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新章
新章第21話 カミングアウトはまだ続く
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(うん?何だそれ・・イケメンに溺愛されたいの?)
エルメとアリスは、このビアトリスのぶっちゃけに目が点になる。マリオンとリオルからは、冷ややかな視線が注がれているが、必死なビアトリスは気づかない。
「私とエルメ様がどこなく似ているのは、皆さん否定しませんよね?同じドレスを着たら、殿下も似てる私にも溺愛とまではいかなくても、少しは甘く接してくれるかもしれないと思ったんです!
せっかく転移したのに、この世界を堪能しないともったいないでしょ?短い時間で最大限の経験をする・・これはいわゆるタイパ!タイムパフォーマンスを考慮した結果です!」
息継ぎなしで捲し立てたビアトリス。その姿はまるで、マラソン大会でゴール間際になってラストスパートをかける選手のようだ。
「ビア、貴女そんな理由で?」
「いやいやいやいや、いくら何でも突拍子すぎだよ。父上のこと何も分かってない。僕のこともね」
「そうよ。そんなの上手くいくわけないわ」
エルメたちから三者三様の反応が返ってくるが、ビアトリスはいじけモードに入ったようだ。
「エルメ様はいいですよ。断然美人だし、性格だって楽しいし、優しいし・・おまけに転生者だから、死ぬまでずぅっとエルメ様でいられるし・・・
でも私は、転移しただけ。元に戻ったら、平凡な容姿だし、地味で全然モテない、ネット小説に夢見る女子高生に逆戻りです。それなら少しだけ夢見てもバチは当たりませんよね?」
「「・・・・・・」」
ビアトリスの主張に、みな言葉を失う。
(あの小説を好きだと言ってくれるから、多めに見てたけど流石にちょっとね・・それに見て、あのマリオンの顔。あれはヤバいわ)
エルメは、怒りを通り越して無表情になっているマリオンを見て、ちょっと引いた。このままマリオンに何か言わせると、ビアトリスが無事では済まないだろう。ここは自分が事態の収集を図るべきと考え、口を開く。
「えぇ~!まあ、気持ちは分かるわよ。“彼氏”とか、ちょうど異性が気になる時期だしね。でもモテるモテないは関係なしに、私は羨ましいけどなあ、女子高生。もし戻れるなら、戻って青春やり直したいわよ」
「おい!エルメ!」
「母上!」
エルメの発言に、マリオンとリオルが慌てふためく。それはそうだ。まさか、自分たちがいるのに、叶わないとはいえ、戻りたいなどと口にするとは・・
しかしそんな二人の反応を無視して、エルメは話を続ける。
「でも・・死んじゃったんだよ。私もアリスも・・・突然、大事な人たちを残して、死んじゃったの。
だからこそ、例えいま戻してやると言われても、断るわね。だって、こんなに愛してくれる家族に悲しい想いをさせたくないもの。
それに分かったのよ。どんな世界でも楽しいことは沢山ある。でもそれに気付けるかどうかは、自分の気持ち次第だって・・ビアも戻ったら、大好きな小説の続編書いてくれてるんでしょ?こんなに必死になって取材してくれるなんて、作者としてすっごく嬉しい。
それに夫や息子は、別にこの容姿が好きなわけではないのよ。私がじゃじゃ馬で、こんな性格だからこそ好きでいてくれてる。隣国から嫁いできた姫じゃなく、中身が二十歳の大学生のエルメじゃなくちゃダメなのよ」
そう迷いのない声で言い切ったエルメが、愛する夫と息子に愛情の詰まった瞳を向け「ねっ?そうでしょ?」と微笑むと、マリオンもリオルも彼女の気持ちに応えようと、「もちろんだ」「当然だよ!」と力強く返事をした。
そしてエルメに抱きついたリオル。その温もりは、エルメの心をあっという間に幸せで埋め尽くす。
負けじと、大人気なく抱きつく息子を引き剥がし、エルメの腰を抱き寄せたマリオン。彼はエルメの耳元に顔を寄せると、優しく囁いた。
「・・・捨てられるのかと、ヒヤッとしたぞ」
その甘い声に、エルメの身体はビクッとする。
「・・・フフッ、それはそれは申し訳ございませんでした」
その言葉を聞いたマリオンは、エルメの頬に手を添えると、軽い謝罪を口にしたばかりの唇をチュッと塞ぐ。
「父上、いつもいつもずるいです!」
リオルがまた割り込もうとするが、今度はマリオンがそれを許さない。リオルが手を伸ばしたところで、リオルの首根っこを掴んだ。
そしてエルメは、落ち着いたと思っていたリオルが、父親と自分を巡って争ってい頃に戻った様子にキョトンとする。
(あらあら、少しは大人になったと思ったのに、まだまだだったのね)
そんな家族三人のワチャワチャを目の当たりにしたビアトリスとアリスから、声が上がる。
「あ~ん、やっぱり戻る前に私も溺愛された~い!誰かいませんか~!」
「あ~、もう!いつもいつも見せつけられる人の気にもなってくださいよ。エルメ様は、みんなのエルメ様なのに・・こうなったら、私もいい人探そうかしら」
アリスのセリフに瞳をキラッとさせたエルメ。これは自分の出番だと、胸をワクワクさせた。そして恋のキューピットとして暗躍しようと、密かに決めたのだった。
エルメとアリスは、このビアトリスのぶっちゃけに目が点になる。マリオンとリオルからは、冷ややかな視線が注がれているが、必死なビアトリスは気づかない。
「私とエルメ様がどこなく似ているのは、皆さん否定しませんよね?同じドレスを着たら、殿下も似てる私にも溺愛とまではいかなくても、少しは甘く接してくれるかもしれないと思ったんです!
せっかく転移したのに、この世界を堪能しないともったいないでしょ?短い時間で最大限の経験をする・・これはいわゆるタイパ!タイムパフォーマンスを考慮した結果です!」
息継ぎなしで捲し立てたビアトリス。その姿はまるで、マラソン大会でゴール間際になってラストスパートをかける選手のようだ。
「ビア、貴女そんな理由で?」
「いやいやいやいや、いくら何でも突拍子すぎだよ。父上のこと何も分かってない。僕のこともね」
「そうよ。そんなの上手くいくわけないわ」
エルメたちから三者三様の反応が返ってくるが、ビアトリスはいじけモードに入ったようだ。
「エルメ様はいいですよ。断然美人だし、性格だって楽しいし、優しいし・・おまけに転生者だから、死ぬまでずぅっとエルメ様でいられるし・・・
でも私は、転移しただけ。元に戻ったら、平凡な容姿だし、地味で全然モテない、ネット小説に夢見る女子高生に逆戻りです。それなら少しだけ夢見てもバチは当たりませんよね?」
「「・・・・・・」」
ビアトリスの主張に、みな言葉を失う。
(あの小説を好きだと言ってくれるから、多めに見てたけど流石にちょっとね・・それに見て、あのマリオンの顔。あれはヤバいわ)
エルメは、怒りを通り越して無表情になっているマリオンを見て、ちょっと引いた。このままマリオンに何か言わせると、ビアトリスが無事では済まないだろう。ここは自分が事態の収集を図るべきと考え、口を開く。
「えぇ~!まあ、気持ちは分かるわよ。“彼氏”とか、ちょうど異性が気になる時期だしね。でもモテるモテないは関係なしに、私は羨ましいけどなあ、女子高生。もし戻れるなら、戻って青春やり直したいわよ」
「おい!エルメ!」
「母上!」
エルメの発言に、マリオンとリオルが慌てふためく。それはそうだ。まさか、自分たちがいるのに、叶わないとはいえ、戻りたいなどと口にするとは・・
しかしそんな二人の反応を無視して、エルメは話を続ける。
「でも・・死んじゃったんだよ。私もアリスも・・・突然、大事な人たちを残して、死んじゃったの。
だからこそ、例えいま戻してやると言われても、断るわね。だって、こんなに愛してくれる家族に悲しい想いをさせたくないもの。
それに分かったのよ。どんな世界でも楽しいことは沢山ある。でもそれに気付けるかどうかは、自分の気持ち次第だって・・ビアも戻ったら、大好きな小説の続編書いてくれてるんでしょ?こんなに必死になって取材してくれるなんて、作者としてすっごく嬉しい。
それに夫や息子は、別にこの容姿が好きなわけではないのよ。私がじゃじゃ馬で、こんな性格だからこそ好きでいてくれてる。隣国から嫁いできた姫じゃなく、中身が二十歳の大学生のエルメじゃなくちゃダメなのよ」
そう迷いのない声で言い切ったエルメが、愛する夫と息子に愛情の詰まった瞳を向け「ねっ?そうでしょ?」と微笑むと、マリオンもリオルも彼女の気持ちに応えようと、「もちろんだ」「当然だよ!」と力強く返事をした。
そしてエルメに抱きついたリオル。その温もりは、エルメの心をあっという間に幸せで埋め尽くす。
負けじと、大人気なく抱きつく息子を引き剥がし、エルメの腰を抱き寄せたマリオン。彼はエルメの耳元に顔を寄せると、優しく囁いた。
「・・・捨てられるのかと、ヒヤッとしたぞ」
その甘い声に、エルメの身体はビクッとする。
「・・・フフッ、それはそれは申し訳ございませんでした」
その言葉を聞いたマリオンは、エルメの頬に手を添えると、軽い謝罪を口にしたばかりの唇をチュッと塞ぐ。
「父上、いつもいつもずるいです!」
リオルがまた割り込もうとするが、今度はマリオンがそれを許さない。リオルが手を伸ばしたところで、リオルの首根っこを掴んだ。
そしてエルメは、落ち着いたと思っていたリオルが、父親と自分を巡って争ってい頃に戻った様子にキョトンとする。
(あらあら、少しは大人になったと思ったのに、まだまだだったのね)
そんな家族三人のワチャワチャを目の当たりにしたビアトリスとアリスから、声が上がる。
「あ~ん、やっぱり戻る前に私も溺愛された~い!誰かいませんか~!」
「あ~、もう!いつもいつも見せつけられる人の気にもなってくださいよ。エルメ様は、みんなのエルメ様なのに・・こうなったら、私もいい人探そうかしら」
アリスのセリフに瞳をキラッとさせたエルメ。これは自分の出番だと、胸をワクワクさせた。そして恋のキューピットとして暗躍しようと、密かに決めたのだった。
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