や、野生の怖さ
を題材にしていた画風から
人の内面や、人が抱く恐怖へと
題材は変化していきました。
ですが不思議と需要があったみたいで
困窮した生活からは抜け出せました。
その精神面が画風に如実に現れてから
私は、「ふたり」になりました。
…すいません。お腹が痛いのでまた
今度でもよろしいですか?
録音はここで終わりだ。
上司曰く、
前回もここで話は終わったそうだが
パブロフの犬やら「ふたり」発言やらで
困惑していたそうだ。
2月20日
話を聞いてから3日経過した。
自分なりに1番の問題とされている
「ふたり」発言を考えてみたが、
人を食べたくなるような欲求は
普通の人間にとっては
抱きたく無いような感情だ。
だからこそ自分の中でその感情を
分離させた。
擬似解離性同一性障害と言ったところ
だろう、
つまり多重人格モドキって言うことだ。
ここでまた彼から話を聞けた。
3日ぶりに見た彼は、変に痩せていた。
極度に腹を壊していたようだ。
ここからは録音だ。
あぁ、もうよろしいですか?
今日話せるのは少しだけです。
私はそろそろ釈放させられるみたいですが、
私は罰を受けたいので、
これだけを言わせてもらいます。
骨は○○山に竹林が生い茂る部分が
少しあります。
そこに投げ入れました。
すいません。袋貰えますか?
彼は、部屋の外に連れられて
袋を手渡されて出ていきました。
廊下で
グォッベチャッ
という嘔吐する音が聞こえました。
さっきの供述から調査すると
彼が言ったのと全く同じ場所に
被害者の女性の骨と
思われる骨が発見された。
個人的に話を聞いていて
不思議に思っていたのが
彼がやったのには間違いないが
罰せられたいと言っているのにも
関わらずそこから何も言わない。
彼は、もしかしたら犯人では
無いのかもしれない。
何も全部を言わない点からそう思った。
2月21日
私が間違っていた。
彼はやっていた。
何が起きたか実際分からなかったから
話さなかったのでは無い。
待っていたんだ。
彼は、一言こう言った。
消化出来ました。
全部話します。
こっからは録音を写した物だ。
私は以前、
「ふたり」になった旨を話しました。
それは何も多重人格やらの
話ではございません。
彼女を食べました。
骨の居場所を話したのも
肉はもう無いですから
話しようがないからですよ。
私の1部と化したからです。
昨日から吐いても吐いても
何も出なくなりましたから。
自分の声が入る
驚きや異質なものへの恐怖より先に
至極冷静に質問できたことに
自分自身吃驚していたことを
思い出す。
「どうして食べた?」
彼は質問されるのを予想していたかのように
つらつらと話し始めた。
私の中である瞬間、食と人が結びつきましたが
だからこそ、と言いますか
食人に興味は湧きましたが、
目の前の愛する人を食すまでには
至っていませんでした。
ですが三大欲求の中のふたつ、
食事と性行為に人が付きまとったのです。
意識しないように、
一線を超えないように、
努力はしましたが、
それでも私は
私は、彼女を食べずには
いられなかったのです。
彼女の事も食べられるものだと認識してから
いつもとは違う、
不思議な魅力を、あるいは不気味な魔性を
感じ始めていました。
だから何の根拠も無く
彼女はおいしいのではないかと思いはじめました。
それでも己が欲を抑止し続けていました。
ただ溜め続けると、どこかで崩壊します。
食べる三日前には既にその欲に
歯止めは効かなくなっていました。
つまり殺す手立てを
立て始めていました。
ですが、彼女はそれに気づいていました。
気づいていたからか
彼女は食べられる
3時間前にこう語りました。
人が人を食べているのを見たことがある。
食は命を自分のものにする行為。
精神も体も、
口にしたものだけで出来上がる。
その食べられた人は
彼の中で存在し続けると思う。
だからか被食願望が芽生えていた。
あの食べられた人が羨ましいと
思ってしまい続けているのだ。と。
その時思いました。
私たちの出会いは運命だったのです。
なので獣のように
裸で貪るように
彼女を食べました。
美味しくはなかったですが
今、私は幸せです。
どこにいても、
何していても、
死んだとしても、
彼女と一緒に
居続けられるのですから。
すごく幸せですよ。
彼は驚いた自分を嘲笑するように
満面の笑みを浮かべていた。
だがそのどぎまぎした自分とは
裏腹に自分の中では
繋がった感じがしていた。
何がというのは人体は普通、
同じ人間を食べることは出来ない。
人体から取り込んだタンパク質の一種が
脳を空にしてしまうからだ。
だが、すぐに吐き出したり、
一気に食べた場合なら
多分そのタンパク質が
体に順応せずにそのまま消化されたり
体外にでるのでは?と。
極度に腹を壊していたのも
食べたからだと思うと、
不思議と辻褄があった気がした。
その後その証言通りに
彼の皮膚からはルミノール反応
が検出された。
2月22日
上司と話し合って
不気味さを引きずりつつ
資料をまとめていた。
その際に、夏目漱石のこころの
「しかし君恋は罪悪ですよ。」
という一節を思い出した。
愛は盲目ともいうが、
これはさすがに度が過ぎるだろ
と思い続けていた。
ここでレポートは終わっていた。
今日からちょうど2年前の翌日に終わった
事件をまとめたものだ。
彼は、裁判を受けていない。
理由は結局誰も本質は
理解できなかったからだ。
LINEが来た。
上司に「飯いこか。」
と誘われた。
どこへ行くかが話題に挙がった。
ここら辺の飯屋をしらべようと思い、
スマホを取り出した。
Googleアプリを開いた。
ホーム画面の検索バーの下に
出る情報やニュースについ目がいった。
ここには、好きなゲームやらの
情報が出てくるからだ。
その中のニュースで
今日でブラジルやスペインで
行われたカーニバルが
今日で終わったというニュースだった。
カーニバルは謝肉祭で
ちょうど2年前に触れた食肉の事件を
思い出した。
その後に食べた牛肉からは、
彼の顔と妻の顔の味がした
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