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魔法省で臨時メイドになりました
王家のメイドとして
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母さんや私たちの身の安全の為にと表立って公表はしてないんだけど、私たちの父親であるノヴァイス・グランド、通称である迅雷のノヴェ。凄腕の傭兵として名高い父は、それはもう物語にできそうな純愛と恋愛ドラマの末に母さんの心を射止めている。
それだけに、私とお兄ちゃんにも本当に愛する人とでなければ結婚しなくていいと言ってくれているんだ。
流石に適齢期後半になった私の心配はしたみたいだけど、それでもこう、なんていうのかな。見合い話じゃなくて、男性と知り合うきっかけの場を作ろうか的な提案だったけど。
……まあ、今思えばそれで誰かといい感じになっても、なんだかんだ全力で邪魔された気はする。溺愛されている自覚があるし、馬鹿親の典型的パターンだと言える状態だから。
そんな父さんが、政略結婚でお兄ちゃんが国外に出るとか言ったら、絶対城に殴り込み仕掛けて来るよ。ついでに母さんが涙を浮かべたら、贔屓にしてる傭兵さんたちも手伝いそうだし。怖いなー、我が家。
ま、かく言う私も全力で阻止するけどね、それどころじゃなくなるような諸々のカード切りまくって別の大事件起こしちゃうから。王家のメイドの情報網、舐めんなよ?
「……リリー、実際にやっていないことでその黒い不穏な気配を醸し出すのはやめていただけませんか?」
「あら、失礼」
若干口の端を引き攣らせるアランに、これ見よがしににっこりと笑う。でも、アランが変なことを言っちゃったのが悪いんだよ?
「話を戻しましょう」
ひとつ咳ばらいをしたアランが表情を改める。
「こちらとしては友好の証として参られるエスティリア王女の望むように、この国に出来る限りのもてなしはしたい。ですが、その為にこの国の筆頭魔法使いであるレオナール・マリエルを婿入りさせる訳にもいかない。ここまではいいですね?」
「大丈夫、理解できてる。で、私は王女様を刺激しないように家でおとなしくしてたほうがいいの?」
「いえ、むしろこのまま魔法省で働いてください。マリエル殿のメイドとして」
言われた内容が理解しきれなくてぽかんとする。え、えと、どういう意味?
「ここで働く? 僕のメイドとして?」
「ええ。前から気にはなっていたのですが、王女はあなたに話しかける時に間に女性を挟みません。ですが、それは嗜みがない行為とされています。元々はこの国の機密を守る為と王女の連れている侍女たちを入れないために起こってしまった状況でしたよね?」
「そう、だけど」
「魔法省にはそもそも女性が少なく、王女の相手が出来るほどマナーが身についた者もいない。かと言って一般のメイドを魔法省に派遣するのは、慣れていなければ意味がない上に魔法当たりの可能性もある……その点リリーなら、レオナールに慣れていて魔法当たりを防ぐこともでき、仕事もできる上にマナーも出来ている。王家のメイドという正式な称号と共に、こちらの配慮だと言い切ってしまうことが可能です」
アランの言葉に考え込んでしまったレオナール様。アランの言いたいことは、理解できたけど。
「結局、王家のメイドの名のもとに私をこき使いたいだけな気がするのは気のせい?」
「気のせいではありませんが……リリーはどうです? 悪い話ではないでしょう」
私に向き直ったアランは、にっこりと、それはいい笑顔を浮かべている。
「自分の恋人に近づく、好意を持った女性を間近で観察し、妨害もできる位置にいられるんですよ。おまけに仕事という名目のもと、レオナールと一緒にいられる時間が格段に増える」
「ついでに、王女の接待に使う人員削減と王太子殿下やアランが対応する時間を減らせるだろうと見越している部分も狙ってるでしょう」
「ふふ、まあそうですが。流石リリー、よくわかってらっしゃる」
くすくすと笑うアラン。やっぱりね、単なる親切心だけでそんな話を投げかけてくるとは思えなかったもの。
でも、アランの言うことも一理あるんだよな……お仕事が忙しくてなかなか会えないのは私もさびしいし、王女様が来るならきっともっと忙しくなる。
そうしたら当然会えなくなるわけで……うーん、家事とかもしなきゃって言うのはわかってるんだけど……
「……リリーが、嫌じゃないなら」
「え?」
ぽつりと小さく呟かれた声に振り向けば、レオナール様がどこか照れたような顔をしている。
「僕は、リリーに会える方が嬉しい。傍にいて欲しいし、だから、手伝ってくれる?」
「レオナール様がそう望まれるなら。でも、家事はどうしましょう」
「シドやミリスがいるし、リリーも一緒なら無理やりでも毎日帰る。食事の支度だけ無理させるかもしれない」
「あ、それはどうにかしますので。では、王女様が滞在される間は、レオナール様と一緒にお仕事ということでよろしいでしょうか」
「ん」
嬉しそうなレオナール様はいいんだけど、してやったり的な顔のアランがちょっとムカつく。
間違いなくこき使われるんだろうけど、まあ今回くらいは昔の馴染みで良しとしましょうかね。
それだけに、私とお兄ちゃんにも本当に愛する人とでなければ結婚しなくていいと言ってくれているんだ。
流石に適齢期後半になった私の心配はしたみたいだけど、それでもこう、なんていうのかな。見合い話じゃなくて、男性と知り合うきっかけの場を作ろうか的な提案だったけど。
……まあ、今思えばそれで誰かといい感じになっても、なんだかんだ全力で邪魔された気はする。溺愛されている自覚があるし、馬鹿親の典型的パターンだと言える状態だから。
そんな父さんが、政略結婚でお兄ちゃんが国外に出るとか言ったら、絶対城に殴り込み仕掛けて来るよ。ついでに母さんが涙を浮かべたら、贔屓にしてる傭兵さんたちも手伝いそうだし。怖いなー、我が家。
ま、かく言う私も全力で阻止するけどね、それどころじゃなくなるような諸々のカード切りまくって別の大事件起こしちゃうから。王家のメイドの情報網、舐めんなよ?
「……リリー、実際にやっていないことでその黒い不穏な気配を醸し出すのはやめていただけませんか?」
「あら、失礼」
若干口の端を引き攣らせるアランに、これ見よがしににっこりと笑う。でも、アランが変なことを言っちゃったのが悪いんだよ?
「話を戻しましょう」
ひとつ咳ばらいをしたアランが表情を改める。
「こちらとしては友好の証として参られるエスティリア王女の望むように、この国に出来る限りのもてなしはしたい。ですが、その為にこの国の筆頭魔法使いであるレオナール・マリエルを婿入りさせる訳にもいかない。ここまではいいですね?」
「大丈夫、理解できてる。で、私は王女様を刺激しないように家でおとなしくしてたほうがいいの?」
「いえ、むしろこのまま魔法省で働いてください。マリエル殿のメイドとして」
言われた内容が理解しきれなくてぽかんとする。え、えと、どういう意味?
「ここで働く? 僕のメイドとして?」
「ええ。前から気にはなっていたのですが、王女はあなたに話しかける時に間に女性を挟みません。ですが、それは嗜みがない行為とされています。元々はこの国の機密を守る為と王女の連れている侍女たちを入れないために起こってしまった状況でしたよね?」
「そう、だけど」
「魔法省にはそもそも女性が少なく、王女の相手が出来るほどマナーが身についた者もいない。かと言って一般のメイドを魔法省に派遣するのは、慣れていなければ意味がない上に魔法当たりの可能性もある……その点リリーなら、レオナールに慣れていて魔法当たりを防ぐこともでき、仕事もできる上にマナーも出来ている。王家のメイドという正式な称号と共に、こちらの配慮だと言い切ってしまうことが可能です」
アランの言葉に考え込んでしまったレオナール様。アランの言いたいことは、理解できたけど。
「結局、王家のメイドの名のもとに私をこき使いたいだけな気がするのは気のせい?」
「気のせいではありませんが……リリーはどうです? 悪い話ではないでしょう」
私に向き直ったアランは、にっこりと、それはいい笑顔を浮かべている。
「自分の恋人に近づく、好意を持った女性を間近で観察し、妨害もできる位置にいられるんですよ。おまけに仕事という名目のもと、レオナールと一緒にいられる時間が格段に増える」
「ついでに、王女の接待に使う人員削減と王太子殿下やアランが対応する時間を減らせるだろうと見越している部分も狙ってるでしょう」
「ふふ、まあそうですが。流石リリー、よくわかってらっしゃる」
くすくすと笑うアラン。やっぱりね、単なる親切心だけでそんな話を投げかけてくるとは思えなかったもの。
でも、アランの言うことも一理あるんだよな……お仕事が忙しくてなかなか会えないのは私もさびしいし、王女様が来るならきっともっと忙しくなる。
そうしたら当然会えなくなるわけで……うーん、家事とかもしなきゃって言うのはわかってるんだけど……
「……リリーが、嫌じゃないなら」
「え?」
ぽつりと小さく呟かれた声に振り向けば、レオナール様がどこか照れたような顔をしている。
「僕は、リリーに会える方が嬉しい。傍にいて欲しいし、だから、手伝ってくれる?」
「レオナール様がそう望まれるなら。でも、家事はどうしましょう」
「シドやミリスがいるし、リリーも一緒なら無理やりでも毎日帰る。食事の支度だけ無理させるかもしれない」
「あ、それはどうにかしますので。では、王女様が滞在される間は、レオナール様と一緒にお仕事ということでよろしいでしょうか」
「ん」
嬉しそうなレオナール様はいいんだけど、してやったり的な顔のアランがちょっとムカつく。
間違いなくこき使われるんだろうけど、まあ今回くらいは昔の馴染みで良しとしましょうかね。
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