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魔法省で臨時メイドになりました
籠められた思い
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「な、なに?」
あんまりにもジッと見られて居心地が悪くなった私が聞くと、アランはハッとしたような顔になった。
「ああ、いえ。その指輪が気になって」
「指輪? ああ、これ?」
アランが言ったのはレオナール様から頂いたムーンストーンの婚約指輪のことね。
散りばめられた石と共にキラキラと輝くのが綺麗で可愛いし、なによりレオナール様が私をイメージしたと言って贈ってくれたのだからとても大切にしている。
家事をする時は外さないとと思ったら、汚れや傷防止の魔法と、私かレオナール様にしか抜けない魔法まで付与してもらったから腕輪と同じようにいつもつけていられるんだ。
「……レオナール様に、いただいたの」
そう言って指輪を撫でる私は、きっと幸せそうな笑みを浮かべていたんだろう。視界の端でロイゲンの顔が歪んでいくのが見えるもの。ごめんね、大嫌いな私が幸せになって。
「そう、ですか」
「うん」
アランの声に頷くけど、顔を向けるより先に紫色が見えてそちらを向く。案の定ヴィオラさんが近づいてきていて、その目がキラキラと輝いていた。
「ちょっと見せてもらえないかしら? あ、もちろん指にしたままでいいから!」
「ええ、どうぞ」
素直に左手を差し出せば、うわぁと感嘆の声を上げつつしげしげと見つめられる。
「中央は珍しい青のムーンストーンかしら?脇のはアメジストと……ピンク系の石だけどローズクオーツでもトルマリンでもなさそうね。あとこの透明なのはレインボークオーツ……じゃないわ、なにかしら」
「確か、アクアマリンとフローライトだと」
「えええ、やだー!」
きゃあきゃあと嬉しそうに私を見たヴィオラさんは、にっこりと私に笑いかける。
「本当に、大事にされてるのね」
「え?」
「あら、もしかして聞いてないの?」
「ムーンストーンの意味ならお聞きしました。あとは私のイメージだとかで、詳しくは……」
それ以外に何か特別な意味があるのかなってレオナール様を見たら、そっぽを向かれたけど耳が赤い。
え、なんだろう、気になるけど。
「聞かない方がいいですか?」
「……恥ずかしい、だけ。ヴィル、話していいよ」
「うふふ、了解ー。じゃ、ちょっと見てもらえる?」
とても楽しそうなヴィオラさんは、私の指輪を示す。
「まず中央のムーンストーンは稀少な青いムーンストーンね。有名な意味は永遠の愛情。ムーンストーン自体が女性を守る石だもの、男性から贈られる石としては最高にいいわね」
「お詳しいのですね」
「私、魔石の研究が専門なの。魔力との相性や石同士の相性が魔石を使う魔法具には凄い影響が出るから、石には詳しくないとね」
本職の方でしたか、なるほど。じゃあ、ルーカスさんと同じように研究系の魔法使いさんなのね。
魔石はもともと魔力を帯びた石を使うこともあるけど、基本的には石に魔力を注いだり刻印を刻んで力を増幅させるものだもの、そりゃ相性もろもろあるか。
宝石の意味にも魔法にかかわる何かがこめられているのかな? なんて考えていたら、それでとヴィオラさんが続ける。
「アメジストの意味は真実の愛を守り抜く、アクアマリンは幸せな結婚、フローライトは色々と色によって意味が異なるけど、この透明でほとんど無色のものなら純粋とか清らかな意味を持っているし、悪いものから身を守る力があるのよ。それにアメジストもアクアマリンも透明度は高いけど色味が薄いでしょう?」
「そう、ですね」
確かに、どちらの石もとても透き通って綺麗だけど色味は限りなく薄い。いわゆる宝石だよって感じではない。
その分中央のムーンストーンを引き立てるし調和してるから可愛らしい仕上がりなんだけど。
「だからこの三種類に宝石としての価値はあまりないわ。でも魔石で考えれば、透明度が高いってことはその分複数の魔力を込めるときに邪魔なものがなく、他の魔石との調和も取りやすいということになるの。だから、ありったけの魔法と想いを注いだ最強のお守りで誓いの証だって、見る人が見れば一発よ。その指輪の意匠からもね」
この指輪、いわゆるリングの部分に宝石をはめ込んで一直線に飾るのではなく、中央のムーンストーンを取り巻くように左右の石が飾られている。まるで花のようにも見える指輪なんだけど、この意匠がどうかしたの?
「透明な石で中央の石を囲んでいる、このこと自体に相乗効果による魔力の増幅があるわ。こめられた魔力がより強くなるってことね。で、この花みたいな意匠自体が、女性らしさを引きだすし女性を守る力も大きくなる意匠なのよ。もう、やれるだけのことはやってみた感が凄いし、全部調和してるところが凄いわね。私も見習いたいくらい」
えと、それはつまり、レオナール様がそれだけたくさんの意味を込めてこの指輪を作って贈ってくれたってことで、うん。
とても大事に思われているんだなって嬉しく思いつつ、間違いなく真っ赤だろう熱い頬に手を当てる。
だ、だって、嬉しいけどすっごい恥ずかしいんだもの!
あんまりにもジッと見られて居心地が悪くなった私が聞くと、アランはハッとしたような顔になった。
「ああ、いえ。その指輪が気になって」
「指輪? ああ、これ?」
アランが言ったのはレオナール様から頂いたムーンストーンの婚約指輪のことね。
散りばめられた石と共にキラキラと輝くのが綺麗で可愛いし、なによりレオナール様が私をイメージしたと言って贈ってくれたのだからとても大切にしている。
家事をする時は外さないとと思ったら、汚れや傷防止の魔法と、私かレオナール様にしか抜けない魔法まで付与してもらったから腕輪と同じようにいつもつけていられるんだ。
「……レオナール様に、いただいたの」
そう言って指輪を撫でる私は、きっと幸せそうな笑みを浮かべていたんだろう。視界の端でロイゲンの顔が歪んでいくのが見えるもの。ごめんね、大嫌いな私が幸せになって。
「そう、ですか」
「うん」
アランの声に頷くけど、顔を向けるより先に紫色が見えてそちらを向く。案の定ヴィオラさんが近づいてきていて、その目がキラキラと輝いていた。
「ちょっと見せてもらえないかしら? あ、もちろん指にしたままでいいから!」
「ええ、どうぞ」
素直に左手を差し出せば、うわぁと感嘆の声を上げつつしげしげと見つめられる。
「中央は珍しい青のムーンストーンかしら?脇のはアメジストと……ピンク系の石だけどローズクオーツでもトルマリンでもなさそうね。あとこの透明なのはレインボークオーツ……じゃないわ、なにかしら」
「確か、アクアマリンとフローライトだと」
「えええ、やだー!」
きゃあきゃあと嬉しそうに私を見たヴィオラさんは、にっこりと私に笑いかける。
「本当に、大事にされてるのね」
「え?」
「あら、もしかして聞いてないの?」
「ムーンストーンの意味ならお聞きしました。あとは私のイメージだとかで、詳しくは……」
それ以外に何か特別な意味があるのかなってレオナール様を見たら、そっぽを向かれたけど耳が赤い。
え、なんだろう、気になるけど。
「聞かない方がいいですか?」
「……恥ずかしい、だけ。ヴィル、話していいよ」
「うふふ、了解ー。じゃ、ちょっと見てもらえる?」
とても楽しそうなヴィオラさんは、私の指輪を示す。
「まず中央のムーンストーンは稀少な青いムーンストーンね。有名な意味は永遠の愛情。ムーンストーン自体が女性を守る石だもの、男性から贈られる石としては最高にいいわね」
「お詳しいのですね」
「私、魔石の研究が専門なの。魔力との相性や石同士の相性が魔石を使う魔法具には凄い影響が出るから、石には詳しくないとね」
本職の方でしたか、なるほど。じゃあ、ルーカスさんと同じように研究系の魔法使いさんなのね。
魔石はもともと魔力を帯びた石を使うこともあるけど、基本的には石に魔力を注いだり刻印を刻んで力を増幅させるものだもの、そりゃ相性もろもろあるか。
宝石の意味にも魔法にかかわる何かがこめられているのかな? なんて考えていたら、それでとヴィオラさんが続ける。
「アメジストの意味は真実の愛を守り抜く、アクアマリンは幸せな結婚、フローライトは色々と色によって意味が異なるけど、この透明でほとんど無色のものなら純粋とか清らかな意味を持っているし、悪いものから身を守る力があるのよ。それにアメジストもアクアマリンも透明度は高いけど色味が薄いでしょう?」
「そう、ですね」
確かに、どちらの石もとても透き通って綺麗だけど色味は限りなく薄い。いわゆる宝石だよって感じではない。
その分中央のムーンストーンを引き立てるし調和してるから可愛らしい仕上がりなんだけど。
「だからこの三種類に宝石としての価値はあまりないわ。でも魔石で考えれば、透明度が高いってことはその分複数の魔力を込めるときに邪魔なものがなく、他の魔石との調和も取りやすいということになるの。だから、ありったけの魔法と想いを注いだ最強のお守りで誓いの証だって、見る人が見れば一発よ。その指輪の意匠からもね」
この指輪、いわゆるリングの部分に宝石をはめ込んで一直線に飾るのではなく、中央のムーンストーンを取り巻くように左右の石が飾られている。まるで花のようにも見える指輪なんだけど、この意匠がどうかしたの?
「透明な石で中央の石を囲んでいる、このこと自体に相乗効果による魔力の増幅があるわ。こめられた魔力がより強くなるってことね。で、この花みたいな意匠自体が、女性らしさを引きだすし女性を守る力も大きくなる意匠なのよ。もう、やれるだけのことはやってみた感が凄いし、全部調和してるところが凄いわね。私も見習いたいくらい」
えと、それはつまり、レオナール様がそれだけたくさんの意味を込めてこの指輪を作って贈ってくれたってことで、うん。
とても大事に思われているんだなって嬉しく思いつつ、間違いなく真っ赤だろう熱い頬に手を当てる。
だ、だって、嬉しいけどすっごい恥ずかしいんだもの!
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