~【まおうすくい】~

八咫烏

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第16話『カムスカ地方』

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カムスカ半島の先端、ランズブル岬へと降り立ったふたりは、大図書館を探すために、岬から海を見渡していた。

「なぁユーカ、なんでこんな端っこに来たのじゃ?」

「皇帝領だけど大陸にはない、これはおそらく、離島の事を指してるのだと思うのよ。」

「でも…見た限りでは、離島などひとつもありはしないぞ。」

「そうなのよね…おかしいわ。」

「我、そろそろ飯を喰らいたいのじゃが…。」

「そうね、さすがに私もお腹が空いたわ。」

「美味い肉を喰らわせてくれるのじゃな!」

「あら、それはもう時効よ。また今度の機会ね。」

「ぐぬぬ…なんという理不尽。」

「この辺りに街なんてあるのかしら?」

「向こうの方から肉の香りがするぞ!」

「肉の香りが街からするとは限らないわよ…。」

「いや、我には分かるぞ!分かるのじゃ!」

「じゃあ、その匂いをたどって頂戴。」

「かなり遠いが…歩くのかや?」

「私、歩くの速いもの、問題ないわ。」

「じゃあ我をーーー

「自分の足で歩きなさい。」

ふたりは岬を後にして、ヴェルの鼻を頼りに、最寄りの街へ行くことにした。



「本当に着いたわ…。」

「なぁなぁ、褒めて褒めて!」

「はいはい、良くやったわ。」

「そうじゃろう?そうじゃろう!偉い?ねぇねぇ、我ってば偉い?」

「うるさいっ!」

「えぇ…もうちーっと褒めて欲しかったのう。」

「あんまり調子にのると、また変な事するでしょ!」

「べべべ、別に変な事なんてしないぞ!」

「ふーん…まぁ良いわ。とりあえず宿をとりましょ。壊さないでね!」

「うむ、壊さぬ。壊さぬから、中へ入れてくりゃれ。」

「ルームサービスもダメよ!」

「分かった!約束する。」

「それにしても、田舎の街って感じね。」

「そうじゃの、レヴィンといい勝負じゃ。」

「あら…魚だって、ヴェル。珍しいわね。」

「港街じゃからな。肉よりも魚の方が、出回ってるのやもしれぬ。」

「レヴィンは内陸だから、めったに魚なんて食べれないわ。今日の夕飯は魚料理に決定ね!」

「肉は!?肉は喰らえなのかや?」

「私は魚の気分なのよ。肉は…また今度ね。」

「のぉぉおおーっ!」

「うるさいわよ。目立つ行動は避けて頂戴。」

「うむぅ…すまぬ。」


ふたりは立派な佇まいの宿まで来ると、いつものように、一番良い部屋をとる。

「お客様は、冒険者様でいらっしゃいますか?」

「いいえ、違うの。この街には観光できたのだけれど…。」

「失礼しました。観光ですか…この辺りだと、ランズブル岬とチュララ浜くらいしかなかったと記憶していますが?」

「そのようね。でも、のどかな街並みや風景が気に入ったわ。」 

「ははは…田舎ですので、それだけが取り柄のようなものです。お部屋は4階の左奥となります。」

「ありがとう。」


部屋に着くと、静かにしていたヴェルが、さっそく話しかけてきた。

「なぁ、なんでウソついたのじゃ?」

「冒険者じゃないって言ったやつかしら?」

「うむ。」

「冒険者だと名乗ったら、認識プレートを提示しなきゃダメでしょ?巡りめぐって、ギルドに行動を把握されるのよ。」

「そういうものかの?」

「そういうものなのよ。それじゃ、少し街を歩きましょ。」

「おぉ!肉を喰らい歩きしに行くのじゃな!」

「違うわよ、何か手がかりがないかを探しに行くのよ。」

「でっでも、そこに屋台があれば、買っても良いよな?」

「好きになさい。」


ふたりは、大図書館の手がかりを探そうと、街をくまなく歩きまわった。
この街には、小さな港がふたつと、大きめの港がひとつあり、普段は小さな港だけを使っているようだ。
港には漁船が溢れていて、ガタイの良い海の男たちがひしめき合っていた。
すでに漁は終わったのか、港には魚が見当たらなかったが、海の男たちは、それぞれの船を磨いたり、漁具の手入れをしたりと、忙しそうにしていた。

ふたりは、海の事なら漁師だろうと思い、小さな港のうちのひとつで、宿から近い方へと足を運んだ。
男たちは、もの珍しい来訪者に、一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに自分たちの仕事に戻った。
そんな事など気にもとめず、ズカズカと港の真ん中まで進むと、大きな声で話しかける。

「こんにちは、漁師さんたち。お尋ねしたい事があるのだけれど…。あら、そこのお魚、美味しそうね!」

「なんだぁ、嬢ちゃんたち。ここはガキが来る様なところじゃねぇぞ!」

「ガキが来てはいけない所でもないわ。」  

「ほぅ…言うじゃねぇか。おめぇらっ、集合だ!」

『おうっ』

ひときわデカい、ゴリラみたいなマッチョのおじさんが、港にいる漁師たち全員を呼び集める。

「あら、お仕事の方は良いのかしら?」

「かまわゃしねぇさ。それで、何を聞きたいってんだ?俺たちが知ってる事なら、聞いてくれ。」

「どうもありがとう!それじゃあ…まずはお昼にしたいのだけど、漁師メシをたべさせては貰えないかしら?」

「ガハハハハハっ!こりゃおもしれぇ!おめぇら、メシの準備だ!」

デカいおじさんの掛け声によって、ほかの漁師たちは、一斉にお昼の準備を始める。
七輪やら鍋やらなんやらを持って来ては、魚を焼いたり煮たり捌いたりしていた。
しばらく見ていると、とても美味しそうな匂いが漂ってきて、ヨダレが垂れそうになる。

「嬢ちゃんがさっき言った魚、コレは王族殺しっていってな。」

「あら…物騒な名前ね。食べれないのかしら?」

「いや…逆だ。もの凄くうめぇ!でもな、ちょっとピリっとしてな、運の悪いヤツは逝っちまうんだ。」

「私たちにはぴったりなお魚さんね。」

「ほぅ…どうしてそう思う?」

「ここで死ぬ程度の運しか持っていないなら、先に進んでも何もできないからよ。」

「おもしろい!気に入ったぜ!さぁ、メシにしよう。」

その頃、ヴェルは、というと…
すっかり、海の男たちと意気投合し、酒瓶を片手に、料理をつまみ食いしたり、力比べをしたりと、やりたい放題していた。
その後も、大食い対決や、酒豪対決をしては圧勝し、海の男たちを片っ端から、負かしていった。

「あの嬢ちゃんも、なかなかやるじゃねぇか。」

「ちょっと規格外なのよ…。許して頂戴。」

「かまわゃしねぇよ。それより、負けたヤツには後で仕置きをしなきゃなんねぇな。」

「ほどほどで許してあげて頂戴。私もヴェルには一度しか勝った事はないもの。」

「ほぅ、そりゃどんな勝負だい?」

「単なる殺し合いよ。ちょっとルールは複雑だったけれどね。」

「そりゃおっかねぇ…。それで、そろそろ聞かせてくんねぇか?」

「そうね。この辺りに、離島はないかしら?カムスカ地方であればどこでも良いわ。」

「離島か…そりゃたくさんあるな。大きいのだけでも3つ、小さいのを入れりゃ20は下らねぇ。」

「そんなにあるの!?ランズブル岬からは見えなかったわよ?」

「あぁ、ある。まず、カムスカ地方ってのがデカすぎる。半島はカムスカ地方のほんの一部にすぎねぇ。」

「困ったわ…それじゃあ離島ではないのかもしれないわね。」

「なんだ?離島を探してるわけじゃねぇのか?」

「えぇ…少し言おうか迷ったのけれど、この際だからハッキリ言うわ。私たちが探しているのは…大図書館。」

ユーカの口から、『大図書館』というワードが放たれた瞬間、目の前の男は両手を机にバンっと叩きつけ、激昂した様子で聞いてきた。

「誰にそれを聞いたっ!」

「落ち着いて頂戴。みんな驚いているわ。」

「落ち着いていられるか!言え!誰から聞いたっ!」

すると、遠くの方からヴェルが酒瓶を片手にやって来て、ユーカの隣に腰掛けて言う。

「聞いたのは我じゃ。トライアドのばあさんに聞いた。」

「あらヴェル、聞こえていたの?」

「うむ、我は耳も良いのでな。」

「おいっ、トライアドのばあさんというのは…。森の妖精様の事か?」

「その様な呼び名は知らぬが、木が喋る。それがトライアドじゃ。」

「間違いねぇ、森の妖精様だ。」

男は落ち着きを取り戻し、目を左の手で覆ったあと、その手で顔を拭くように下へ持っていき、顎をなでたあと、耳の後ろへと動かし、頭の後ろをかく。

「その様子だと、何かご存知の様ね?」

「あぁ、知っている。大図書館の場所も、行き方も。」

「それじゃあ、教えてくれないかしら?」

「それはできねぇ…。」

「どうしてっ!」

今度はユーカが机を叩き、身を乗り出す。

「落ち着けユーカ、この者にも考えがあるのじゃろう。」

「ごめんなさい…。」

「いや、良い。さっきは悪かったな。」

「それで、どうして我らに教えたくないのじゃ?」

「あんな…あんな危険な場所に、嬢ちゃんたちを送り出すなんて、そんな事できねぇ。」

「大丈夫よ。私たち、これでも結構、強いのよ?」

「ムリだ!あんなところに行くなんざ、死にに行く様なもんだぞ!」

「心配してくれるのはありがたいわ。でもね、この世界に比べたら、私たちの命なんて安いものよ。」

「それでも、それでも…俺にはできねぇ。」

「それじゃあコレで勝負しましょう?『王族殺し』、これ全部、私が食べるわ。」

「なっ…うまそうじゃの!我にも分けてくりゃれ!」

「そう?じゃあふたりで食べるわ。これで死ななかったら、教えて頂戴。」

「おいおい嬢ちゃん、キケンすぎて市場に卸せない毒だぜ。それに、量も結構ある。食べ過ぎると確実に死ぬんだぞ!」

「好都合よ。私たちの実力を、見せてあげるわ。」

「ーーー分かった、俺の負けだ。教えてやるよ。」

「あら、優しいのね。」

「今死ぬか、後で死ぬかの違いだからな。でも、これだけは約束してくれ。キケンを感じたら逃げろ。」

「えぇ分かったわ。」

その時、港の沖合の方から、巨大な水柱が立ち、海の男たちから、恐怖の混じった怒号が上がった。
水柱から出てきたのは…大海蛇だった。
シーサーペントとも呼ばれる事があるこの生物は、皇帝領はもちろん、この世界各地でも、名称を変えて、その存在を確認されてきた。

「くそっ、なんてこった!嬢ちゃんたちはさっさと逃げろっ!」

先ほどまで楽しく飲んでいた男たちは、血相を変えて港から距離をとる。
目の前にいたデカいおじさんは、素早く席を立つと、数人の男に指示を飛ばしながら、自分はモリを持って、こちらへと迫る大海蛇と相対する。
大海蛇は、先ほどまで沖合にいたが、今は、ズンズンと港へ向かって来ていた。

「ヴェル、行くわよ。」

「うむ、あれは焼いたら美味いのかや?」

「ヘビでしょ?固いんじゃないかしら?」

「パリっと揚げたらどうじゃろう?」

「知らないわよ…。でも、アレはちょっと食べきれる量じゃないわね。」

「うむ…デカいの。」

「まぁ良いわ。大図書館の事を聞く前に、あのおじさんに死なれたら困るもの。」

「そうじゃな、せっかくの手がかりじゃ。それに…デカいといっても所詮はヘビであろう?」

のんびりとそんな会話を交わしたあと、ゆっくりと港の方へ歩き、おじさんを抜かして、さらに大海蛇へと近づく。

「おいっ、何をしている!さっさと逃げろって言ったじゃねぇかよ!」

「まだお話の続きだわ。あんなヘビごときに、邪魔されてたまるものですか。」

「教えてやれなくてすまねぇ。でもよ、あいつはヤベェ。嬢ちゃんらはさっさと逃げな!」

「漁師の御仁よ、ユーカはこう言っておるのだ。『我らに任せろ』とな。」

「なっ…何言ってやがんでぃ!ムリに決まってらぁ。」

すると、ユーカは一度だけ振り向き、美しい笑顔を見せて、すぐさま大海蛇へと向きなおる。

「久々に大きな魔法が使えるわっ!」

「おいおいユーカよ、それは戦闘狂の言葉じゃぞ…。」

「何よ…たまには良いじゃない。」

「それよりアレを倒したら肉じゃ!肉が喰らえるのじゃ!」

「あら、魚も美味しかったじゃない。」

「確かに美味かったが、魚は飽いた。我はそろそろ肉を喰らいたいのじゃ。」

「それじゃ、チャチャっと片付けるわよ。」

ユーカは港の端まで来ると、そのまま海へと足を踏み入れる。
足を踏み入れようとした、その少し前、海がパキパキと音を立てて凍てつく。
ヴェルは当然の事のように、ユーカに合わせて横を歩いていた。
凍った海を、大海蛇がいる場所までどんどん歩く。
途中に、ヴェルが躓いてコケるのを横目に、どんどん進む。

「うむぅ…心配してくれても良いのではないかや?」

「ちょっと…カッコいい場面が台無しじゃない!」

「えぇ…なんという理不尽。」

「ほら、早くあなたも澄ました顔で歩きなさいよ!」

「うむぅ…分かったのじゃ。」

そんなふたりを、海の男たちは固唾を飲んで見守っていた。
そこには、この港の漁師を束ねているのであろう、あのデカいおじさんの姿もあった。
すでに、男たちの中に取り乱した者は居らず、ただただふたりを黙って見つめていた。

「近くに来ると、大きいわね。」

「うむ、ものすごく睨んでおるの。」

「じゃ、サクっとやりましょう。ヴェル、食べたいのだったら、火はダメよ。」

「おぉ…危ないところじゃった。」

遂にふたりは大海蛇の間合いに踏み込んだ。
しかし、ユーカが海を凍らした事によって、大海蛇は動くことがままならず、海面から出していた部分を激しくくねらせながら、海中の深くにあった、尻尾の部分で、海面を覆う分厚い氷を、海の中からバンバンと叩いていた。

「ギィュォォオオーーーっ!」

抵抗を諦め、大海蛇はふたりを睨むと、その視線に精一杯の殺気を込め、咆哮を上げた。

「やだやだ…うちのおバカの方が、もっと上品に鳴くわよ。」

「それって…褒めてる?褒めてるのかや?」

「あら、自覚があるのね?おバカって部分に。」

「ぐぬぬ…我、終わったらヤケ喰らいするからの!謝ったって知らぬからの!」

「お腹壊さないなら別に良いわよ。」

「えぇ…ちょっとは心配して欲しいのじゃが。さっきから冷たくはないか?なぁなぁ?」

「ねぇヴェル、しつこいと嫌われるのよ。」

「むきゃーっ!もう知らぬ!覚悟するが良いぞ、ヘビっ!」

「そうね…そろそろ始めましょうか。」

ふたりは口元に笑みを浮かべ、大海蛇へと向きなおる。
大海蛇はようやく自分が狩られる側だと認識を改め、逃げようと必死に抵抗し始めた。
それを見てユーカは、さらに氷を分厚いものへと変え、ヴェルはパチりと指を鳴らす。
ヴェルが指を鳴らしたその数刻後、上空からひと筋のヒカリが現れ、それを大海蛇の頭部へと叩きつけた。
ヒカリの正体はイカヅチ、すなわちかみなりであった。
雷鳴と稲妻を伴ったソレは、雷電というのにふさわしく、空気の絶縁限界を突破して降りそそぐソレは、最大で10億ボルトにも達するという。
そんな、超強力な電撃により、大海蛇は断末魔すら上げることなく、海面の氷へと倒れこんだ。

「ちょっと!あんなにうるさいなんて聞いてないわよ!」

「うむぅ…我は思ったより眩しくて、目がチカチカするのじゃ。」

「私の方が、耳はキーンってするし、目はチカチカするしで最悪よ!」

「すまぬすまぬ…許してくりゃれ。」

「もうっ信じらんないわ!当分の間、あなたのご飯はそこのヘビよ!」

「なななっ…まぁ、美味ければ良いかの。」

「ふんっ。(ヘビなんてどうせ固くて美味しくないわよ。)」

「なぁなぁユーカ、お主から少し邪悪な雰囲気を感じたのじゃが…。」

「気のせいでしょう?さっ、戻るわよ。」

「うむぅ…。まぁ良いか。」


港へと戻ると、海の男たちが出迎えてくれ、そのうち数人は、さっそく大海蛇を間近で見ようと、沖合へと走って行った。

「嬢ちゃんたち…一体ナニモンでぇ?」

「いたって普通よ。」

「全然普通じゃねぇよ。まぁ良い、助かったぜ。」

「気にしないで頂戴。それより…話の続きを聞きたいのだけれど?」

「おっと、そうだったな。ちょっと待ってくれ。」

デカいおじさんは他の漁師の元へと走って行き、いろいろと指示をした後に戻ってきた。

「のぉ…漁師の御仁よ、あのヘビは喰らえるのかや?」

「うん?食えねぇ事もないと思うが、美味いかどうかは保証しかねるな。」

「そ、それは困る!我は当分、あのヘビを喰らわねばならぬのじゃ。」

「俺もヘビは食ったことくらいあるが、大海蛇は食ったことがねぇからなぁ。」

「ヘビは良いのよ、ヘビは。それよりも、大図書館への行き方を教えて頂戴。」

「もちろんさ。嬢ちゃんらの実力は十分に分かった。これなら俺も、安心して教えることができるってもんよ。」

「やったわね、ヴェル。」

「うむ、これで一歩前進じゃな。」

「良いかい、嬢ちゃんたち。大図書館への行き方だがーーー。」

ふたりの実力が思っていたよりも優れていたからか、今度はいやいやという感じもなく、すんなりと話してくれた。
それによると、大図書館は確かにこの大陸にはないことが分かった。

「つまり…行くのはとても大変って事ね。」

「あぁ。それに、道中は凶暴なモンスターもたくさん出る。くれぐれも注意してくれ。」

「ありがとう。それじゃ、ヘビの処理は頼むわ!」

「もう行くのかい?」

「えぇ、時間がないの。いえ、時間がないのかすらも分からないのよ。」

「そうか…。達者でな。」

「えぇ、お世話になったわ。行くわよヴェル。」

「我のメシ!ヘビは?置いていくのかや?」

「ご飯くらい食べさせてあげるわよ。ヘビは諦めなさい。」

「なんじゃ、肉が喰らえるのならば、ヘビなんぞどうでも良いのじゃ。」

「なに嬉しそうにしてるの?当然、お肉は抜きよ。」

「えぇ…我、ガンバったのに。」

「おーぃ、嬢ちゃんたち!コレ、持ってけ。」

「あら、コレは?」

「この街に古くから伝わる、海の男たちのお守りだ。」

「女にも効くのかしら?」

「そんなん知らねぇよ。ガハハハハハっ!」

男は豪快に笑い、そのまま港の方へと去って行った。
沖合では、大海蛇が海の男たちの手によって解体されはじめていた。
ユーカとヴェルは、そんな男たちの喧騒を背に、一度宿へと戻り、そのまますぐに、教えて貰った方法を試すべく、街を後にした。








次回:第17話『大図書館』
お楽しみにお待ちください。

8月31日 10時を投稿予定にしております。
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よろしければお願いし申し上げます。




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