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氷晶華繚乱篇
告白
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黒い少女氷魔と兵士の群れは、歩速こそ緩やかなものの、間違いなくリリィ=百合香とエレクトラを追ってきていた。手には剣や槍が握られている。
「私達のファンかしらね」
「握手を求めているようには見えないがな」
走りながら、ふたりは苦し紛れの冗談を飛ばす。この混沌とした空間では、もう何が起きても不思議はないと思い始めていた。
「どれくらいだ」
「さあ。ざっと見て千はくだらないかも」
「倒せるか」
エレクトラの簡潔な問いに、リリィは即答できなかった。百や二百なら片付けられるが、それ以上となると、いかにふたりが実力者であっても限界がある。そのうえ、ふたりはここまで数多くの戦闘を経ており、エネルギーの消耗があった。
「戦えるか」
エレクトラの声色に皮肉が含まれていない事が、リリィには堪えた。互いに、消耗している事は明らかだったからだ。
おまけに、この謎の空間から脱出する方法はあるのか、という恐怖を、改めて認識せざるを得なくなる。逃げ場がない以上このままではいずれ、あの黒い兵士達に殺されるのは目に見えていた。
そこで今さらだが、リリィは考えた。リベルタ達はどうしたのか。ヒオウギやルテニカ、プミラ、フリージア、ダリアは。もし、同じように自分自身の複製と遭遇したのなら、切り抜けることはできたのか。そして、リリィの内側から消えてしまった瑠魅香は。
最悪の想像が頭をよぎったその瞬間、それは起きた。ふたりの眼前に、突如として雷光が轟き、霧の底の岩盤を揺るがしたのだ。
「うっ!」
「なっ、なに!?」
否応なくふたりは立ち止まる。一体何が起きたのか。とっさに後ろを振り向くと、立て続けにそれは襲ってきた。
「なんだ!?」
エレクトラは叫ぶ。それは、あたかも横倒しになった、渦巻く雷光の槍だった。それが、リリィとエレクトラめがけて凄まじい速度で飛来する。触れたら終わりだと理解したふたりは、即座に左右に飛んだ。
虚空を突き抜けた雷光は、遠くで爆裂して空間を照らす。その、既視感のある光景にリリィは背筋が凍りついた。
「まっ…まさか」
考えたくはない、と感じる暇も与えず、次の攻撃が黒い兵士達の間をぬって飛んできた。それは、エレクトラにとって衝撃の光景だった。
「なんだと!?」
それは、紫色の渦巻く炎だった。炎は、他の兵士達を打ち砕きながら突進してくる。今度はエレクトラをまっすぐに狙っていた。
一瞬、防御態勢が遅れたエレクトラは、破れかぶれに剣を突き立てて構えた。だが、その眼前にリリィが割って入る。リリィは白銀に光る剣を鏡のように一閃させ、瞬間的に障壁を形成してその炎を受け止めた。
だが、その障壁は容易く破られ、リリィとエレクトラは共に大きく吹き飛ばされてしまう。
「うああーっ!」
「ぐはっ!」
受け身も取れないまま、ふたりは岩盤に投げ出された。
「こっ、この攻撃…まさか」
エレクトラは、向かってくる黒い群れを睨む。だが、闇の中を進む漆黒の群れの中の、敵の識別は不可能だった。
「リベルタか!?」
エレクトラは即座に臨戦態勢を取る。この空間に来る前、リベルタの放ったエネルギー波の威力は自身も見ていた。だが、リリィは剣を構えながら、推測と訂正をのべた。
「違う…リベルタじゃない」
「なんだと」
突然険しい表情になったリリィを、エレクトラは訝った。
「お前の知っている相手か、リリィ」
「そうでない事を祈りたいけれど」
その声色には、絶望と恐怖の両方が含まれていた。エレクトラは思わず声をあげる。
「いったい、何者なんだ!」
「気をつけて。もし、あいつだとしたら…今の私達では勝てないかも知れない」
それが単に、気分だけの言葉でない事はエレクトラにはわかった。リリィは今、なにか強大な相手の存在に恐れ慄いている。だがエレクトラは、恐れる事なく剣を構えると、敵に向かって前進を始めた。
「エレクトラ!」
「お前が何者を、それほど恐れているのかはわからん。だが、相手が何者か確かめないうちは、どうにもなるまい」
エレクトラは構わず前進を続ける。リリィはつい叫んだ。
「もし瑠魅香の複製が相手だったら、今の私達じゃ勝てない!」
そこでようやく、エレクトラは立ち止まった。前を向いたまま、リリィに確認する。
「さっきも言った名前だな。ルミカ。それが、お前の恐れる相手の名か」
「今の魔法は間違いなく瑠魅香のものよ!簡単に勝てるとは思わないで!」
言っているそばから、再び紫色の炎の渦が飛来した。今度は先刻のものより小さいが、6発が同時に四方八方から襲いかかってくる。
「シャドウストーム!」
エレクトラが一回転するように剣を薙ぐと、黒い竜巻が起こり、飛来した炎を弾き飛ばした。
「ふん。これしきのこと、何を恐れるものか!」
エレクトラは不敵に笑うと、突撃態勢を取る。だが、次の瞬間それは驚愕に変わった。
「なにっ!」
弾き飛ばしたはずの炎はまだ生きており、それがエレクトラ自身の竜巻と一体化すると、炎の竜巻となって襲いかかってきた。
「ばっ、ばかな!」
「エレクトラ!」
とっさにリリィは剣をエネルギーを込め、紫色の竜巻に向けて渾身の一撃を放った。斬撃ではない、圧力を伴った強烈な波動が、炎の竜巻と正面から衝突し、凄まじい衝撃波を残して対消滅する。リリィはエレクトラの頭を押さえて、強引に伏せさせた。
凄まじい衝撃波によって、追ってきていた漆黒の兵士達は吹き飛んでしまう。だが、視界が晴れたとき、霞の向こうに立っているそのシルエットにリリィは背筋が凍りついた。
他の兵士達とは違う、胸もとの開いたローブに、長いブーツ。切り揃えた真っ直ぐな髪の上には、広いつばを持った三角帽子を被っている。前髪の下にある漆黒の顔面には、紅い瞳が鋭く光っていた。
「瑠魅香!」
リリィ=百合香は叫ぶ。この空間に来てから姿を消していた相棒が、漆黒の姿を現したのだ。だが、同時に百合香は、最悪の想像に恐怖した。
いま、目の前にいる瑠魅香は、ほかの兵士と同様に、肌まで漆黒の姿をしている。唯一、瞳だけが百合香と同じく紅の輝きを備えているのが違いだ。
この瑠魅香は今、間違いなく百合香と、エレクトラを狙って攻撃を加えてきた。もし自分達と同じように、瑠魅香も自らの複製と遭遇したとしたら。そしてもし、敗れ去ってしまったとしたら。瑠魅香はもう、あの漆黒の瑠魅香に取り込まれてしまったのではないのか。
だが、そんな百合香の不安は無視して、迷う事なく剣を構えて立ち向かう者がいた。
「…黒髪の魔女、か」
エレクトラは横目にリリィを見る。
「なるほど。ようやく合点がいった。リリィ、お前は第一層で死んだ、あの金髪の侵入者と繋がりがあったという事だな。奴の周囲に、現れては消えるという、謎の黒髪の魔女。それがこの瑠魅香か」
エレクトラの理解は僅かに真実を逸れていたが、極めて近い所にはあった。瑠魅香は、百合香の瞳を見据えたまま動かなかった。だが、エレクトラは違った。
「黒髪の魔女!相手にとって不足はない!」
恐るべき俊足で、エレクトラは漆黒の瑠魅香に向かって踏み込んだ。絶対零度の白刃が、その首を捉えるかに見えた。だが、エレクトラは己の迂闊さに気付く時間もなかった。
「なにっ!」
エレクトラの脚を、何かが絡め取った。それは、足下の霧の底に潜んでいた、魔力のワイヤーだった。エレクトラは後退してそれを解こうと試みたが、その一瞬の隙を狙って、巨大な紅いリングがエレクトラの周囲に展開し、首を狙って収束を開始した。
「うおおっ!」
百合香はその光景に驚愕した。その、相手の油断を突く戦法は紛れもなく、瑠魅香のものだったからだ。
エレクトラはすんでの所で、剣でリングを打ち砕く事に成功した。だが、そこへ続けざまに、無数の氷の結晶状の刃が四方八方から襲いかかる。
「なめるな!」
エレクトラは脚を絡めるワイヤーを切断すると、円舞のような華麗な動きで、氷の結晶を全て払いのけ、打ち砕いてしまった。百合香はエレクトラの実力にも改めて驚いたものの、対峙している瑠魅香にどう対処すべきか、いまだ迷いの中にあった。
もし、この瑠魅香が、本物の瑠魅香だったら。その疑念が、百合香の剣を止めさせる。百合香は、迷いと戦慄を同時に抱えたまま、剣をだらりと下げている事しかできなかった。
「そこで黙っているなら、それもよかろう。こいつの正体が何なのか知らんが、複製であろうとも、お前の相棒とやらが如何ほどの手練れか、わかるというもの。手出しはするなよ!」
エレクトラは当たり前の事ながら、何を迷う必要もない。もともと百合香も瑠魅香も、エレクトラにとっては主君に逆らう敵である。
そこで百合香は、あらぬ事――いや、むしろ本来なら選ぶべき選択を考えた。
ここで漆黒の瑠魅香に「加勢」し、エレクトラを倒してしまう。
それこそ今ここで、百合香が採るべき選択ではないのか。エレクトラは、百合香の住む世界を凍結させ、死と混乱に追い込んでいる、憎むべき氷魔たちの一体である。しかも、皇帝側近直属の剣士となれば、この最大の好機に倒しておくのは当然のことだ。
そのとき、エレクトラの絶叫が百合香の意識を現実に引き戻した。
「ぐわあーっ!」
エレクトラは、瑠魅香が放った波動に弾き飛ばされ、百合香の手前に激しく転げた。剣を取り落としたエレクトラの首が、百合香の足下にあった。
百合香は、地面に向いた聖剣アグニシオンの切っ先を、無意識にエレクトラの首に向けていた。すると、エレクトラは不敵に笑った。
「ふっ、そうだな。お前は最初から私の敵だ」
エレクトラは、一切恐れることも、命乞いもしなかった。情けない姿勢のまま、堂々と百合香の目を見据えていた。
「いいだろう。だが、私が一瞬早く剣を拾い上げ、お前の喉笛を斬り裂く事だって出来るかもしれんぞ」
エレクトラの剣は、確かに拾える位置にある。その素早さが、百合香を上回る可能性はあった。だが、その可能性を加味しても、やはりいま、百合香は絶好の位置にいる。エレクトラの首を落とすための。
ほんの僅か、1秒の千分の1にも満たない瞬間、間違いなく百合香に、冷酷な殺意が芽生えた。だが次の瞬間、百合香の手を何かが止めた。
「うっ!?」
百合香は、それが何なのか認識するまで、数秒を要した。それは、エレクトラの首に向けられた、聖剣アグニシオンから伝わってくる”何か”だった。
それは確かに、百合香の心に作用した。お前の選択は真実ではない。真実のお前ではない。自分を取り戻せ、と語りかけていた。そして、エレクトラに向けて、瑠魅香から巨大な漆黒の槍が放たれたのは、その時だった。
エレクトラの運命は決しているかのように見えた。だが、激しい破壊音がエレクトラの目を見開かせた。
「なに!?」
エレクトラの眼前にあるのは、自らを跨いで剣を振るう百合香の姿だった。百合香が振るった聖剣アグニシオンによって、瑠魅香が生成した漆黒の槍は打ち砕かれたのだ。
「リリィ、きさま…」
憤りとも取れる呻きをエレクトラは発した。百合香は、口を結んで険しい表情のまま、眼前の漆黒の相棒を睨んだ。エレクトラは叫ぶ。
「どういうつもりだ!」
「知らないわよ!」
百合香の叫びが虚空に響く。
「あんたは敵よ!憎たらしい敵!けど、私の中の何かが、こうしろって言うの!」
聖剣アグニシオンの切っ先は、まっすぐに瑠魅香へと向けられていた。百合香は戸惑っていた。迷いなく目の前の瑠魅香を倒そうとする、自分への戸惑いだった。
だが、それが単なる感情的な理由だけではない、という理解が百合香にはあった。
「エレクトラ、力を貸して」
「…なに」
「もう、私もだいぶ消耗してるからね。あいつを倒せる自信はない」
その選択に、エレクトラはかすかに目を瞠った。よろよろと剣を立てて立ち上がると、百合香と共に正面を向く。
「奴がお前の相棒だったら、どうする気だ。仲間を倒す気か。私は一向に構わんが」
「根拠はない。けれど、あいつがここで現れてくれたのは、ひょっとしたらチャンスかも知れない」
「…何を言っているのかわからんが」
エレクトラは考えるのは面倒とばかりに、突進する態勢をとった。
「いいんだな」
「黙っていても、こっちが負けるだけよ。いい、エレクトラ。私が隙を作る。あなたが、あいつの首を刎ねて」
その、冷酷なまでの作戦に、エレクトラはつい吹き出した。
「言いたくはないが、お前の性格は私の好みだ」
「気持ち悪いこと言ってる余裕があるなら、大丈夫みたいね」
「ふん」
ふたりは、一歩踏み出す。瑠魅香は無表情のまま、エネルギーがいったん消耗したのか、じっと動かないでいた。チャンスは今しかない、と百合香は考えた。
「私ももう、2回か3回が技を放てる限界だからね。エレクトラ、あなたの速さに賭けるわ」
「いいだろう」
エレクトラが言ったタイミングで、百合香は飛び出した。剣にはすでにエネルギーが満ちている。
すると、百合香の接近を待ち構えていたかのように、真っ白に光る電撃のネットが百合香に覆いかぶさった。
「リリィ!」
エレクトラが叫ぶ。だが、百合香はすでにそれを見切っていた。剣が閃くと、無数のエネルギーの刃が舞い、ネットを斬り裂く。すかさず百合香は跳躍し、大上段から一気に聖剣アグニシオンを振り下ろした。
「ゴッデス・エンフォースメント!」
混沌の空間をも揺るがす重力の刃が、瑠魅香に襲いかかる。だが、瑠魅香は瞬間的に魔力の障壁を展開した。
百合香のエネルギーが消耗しているのは、目に見えてわかった。障壁を一撃で破る事ができない。だが、百合香は全力を込めた。
「でやぁーっ!」
凄まじい衝撃波とともに、障壁が打ち砕かれる。その余波で、百合香と瑠魅香は互いに弾き飛ばされた。
「エレクトラーっ!」
百合香が叫んだが早いか、エレクトラは豹のようなスピードで踏み込み、ひと思いに剣を一閃させた。
「シャドウ・ファング!」
暗黒の刃が、瑠魅香の首を捉える。長い黒髪が風に舞い、鈍い音を立てて岩盤に落ちた。首を失った胴体も、事切れて霧の中に倒れる。
そのときはっきりしたのは、その瑠魅香の身体は、氷魔のような固体だったことだ。関節は球体人形のようであり、氷魔のそれと同じだったが、色は黒曜石のようだった。
ほかの個体と同じように、その姿はしだいに霧のようにおぼろげになっていった。だが、他と異なる現象があった。
「なんだ!?」
断ち切ったばかりの亡骸に、エレクトラは驚愕した。文字通り霧散するかと見えたが、それはあたかも亡霊であるかのように、人の姿をとって浮遊しているのだ。それは、いま倒した瑠魅香の幽体だった。ただし肌は白く、首から下は姿があるのかないのか、はっきりとしていない。その目は行き場を失って虚ろだった。
呆然としているエレクトラの背後で、百合香が叫んだ。
「瑠魅香!」
その声に、幽体は微かに反応した。
「瑠魅香、ここよ!私はここ!百合香よ!」
その名に、エレクトラは何度目かの驚愕を覚え、リリィ、否、百合香と名を改めた剣士を見た。
「瑠魅香!」
二度、三度と呼びかけるごとに、瑠魅香の姿は少しずつ明りょうになってゆく。白い肌を、紫色のローブがまとっていった。エレクトラは、噂に聞いていた黒髪の魔女の出現を目の当たりにし、言葉を失っていた。
瑠魅香は、ゆっくりと百合香に近付くと、微笑んでその掌を重ねた。瑠魅香の姿は紫色の炎となり、百合香の身体に重なるように消えてゆく。そのとき、百合香はいつもの感覚を取り戻したことに安堵し、その瞳から涙が流れた。
「おかえり、瑠魅香」
『ただいま、百合香』
「もう、いなくなっちゃったのかと思った」
百合香はいつしか、二人が一体であるのが当たり前になっていた。頼もしい相棒、そして親友が一緒にいる。失われた気力が戻って来るような、それは安心だった。
だが、その様子に鋭い目を向ける者がいた。
「ユリカだと」
エレクトラは、最初に対峙した時のような眼光で、リリィもとい百合香を睨んだ。
「それは第1層で死んだはずの、金髪の剣士の名だ!」
剣先が百合香に向けられる。百合香は涙を拭った瞳で、エレクトラに向き直ると言い放った。
「そうよ、私は人間。あなた達によって凍結させられた世界の住人。あなた達は私を、侵入者と呼んでいるようだけれど」
それは、たったひとりで人類、いや地球を代表した宣言だった。
「私は私の世界、いえ、ささやかな人生を取り戻すために戦う。なぜ私に、こんな力が備わっているのかはわからないけれどね」
「そうか。そういうことか」
突然、エレクトラはうつむいたかと思うと、肩を震わせ始めた。
「くくく、なるほど。見事なものだ。死んだと見せかけて、実はレジスタンスどもと通じて、行動を続けていたとはな」
「どうする?今、私は瑠魅香が戻ったことで、僅かだけれどエネルギーを取り戻した。もう、あなたに私を倒せるだけの力は残っていないかも知れないわね」
そう言いながらも、百合香は聖剣アグニシオンを胸のうちに収めてしまう。その行為に、エレクトラは眉をひそめた。
「私を愚弄するつもりか」
「愚弄?」
「ふざけるな。決着をつける絶好の機会を、みすみす逃すというのか。私は勝利を譲られるつもりはない」
すると、今度は百合香が笑い出した。
「ふふふ、本当に奇妙な人ね。隠密というより、プライドの高い戦士だわ」
「なんだと」
「エレクトラ。私はあなた達が憎い。だから氷巌城は何としてでも、私の手で打ち砕く」
それは、百合香が初めて、氷巌城という相手に向けて宣戦布告をした瞬間だった。
「けれどね、それとは別に、私の中に奇妙な感覚がある事を、私は否定できずにいる」
「…どういう意味だ」
「私はなぜか今、あなたに対して友情を感じているの」
その告白を受けて、呆然としているエレクトラを百合香は穏やかな目で見た。混沌の空間でたたずむ二人のもとに、霧の向こうから、百合香がよく知っている足音と声が聞こえてきた。
「私達のファンかしらね」
「握手を求めているようには見えないがな」
走りながら、ふたりは苦し紛れの冗談を飛ばす。この混沌とした空間では、もう何が起きても不思議はないと思い始めていた。
「どれくらいだ」
「さあ。ざっと見て千はくだらないかも」
「倒せるか」
エレクトラの簡潔な問いに、リリィは即答できなかった。百や二百なら片付けられるが、それ以上となると、いかにふたりが実力者であっても限界がある。そのうえ、ふたりはここまで数多くの戦闘を経ており、エネルギーの消耗があった。
「戦えるか」
エレクトラの声色に皮肉が含まれていない事が、リリィには堪えた。互いに、消耗している事は明らかだったからだ。
おまけに、この謎の空間から脱出する方法はあるのか、という恐怖を、改めて認識せざるを得なくなる。逃げ場がない以上このままではいずれ、あの黒い兵士達に殺されるのは目に見えていた。
そこで今さらだが、リリィは考えた。リベルタ達はどうしたのか。ヒオウギやルテニカ、プミラ、フリージア、ダリアは。もし、同じように自分自身の複製と遭遇したのなら、切り抜けることはできたのか。そして、リリィの内側から消えてしまった瑠魅香は。
最悪の想像が頭をよぎったその瞬間、それは起きた。ふたりの眼前に、突如として雷光が轟き、霧の底の岩盤を揺るがしたのだ。
「うっ!」
「なっ、なに!?」
否応なくふたりは立ち止まる。一体何が起きたのか。とっさに後ろを振り向くと、立て続けにそれは襲ってきた。
「なんだ!?」
エレクトラは叫ぶ。それは、あたかも横倒しになった、渦巻く雷光の槍だった。それが、リリィとエレクトラめがけて凄まじい速度で飛来する。触れたら終わりだと理解したふたりは、即座に左右に飛んだ。
虚空を突き抜けた雷光は、遠くで爆裂して空間を照らす。その、既視感のある光景にリリィは背筋が凍りついた。
「まっ…まさか」
考えたくはない、と感じる暇も与えず、次の攻撃が黒い兵士達の間をぬって飛んできた。それは、エレクトラにとって衝撃の光景だった。
「なんだと!?」
それは、紫色の渦巻く炎だった。炎は、他の兵士達を打ち砕きながら突進してくる。今度はエレクトラをまっすぐに狙っていた。
一瞬、防御態勢が遅れたエレクトラは、破れかぶれに剣を突き立てて構えた。だが、その眼前にリリィが割って入る。リリィは白銀に光る剣を鏡のように一閃させ、瞬間的に障壁を形成してその炎を受け止めた。
だが、その障壁は容易く破られ、リリィとエレクトラは共に大きく吹き飛ばされてしまう。
「うああーっ!」
「ぐはっ!」
受け身も取れないまま、ふたりは岩盤に投げ出された。
「こっ、この攻撃…まさか」
エレクトラは、向かってくる黒い群れを睨む。だが、闇の中を進む漆黒の群れの中の、敵の識別は不可能だった。
「リベルタか!?」
エレクトラは即座に臨戦態勢を取る。この空間に来る前、リベルタの放ったエネルギー波の威力は自身も見ていた。だが、リリィは剣を構えながら、推測と訂正をのべた。
「違う…リベルタじゃない」
「なんだと」
突然険しい表情になったリリィを、エレクトラは訝った。
「お前の知っている相手か、リリィ」
「そうでない事を祈りたいけれど」
その声色には、絶望と恐怖の両方が含まれていた。エレクトラは思わず声をあげる。
「いったい、何者なんだ!」
「気をつけて。もし、あいつだとしたら…今の私達では勝てないかも知れない」
それが単に、気分だけの言葉でない事はエレクトラにはわかった。リリィは今、なにか強大な相手の存在に恐れ慄いている。だがエレクトラは、恐れる事なく剣を構えると、敵に向かって前進を始めた。
「エレクトラ!」
「お前が何者を、それほど恐れているのかはわからん。だが、相手が何者か確かめないうちは、どうにもなるまい」
エレクトラは構わず前進を続ける。リリィはつい叫んだ。
「もし瑠魅香の複製が相手だったら、今の私達じゃ勝てない!」
そこでようやく、エレクトラは立ち止まった。前を向いたまま、リリィに確認する。
「さっきも言った名前だな。ルミカ。それが、お前の恐れる相手の名か」
「今の魔法は間違いなく瑠魅香のものよ!簡単に勝てるとは思わないで!」
言っているそばから、再び紫色の炎の渦が飛来した。今度は先刻のものより小さいが、6発が同時に四方八方から襲いかかってくる。
「シャドウストーム!」
エレクトラが一回転するように剣を薙ぐと、黒い竜巻が起こり、飛来した炎を弾き飛ばした。
「ふん。これしきのこと、何を恐れるものか!」
エレクトラは不敵に笑うと、突撃態勢を取る。だが、次の瞬間それは驚愕に変わった。
「なにっ!」
弾き飛ばしたはずの炎はまだ生きており、それがエレクトラ自身の竜巻と一体化すると、炎の竜巻となって襲いかかってきた。
「ばっ、ばかな!」
「エレクトラ!」
とっさにリリィは剣をエネルギーを込め、紫色の竜巻に向けて渾身の一撃を放った。斬撃ではない、圧力を伴った強烈な波動が、炎の竜巻と正面から衝突し、凄まじい衝撃波を残して対消滅する。リリィはエレクトラの頭を押さえて、強引に伏せさせた。
凄まじい衝撃波によって、追ってきていた漆黒の兵士達は吹き飛んでしまう。だが、視界が晴れたとき、霞の向こうに立っているそのシルエットにリリィは背筋が凍りついた。
他の兵士達とは違う、胸もとの開いたローブに、長いブーツ。切り揃えた真っ直ぐな髪の上には、広いつばを持った三角帽子を被っている。前髪の下にある漆黒の顔面には、紅い瞳が鋭く光っていた。
「瑠魅香!」
リリィ=百合香は叫ぶ。この空間に来てから姿を消していた相棒が、漆黒の姿を現したのだ。だが、同時に百合香は、最悪の想像に恐怖した。
いま、目の前にいる瑠魅香は、ほかの兵士と同様に、肌まで漆黒の姿をしている。唯一、瞳だけが百合香と同じく紅の輝きを備えているのが違いだ。
この瑠魅香は今、間違いなく百合香と、エレクトラを狙って攻撃を加えてきた。もし自分達と同じように、瑠魅香も自らの複製と遭遇したとしたら。そしてもし、敗れ去ってしまったとしたら。瑠魅香はもう、あの漆黒の瑠魅香に取り込まれてしまったのではないのか。
だが、そんな百合香の不安は無視して、迷う事なく剣を構えて立ち向かう者がいた。
「…黒髪の魔女、か」
エレクトラは横目にリリィを見る。
「なるほど。ようやく合点がいった。リリィ、お前は第一層で死んだ、あの金髪の侵入者と繋がりがあったという事だな。奴の周囲に、現れては消えるという、謎の黒髪の魔女。それがこの瑠魅香か」
エレクトラの理解は僅かに真実を逸れていたが、極めて近い所にはあった。瑠魅香は、百合香の瞳を見据えたまま動かなかった。だが、エレクトラは違った。
「黒髪の魔女!相手にとって不足はない!」
恐るべき俊足で、エレクトラは漆黒の瑠魅香に向かって踏み込んだ。絶対零度の白刃が、その首を捉えるかに見えた。だが、エレクトラは己の迂闊さに気付く時間もなかった。
「なにっ!」
エレクトラの脚を、何かが絡め取った。それは、足下の霧の底に潜んでいた、魔力のワイヤーだった。エレクトラは後退してそれを解こうと試みたが、その一瞬の隙を狙って、巨大な紅いリングがエレクトラの周囲に展開し、首を狙って収束を開始した。
「うおおっ!」
百合香はその光景に驚愕した。その、相手の油断を突く戦法は紛れもなく、瑠魅香のものだったからだ。
エレクトラはすんでの所で、剣でリングを打ち砕く事に成功した。だが、そこへ続けざまに、無数の氷の結晶状の刃が四方八方から襲いかかる。
「なめるな!」
エレクトラは脚を絡めるワイヤーを切断すると、円舞のような華麗な動きで、氷の結晶を全て払いのけ、打ち砕いてしまった。百合香はエレクトラの実力にも改めて驚いたものの、対峙している瑠魅香にどう対処すべきか、いまだ迷いの中にあった。
もし、この瑠魅香が、本物の瑠魅香だったら。その疑念が、百合香の剣を止めさせる。百合香は、迷いと戦慄を同時に抱えたまま、剣をだらりと下げている事しかできなかった。
「そこで黙っているなら、それもよかろう。こいつの正体が何なのか知らんが、複製であろうとも、お前の相棒とやらが如何ほどの手練れか、わかるというもの。手出しはするなよ!」
エレクトラは当たり前の事ながら、何を迷う必要もない。もともと百合香も瑠魅香も、エレクトラにとっては主君に逆らう敵である。
そこで百合香は、あらぬ事――いや、むしろ本来なら選ぶべき選択を考えた。
ここで漆黒の瑠魅香に「加勢」し、エレクトラを倒してしまう。
それこそ今ここで、百合香が採るべき選択ではないのか。エレクトラは、百合香の住む世界を凍結させ、死と混乱に追い込んでいる、憎むべき氷魔たちの一体である。しかも、皇帝側近直属の剣士となれば、この最大の好機に倒しておくのは当然のことだ。
そのとき、エレクトラの絶叫が百合香の意識を現実に引き戻した。
「ぐわあーっ!」
エレクトラは、瑠魅香が放った波動に弾き飛ばされ、百合香の手前に激しく転げた。剣を取り落としたエレクトラの首が、百合香の足下にあった。
百合香は、地面に向いた聖剣アグニシオンの切っ先を、無意識にエレクトラの首に向けていた。すると、エレクトラは不敵に笑った。
「ふっ、そうだな。お前は最初から私の敵だ」
エレクトラは、一切恐れることも、命乞いもしなかった。情けない姿勢のまま、堂々と百合香の目を見据えていた。
「いいだろう。だが、私が一瞬早く剣を拾い上げ、お前の喉笛を斬り裂く事だって出来るかもしれんぞ」
エレクトラの剣は、確かに拾える位置にある。その素早さが、百合香を上回る可能性はあった。だが、その可能性を加味しても、やはりいま、百合香は絶好の位置にいる。エレクトラの首を落とすための。
ほんの僅か、1秒の千分の1にも満たない瞬間、間違いなく百合香に、冷酷な殺意が芽生えた。だが次の瞬間、百合香の手を何かが止めた。
「うっ!?」
百合香は、それが何なのか認識するまで、数秒を要した。それは、エレクトラの首に向けられた、聖剣アグニシオンから伝わってくる”何か”だった。
それは確かに、百合香の心に作用した。お前の選択は真実ではない。真実のお前ではない。自分を取り戻せ、と語りかけていた。そして、エレクトラに向けて、瑠魅香から巨大な漆黒の槍が放たれたのは、その時だった。
エレクトラの運命は決しているかのように見えた。だが、激しい破壊音がエレクトラの目を見開かせた。
「なに!?」
エレクトラの眼前にあるのは、自らを跨いで剣を振るう百合香の姿だった。百合香が振るった聖剣アグニシオンによって、瑠魅香が生成した漆黒の槍は打ち砕かれたのだ。
「リリィ、きさま…」
憤りとも取れる呻きをエレクトラは発した。百合香は、口を結んで険しい表情のまま、眼前の漆黒の相棒を睨んだ。エレクトラは叫ぶ。
「どういうつもりだ!」
「知らないわよ!」
百合香の叫びが虚空に響く。
「あんたは敵よ!憎たらしい敵!けど、私の中の何かが、こうしろって言うの!」
聖剣アグニシオンの切っ先は、まっすぐに瑠魅香へと向けられていた。百合香は戸惑っていた。迷いなく目の前の瑠魅香を倒そうとする、自分への戸惑いだった。
だが、それが単なる感情的な理由だけではない、という理解が百合香にはあった。
「エレクトラ、力を貸して」
「…なに」
「もう、私もだいぶ消耗してるからね。あいつを倒せる自信はない」
その選択に、エレクトラはかすかに目を瞠った。よろよろと剣を立てて立ち上がると、百合香と共に正面を向く。
「奴がお前の相棒だったら、どうする気だ。仲間を倒す気か。私は一向に構わんが」
「根拠はない。けれど、あいつがここで現れてくれたのは、ひょっとしたらチャンスかも知れない」
「…何を言っているのかわからんが」
エレクトラは考えるのは面倒とばかりに、突進する態勢をとった。
「いいんだな」
「黙っていても、こっちが負けるだけよ。いい、エレクトラ。私が隙を作る。あなたが、あいつの首を刎ねて」
その、冷酷なまでの作戦に、エレクトラはつい吹き出した。
「言いたくはないが、お前の性格は私の好みだ」
「気持ち悪いこと言ってる余裕があるなら、大丈夫みたいね」
「ふん」
ふたりは、一歩踏み出す。瑠魅香は無表情のまま、エネルギーがいったん消耗したのか、じっと動かないでいた。チャンスは今しかない、と百合香は考えた。
「私ももう、2回か3回が技を放てる限界だからね。エレクトラ、あなたの速さに賭けるわ」
「いいだろう」
エレクトラが言ったタイミングで、百合香は飛び出した。剣にはすでにエネルギーが満ちている。
すると、百合香の接近を待ち構えていたかのように、真っ白に光る電撃のネットが百合香に覆いかぶさった。
「リリィ!」
エレクトラが叫ぶ。だが、百合香はすでにそれを見切っていた。剣が閃くと、無数のエネルギーの刃が舞い、ネットを斬り裂く。すかさず百合香は跳躍し、大上段から一気に聖剣アグニシオンを振り下ろした。
「ゴッデス・エンフォースメント!」
混沌の空間をも揺るがす重力の刃が、瑠魅香に襲いかかる。だが、瑠魅香は瞬間的に魔力の障壁を展開した。
百合香のエネルギーが消耗しているのは、目に見えてわかった。障壁を一撃で破る事ができない。だが、百合香は全力を込めた。
「でやぁーっ!」
凄まじい衝撃波とともに、障壁が打ち砕かれる。その余波で、百合香と瑠魅香は互いに弾き飛ばされた。
「エレクトラーっ!」
百合香が叫んだが早いか、エレクトラは豹のようなスピードで踏み込み、ひと思いに剣を一閃させた。
「シャドウ・ファング!」
暗黒の刃が、瑠魅香の首を捉える。長い黒髪が風に舞い、鈍い音を立てて岩盤に落ちた。首を失った胴体も、事切れて霧の中に倒れる。
そのときはっきりしたのは、その瑠魅香の身体は、氷魔のような固体だったことだ。関節は球体人形のようであり、氷魔のそれと同じだったが、色は黒曜石のようだった。
ほかの個体と同じように、その姿はしだいに霧のようにおぼろげになっていった。だが、他と異なる現象があった。
「なんだ!?」
断ち切ったばかりの亡骸に、エレクトラは驚愕した。文字通り霧散するかと見えたが、それはあたかも亡霊であるかのように、人の姿をとって浮遊しているのだ。それは、いま倒した瑠魅香の幽体だった。ただし肌は白く、首から下は姿があるのかないのか、はっきりとしていない。その目は行き場を失って虚ろだった。
呆然としているエレクトラの背後で、百合香が叫んだ。
「瑠魅香!」
その声に、幽体は微かに反応した。
「瑠魅香、ここよ!私はここ!百合香よ!」
その名に、エレクトラは何度目かの驚愕を覚え、リリィ、否、百合香と名を改めた剣士を見た。
「瑠魅香!」
二度、三度と呼びかけるごとに、瑠魅香の姿は少しずつ明りょうになってゆく。白い肌を、紫色のローブがまとっていった。エレクトラは、噂に聞いていた黒髪の魔女の出現を目の当たりにし、言葉を失っていた。
瑠魅香は、ゆっくりと百合香に近付くと、微笑んでその掌を重ねた。瑠魅香の姿は紫色の炎となり、百合香の身体に重なるように消えてゆく。そのとき、百合香はいつもの感覚を取り戻したことに安堵し、その瞳から涙が流れた。
「おかえり、瑠魅香」
『ただいま、百合香』
「もう、いなくなっちゃったのかと思った」
百合香はいつしか、二人が一体であるのが当たり前になっていた。頼もしい相棒、そして親友が一緒にいる。失われた気力が戻って来るような、それは安心だった。
だが、その様子に鋭い目を向ける者がいた。
「ユリカだと」
エレクトラは、最初に対峙した時のような眼光で、リリィもとい百合香を睨んだ。
「それは第1層で死んだはずの、金髪の剣士の名だ!」
剣先が百合香に向けられる。百合香は涙を拭った瞳で、エレクトラに向き直ると言い放った。
「そうよ、私は人間。あなた達によって凍結させられた世界の住人。あなた達は私を、侵入者と呼んでいるようだけれど」
それは、たったひとりで人類、いや地球を代表した宣言だった。
「私は私の世界、いえ、ささやかな人生を取り戻すために戦う。なぜ私に、こんな力が備わっているのかはわからないけれどね」
「そうか。そういうことか」
突然、エレクトラはうつむいたかと思うと、肩を震わせ始めた。
「くくく、なるほど。見事なものだ。死んだと見せかけて、実はレジスタンスどもと通じて、行動を続けていたとはな」
「どうする?今、私は瑠魅香が戻ったことで、僅かだけれどエネルギーを取り戻した。もう、あなたに私を倒せるだけの力は残っていないかも知れないわね」
そう言いながらも、百合香は聖剣アグニシオンを胸のうちに収めてしまう。その行為に、エレクトラは眉をひそめた。
「私を愚弄するつもりか」
「愚弄?」
「ふざけるな。決着をつける絶好の機会を、みすみす逃すというのか。私は勝利を譲られるつもりはない」
すると、今度は百合香が笑い出した。
「ふふふ、本当に奇妙な人ね。隠密というより、プライドの高い戦士だわ」
「なんだと」
「エレクトラ。私はあなた達が憎い。だから氷巌城は何としてでも、私の手で打ち砕く」
それは、百合香が初めて、氷巌城という相手に向けて宣戦布告をした瞬間だった。
「けれどね、それとは別に、私の中に奇妙な感覚がある事を、私は否定できずにいる」
「…どういう意味だ」
「私はなぜか今、あなたに対して友情を感じているの」
その告白を受けて、呆然としているエレクトラを百合香は穏やかな目で見た。混沌の空間でたたずむ二人のもとに、霧の向こうから、百合香がよく知っている足音と声が聞こえてきた。
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