絶対零度女学園

ミカ塚原

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氷晶華繚乱篇

脱出

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 闇の虚空を端まで照らすかに思えるほどの、それは凄絶な雷撃だった。リベルタが放った雷の矢は、激烈な風圧をも巻き起こしながら魔晶兵を粉々に粉砕し、さらに後方に見えた魔晶兵のうち数体までも打ち砕いてみせた。
 その光景を目の当たりにして、エレクトラは愕然としていた。もし、リベルタの一撃を受けていれば、エレクトラでさえ無事でいられた確証はない。
「こっ、こいつらは一体、何なんだ…!?」
 接近戦であれば、リベルタはエレクトラには敵わない事は先の戦闘でハッキリした。だが、今のリベルタの力は、ともすれば氷騎士どころか、水晶騎士にさえ肉薄できるのではないか、と思えるほどだ。
「なぜだ!?これほどの力を持つ者達が、なぜレジスタンスなどに紛れ込んでいる!?」
 しかしエレクトラの疑問は長く続かなかった。ヒオウギとフリージアが、両腕を引っ張って走り出したからだ。
「うわっ!」
「ボサッとするな!走るぞ!」
 ヒオウギは、走りながら叫ぶ。
「リベルタ!」
 呼ばれたリベルタは全力を振り絞ったためか、ヒオウギに微笑むと、弓を取り落として崩れ落ちてしまう。
「おい!」
 リベルタは、もう立つのもやっとという様子だった。ヒオウギが傍らにひざまずくと、弱々しい笑みをのぞかせた。
「私はここまで。みんな、あとは頼んだよ」
「聞き飽きたんだよ、そういうのは!」
 ヒオウギはリベルタの巨大な弓を拾うと、フリージアに投げつける。フリージアは若干憤慨しつつも、左手でそれをキャッチした。
「フリージア!その暗殺女は任せたぞ」
「なっ…」
 大雑把に括られたエレクトラも大いに不満を表したが、もはやそれを言葉にする余裕もなかった。ヒオウギはリベルタをほとんど背負うような形で立たせ、百合香たちを向いた。
「行くぞ、百合香のところまで!そのあとは、もう知らねえ!」
 
 そのころ、百合香はエネルギーのチャージを完了し、闇の空に剣を高く掲げていた。白色とも虹色ともつかない、神秘的にも不気味にも思える輝きが、剣に満ちていった。
「瑠魅香、いいわね」
『オッケー、任しといて』
「ルテニカ!」
 瑠魅香と確認を済ませると、百合香はルテニカたちに叫んだ。
「そっちは!?」
「いつでも!」
 ルテニカ、プミラ、ダリアの三人は、数珠を提げた手を合わせて、百合香が動くのと、リベルタ達が戻るのを待っていた。やがて、満身創痍のリベルタ、ヒオウギ、フリージア、エレクトラが戻って来たのを確認すると、百合香は叫んだ。視界の遠くには、リベルタに穴を開けられた魔晶兵の群れの影が見える。
「いくわよ!」
 百合香の掲げた聖剣アグニシオンの輝きが、目もくらむばかりに暗黒の空間を照らした。それと同時に、恐ろしいばかりの振動が闇の大地を揺るがす。
 だが、もはや百合香のエネルギーも尽きかけており、自身の力を支えきれない左脚が一瞬、がくりと曲がりかけた。まずい、と誰もが思った瞬間、百合香の腰にすがるような姿勢で、それを支える者がいた。それは、エレクトラだった。
「私は脱出する見込みがあると言われたから、力を貸したんだ。倒れられたら、契約不履行だ」
「何よそれ。あんたも今にも倒れそうだわ」
「うるさい!やるなら早くやれ!」
 エレクトラは、決して百合香の顔を見なかった。それが照れ隠しなのか何なのかは誰にもわからなかった。
「くそっ!」
 百合香が剣を振るったのは、エレクトラが吐き捨てた直後だった。
「オルタネイティヴ・ホライゾン!」
 それは、剣の切っ先の上空から、水平に拡大する暗黒の渦だった。暗黒の空間にあって、大地の振動が一瞬止んだかと思えた次の瞬間、渦の中心に向かって、空間そのものを軋ませるようなエネルギー流が発生した。以前に氷騎士ディジットと戦った際に、百合香が本能的に発動させた現象だった。
 そのエネルギー流によって、闇の空間を支配している負の波動に乱れが生じた。紫色に鈍く光る霧が、あちこちで小さな竜巻のように立ち上がり、大地はある箇所ではひび割れ、ある箇所では押し合って隆起を始めた。それは、さながら原初の星に、大地が生まれる過程のようだった。
『百合香!』
「…まだ、大丈夫」
『ルテニカ、どう!?』
 エネルギー制御に集中している百合香に代わって、百合香の中から瑠魅香が呼びかけた。ルテニカ達は、数珠をはさんだ両手をわずかに高く上げる。
「みなさん、決してその場を動かないでください!私達から離れないで!」
 ルテニカの指示に、ヒオウギ達はいよいよか、と身構えた。そうしている間にも、着実に魔晶兵の群れが接近している。あと2分もない、とヒオウギは見たが、仲間を信じて黙っていた。
 
 ルテニカは、百合香の放つエネルギーによって、空間そのものだけではなく、空間を支配する負の思念にまで、ゆらぎが起こっているのを確認した。その現象に、ルテニカもプミラも驚きを隠せなかった。
 百合香の生み出した暗黒の渦は、言ってしまえばこの空間と同種の存在だった。物理と霊魂、精神の全てを内在し、全てに影響を及ぼす、混沌としたエネルギーだ。それは、万物の創造にも通じる根源的なエネルギーとも言えた。
 いったい、百合香は何者なのか。その正体を、百合香自身が理解しているように思えない。だが、その謎を追求する余裕など今のルテニカ達にはなかった。
 ルテニカ、プミラ、ダリアの三人は、祝詞のような文言を一心不乱に、虚空に向かって唱えた。それは、この暗黒の空間に満ちた負の思念と打ち消し合う祈りだった。ルテニカ達の力が強大であれば、負の思念を弾き飛ばして、この空間から脱出できるはずだった。しかし、空間を支配する謎の相手は底知れない存在であり、その思念の力に太刀打ちすることは不可能だった。
 だが、いま百合香のエネルギーで、その思念に軋みを生じさせる力場が形成されている。闇の思念にも乱れが起こり、密度が薄くなり始めているのがわかった。
 チャンスは今だけだ、とルテニカ、プミラは確信した。

 瞬間、真っ白なオーラが、その場の全員を包んだ。エレクトラは、百合香を支えたまま目を瞠った。
「これは…!」
 視界が歪む。風に波立つ水面のように揺れ、弾け、重なり合う。それを見ているだけで目眩が起きそうだったので、エレクトラは目を閉じた。
 そのとき、エレクトラの閉じた瞳の裏側に、奇妙な映像が繰り返し、移り変わるように浮かんでは消えていった。
 それは、宇宙空間に浮かぶ大気のない不毛の巨星や、恒星が不気味な色に変化して死にゆく光景、氷の大地に流星が激突する光景など、恐ろしいまでの壮大な映像だった。
 一転して、世界は太陽が照りつける灼熱の大地に変わる。すると、太陽を避けるように、切り立った渓谷の底を歩く影が見えた。
 それは、奇怪な氷の人形だった。溶けてゆく身体を労るように、弱々しい足取りで、氷河を目指して歩いてゆく。だがそのとき、溶けかけている氷を砕いて、地面の底からいくつかの影が現れた。
 それは、焦げ茶色の塊のような、人型の奇怪な土人形だった。土人形は、氷の人形を取り囲むように迫っていた。
 氷の人形はその身体を引きずり倒され、岩盤に全身を叩きつけ、ばらばらになって渓谷の底に散らばった。それを確認するようなしぐさを見せた土の人形たちは、いずこかへと歩き去ろうとした。
 そのとき、光が差した。渓谷を底まで貫く、強烈な太陽光線だった。土の人形達は、その光に灼かれ、土くれとなって崩れ去った。
 太陽を見上げると、その光の中に、ひとつの影が見えた。人間の、女性のようなシルエットだった。長く真っ直ぐな髪は、陽光を透かして金色に輝いていた。逆光の中にかすかに見えたその顔は、恐ろしいまでに美しく、穏やかに見えた。太陽の輝きのなかで、地面に散らばった氷の人形は溶けて水になり、乾いた地盤に吸い込まれて消え去った。
 そのとき、地の底から湧き出すものがあった。それは、どす黒い濃霧のような何かだった。それに呼応するように、太陽の輝きが増す。
 
「魔晶兵が!」
 エレクトラは、ダリアの叫びで我に返った。振り返ると、魔晶兵はすでに、あと少しという所まできている。心の中でエレクトラは舌打ちしたが、今はルテニカ達を信頼するよりなかった。
 ルテニカ達の祝詞によって、しだいしだいに闇の空間に切れ目が開くのがわかった。これが、ルテニカ達が開いてくれた脱出口だった。
 もう少しだ。もう少しで、切れ目が開き切るのがエレクトラにもわかる。その向こうがもとの氷巌城だという確証はなかったが、信じるしかない。
 だが、あと一歩のところで異変が起きた。再び、闇の空間の思念が強まってきたのだ。
『百合香!』
 瑠魅香の叫びが響きわたる。百合香の力はもはや尽きかけており、負の思念を抑えきれなくなっていた。魔晶兵はすぐそこまで迫っている。これまでか。全員が、死を覚悟しかけたその時だった。
 突然、大地に激震が発生し、空間に亀裂のようなものが走った。
「なんだ!?」
 ヒオウギが、魔晶兵を迎え討つ体勢をとりながら周囲を見渡した。いったい何が起きたのかわからなかったが、百合香はそのチャンスに全力をこめた。
「瑠魅香、後は頼んだよ!」
 百合香は、破れかぶれに剣にありったけの力をこめる。わずかに縮小しかけていた渦が、再びその勢いを取り戻すと、百合香たち自身までもが渦に吸い込まれそうなほどの圧を生み出した。
 原因不明の謎の激震と併せて、暗黒の空間が大きく軋み始めたとき、ルテニカ達の祝詞がついに、脱出口となる光の扉を開け放つことに成功した。
「今です!」
 ルテニカが叫ぶ。全員、迷う事なく光の中に向かって駆け出すが、百合香は全ての力を使い果たし、糸の切れた人形のようにエレクトラに抱えられて崩れ落ちた。
「おい!」
 自身ももう限界の状況で、エレクトラは百合香を助けようと考えた、自分自身に驚愕を覚えた。いったい、自分は何をしているのか。
 その戸惑いなどまるで知らないかのように、抱えていた百合香が突然、紫色に輝いたかと思うと、一瞬で紫色のドレスをまとった魔女・瑠魅香の姿に変ぼうする。
「ごめんごめん、ちょっと交替するタイミングが遅れた」
「なっ…」
「ほら行くよ、エレクトラ!」
 いきなり名前を呼ばれ、エレクトラは困惑と憤慨とをまとめて瑠魅香にぶつけながら、その身を思い切り扉に向かって押し出した。
「馴れ馴れしくするな!」
 悪態をつきながら、自身もそのあとを追って駆け出す。まるで、最初からひとつのチームだったかのように。そのとき感じた奇妙な一体感は、その時の状況が生み出した幻想、錯覚だっただろうか。その戸惑いを振り切るかのように、エレクトラは光の中を走った。


 どれだけ走っただろうか。突如として光の道がぼんやりと薄くなり始め、最前面を走っていた瑠魅香の絶叫と、ガラガラと器物が崩れ、壊れる音で全員が立ち止まった。
「ぎゃあああー!」
 瑠魅香は背の低い何かに脚をひっかけ、盛大に前方に向かって転倒した。頭は打たなかったが、梁のようなものに腰や腕をしたたかに打ち付けてしまう。
「いたーい!」
「ちょっと、大丈夫?」
 リベルタは瑠魅香を起こしながら、周囲を観察した。瑠魅香は、どうやら背の低い長椅子につまづいて転んだらしい。そして、それはヒオウギやダリアには見覚えのある椅子だった。壁際には、バラバラに裂け、割れた額縁が落ちている。
「こっ、ここは…」
 そう、そこは額縁の中の氷魔、アルタネイトと戦った、あの礼拝堂だったのだ。一体なぜ、と思い、ヒオウギとダリア、瑠魅香が件の聖母像のある空間に目をむけた、その時だった。聖母像が光を失い、暗く静まり返った空間の奥で、瑠魅香の魔女帽よりも背の高い影が動いて、少女たちを向いた。その、縦にも横にも大きな体躯では、この礼拝堂も手狭に見える威圧感がある。手には何か巨大な武器を握っていた。まさか、城の兵士かと身構えた瞬間、その懐かしくも野太い声が礼拝堂に響いた。
「なんだ、お前ら。どっから出てきた」
 その頼もしい声に、リベルタと瑠魅香は心からの安堵と、そして同時に不安を覚えて駆け寄った。声の主は元氷騎士にして今はレジスタンスの用心棒、サーベラスだった。
「サーベラス様!」
「なんでここにいるの!?」
 近寄ると、サーベラスが以前の戦いで負ったダメージは、いくらかは治ってはいるように見えるが、どう見てもまだ完全復活という様子にはほど遠い。が、見た感じではピンピンしているようだった。サーベラスは、もはやメインの打撃武器であるバットで肩をトントンと叩いてみせた。
「そりゃあこっちのセリフだ。一体どっから出てきやがった。なんだなんだ、知らない顔ばっかりだが、どいつもこいつも死にかけみたいなザマじゃねえか」
「こっちゃ大変だったんだよ!!!」
 ついにキレた瑠魅香が、身の丈ほどもある杖でサーベラスを頭からしばき始めた。
「いてえな!ん?そういや百合香はどうした!」
「いま寝てるわよ!わけのわかんない空間を脱出するのに、力を使い果たしちゃったの!」
 もと氷騎士のサーベラスを単なる仲間のように扱う瑠魅香を、満身創痍のルテニカ達は唖然として見た。サーベラスが味方についた、という情報だけは伝え聞いていたが、こうして現に味方として現れた事実は、やはり衝撃が大きかった。
「信じられない…まさか、サーベラス様が来てくださるなんて」
 フリージアは、ぼろぼろで動けないでいるヒオウギを椅子に寝かせた横に座った。
「けど、どうして私たち、サーベラス様の所に出たのかしら」
「それはサーベラス様の行動の結果だと思われます。細かい理由はわかりませんが」
 プミラは、数珠を懐にしまってサーベラスの前に立った。
「お初にお目にかかります。第2層のレジスタンス、プミラと申します」
「私はルテニカ。元氷騎士のサーベラス様、お噂はかねがね」
 丁寧なあいさつにも、サーベラスはもう慣れっこのようだった。バットをしまうと、たてがみをポリポリとかいて、がれきの上に腰をおろす。
「ただのはぐれ者よ。なるほど、瑠魅香たちとつるんでるって事は、お前らもそれなりの腕とみてよさそうだな」
「それほどでもございませんわ。それより、サーベラス様。ここにあった聖母像、ひょっとしてサーベラス様が破壊されたのですか」
 ルテニカが確認を取ると、サーベラスは待ってましたとばかりに腕組みして語りだした。
「おうよ!なんだ、こっちが黙って養生してたら、どこからとなく気味の悪い唸りが聴こえてきやがるもんでな」

 サーベラスによると、ディジット戦で負ったダメージを治すためにマグショットやティージュ達とじっとしていたが、おそらく聖母像が原因と思われる鳴動があまりにも不快でもんどり打っていた。そこで、マグショットに鬱陶しいと言われた事がカンに障り、鳴動の原因を突き止めるためにウロウロしていたら、この礼拝堂に辿り着いたのだという。
「あっ、あの鳴動の中を、歩き回っていたのですか!?」
 ルテニカとプミラはじめ、全員が唖然としたが、とうのサーベラスは平然としていた。
「何だ、あんなもの。ただうるさいだけだろうが。で、ここに来てみれば、薄気味悪い像が光っていやがる。誰が仕掛けたやら知らないが、気に食わないからバットでぶち壊したら、ぱったりと音が止んだってわけだ」
「…なるほど。サーベラス様のおかげで、我々は脱出できたと」
 結果から見れば、それ以外には考えられなかった。およそ信じられないタイミングでサーベラスが聖母像に攻撃を加えたため、百合香のエネルギーとの相乗効果で、あの闇の空間を揺るがす結果になったのだ。そのため、ルテニカ達の唱える祝詞が効果を発揮し、脱出口を開く事に成功した。
「くっくっく」
「あはははは」
 とつぜん、ルテニカ・プミラの霊能者コンビが笑い出したので、つられて聞いていたリベルタ達までもが笑い出した。サーベラスは、いったい何がおかしいのかキョトンとしている。だが、瑠魅香には笑う気持ちもわかった。一時は、もう助からないと全員が思っていたのだ。
 その空気の中で、ひとりだけ鋭い視線をサーベラスに向ける者がいた。サーベラスは、その視線の主に向き直ると、わずかに凄んでみせた。
「さっきから黙ってるが、お嬢ちゃんよ。レジスタンスじゃ見ない装いだな」
 その、完全に相手が誰だか知ったうえで絡んでくる元氷騎士に、エレクトラは例によって憤りをみせた。
「…本来は第3層の氷騎士サーベラス。裏切ったのは当然知っていたが」
「俺はお前の名前は知らんが、何者かはわかる。ヒムロデ配下の暗殺者だな」
 一瞬の沈黙があったが、サーベラスは答えも聞かず続けた。
「どういう経緯かは知らんが、要するにお前らはその、わけのわからん空間に閉じ込められたわけだ。間抜けな暗殺者だな」
「きさま!」
「ふん。どうせ、百合香のやつに絡まれているうちに、敵か味方かわからなくなったんだろう、自分が」
 その指摘に、エレクトラは黙り込んだ。長椅子の端に座り込んだまま、目をそらして壁を睨む。サーベラスは笑った。
「あいつは、そういう奴だ。俺もそうだった」
「笑わせるな。きさまなど、けったいな球技にうつつをぬかし、第3層から厄介払いされただけだろうが!ちょうどいい、貴様の首をもらって、ヒムロデ様に献上してくれる!」
 立ち上がって剣を抜くエレクトラに、サーベラスはいささかも怯む様子を見せないどころか、肩をゆすって笑いだした。
「何がおかしい!」
「ふん。今のお前なんぞ、指一本で片付けられる」
「ぐっ…」
「お前さん、どうする気だ。その身体じゃ戦うどころか、ここから逃げる事もできまい」
 サーベラスの言葉で、座り込んでいた他のメンバーの視線がエレクトラに集中した。エレクトラは剣を握ったまま、いま置かれた状況にわなわなと肩をふるわせる。サーベラスは構わず続けた。
「まあ、俺たちとしちゃあ、お前を逃がすわけにはいかん。何しろお前は、敵の総大将に極めて近いところにいる。そうだろ、百合香」
 サーベラスは、瑠魅香の中にいる百合香に呼びかけた。すると、ようやく目が覚めたらしい百合香が、瑠魅香と身体を交替して現れた。
「まさか、あなたが来てくれるとはね、サーベラス」
「なりゆきってやつだ」
「そうね」
 百合香はエレクトラの前に立つと、まず剣を収めさせた。エレクトラは不満を露わにしつつ、それに従う。百合香はしばし考え込んだのち、エレクトラが考えもしなかった提案をしてみせた。
「エレクトラ。あなたはどうしたい?」
 何を考えているんだ、という視線がレジスタンスのメンバーのみならず、当のエレクトラからも百合香に向けられた。
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