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魔法省で臨時メイドになりました
きっと一生勝てない
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私は男性に触れられることが苦手だ。まあ、女の子なら誰でも普通はある程度苦手だと思うけど、仕事以外で必要以上のスキンシップをされると本気で身構える部分がある。
一緒に暮らしてるシドさんやアムドさんでさえ嫌がる時があるくらいだもんね。どうしてかなって思えば、前に結婚したくない言い訳に使っていた子供時代の出来事が、本当にどこかでトラウマになっているのかもしれないなーとか。
騎士数名に膝上抱き上げられて代わる代わる構われるって、初対面の女の子にすることじゃないし、素直に怖かった。ただ、お兄ちゃんがすぐに助けてくれたし、少ししたら大丈夫になったからもう平気だと思ったのよ。仕事をする上で身構えたりしなかったしね。
ただ、これが完全にプライベートになるとやっぱり駄目な部分があるんだ。こればっかりはどうしようもないし、自分から積極的に治そうとかも思わないけれど。
だって、レオナール様には安心して身構えるどころか甘えちゃうんだよ? 特別な人がすでにいるのにわざわざ治す必要もないかなって。必要以上のスキンシップじゃないなら身構えもしないし、ほどほどの距離感なら何も問題ないから。
レオナール様もちゃんとわかってる。仕事なら大丈夫なのも、プライベートでも適度な距離感なら大丈夫なのも。それでも、そうやって気遣われるのは嬉しいよね。
「本当に……」
「ん?」
「いえ、レオナール様はどれだけ私を惚れ直させれば気がすむのかな、と」
照れ笑いを浮かべつつそう答えたら、レオナール様はきょとんとした顔からやわらかな笑顔に表情を変える。
「じゃあ、一生?」
「一生?」
「ん。ずっとずっと、リリーに好きでいてほしいから」
……まってー、私今絶対に顔赤い。耳どころかきっと首まで赤い。やだもう何この人勝てない。
思わず蹲って膝に顔を伏せる。本当に、もう駄目だ。きっと一生勝てない。
こ、恋人になったのと久々に会うのが相まってなのか、めちゃくちゃ甘い言葉ささやいてくる……!
「リリー?」
不思議そうなレオナール様の声が聞こえるけど、無理。顔あげられない。
だって、だって……ずっと私に好きでいてほしいから一生惚れ直させるとか、なにその口説き文句。
今までこう、浮名を流す貴族男性の甘い台詞とか、モテる男性の本気の口説き文句とか、そういうのを聞いたり見たりしたことはあるけど、こんなにダメージなかったよ。
というか、レオナール様のって計算じゃないから余計に効くんだよね。ああもう、どうしよう。
「レオナール様に勝つ自信がないです……」
思わず本心を呟くと、両頬に手を添えられて顔を上げさせられる。いつの間にか私の前にしゃがんでいたレオナール様が私を見つめていて、ふわりと優しく微笑んでいた。
「真っ赤だ。可愛い」
あ、きゅん死する。至近距離で麗しい笑顔でそんなこと言われて、よく見たらレオナール様もほんのり頬が赤いとか、もう無理鼻血出して倒れたい。
感情がどうしようもなくなって涙が滲む。恥ずかしいのかなんで泣くのかよくわからないけど、そうして目尻に浮かぶ涙をレオナール様が唇で吸い取るなんてナチュラルにするから、本当に倒れるぞもう。
むしろ卒倒してもいいと思う。駄目? 駄目かな?
「……だから、いちゃいちゃするのは家でしなさいって言ってるでしょうがぁ!」
再び叫ぶヴィオラさんの声にハッと我に返り、私は慌ててレオナール様の胸を押す。
「あ、あの、レオナール様」
「ん?」
「ん? じゃなくて、ちょっと離れてください」
「もう、泣かない?」
「泣きません泣きません」
だからあの、ちょっと離れてください。そう続けようとしたけど、それより先に横抱きで持ち上げられて……はい?
「あの、レオナール様?」
「ずっとしゃがむと足が痺れる」
いや、短時間だから別に……大丈夫なんだけど。むしろヴィオラさんに怒られてるこの状況下で更に怒られるようなことをしなくてもいいような気がするんだけど。
そう思っていたら、レオナール様はソファーにそっと私を下ろす。あ、運んでくれただけですか、どうもありがとうございます……これもナチュラルにやってるんだよねー、アランやっぱり隠すの無理じゃない?
「……万事が万事この調子なら、本当に何かされかねないわね。必要以上に嫉妬心煽っていそうだもの」
不意に小さく呟いたヴィオラさんに視線を向ければ、額を押さえてため息を吐かれてしまう。
「レオちゃん、自重って言葉を覚えなさい。じゃないと、本当にあなたの大事なリリーちゃんが傷つけられるわよ」
「自重……どうすればいい? リリーが傷つくのは嫌だ」
真剣な顔になるレオナール様にヴィオラさんは仕方ないなぁというような笑みを浮かべていた。
「わからないなら、一緒にいて私が止めてあげるわ。そしたら、なんとかなるでしょう」
「では、王女が滞在の間はヴィルヘルム殿も二人と行動することでいいですね」
「仕方ないわよね、放っておいたらとんでもないことになりそうだし」
まるーく収まりそうだからなにも言わないけど、あの。私本当に嫌味程度で傷つけられたりはしないからね?
一緒に暮らしてるシドさんやアムドさんでさえ嫌がる時があるくらいだもんね。どうしてかなって思えば、前に結婚したくない言い訳に使っていた子供時代の出来事が、本当にどこかでトラウマになっているのかもしれないなーとか。
騎士数名に膝上抱き上げられて代わる代わる構われるって、初対面の女の子にすることじゃないし、素直に怖かった。ただ、お兄ちゃんがすぐに助けてくれたし、少ししたら大丈夫になったからもう平気だと思ったのよ。仕事をする上で身構えたりしなかったしね。
ただ、これが完全にプライベートになるとやっぱり駄目な部分があるんだ。こればっかりはどうしようもないし、自分から積極的に治そうとかも思わないけれど。
だって、レオナール様には安心して身構えるどころか甘えちゃうんだよ? 特別な人がすでにいるのにわざわざ治す必要もないかなって。必要以上のスキンシップじゃないなら身構えもしないし、ほどほどの距離感なら何も問題ないから。
レオナール様もちゃんとわかってる。仕事なら大丈夫なのも、プライベートでも適度な距離感なら大丈夫なのも。それでも、そうやって気遣われるのは嬉しいよね。
「本当に……」
「ん?」
「いえ、レオナール様はどれだけ私を惚れ直させれば気がすむのかな、と」
照れ笑いを浮かべつつそう答えたら、レオナール様はきょとんとした顔からやわらかな笑顔に表情を変える。
「じゃあ、一生?」
「一生?」
「ん。ずっとずっと、リリーに好きでいてほしいから」
……まってー、私今絶対に顔赤い。耳どころかきっと首まで赤い。やだもう何この人勝てない。
思わず蹲って膝に顔を伏せる。本当に、もう駄目だ。きっと一生勝てない。
こ、恋人になったのと久々に会うのが相まってなのか、めちゃくちゃ甘い言葉ささやいてくる……!
「リリー?」
不思議そうなレオナール様の声が聞こえるけど、無理。顔あげられない。
だって、だって……ずっと私に好きでいてほしいから一生惚れ直させるとか、なにその口説き文句。
今までこう、浮名を流す貴族男性の甘い台詞とか、モテる男性の本気の口説き文句とか、そういうのを聞いたり見たりしたことはあるけど、こんなにダメージなかったよ。
というか、レオナール様のって計算じゃないから余計に効くんだよね。ああもう、どうしよう。
「レオナール様に勝つ自信がないです……」
思わず本心を呟くと、両頬に手を添えられて顔を上げさせられる。いつの間にか私の前にしゃがんでいたレオナール様が私を見つめていて、ふわりと優しく微笑んでいた。
「真っ赤だ。可愛い」
あ、きゅん死する。至近距離で麗しい笑顔でそんなこと言われて、よく見たらレオナール様もほんのり頬が赤いとか、もう無理鼻血出して倒れたい。
感情がどうしようもなくなって涙が滲む。恥ずかしいのかなんで泣くのかよくわからないけど、そうして目尻に浮かぶ涙をレオナール様が唇で吸い取るなんてナチュラルにするから、本当に倒れるぞもう。
むしろ卒倒してもいいと思う。駄目? 駄目かな?
「……だから、いちゃいちゃするのは家でしなさいって言ってるでしょうがぁ!」
再び叫ぶヴィオラさんの声にハッと我に返り、私は慌ててレオナール様の胸を押す。
「あ、あの、レオナール様」
「ん?」
「ん? じゃなくて、ちょっと離れてください」
「もう、泣かない?」
「泣きません泣きません」
だからあの、ちょっと離れてください。そう続けようとしたけど、それより先に横抱きで持ち上げられて……はい?
「あの、レオナール様?」
「ずっとしゃがむと足が痺れる」
いや、短時間だから別に……大丈夫なんだけど。むしろヴィオラさんに怒られてるこの状況下で更に怒られるようなことをしなくてもいいような気がするんだけど。
そう思っていたら、レオナール様はソファーにそっと私を下ろす。あ、運んでくれただけですか、どうもありがとうございます……これもナチュラルにやってるんだよねー、アランやっぱり隠すの無理じゃない?
「……万事が万事この調子なら、本当に何かされかねないわね。必要以上に嫉妬心煽っていそうだもの」
不意に小さく呟いたヴィオラさんに視線を向ければ、額を押さえてため息を吐かれてしまう。
「レオちゃん、自重って言葉を覚えなさい。じゃないと、本当にあなたの大事なリリーちゃんが傷つけられるわよ」
「自重……どうすればいい? リリーが傷つくのは嫌だ」
真剣な顔になるレオナール様にヴィオラさんは仕方ないなぁというような笑みを浮かべていた。
「わからないなら、一緒にいて私が止めてあげるわ。そしたら、なんとかなるでしょう」
「では、王女が滞在の間はヴィルヘルム殿も二人と行動することでいいですね」
「仕方ないわよね、放っておいたらとんでもないことになりそうだし」
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