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魔法省で臨時メイドになりました
その言葉が一番嬉しい
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熱の魔石のいいところは、火が出ないのに温めることが出来ること。だから書類の多い部屋でも安全にお茶が淹れられる。城は客室や寝室以外のほぼ全部屋に水が引かれているから、熱の魔石と茶器とお茶さえあればどの部屋でも自由にお茶が淹れられるんだ。
この水の使い方が国の豊かさを感じさせるんだって諸国からは感嘆されるらしい。
ともかくサッと水洗いしたポットでお湯を沸かしたら、直接お茶を気持ち少なめに二人分。煮出すと濃くなるから少なめが美味しいんだよね。
あ、これ紅茶でやると凄い渋いのでご注意ください。今淹れているのは柑橘系のほんのり甘いハーブティーのようなお茶だから、煮出しても大丈夫なだけです。あとは紅茶のように少し待てば、お手軽煮出し茶の完成。
「お茶が入りましたよ」
「ん、じゃあ食べよう」
ソファに並んで腰を下ろすと、早速レオナール様がサンドウィッチに齧りつく。
「ん?」
「あれ、何か変でした?」
食べた途端首傾げられちゃうと美味しくなかったのかと凄い不安になるんだけど。
二人きりだから砕けた口調で茶化すように、でも内心はもの凄くドキドキしつつレオナール様を見れば、パチリと瞬きがひとつ。
「これ、なに?」
「ポテトサラダサンドです。お口にあいませんか?」
「すごく美味しい」
ああ、よかった。ビックリした、美味しくなかったのかと思った。
ホッと胸を撫で下ろしていると、食べ終わったレオナール様がもうひとつ手を伸ばす。
「こっちはチキン?」
「ええ、今回はハニーマスタード味にしてみました」
「マスタード……辛い?」
今のレオナール様に尻尾ついてたら、間違いなくへたってる。ハの字眉毛でしょんぼりした顔のレオナール様がとても可愛く感じて、思わず撫でたくなった。
いや、誰もいないし撫でてもいいかな。でも男の人って撫でられるの嫌いな人の方が多いよね。
「ジルとジェイドも食べられる味付けにしたので、大丈夫なはずです」
「……わかった。頑張る」
頑張るって、辛いの苦手だけど私が作ったから食べてみるってこと? ついつい手を伸ばして撫でそうになるのをなんとか自制して微笑めば、レオナール様は恐る恐るサンドウィッチを口にする。さっきよりは控えめな一口だけど、見ていたらパアッと表情が輝いた。
「リリー、これ美味しい! これなら食べられる!」
「ちゃんとマスタードの香りはしても、火を通していることと蜂蜜を使ってしっかり甘さとこくを出しているからほとんど辛味がなくなるんですよ」
まぐまぐと幸せそうに食べるレオナール様に説明しつつ、私もポテトサンドをひとつ。
うん、美味しく出来てる。炭水化物に炭水化物だけど、仕事で頭使うなら糖質少しくらい多く摂ってもいいよね。
「あれ、リリーはそれだけ?」
「私はこれで充分足りますよ」
私のサンドウィッチを見たレオナール様が不思議そうな顔になるけど、ポテトサラダサンドってかなりお腹にたまるんだ。お芋って凄いよね。
だから笑って大丈夫だと言ったんだけど、そうしたらレオナール様は自分が食べていたサンドウィッチをこちらに向けた。
「せっかくだから、一口」
「……じゃ、じゃあ」
少し恥ずかしいけど、断るのもあれなので甘えて一口。うん、ちゃんと皮もパリパリで芳ばしく焼けているし、味付けも甘すぎずちゃんと鳥の旨味も出て、鼻に抜けるマスタードがさっぱりさせてくれる。
でも辛味はまったくない。やっぱりソースに混ぜてまとめて火を通すと辛さが抜けるよね。辛くというかマスタードらしさを求める場合は焼く時に改めて塗り直すんだけど、今回は子供と辛いのが苦手なレオナール様用に作ったからこれで充分。
「うん、美味しくできててよかった」
「リリーのご飯は本当に美味しい。それに、たとえ辛くてもリリーが作ったんだから美味しいに決まってた。さっきはごめん」
ごめんって、辛いか確認したこと?
「レオナール様が辛い物を苦手としているのは知ってるし、不安になるのも当然ですよ? だから、気にしてないです」
「ん……ありがとう。もう一口食べる?」
「大丈夫。それよりレオナール様に喜んでほしくて作ったから、ちゃんと食べてくれる方が嬉しいです」
頑張ってるレオナール様へ少しでも手助けしたくて差し入れしてる訳だし、喜んでもらえるのが嬉しい。
「久しぶりにこうして一緒にご飯が食べられると、やっぱり嬉しいですね」
「ん。早く帰れるように頑張る」
「微力だけどお手伝いしますね。全部終わったら、家でレオナール様の好きなものを作りますから。何かご希望あれば教えてくださいね」
「んー、リリーの作るのみんな好きだよ?」
あら、嬉しくてちょっと困るお言葉が。どうしようかしらねー、お疲れ様って意味をこめたご飯は何がいいかな?
この水の使い方が国の豊かさを感じさせるんだって諸国からは感嘆されるらしい。
ともかくサッと水洗いしたポットでお湯を沸かしたら、直接お茶を気持ち少なめに二人分。煮出すと濃くなるから少なめが美味しいんだよね。
あ、これ紅茶でやると凄い渋いのでご注意ください。今淹れているのは柑橘系のほんのり甘いハーブティーのようなお茶だから、煮出しても大丈夫なだけです。あとは紅茶のように少し待てば、お手軽煮出し茶の完成。
「お茶が入りましたよ」
「ん、じゃあ食べよう」
ソファに並んで腰を下ろすと、早速レオナール様がサンドウィッチに齧りつく。
「ん?」
「あれ、何か変でした?」
食べた途端首傾げられちゃうと美味しくなかったのかと凄い不安になるんだけど。
二人きりだから砕けた口調で茶化すように、でも内心はもの凄くドキドキしつつレオナール様を見れば、パチリと瞬きがひとつ。
「これ、なに?」
「ポテトサラダサンドです。お口にあいませんか?」
「すごく美味しい」
ああ、よかった。ビックリした、美味しくなかったのかと思った。
ホッと胸を撫で下ろしていると、食べ終わったレオナール様がもうひとつ手を伸ばす。
「こっちはチキン?」
「ええ、今回はハニーマスタード味にしてみました」
「マスタード……辛い?」
今のレオナール様に尻尾ついてたら、間違いなくへたってる。ハの字眉毛でしょんぼりした顔のレオナール様がとても可愛く感じて、思わず撫でたくなった。
いや、誰もいないし撫でてもいいかな。でも男の人って撫でられるの嫌いな人の方が多いよね。
「ジルとジェイドも食べられる味付けにしたので、大丈夫なはずです」
「……わかった。頑張る」
頑張るって、辛いの苦手だけど私が作ったから食べてみるってこと? ついつい手を伸ばして撫でそうになるのをなんとか自制して微笑めば、レオナール様は恐る恐るサンドウィッチを口にする。さっきよりは控えめな一口だけど、見ていたらパアッと表情が輝いた。
「リリー、これ美味しい! これなら食べられる!」
「ちゃんとマスタードの香りはしても、火を通していることと蜂蜜を使ってしっかり甘さとこくを出しているからほとんど辛味がなくなるんですよ」
まぐまぐと幸せそうに食べるレオナール様に説明しつつ、私もポテトサンドをひとつ。
うん、美味しく出来てる。炭水化物に炭水化物だけど、仕事で頭使うなら糖質少しくらい多く摂ってもいいよね。
「あれ、リリーはそれだけ?」
「私はこれで充分足りますよ」
私のサンドウィッチを見たレオナール様が不思議そうな顔になるけど、ポテトサラダサンドってかなりお腹にたまるんだ。お芋って凄いよね。
だから笑って大丈夫だと言ったんだけど、そうしたらレオナール様は自分が食べていたサンドウィッチをこちらに向けた。
「せっかくだから、一口」
「……じゃ、じゃあ」
少し恥ずかしいけど、断るのもあれなので甘えて一口。うん、ちゃんと皮もパリパリで芳ばしく焼けているし、味付けも甘すぎずちゃんと鳥の旨味も出て、鼻に抜けるマスタードがさっぱりさせてくれる。
でも辛味はまったくない。やっぱりソースに混ぜてまとめて火を通すと辛さが抜けるよね。辛くというかマスタードらしさを求める場合は焼く時に改めて塗り直すんだけど、今回は子供と辛いのが苦手なレオナール様用に作ったからこれで充分。
「うん、美味しくできててよかった」
「リリーのご飯は本当に美味しい。それに、たとえ辛くてもリリーが作ったんだから美味しいに決まってた。さっきはごめん」
ごめんって、辛いか確認したこと?
「レオナール様が辛い物を苦手としているのは知ってるし、不安になるのも当然ですよ? だから、気にしてないです」
「ん……ありがとう。もう一口食べる?」
「大丈夫。それよりレオナール様に喜んでほしくて作ったから、ちゃんと食べてくれる方が嬉しいです」
頑張ってるレオナール様へ少しでも手助けしたくて差し入れしてる訳だし、喜んでもらえるのが嬉しい。
「久しぶりにこうして一緒にご飯が食べられると、やっぱり嬉しいですね」
「ん。早く帰れるように頑張る」
「微力だけどお手伝いしますね。全部終わったら、家でレオナール様の好きなものを作りますから。何かご希望あれば教えてくださいね」
「んー、リリーの作るのみんな好きだよ?」
あら、嬉しくてちょっと困るお言葉が。どうしようかしらねー、お疲れ様って意味をこめたご飯は何がいいかな?
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