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第11話 下るはずの天罰のかわりに
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「僕は王太子の座から、下ろされるんだ・・・どうしてそうなったのか、君に分かる?」
キャリーは怖いくらいのクロードの笑顔に、声を出せなくなっていた。嫌な汗が全身の毛穴から滲む。
「メリンダとは、婚約解消になったんだ。当然だよね。彼女という婚約者が居ながら、私は君に愛を囁いたんだ。君の望む通り、メリンダとの婚約破棄は成立した。だから君を迎えに来たんだ」
(怖い・・私の知ってるクロードじゃない・・・)
「魅了なんて力まで使って、私を手に入れようとしてくれた君なら、この手を取ってくれるよね?」
そう問い掛けるクロードは、自分の口から紡がれる声に、そして言葉にまるで酔いしれているようだ。うっとりとした瞳でキャリーを見つめると、彼女の頬にそっと触れる。しかし、ビクッと体を震わせたキャリーにクロードは眉間にシワを寄せると、一瞬で不気味な笑顔から不快な表情に変わった。
(壊れてる・・・?)
キャリーは、魅了の力など勿論使っていない。しかし、クロードの尋常ではない様子に彼の気が触れたと、キャリーは思った。
頭の中でカンカンカンと、けたたましく警鐘を鳴らすキャリーの本能。その鐘を聞いた途端、キャリーは無我夢中でクロードの身体を押すと、転がり落ちるようにベッドから離れた。そのまま立ち上がるこができず、這いつくばりながら必死に逃げ道を探す。しかし、すぐにスカートの裾を掴まれたキャリーは、身動きできなくなってしまった。振り返ると、クロードが裾をしっかり握っている。
(ヒィィィ・・ヤバい!怖い!)
キャリーはクロードの眼差しに捕らえられ、身体が固まってしまった。そしてクロードは怯える彼女に「君も私から離れていくなんて、許さないから」と告げると、キャリーの身体を押し倒した。恐怖で動くことができないキャリーは、ついに過去の自分の行いの天罰が下ることを覚悟をし、ギュッと固く目を閉じる。
・・・・
しかし、そこから先に予想していた報いは、一向にやってこない。恐る恐る目を開くと、クロードの瞳はキャリーを見下ろしていた。しかし、クロードの身体はそのまま横へゆっくりと倒れた。
目の前の光景を瞬きするのも忘れるほど凝視しているキャリーの瞳に、安堵したダニエルの美しい顔が映る。すると、彼女の瞳から自然と涙か溢れた。
「遅くなって、すまなかった」
(助かった・・怖かったよぉぉぉ・・・うぅぅぅ・・ダニエルは敵じゃないのぉぉぉ?・・もういいやだぁぁ・・・)
その時、子供のように嗚咽を漏らして泣くキャリーの耳にアルマの声が届く。
「お嬢様!ご無事で何よりです!」
キャリーが泣き腫らす眼差しを声のする方へ向けると、瞳を潤ませたアルマの視線と交差した。その姿を見たキャリーは、さらに号泣する。
「アルマァァァ!!」
身体をヨロヨロと起こしたキャリーが、アルマに抱きつくと、その身体をアルマは優しく抱きしめた。
しかし、感動の再会と思われたキャリーとアルマの抱擁もアルマの一言によって、笑いに変わる。
「お嬢様、抱きつく相手が違いますよ」
「ふへぇ?他に誰にぃ抱きつけって言うのよぉぉ」
キャリーの声にアルマは、視線をダニエルへと向けた。
「だってぇ、彼は何もぉしてないじゃない・・ぅぅ・・」
泣きながら否定のセリフを吐くキャリーに、アルマは子供に語りかけるように、口を開く。
「お嬢様、それは違いますよ。どうやら、私たちは大きな勘違いをしていたようです」
キャリーは怖いくらいのクロードの笑顔に、声を出せなくなっていた。嫌な汗が全身の毛穴から滲む。
「メリンダとは、婚約解消になったんだ。当然だよね。彼女という婚約者が居ながら、私は君に愛を囁いたんだ。君の望む通り、メリンダとの婚約破棄は成立した。だから君を迎えに来たんだ」
(怖い・・私の知ってるクロードじゃない・・・)
「魅了なんて力まで使って、私を手に入れようとしてくれた君なら、この手を取ってくれるよね?」
そう問い掛けるクロードは、自分の口から紡がれる声に、そして言葉にまるで酔いしれているようだ。うっとりとした瞳でキャリーを見つめると、彼女の頬にそっと触れる。しかし、ビクッと体を震わせたキャリーにクロードは眉間にシワを寄せると、一瞬で不気味な笑顔から不快な表情に変わった。
(壊れてる・・・?)
キャリーは、魅了の力など勿論使っていない。しかし、クロードの尋常ではない様子に彼の気が触れたと、キャリーは思った。
頭の中でカンカンカンと、けたたましく警鐘を鳴らすキャリーの本能。その鐘を聞いた途端、キャリーは無我夢中でクロードの身体を押すと、転がり落ちるようにベッドから離れた。そのまま立ち上がるこができず、這いつくばりながら必死に逃げ道を探す。しかし、すぐにスカートの裾を掴まれたキャリーは、身動きできなくなってしまった。振り返ると、クロードが裾をしっかり握っている。
(ヒィィィ・・ヤバい!怖い!)
キャリーはクロードの眼差しに捕らえられ、身体が固まってしまった。そしてクロードは怯える彼女に「君も私から離れていくなんて、許さないから」と告げると、キャリーの身体を押し倒した。恐怖で動くことができないキャリーは、ついに過去の自分の行いの天罰が下ることを覚悟をし、ギュッと固く目を閉じる。
・・・・
しかし、そこから先に予想していた報いは、一向にやってこない。恐る恐る目を開くと、クロードの瞳はキャリーを見下ろしていた。しかし、クロードの身体はそのまま横へゆっくりと倒れた。
目の前の光景を瞬きするのも忘れるほど凝視しているキャリーの瞳に、安堵したダニエルの美しい顔が映る。すると、彼女の瞳から自然と涙か溢れた。
「遅くなって、すまなかった」
(助かった・・怖かったよぉぉぉ・・・うぅぅぅ・・ダニエルは敵じゃないのぉぉぉ?・・もういいやだぁぁ・・・)
その時、子供のように嗚咽を漏らして泣くキャリーの耳にアルマの声が届く。
「お嬢様!ご無事で何よりです!」
キャリーが泣き腫らす眼差しを声のする方へ向けると、瞳を潤ませたアルマの視線と交差した。その姿を見たキャリーは、さらに号泣する。
「アルマァァァ!!」
身体をヨロヨロと起こしたキャリーが、アルマに抱きつくと、その身体をアルマは優しく抱きしめた。
しかし、感動の再会と思われたキャリーとアルマの抱擁もアルマの一言によって、笑いに変わる。
「お嬢様、抱きつく相手が違いますよ」
「ふへぇ?他に誰にぃ抱きつけって言うのよぉぉ」
キャリーの声にアルマは、視線をダニエルへと向けた。
「だってぇ、彼は何もぉしてないじゃない・・ぅぅ・・」
泣きながら否定のセリフを吐くキャリーに、アルマは子供に語りかけるように、口を開く。
「お嬢様、それは違いますよ。どうやら、私たちは大きな勘違いをしていたようです」
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