絶対零度女学園

ミカ塚原

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氷晶華繚乱篇

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 マグショットが本気の構えを見せたのに呼応して、ロードライトはあたかも舞踊家が舞う直前のように、凛とした構えを取る。
「その本気の実力は水晶騎士にすら匹敵するとさえ言われる、拳士マグショット。闘えて光栄ですわ」
 ロードライトの言葉に飾りはなかった。マグショットと拳を交える事に、心の底から誇りを抱いていた。
「参る!!」
 先に仕掛けたのはロードライトだった。信じられないほどの速度でマグショットのわずかに右側に回り込むと、見惚れるような華麗な回転蹴りをその胴体めがけて叩き込む。
 が、マグショットはその回転に対して、逆回転することで衝撃を吸収した。
「あっ!」
「ほあたぁ!!」
 勢いを削がれたところに、マグショットの強烈な裏拳が炸裂する。
「あがぁっ!!」
 ロードライトは激しく弾き飛ばされ、花瓶ごと柱に叩きつけられた。氷の百合や薔薇が散乱する。
「ぐっ…」
 ヨロヨロと立ち上がり、ロードライトは素早く構えを取る。花瓶がクッションの役割を果たしたおかげで、致命的なダメージは負わずに済んだようだった。
「さすがです…マグショット」
「…お前もな」
 マグショットは、左腕の裂けた袖を示した。マグショットが仕掛けた瞬間、ロードライトもまた見えない蹴りを放っていたのだ。
 だがロードライトは、マグショットの動きに警戒した。なぜなら、マグショットが取った動きは、ロードライトの用いる拳法によく似ていたからだ。
「マグショット、あなたはわたくしの拳法を…」
「相手から学び、盗む事も極意の一部だ」
「ふ…」
 ロードライトは、不敵に笑いながら少しずつマグショットとの距離を詰めた。
「その言葉、そっくりそのままお返しいたしますわ!」
 言ったが早いか、ロードライトは全身に込めた気を両腕に集中させ、交差させるように放ってきた。それは風の刃となり、マグショットを挟撃する。
「むっ!」
 その軌道はブーメランのような弧を描いてマグショットの頭上を飛び越え、後方斜め上から交差するように襲いかかってきた。前方に避ければロードライトからの直接攻撃が待ち構え、左右に逃げてもやはり、どちらにも風の刃がやってくる。
「はっ!」
 マグショットは唯一回避できる、上方に高く跳躍した。しかし、まさにそれがロードライトの狙いだった。
 ロードライトはマグショットに合わせて跳躍し、紅いエネルギーを込めた踵落としを放つ。
「ガーネット・クロー!!」
 かわすのは不可能とみたマグショットは、両腕でガードしつつ縦回転の蹴りに対して、エネルギーを込めた回し蹴りで対抗しようと考えた。だが、ロードライトの方がわずかに先手を取ったため、防御のみに回らざるを得なかった。
「ぐっ!」
 強烈な一撃が、マグショットの交差させた腕に加わった。マグショットはその圧力で床面に叩きつけられ、凄まじい振動とともに、直径10mはあろうかというクレーターが形成される。
 もうもうと煙が立ち込める中から、さすがにふらつく様子でマグショットが現れる。ロードライトは、容赦なくそこに衝撃波を放った。
「はっ!」
 マグショットも、気の障壁でその攻撃をガードする。そして、続けざまにロードライトに接近すると、もはや音速を超えているのではないかというスピードで、無数のパンチを繰り出した。
「うあっ!」
 不意を突かれたロードライトは防戦する。しかしマグショットのパンチは無暗やたらに繰り出されたものではなく、確実にロードライトの急所を狙っていた。一撃でも喰らえば致命傷になりかねない。
 ロードライトは、自らもオーラを高めて力業でそのパンチを防ぐ作戦に切り替えた。エネルギーの消耗は避けられないが、致命傷を受けるわけにはいかない。
「はああ―――――っ!!!」
 ロードライトの全身に紅いオーラが燃え盛る。それに応えて、マグショットもまた蒼いオーラを漲らせた。
「おおお―っ!!!」
 二人のオーラが激突し、広間に激震が走る。柱は折れ、壁や床には大きな亀裂が走りはじめた。このままでは、広間が崩れ落ちるのは時間の問題に思えた。
 まったく互角の両者の対決は、なおも続く様相を見せていた。



「…マグショット!?」
 突然、百合香がそう言って立ち上がったのを、座り込んでいたサーベラスやリベルタが怪訝そうに見た。
「どうした」
「いま、感じなかった?ものすごいエネルギーとエネルギーの衝突」
「なに?」
 サーベラスは、百合香の言う事が理解できず、リベルタ達の顔を見た。リベルタ達も、首を傾げている。
「何か感じたの、百合香」
「うん…今の気はマグショットのに似ていた」
「どっちの方向?」
 真面目な顔でリベルタは訊ねた。
「そこまではわからない。でも、マグショットの気と一緒に、もうひとつのエネルギーも感じた。衝突してるような」
 そう語る百合香を、面々はまじまじと見ていた。すると、百合香の中にいる瑠魅香もまた、それに同意した。
『あたしも感じたよ。マグショットかどうかはわからないけど』
 百合香の背後から聞こえた瑠魅香の言葉に、さすがに一同は納得するしかなかった。オブラが百合香の前に、慌てた様子で進み出る。
「もしそれが本当なら、マグショット様が何者かと戦っているという事ですか!?」
「あいつは、”野暮用”があると言っていた…それと関係あるのかも」
 そう言うと、百合香は立ち上がる。
「ちょっと、百合香。まさかあなた行く気?」
 不安そうな表情で、ティージュが訊ねる。他の面子も同様だった。百合香は、全員の顔を見渡して言った。
「マグショットは、邪魔だてするなって言うかも知れないけど。やっぱり放ってはおけない。それに今、この中でまともに動けるの、私だけでしょ」
「そんな鎧で戦う気?」
 グレーヌの指摘に、百合香は身にまとった青銅色の頼りない鎧を見る。以前の、金色の鎧は見る影もない。
「…不安はあるけど。でもやっぱり、放っておけない。ごめん、みんな」
「待って」
 リベルタが突然立ち上がった。
「私も行く」
「だめよ、そんな体で」
「無茶はお互い様よ。それに、あなたには師匠の事で借りがある」
 リベルタの表情に迷いはない。百合香は、グレーヌたちに助けを請うように訊ねた。
「…私はリベルタに来いとは言えない」
 すると、グレーヌは溜息をついて笑う。
「最初から感じてたわ。あなた達、似た者同士よ」
「そうだね。こうなったら、私たちが何言っても無駄」
 ラシーヌもまた、呆れたようにお手上げのポーズを取ってみせる。すると、そこにもう1人参戦する声があった。
『わかる。やめとけって言ってるのに、行っちゃうんだよね。どこの誰とは言わないけどさー』
 瑠魅香のぼやきに、百合香とリベルタ以外の全員が声を上げて笑った。
「うるさいわね」
『ほら、出た。百合香の”うるさいわね”。おとなしそうな顔して、中身は手がつけらんないの、この子』
「うるさいわね!!!」
『わかった、わかった。行きましょう。さすがにイオノスみたいな化け物は、そうそう出てこないでしょ。それに、あのマグショットの事だから、心配しなくてもあたし達が行く頃には、もう敵を片付けてるかも知れないよ』
 なんとなく瑠魅香に仕切られる形で、百合香とリベルタが出て行く事が決まったようだった。
「じゃあ、それでいいのね、みんな」
 百合香に、グレーヌ達は頷く。
「わかった。じゃあ、行くよリベルタ」
「ええ」
 二人は拳をガツンと合わせると、アジトのドアを慎重に開けて通路に出たのだった。



 マグショットとロードライトの戦いは、さすがに互いがエネルギーを大きく消耗したため、双方ともに動きが鈍くなってきていた。
「このままだと、共倒れになるな」
 マグショットは不敵に笑う。ロードライトも同じだった。
「腹が立つほど互角ですのね」
 それは、皮肉でも何でもなかった。両者の実力は拮抗しており、もはや勝敗を分けるのは、運だけのように思えた。マグショットは、ボロボロになったジャージの裾を恨めしそうに睨むと、ロードライトに向き直った。
「ロードライト、どちらかが倒れる前にこれだけは訊いておく。皇帝に弓を引く覚悟はあるか」
 その問いに、ロードライトは無言だった。マグショットは続ける。
「この城のエネルギーの全ては、人間を凍結させて吸い上げた生命力だ。生命力を吸い尽くされた人間はいずれ死ぬ。この城は、人間の屍のうえに成り立つものだ。説明するまでもない事だがな」
「……」
「お前は、美しさを追及していると言った。では、このような城の在り方が、美しいとお前は思うか。ただひたすら、一方的に奪うだけの在り方が」
「あなたはどうなのです」
 ロードライトの問いは卑怯でもあり、正当でもあった。人に問うなら、まず自らの意志を述べよ、と言ってみせたのだ。マグショットは少しだけ間を置いて言った。
「俺は、美しいとは思わん。姿形を真似ておきながら、その大元である人類とその文明を滅ぼして自らの生命を得るなど、そんな情けない在り方は、俺のプライドとは相容れぬ」
「ですが結局、あなたが用いる力も、突き詰めれば人間から吸い上げたもの。その矛盾にはどう答えるつもりですか」
「知れた事。動く事ができぬ人間に代わって、その力を俺が行使しているのだ」
 マグショットの答えには、呆れるほど迷いがなかった。ロードライトは、少しばかり面食らったようだった。
「そこに正義があると、あなたは思っているのですか」
「正義だと?俺はそんなもの、信じてはおらん。正義でも悪でも、レッテルは好きなように貼ればいい。俺は、この氷巌城の在り方が気に入らないから、ぶち壊してやろうと思っているだけだ」
 それを聞いたロードライトは、突然大声で笑いだした。
「あはははは!!呆れるほど単純明快ですのね」
 ひとしきり笑ったあと、ロードライトは改めて構えを取ってみせた。
「いいでしょう。わたくし、ようやく覚悟を決められそうですわ」
 そう言うと、全身にエネルギーを込める。紅いオーラが、これまでにないほど大きく、激しく燃え盛った。
「このまま戦い続ければ、互いに奥義を放つ余力さえなくなりましょう」
「そうだな」
「マグショット、あなたの最大の拳をお見せなさい。わたくしも、全身全霊でそれに応えてみせます」
「よかろう。勝負の決着は、神に任せる事としよう」
 マグショットは、ゆっくりと両腕で大きな円を描く。天地を結ぶようなその構えから、空間を揺るがすほどのオーラが弾けた。
「いくぞ!」
「来なさい!」
「極仙白狼拳最終奥義!!」
 マグショットの右目と、左目の傷が眩く輝く。その全身から、稲妻を伴う暴風が巻き起こった。

「千狼牙皇拳!!!!」

 もはや嵐なのか雷なのか、名状しがたい気の奔流が、ロードライトめがけて放たれる。それに呼応してロードライトもまた、そのエネルギーの全てを解き放った。

「ガーネット・スパークリング・ストーム!!!!」

 凝縮された無数のエネルギーの刃が、嵐となってマグショットに襲いかかる。両者のエネルギーは、真っ向から激突して、天地が砕けるかというほどの激震をもたらした。
「むおおおお!!!!」
「くっ…!」
 もはや双方ともに、一歩も動けない状態でエネルギーを放ち続けていた。わずかでも力が弱まれば、一瞬で相手のエネルギーに飲み込まれ、身体は塵と砕ける。その衝突の余波は、ついに広間の床面を完全崩壊させるに至った。床が抜け落ちてなお、両者は階下のもうひとつの広間に瓦礫とともに降り立ち、なおも奥義と奥義の衝突は続いていた。
 階下の広間もまた華麗な装飾が随所にちりばめられていたが、マグショットとロードライトの激突のため、すでに見る影もなくなっていた。唯一、広間の奥に飾られている、巨大な二体の女神像だけが両者の戦いを見守っていた。
「ぐっ…!!」
「うああっ…!!」
 ついに限界を迎えた両者の間で、エネルギーとエネルギーが弾け、大爆発が起こった。


「うわっ!」
「なっ…なに!?」
 通路を走っていた百合香とリベルタは、第二層全体が揺れているのではないかと思うほどの振動に、バランスを崩して立ち止まった。ようやく振動が収まると、百合香は緊張した面持ちで通路の奥を見る。
「異常なエネルギーの衝突を感じた」
「マグショットとかいう奴?」
「1人じゃない。おそらく、さっき感じたもうひとりの何者かと衝突したせいだと思う」
「すごいね、百合香。どうしてそこまでわかるの」
 リベルタに言われて、百合香は自分でも何故だろうと思った。今まで、こんなふうに気配だとかを察知できた事はない。何か、感覚が鋭敏になっているように思えた。だが、百合香はそれよりもマグショットの方が気になった。
「私の事はともかく、マグショットが心配。急ごう」
「うん」
「たぶん、こっちの方だと思う」
 百合香は、エネルギーを感じた方向をどうにか特定し、その方向にリベルタと共に急いだ。



 もうもうと煙が立ち込める広間に、床や壁、柱の残骸が重なり、散乱していた。先程までの激闘が嘘であるかのように、場は静まりかえっていた。
 ふいに、瓦礫の中から二つの小さな影が、ガラガラと音を立てて現れる。それは、マグショットとロードライトであった。二人は、互いの様子を見る。マグショットは自慢のジャージがズタズタになっており、ロードライトもまたドレスがただのボロ着に成り果てていた。もはや、どちらも力を使い果たしているように見え、構えを取る事もできず睨み合っていた。
「…相討ちか」
 マグショットは呟く。ロードライトは微かに笑った。
「…生き残った方の勝ちですわね」
「ふ…」
 二人は、瓦礫の中で笑い合った。
「この力があれば、氷魔皇帝など倒せそうなものだな」
「…本気でお思いですか」
「お前はどうなのだ、ロードライト」
 そう問われて、ロードライトはしばし思案したのち答えた。
「不可能ではないかも知れませんわね」
「答えは出たか」
「あなたはどうなのです」
 わざと、同じようにロードライトは返した。マグショットは静かに答える。
「わかっていた。答えなど最初から出ないのだ、とな」
「え?」
「答えなどない。それが、俺の辿り着いた答えだ」
「なんですか、それは」
 ロードライトは笑いながら言う。
「…なるほど。何となく、言わんとするところはわかります」
「ならば、どうする」
「…考えてみます」
「なに?」
 その意外な答えに、マグショットは興味深そうに訊ねた。ロードライトはたどたどしく答える。
「決着はつきました。わたくしは、ここで考えてみます。何をすべきか」
「そうか」
「そのうえで、もし何らかの決意ができたのなら、マグショット。あなたと共に戦う未来も、あるのかも知れません」
 はっきりしない答えだな、と思いながらも、マグショットは頷いた。
「それでいい。選択は、お前の自由だ。考えた末、再び俺と闘うべきだと思い至ったのなら、いつでも来るがいい。ただし、俺は先へ進むからな。お前は、自分の脚で登ってこなければならない」
「わかっています」
 ロードライトは頷く。二人の間に、ようやく積年のわだかまりが消え去ったという感慨があった。
 
 そこへ、バタバタと走って来るふたつの人影があった。
「マグショット!」
 その声の主は百合香だった。マグショットはぶっきらぼうに答える。
「生きていたか」
「生きていたか、じゃないわよ!何があったの!?」
「すまんが、今説明している気力がない」
 マグショットはそう言うと、瓦礫の上に座り込んだ。
「ロードライト、こいつが俺の不肖の弟子、百合香だ」
 瓦礫の上にいた人形が、くるりと振り向いて百合香を見た。
「ユリカ…あなたが噂の侵入者ね」
「あっ…あなたは?」
 すると、リベルタが驚くように言った。
「あなたは、じゃないわよ。氷騎士ロードライト、この第二層の幹部の1人」
「えっ!?」
「とんでもない実力の持ち主よ。…この様子を見ればわかるでしょうけど」
 リベルタは、散乱する瓦礫の山を見渡した。上の階まで、完全に崩れ落ちている。一体どれほどの戦いがあればこんな事になるのかと、百合香とリベルタは思った。それを引き起こしたのは、どうやら目の前にいる、小さな拳士たちらしい。
「マグショット、野暮用っていうのはこの事なの?」
「そういう話を聞く事こそ、野暮な話だ」
「上手い事言わなくていいから」
 百合香の返しにマグショットは笑う。
「…俺の件はひとまず片付いた。お前たちも色々あったようだな」
 言いながら、マグショットはリベルタと左手に持った巨大な弓を見る。
「弓使いか」
「あなたがマグショットね。私はリベルタ。噂は色々と聞いているわ。…まさか、ロードライトと互角の実力だなんて」
 リベルタは心から敬服しているようだった。百合香は、腕組みして訊ねた。
「まだ状況がわからないけど、とりあえずまた合流してくれるって事でいいの?」
「身体が治ったらの話だがな。今の状況ではまともに動けん」
「私もあれこれ言われてるけど、あなたもあなたね、マグショット」
 呆れたように百合香は笑う。何はともあれ、頼もしい仲間が再び戻ってきてくれる事に、百合香は安堵していた。

 その時だった。広間の奥で、何かが動く鈍い音が響いた。
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