29 / 95
氷騎士烈闘篇
奥義
しおりを挟む
「俺の拳法は、おまえ達の世界の"少林拳"という流派を、俺に合うように修正したものだ」
オブシディアンの間へ続く通路に進む前に、マグショットは唐突に言った。
「百合香、お前が体得できるかどうかはわからん。だが、俺のこの技を、今ここで伝授する」
「技?」
百合香がそう問いかけたとき、通路の奥から多数の足音が聞こえてきた。
「あっ!」
それは以前見かけた、ナロー・ドールズであった。しかし武器は持たず、よく見ると手足が若干強化されている。
「ただじゃ通さないってことか」
構えを取る百合香だったが、マグショットが前に進み出て百合香を制した。
「お前はそこで見ていろ」
そう言って、マグショットは全身にオーラのようなエネルギーを充満させ始めた。やや緑がかった、明るい青の輝きだ。それはまるで、ゆらめく炎のようにも見えた。
「まず、このように全身に気を込める」
マグショットは、実演しながらも百合香に聞こえるように言った。ナロー・ドールズは、わらわらと接近してくる。ざっと30体はいるようだ。
「次にそれを胴体へ、そして胴体から両腕へと集束させる」
マグショットが説明するとおり、エネルギーはその両腕に集束していき、輝きの密度が濃くなってきた。
「何をしているか、わかるか。先程のお前は、全身に気をみなぎらせていた。それは確かに身体能力を高めるが、渾身の一撃を放つ時に、それではエネルギーの空振りが起きてしまう」
マグショットは説明を続けるが、百合香は接近するナロー・ドールズが気になって仕方なかった。しかし、マグショットはそれを無視した。
「俺の解説に集中しろ。あんな雑魚はどうにでもなる」
そう言って、次にマグショットは両手にまでそのエネルギーを凝縮させた。
「わかるか?これが、気を"練る"ということだ。そして練った気を、一気に放出する。岩盤に開いた穴から、水が勢いよく飛び出るのをイメージしろ」
マグショットの両手に、さらにエネルギーが凝縮され、周囲にはその余波で風が巻き起こった。
「これこそ我が、極仙白狼拳奥義」
マグショットは両手の掌を、右腰のあたりで互い違いに空間を開けて重ねる。その空間に、凝縮されたエネルギーが銀河の渦のように回転した。
「『狼爪断空掌!!!』」
左の掌を滑らせるように、右の掌を前方に、脚の踏み込みとともに一気に突き出す。掌の間に凝縮されていたエネルギーは、強烈な渦巻く旋風となって、群れをなすナロー・ドールズに襲いかかった。
ナロー・ドールズは一瞬にしてその渦に巻き込まれ、文字通り狼の爪に切断されたかのようにバラバラに斬られ、ねじ切れ、暴風によって道場の壁に叩きつけられ、哀れな一山の塵芥と成り果てたのだった。
ナロー・ドールズのみならず、壁も床も天井も、その一撃でズタズタにされ、すでに原型を留めてはいなかった。
「私いらないじゃん!!!」
それが、マグショットの奥義の一部始終を見た百合香の第一声、率直な感想だった。ラーモンは、百合香ほどの実力ではないと言っていたが、とんでもない嘘ではないか。
「こんなの使えるなら、マグショット一人で全部片付きそう」
「馬鹿者」
呼吸を整えたマグショットが、百合香に向き合う。
「こんな大技、毎回放ってみろ。腕が折れてしまうわ」
「なんでわざわざ、それを私に伝授しようっていうの?ご丁寧に解説までして」
百合香は、マグショットの動きの真似をしながら言った。
「俺の技は、見ただけで覚えられるようなものではない。そこには理論がある」
「私に、覚えろっていうの?」
百合香が問うと、マグショットは手近な瓦礫に腰を下ろして言った。
「俺は強制はせん。覚えたければ、真似をしてみるといい。理屈は教えた」
「無理でしょ」
「ひとつだけ言っておこう。俺のやり方を、そっくり真似できるとは思わんことだ。お前にはお前なりの、やり方というものがあるはずだ。俺は、エネルギーを凝縮させて開放する、その基礎を教えたにすぎん」
そう言うと、マグショットは腰を上げて通路の方を向いた。いまの一撃で出口周りの壁面も崩壊しており、瓦礫が通路にまで散乱している。
「行くぞ」
マグショットは、それ以上は奥義について何も言わなかった。百合香は頷いてその後に続く。
『百合香、見込みがあるって思われてるんじゃない?』
瑠魅香が、百合香にだけ聞こえるように言った。百合香も、瑠魅香にだけ聞こえるように答える。
『チャイナドレスでも用意しとくか』
『なあに、それ』
『どう説明すればいいのかな。黒髪の瑠魅香には似合いそう』
脳内で女子どうしの雑談をしながら、百合香はマグショットに続いて、いよいよオブシディアンの待つ間へと通路を登って行った。
通路の最奥にあったのは、広い空間の中に寺院のような建物が納まっている、という光景だった。それも、手前の小さな建物の奥に、さらに大きな建物がある。
「この中にいるのかな」
「わからん。覚悟はいいか」
マグショットは静かに言った。百合香は無言で頷く。
「行くぞ」
マグショットの合図で、百合香は慎重に扉を開けた。
堂内は、青白く光る燭台が並んだ、幻想的とも不気味とも言える空間だった。思ったより広い。
中には誰もいなかった。奥には、おそらくこの建物の後ろに見えた大きな建物に続くのであろう、広い廊下が見える。
「誰もいない」
百合香は、部屋の中を入念に観察した。何もいる気配がない。マグショットは無言だった。
「ここは奴の間ではない、という事かしら」
百合香は、奥に続く廊下を見る。
次の瞬間だった。
「あうっ!!」
唐突に百合香は背後から、その奥に続く廊下までマグショットに突き飛ばされてしまった。受け身を取りきれず、左腕を打ち付ける。
「うっ…な、なに!?」
百合香が、何事かと振り向いた時々だった。ガシャン、と音がして地下から格子が飛び出し、今いた室内が囲まれてしまったのだ。格子の目は細かく、マグショットの体格でも通り抜けられそうにない。
そして、その後だった。天井から、背の低い道士のような姿の、不気味な3人の拳士が降り立ったのだ。
「マグショット!!」
百合香は、室内に取り残されたマグショットを見る。
「ふん、くだらん手品だ」
そう言うと、マグショットは百合香を見る。
「お前はそのまま奥に進め。おそらくあの手品師がいるだろう」
「でっ、でも…」
「なんだ?お前では勝てないか。よかろう、自信がないのなら、俺が行くまで待っているといい」
この状況下において、マグショットは一切慌てる様子がないどころか、百合香を煽る余裕まで見せた。
「まったく…いいわよ、あなたが来る頃にご馳走が残ってなくても、文句言わないでね!」
「それは困る。ならば、さっさとこいつらを片付けるとしよう」
マグショットは、いつになく本気の構えを見せた。全身に、気迫が満ちている。それを見て、百合香は自分がやるべき事のために、振り返らず廊下を奥に進んだ。
廊下の奥の空間は広大な御殿といった風で、大仰な階段の上に、派手な装飾の座が据え付けられていた。そこに、あの手品師じみた奇怪な格好のオブシディアンが座っている。その脇に、チャイナドレスの女性の姿をした氷魔が控えていた。氷魔が百合香に警戒するように向き合うと、オブシディアンはそれを制して立ち上がる。チャイナドレス氷魔は、恭しく一歩下がった。
「ようこそいらっしゃいました」
「客を見下ろすなんて、ずいぶんな歓迎ね」
「おや、これは私とした事が失礼をいたしました」
相変わらずの慇懃なカンに障る口調で、オブシディアンは豪華な階段をゆっくりと降りてくる。その動きはゆるやかでありながら、一切の隙を感じさせないものだった。
床に降り立ったオブシディアンは、百合香に向かって一礼した。
「マグショット様がいらっしゃらないのは残念この上ありませんが、お嬢様には精一杯のおもてなしをさせて頂きましょう」
「耳障りな挑発は聞き飽きたわ。さっさとかかっていらっしゃい!!」
百合香は、いよいよもって彼女の真っ直ぐな性格に障る、オブシディアンの態度に怒りを示した。オブシディアンは、それに反応して少しだけ真剣な態度を見せる。
「ほう。いいでしょう、真っ向勝負というなら、手加減はいたしません」
「望むところよ」
百合香が本気で構えているのを見て取った、オブシディアンもまた独得の構えを見せる。右拳を前に突き出しながら、左は掌を上に向けて下げ気味の位置という、マグショットとも異なるものだった。
「(この娘の構えは素人だ。しかし、不思議と隙が見えない)」
オブシディアンは、決して相手を軽んずる事なく、気付かない程のゆるやかな動きで右に移動した。百合香はそれを見抜き、同じように移動する。
円を描くように移動しているため、互いの位置関係は依然として変わらない。
「(身長や手足のリーチは私の方がやや長い)」
何でもない動きの中で、オブシディアンは百合香と自分の体格の違いを計算していた。
百合香はしびれを切らしたのか、少しだけ間合いを詰める。それを見て、オブシディアンもまた前に出た。わずかに両者の間合いが狭まる。
あと一歩、互いに進み出れば拳が交わる距離になる。そのタイミングで、オブシディアンが先に打って出た。
「ヒョウッ!!!」
先に仕掛ける事のリスクを承知の上で、オブシディアンは脚を蹴り上げてきた。まだ、届くというほどのリーチではない。しかし、牽制にしては力が入っている。
本能的に危険を察した百合香は、大きく後退した。
百合香が飛び退った次の瞬間、天井の梁に亀裂が走った。
「ほう、今の蹴りを見切るとは大したものです」
「……」
百合香は正直、肝が冷える思いだった。もしあと一瞬遅れていれば、ガードしていた腕で、見えない空気の刃を受けていたのだ。黄金の鎧のアームガードが、どれくらい耐えられたかはわからない。
そして、オブシディアンにそれまでの道化めいた態度がなくなっている事に百合香は気が付いた。
「(こいつ、さっきまでふざけた態度だったけど、実力は本物だ…私に、どこまで対抗できるだろうか)」
再び、両者は互いに打って出るタイミングを測るように、距離を置いて対峙していた。
今の攻撃で、百合香にはオブシディアンの速さが、そしてオブシディアンには百合香のカンの鋭さがわかった。
「(驚くべき事だが、この娘の力は本物だ…拳法のセンスだとか、そういった理屈を無視した、単純な強さがこの娘にはある)」
百合香の強さを、オブシディアンは否定しなかった。
「(純粋な拳法の実力でいえば、明らかに私の足元にも及ばない…だが)」
再び、オブシディアンは百合香に接近した。今度は、幻惑するような奇妙な動きである。
「(こいつ…奇妙な動きだ)」
それこそ奇術めいた、掴みどころのない動きだった。攻め入る隙が見えたと思った時には、すぐに封じられてしまう。
そうしているうちに、百合香はあっという間に相手のリーチ内に入られていた。
「!」
気が付いた時には、すでに遅かった。オブシディアンの左の貫き手が、斜め上に百合香の首を狙う。
「くっ!」
すんでの所でかわしたが、胴がガラ空きになった所に、強烈なボディーブローが飛んできた。
「ぐほぁっ!!!」
思い切り食らった百合香は、突き飛ばされて背面の壁に叩きつけられる。
その衝撃で、それまで一度たりとも傷ついた事のなかった黄金の鎧にヒビが入った。
「げほっ」
百合香は床に手を突いた。ポタリ、ポタリと口から赤い血が垂れる。
『百合香!!』
瑠魅香の泣きそうな悲鳴が聞こえる。百合香は、頭を打ち付けた衝撃もあり、立ち上がる事ができなかった。
「やはり実力差は覆せないようですね」
オブシディアンはゆっくりと百合香に近付く。
「あの猫レジスタンスは、ここまで駆け付けてくれるでしょうか。せいぜい、彼があなたの仇討ちをしてくれる事を期待して死ぬのが良いでしょう。ご心配なく、あなたの亡骸は丁重に氷の彫像として、氷巌城に飾らせていただきます」
オブシディアンの声が遠い。まるで、瑠魅香の声のように聞こえる。五感が、衝撃で鈍っているらしかった。
ここで死ぬのか。呆気ないものだ、と百合香は思った。さんざん気張って、力をつけ、登ってきたのに。私は誰一人救えないまま、この氷の城で朽ち果てるのか。
朦朧とした意識の中で、ふらついた百合香の視界には、悠然と歩いてくるオブシディアンの背後に伸びる高い階段が映った。
その時、百合香は何か、不自然なものを感じた。
あの、チャイナドレスの女風の氷魔だ。
――――見下ろしている。
私を、ではない。何を?その視線は、私よりもっと手前の何かを見下ろしている。手に持つ扇を、魔法の杖のように弄びながら。
なぜ、主であるオブシディアンを、平然と見下ろしているのか。
百合香は、直感で全てを悟った。それは、身体の痛みをも忘れさせるほどの、知的興奮であった。
「さあ、お休みの時間ですよ、お嬢様」
オブシディアンは右腕を、貫き手の形にして百合香に迫る。次の一撃で、百合香の16年の人生は終わる。
しかし、百合香は諦めなかった。
「ぐっ…」
血の味がする喉をギュッと締めて、ふらつく脚に無理やりに力を込め、立ち上がる。だが、頭はふらついており、その瞳はオブシディアンの後ろに向けられていた。
「そのダメージで立ち上がるとは、見上げたものです。しかし、その美しい顔が苦痛に歪むのは、見るに堪えません」
オブシディアンの口調には、若干の苛立ちが見てとれる。
百合香は、その右腕に炎のエネルギーを蓄え始めた。オブシディアンは驚いた様子で立ち止まる。
「馬鹿な…まだそんな力が残っているのか」
「バスケット選手のタフネスを…侮らない事ね」
『百合香!代わって!』
瑠魅香が叫ぶ。
「だめよ。あなたでは、こいつらに勝てない」
『でも!』
「約束したでしょ。美味しいもの食べさせてあげるって」
百合香は、顔に滲む血を拭って不敵に笑う。
「エネルギーの撃ち方は、マグショットに習ったわ」
「ほう、それで私を撃つというのですか。よろしいでしょう、やってご覧なさい。大サービスだ、私はここで立ち止まって差し上げましょう」
「いいのかしら。その侮りが、命取りになるかも知れないわよ」
百合香の右拳に、なおも炎のエネルギーが集中する。その影響で、床や柱の表面が溶け始めた。
「はあぁぁ――――!!」
スパークプラグのような凄まじい火花が、百合香の拳に集中する。オブシディアンは立ち止まるどころか、近付けなくなっていた。
百合香は、痛む喉を押して叫ぶ。
「『紅蓮燕翔拳!!!』」
吐血とともに、飛翔する燕のごとき炎の矢が、オブシディアンめがけて放たれる。
だが、それはオブシディアンの顔をかすめて飛んで行ってしまった。
『百合香!』
「瑠魅香、心配かけたね」
『え?』
百合香が放った炎の矢は、階段をすれすれに高速で飛翔した。
その先にあるものを、それは直撃した。
「あっ!!!」
女性の悲鳴が響く。それは、チャイナドレスの女氷魔だった。
氷魔の手から扇が落ちる。
すると突然に、オブシディアンはその場に崩れ落ちて動かなくなってしまった。
『なに、いったい!?』
瑠魅香が叫ぶ。
「わかったのよ。オブシディアンの本体は、別にいるって」
『どっ、どういうこと!?』
「オブシディアンは操り人形だったということよ。この間の、真の主のね」
『真の主!?』
百合香は、階段の上に立つチャイナドレス氷魔を真っ直ぐに指さした。
「オブシディアンの本体…いえ、このエリアを守護する氷騎士。それは、あなたよ」
オブシディアンの間へ続く通路に進む前に、マグショットは唐突に言った。
「百合香、お前が体得できるかどうかはわからん。だが、俺のこの技を、今ここで伝授する」
「技?」
百合香がそう問いかけたとき、通路の奥から多数の足音が聞こえてきた。
「あっ!」
それは以前見かけた、ナロー・ドールズであった。しかし武器は持たず、よく見ると手足が若干強化されている。
「ただじゃ通さないってことか」
構えを取る百合香だったが、マグショットが前に進み出て百合香を制した。
「お前はそこで見ていろ」
そう言って、マグショットは全身にオーラのようなエネルギーを充満させ始めた。やや緑がかった、明るい青の輝きだ。それはまるで、ゆらめく炎のようにも見えた。
「まず、このように全身に気を込める」
マグショットは、実演しながらも百合香に聞こえるように言った。ナロー・ドールズは、わらわらと接近してくる。ざっと30体はいるようだ。
「次にそれを胴体へ、そして胴体から両腕へと集束させる」
マグショットが説明するとおり、エネルギーはその両腕に集束していき、輝きの密度が濃くなってきた。
「何をしているか、わかるか。先程のお前は、全身に気をみなぎらせていた。それは確かに身体能力を高めるが、渾身の一撃を放つ時に、それではエネルギーの空振りが起きてしまう」
マグショットは説明を続けるが、百合香は接近するナロー・ドールズが気になって仕方なかった。しかし、マグショットはそれを無視した。
「俺の解説に集中しろ。あんな雑魚はどうにでもなる」
そう言って、次にマグショットは両手にまでそのエネルギーを凝縮させた。
「わかるか?これが、気を"練る"ということだ。そして練った気を、一気に放出する。岩盤に開いた穴から、水が勢いよく飛び出るのをイメージしろ」
マグショットの両手に、さらにエネルギーが凝縮され、周囲にはその余波で風が巻き起こった。
「これこそ我が、極仙白狼拳奥義」
マグショットは両手の掌を、右腰のあたりで互い違いに空間を開けて重ねる。その空間に、凝縮されたエネルギーが銀河の渦のように回転した。
「『狼爪断空掌!!!』」
左の掌を滑らせるように、右の掌を前方に、脚の踏み込みとともに一気に突き出す。掌の間に凝縮されていたエネルギーは、強烈な渦巻く旋風となって、群れをなすナロー・ドールズに襲いかかった。
ナロー・ドールズは一瞬にしてその渦に巻き込まれ、文字通り狼の爪に切断されたかのようにバラバラに斬られ、ねじ切れ、暴風によって道場の壁に叩きつけられ、哀れな一山の塵芥と成り果てたのだった。
ナロー・ドールズのみならず、壁も床も天井も、その一撃でズタズタにされ、すでに原型を留めてはいなかった。
「私いらないじゃん!!!」
それが、マグショットの奥義の一部始終を見た百合香の第一声、率直な感想だった。ラーモンは、百合香ほどの実力ではないと言っていたが、とんでもない嘘ではないか。
「こんなの使えるなら、マグショット一人で全部片付きそう」
「馬鹿者」
呼吸を整えたマグショットが、百合香に向き合う。
「こんな大技、毎回放ってみろ。腕が折れてしまうわ」
「なんでわざわざ、それを私に伝授しようっていうの?ご丁寧に解説までして」
百合香は、マグショットの動きの真似をしながら言った。
「俺の技は、見ただけで覚えられるようなものではない。そこには理論がある」
「私に、覚えろっていうの?」
百合香が問うと、マグショットは手近な瓦礫に腰を下ろして言った。
「俺は強制はせん。覚えたければ、真似をしてみるといい。理屈は教えた」
「無理でしょ」
「ひとつだけ言っておこう。俺のやり方を、そっくり真似できるとは思わんことだ。お前にはお前なりの、やり方というものがあるはずだ。俺は、エネルギーを凝縮させて開放する、その基礎を教えたにすぎん」
そう言うと、マグショットは腰を上げて通路の方を向いた。いまの一撃で出口周りの壁面も崩壊しており、瓦礫が通路にまで散乱している。
「行くぞ」
マグショットは、それ以上は奥義について何も言わなかった。百合香は頷いてその後に続く。
『百合香、見込みがあるって思われてるんじゃない?』
瑠魅香が、百合香にだけ聞こえるように言った。百合香も、瑠魅香にだけ聞こえるように答える。
『チャイナドレスでも用意しとくか』
『なあに、それ』
『どう説明すればいいのかな。黒髪の瑠魅香には似合いそう』
脳内で女子どうしの雑談をしながら、百合香はマグショットに続いて、いよいよオブシディアンの待つ間へと通路を登って行った。
通路の最奥にあったのは、広い空間の中に寺院のような建物が納まっている、という光景だった。それも、手前の小さな建物の奥に、さらに大きな建物がある。
「この中にいるのかな」
「わからん。覚悟はいいか」
マグショットは静かに言った。百合香は無言で頷く。
「行くぞ」
マグショットの合図で、百合香は慎重に扉を開けた。
堂内は、青白く光る燭台が並んだ、幻想的とも不気味とも言える空間だった。思ったより広い。
中には誰もいなかった。奥には、おそらくこの建物の後ろに見えた大きな建物に続くのであろう、広い廊下が見える。
「誰もいない」
百合香は、部屋の中を入念に観察した。何もいる気配がない。マグショットは無言だった。
「ここは奴の間ではない、という事かしら」
百合香は、奥に続く廊下を見る。
次の瞬間だった。
「あうっ!!」
唐突に百合香は背後から、その奥に続く廊下までマグショットに突き飛ばされてしまった。受け身を取りきれず、左腕を打ち付ける。
「うっ…な、なに!?」
百合香が、何事かと振り向いた時々だった。ガシャン、と音がして地下から格子が飛び出し、今いた室内が囲まれてしまったのだ。格子の目は細かく、マグショットの体格でも通り抜けられそうにない。
そして、その後だった。天井から、背の低い道士のような姿の、不気味な3人の拳士が降り立ったのだ。
「マグショット!!」
百合香は、室内に取り残されたマグショットを見る。
「ふん、くだらん手品だ」
そう言うと、マグショットは百合香を見る。
「お前はそのまま奥に進め。おそらくあの手品師がいるだろう」
「でっ、でも…」
「なんだ?お前では勝てないか。よかろう、自信がないのなら、俺が行くまで待っているといい」
この状況下において、マグショットは一切慌てる様子がないどころか、百合香を煽る余裕まで見せた。
「まったく…いいわよ、あなたが来る頃にご馳走が残ってなくても、文句言わないでね!」
「それは困る。ならば、さっさとこいつらを片付けるとしよう」
マグショットは、いつになく本気の構えを見せた。全身に、気迫が満ちている。それを見て、百合香は自分がやるべき事のために、振り返らず廊下を奥に進んだ。
廊下の奥の空間は広大な御殿といった風で、大仰な階段の上に、派手な装飾の座が据え付けられていた。そこに、あの手品師じみた奇怪な格好のオブシディアンが座っている。その脇に、チャイナドレスの女性の姿をした氷魔が控えていた。氷魔が百合香に警戒するように向き合うと、オブシディアンはそれを制して立ち上がる。チャイナドレス氷魔は、恭しく一歩下がった。
「ようこそいらっしゃいました」
「客を見下ろすなんて、ずいぶんな歓迎ね」
「おや、これは私とした事が失礼をいたしました」
相変わらずの慇懃なカンに障る口調で、オブシディアンは豪華な階段をゆっくりと降りてくる。その動きはゆるやかでありながら、一切の隙を感じさせないものだった。
床に降り立ったオブシディアンは、百合香に向かって一礼した。
「マグショット様がいらっしゃらないのは残念この上ありませんが、お嬢様には精一杯のおもてなしをさせて頂きましょう」
「耳障りな挑発は聞き飽きたわ。さっさとかかっていらっしゃい!!」
百合香は、いよいよもって彼女の真っ直ぐな性格に障る、オブシディアンの態度に怒りを示した。オブシディアンは、それに反応して少しだけ真剣な態度を見せる。
「ほう。いいでしょう、真っ向勝負というなら、手加減はいたしません」
「望むところよ」
百合香が本気で構えているのを見て取った、オブシディアンもまた独得の構えを見せる。右拳を前に突き出しながら、左は掌を上に向けて下げ気味の位置という、マグショットとも異なるものだった。
「(この娘の構えは素人だ。しかし、不思議と隙が見えない)」
オブシディアンは、決して相手を軽んずる事なく、気付かない程のゆるやかな動きで右に移動した。百合香はそれを見抜き、同じように移動する。
円を描くように移動しているため、互いの位置関係は依然として変わらない。
「(身長や手足のリーチは私の方がやや長い)」
何でもない動きの中で、オブシディアンは百合香と自分の体格の違いを計算していた。
百合香はしびれを切らしたのか、少しだけ間合いを詰める。それを見て、オブシディアンもまた前に出た。わずかに両者の間合いが狭まる。
あと一歩、互いに進み出れば拳が交わる距離になる。そのタイミングで、オブシディアンが先に打って出た。
「ヒョウッ!!!」
先に仕掛ける事のリスクを承知の上で、オブシディアンは脚を蹴り上げてきた。まだ、届くというほどのリーチではない。しかし、牽制にしては力が入っている。
本能的に危険を察した百合香は、大きく後退した。
百合香が飛び退った次の瞬間、天井の梁に亀裂が走った。
「ほう、今の蹴りを見切るとは大したものです」
「……」
百合香は正直、肝が冷える思いだった。もしあと一瞬遅れていれば、ガードしていた腕で、見えない空気の刃を受けていたのだ。黄金の鎧のアームガードが、どれくらい耐えられたかはわからない。
そして、オブシディアンにそれまでの道化めいた態度がなくなっている事に百合香は気が付いた。
「(こいつ、さっきまでふざけた態度だったけど、実力は本物だ…私に、どこまで対抗できるだろうか)」
再び、両者は互いに打って出るタイミングを測るように、距離を置いて対峙していた。
今の攻撃で、百合香にはオブシディアンの速さが、そしてオブシディアンには百合香のカンの鋭さがわかった。
「(驚くべき事だが、この娘の力は本物だ…拳法のセンスだとか、そういった理屈を無視した、単純な強さがこの娘にはある)」
百合香の強さを、オブシディアンは否定しなかった。
「(純粋な拳法の実力でいえば、明らかに私の足元にも及ばない…だが)」
再び、オブシディアンは百合香に接近した。今度は、幻惑するような奇妙な動きである。
「(こいつ…奇妙な動きだ)」
それこそ奇術めいた、掴みどころのない動きだった。攻め入る隙が見えたと思った時には、すぐに封じられてしまう。
そうしているうちに、百合香はあっという間に相手のリーチ内に入られていた。
「!」
気が付いた時には、すでに遅かった。オブシディアンの左の貫き手が、斜め上に百合香の首を狙う。
「くっ!」
すんでの所でかわしたが、胴がガラ空きになった所に、強烈なボディーブローが飛んできた。
「ぐほぁっ!!!」
思い切り食らった百合香は、突き飛ばされて背面の壁に叩きつけられる。
その衝撃で、それまで一度たりとも傷ついた事のなかった黄金の鎧にヒビが入った。
「げほっ」
百合香は床に手を突いた。ポタリ、ポタリと口から赤い血が垂れる。
『百合香!!』
瑠魅香の泣きそうな悲鳴が聞こえる。百合香は、頭を打ち付けた衝撃もあり、立ち上がる事ができなかった。
「やはり実力差は覆せないようですね」
オブシディアンはゆっくりと百合香に近付く。
「あの猫レジスタンスは、ここまで駆け付けてくれるでしょうか。せいぜい、彼があなたの仇討ちをしてくれる事を期待して死ぬのが良いでしょう。ご心配なく、あなたの亡骸は丁重に氷の彫像として、氷巌城に飾らせていただきます」
オブシディアンの声が遠い。まるで、瑠魅香の声のように聞こえる。五感が、衝撃で鈍っているらしかった。
ここで死ぬのか。呆気ないものだ、と百合香は思った。さんざん気張って、力をつけ、登ってきたのに。私は誰一人救えないまま、この氷の城で朽ち果てるのか。
朦朧とした意識の中で、ふらついた百合香の視界には、悠然と歩いてくるオブシディアンの背後に伸びる高い階段が映った。
その時、百合香は何か、不自然なものを感じた。
あの、チャイナドレスの女風の氷魔だ。
――――見下ろしている。
私を、ではない。何を?その視線は、私よりもっと手前の何かを見下ろしている。手に持つ扇を、魔法の杖のように弄びながら。
なぜ、主であるオブシディアンを、平然と見下ろしているのか。
百合香は、直感で全てを悟った。それは、身体の痛みをも忘れさせるほどの、知的興奮であった。
「さあ、お休みの時間ですよ、お嬢様」
オブシディアンは右腕を、貫き手の形にして百合香に迫る。次の一撃で、百合香の16年の人生は終わる。
しかし、百合香は諦めなかった。
「ぐっ…」
血の味がする喉をギュッと締めて、ふらつく脚に無理やりに力を込め、立ち上がる。だが、頭はふらついており、その瞳はオブシディアンの後ろに向けられていた。
「そのダメージで立ち上がるとは、見上げたものです。しかし、その美しい顔が苦痛に歪むのは、見るに堪えません」
オブシディアンの口調には、若干の苛立ちが見てとれる。
百合香は、その右腕に炎のエネルギーを蓄え始めた。オブシディアンは驚いた様子で立ち止まる。
「馬鹿な…まだそんな力が残っているのか」
「バスケット選手のタフネスを…侮らない事ね」
『百合香!代わって!』
瑠魅香が叫ぶ。
「だめよ。あなたでは、こいつらに勝てない」
『でも!』
「約束したでしょ。美味しいもの食べさせてあげるって」
百合香は、顔に滲む血を拭って不敵に笑う。
「エネルギーの撃ち方は、マグショットに習ったわ」
「ほう、それで私を撃つというのですか。よろしいでしょう、やってご覧なさい。大サービスだ、私はここで立ち止まって差し上げましょう」
「いいのかしら。その侮りが、命取りになるかも知れないわよ」
百合香の右拳に、なおも炎のエネルギーが集中する。その影響で、床や柱の表面が溶け始めた。
「はあぁぁ――――!!」
スパークプラグのような凄まじい火花が、百合香の拳に集中する。オブシディアンは立ち止まるどころか、近付けなくなっていた。
百合香は、痛む喉を押して叫ぶ。
「『紅蓮燕翔拳!!!』」
吐血とともに、飛翔する燕のごとき炎の矢が、オブシディアンめがけて放たれる。
だが、それはオブシディアンの顔をかすめて飛んで行ってしまった。
『百合香!』
「瑠魅香、心配かけたね」
『え?』
百合香が放った炎の矢は、階段をすれすれに高速で飛翔した。
その先にあるものを、それは直撃した。
「あっ!!!」
女性の悲鳴が響く。それは、チャイナドレスの女氷魔だった。
氷魔の手から扇が落ちる。
すると突然に、オブシディアンはその場に崩れ落ちて動かなくなってしまった。
『なに、いったい!?』
瑠魅香が叫ぶ。
「わかったのよ。オブシディアンの本体は、別にいるって」
『どっ、どういうこと!?』
「オブシディアンは操り人形だったということよ。この間の、真の主のね」
『真の主!?』
百合香は、階段の上に立つチャイナドレス氷魔を真っ直ぐに指さした。
「オブシディアンの本体…いえ、このエリアを守護する氷騎士。それは、あなたよ」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる