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第一章 出逢いはいつも突然に
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「結城」
突如、後ろから声がかかった。
「あ、はい」
階段を上り始めた足を止め、後ろを振り返る。
「今日の放課後は他の出場者と合同でやるから、とりあえず放課後できるだけ早く俺のところに来てくれ」
「はい」
田中教師は、それだけ言うと職員室へと向かった。
おっと。俺も早く教室にもどらなきゃ!
とうに鳴ったチャイムのことを思い出して、残った階段を急ぎ足で上り、四限目の授業に向かった。
四限目は、簿記という商業高校特有の科目であった。
一言で言ってしまえば、これは企業の財産の管理などを記帳することである。一年の二学期に入って、ようやく全体が見えてきた。という段階であった。
そして、放課後―――。
俺が職員室の田中教師の席へ行くと、すでに一人の女子生徒が何やら話しをしていた。
上履きの色からして、一つ上か。
ここ中央商業高等学校は、学年によって体育着の色と、上履きのつま先の部分の色が違っていた。
俺達一年生の上履きの色は青。体育着は水色であった。
一つ上の二年生は、上履きの色が緑。体育着の色は濃い青。そして三年生は、上履きの色が赤。体育着の色が薄い緑。
つまり、今、田中教師と話している女性は緑のつま先をした上履きを履いているのである。
「お、来たか結城。じゃ、やるか」
そう行って田中教師は立ち上がった。
そのまま、もう一人の女性と、二人無言で教師の後をついて行く。
職員室と階段を挟んで隣りにある社会科室へと入った。
そして、それぞれに手近の席に腰掛けた。
「じゃ、先輩の片桐からいってみるか」
「はい」
片桐と呼ばれた女子生徒が前にでた。
彼女は綺麗で可愛らしい声をしていた。
よく通るソプラノだ。
身長は俺より気持ち低いくらいか。
華奢な体つきで、髪は肩より少し長いくらいのストレート。
真っ黒で綺麗な髪だ。
顔は少し小さめで、目、鼻、口は整っていた。
かなりの美形である。
ただ、近寄りがたい美しさというのではく、それは思わず守ってあげたくなるような、そんな可愛らしさだった。
うわ~。めちゃくちゃ可愛い人。
思わず見とれてしまった。
こうなると、スピーチどころではない。
なんともよこしまな気持ちで、その綺麗で可愛らしい声を聞きながら彼女に見とれていた。
その後、自分が練習をしたような気はするのだけれど、はっきりとは記憶していなかった。
ただただ、彼女のことが気になって。
突如、後ろから声がかかった。
「あ、はい」
階段を上り始めた足を止め、後ろを振り返る。
「今日の放課後は他の出場者と合同でやるから、とりあえず放課後できるだけ早く俺のところに来てくれ」
「はい」
田中教師は、それだけ言うと職員室へと向かった。
おっと。俺も早く教室にもどらなきゃ!
とうに鳴ったチャイムのことを思い出して、残った階段を急ぎ足で上り、四限目の授業に向かった。
四限目は、簿記という商業高校特有の科目であった。
一言で言ってしまえば、これは企業の財産の管理などを記帳することである。一年の二学期に入って、ようやく全体が見えてきた。という段階であった。
そして、放課後―――。
俺が職員室の田中教師の席へ行くと、すでに一人の女子生徒が何やら話しをしていた。
上履きの色からして、一つ上か。
ここ中央商業高等学校は、学年によって体育着の色と、上履きのつま先の部分の色が違っていた。
俺達一年生の上履きの色は青。体育着は水色であった。
一つ上の二年生は、上履きの色が緑。体育着の色は濃い青。そして三年生は、上履きの色が赤。体育着の色が薄い緑。
つまり、今、田中教師と話している女性は緑のつま先をした上履きを履いているのである。
「お、来たか結城。じゃ、やるか」
そう行って田中教師は立ち上がった。
そのまま、もう一人の女性と、二人無言で教師の後をついて行く。
職員室と階段を挟んで隣りにある社会科室へと入った。
そして、それぞれに手近の席に腰掛けた。
「じゃ、先輩の片桐からいってみるか」
「はい」
片桐と呼ばれた女子生徒が前にでた。
彼女は綺麗で可愛らしい声をしていた。
よく通るソプラノだ。
身長は俺より気持ち低いくらいか。
華奢な体つきで、髪は肩より少し長いくらいのストレート。
真っ黒で綺麗な髪だ。
顔は少し小さめで、目、鼻、口は整っていた。
かなりの美形である。
ただ、近寄りがたい美しさというのではく、それは思わず守ってあげたくなるような、そんな可愛らしさだった。
うわ~。めちゃくちゃ可愛い人。
思わず見とれてしまった。
こうなると、スピーチどころではない。
なんともよこしまな気持ちで、その綺麗で可愛らしい声を聞きながら彼女に見とれていた。
その後、自分が練習をしたような気はするのだけれど、はっきりとは記憶していなかった。
ただただ、彼女のことが気になって。
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