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新章
新章第17話 怒涛の展開に失神寸前
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ナイフを下ろす様子のない頑ななエルメに、ビアトリスは短いため息をつくと、ソファーに座るように言った。しかしエルメにその気はない。
二人の間に流れるのは、重苦しい沈黙だった。黙って睨みつけていると、先に口を開いたのはビアトリスだった。
「どこから話を始めましょうか・・もうすぐ観客が増えそうなので、その方に聞かれたらマズい話からしましょうか」
(観客が増える?他にも誰か連れてくるの?それとも助けかしら?)
エルメは、ビアトリスの発言の意図が分からずにいたが、とりあえず耳を傾けることにした。
「まず自己紹介からしますね。はじめまして。私は、本当のビアトリスではありません。日本から転移してきた女子高生です・・・ハンドルネームは『シャドーヴィラン』です!」
(はぁぁ!?転移ぃ!?日本!?女子高生!?ハンドルネーム!!??)
「あっ、色々と口を挟みたいのは分かりるんですけど、時間は限られてるんで、最後まで聞いてください。その後、質問を受け付けますね」
突拍子もないビアトリスの話に口を挟もうとしたエルメを遮り、ニッコリ笑顔のビアトリスは続ける。
「ネット小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』は、ご存知ですよね?」
ビアトリスの質問にコクっと頷くエルメ。知っていて当然だ。それを書いたのは、転生前のエルメ。日本で生きていた二十歳の大学生なんだから・・
ビアトリスは、当の作者に作品を知っているのかと、聞いていることになる。
「ですよね。エルメ様がその作者ですもんね」
「いっ!?だっ!?なっ!?何で・・あっ・・ ごめんなさい」と思わず声を出したエルメは、ビアトリスにシーッと黙るようにジェスチャーされ、咄嗟に謝罪する。
エルメの頭の中は、もう情報過多で混乱どころの騒ぎではなかった。めまいを起こしそうになりながらも、必死で頭を整理しようとする。
「そして、この世界はその小説そのもの。ただしエルメ様は悪役皇太子妃の運命から逃れ、見事大人気皇太子妃になり、ヒロインであるアリス様とも大の仲良しに・・・そして、その友人のアリス様もまた転生者ですね・・・・ここまで言えば、私が日本の女子高生だと信じてくれますか?」
もはやエルメの口から、肯定の言葉も否定の言葉も出てこず、ただコクコクと何度も頷く様子に、ビアトリスは苦笑した。
「ここまではご理解頂いたみたいで、よかったです。では次ですが、何で私がこんな拉致なんて、犯罪スレスレのことをやったのか」
(いやいや、犯罪スレスレ?めちゃくちゃ犯罪よ。アウトよ、これ・・・)
そう心の中で突っ込みながら、エルメはビアトリスの次の言葉を待った。
「それは、続編の執筆のためです!!」
そう言い切ったビアトリスの背後に“ドドーンッ”と、効果音がつきそうなほど自信満々な表情の彼女に、さすがにエルメも口を開く。
「・・・・はい?今なんて?えっ?続編?私の書いた物語の続編が書きたいの?そんなくだらないことで、私をこんなところに連れてきたの?
“書きたいならご自由にどうぞ”よ、ホント・・・」
あまりの話の内容に、驚きを通り越して呆れ顔のエルメ。“黙って聞け”というビアトリスとの約束など、もうどうでもいい。
(正直、暇つぶしのネット小説。作者でさえ、どれくらいの人たちに読まれてるか皆無だったのに、そんな作品の続編を書きたいとか・・・)
「変わってるわね。ビアって」
「そうですか?始めて言われましたよ」
「変わってるわよ。だって・・」とエルメが正直に自分の小説の感想を言う。
それは、転生したからこその感想だった。転生後に歩んだエルメの人生のほうが、何倍も何十倍も何百倍も濃密で、何より楽しいのだから・・・
「だから続編でも何でも書いてちょうだい」
「わぁ!嬉しい!私、あの小説の大ファンだから、シャドーヴィランとしてスピンオフを書いてたんですけど、それもネタ切れで限界になっちゃって・・・」
「えっ!ちょっと待って!スピンオフ!?」
「はい!『悪役皇太子妃シリーズ』のスピンオフを書かせてもらってま~す」
「シッ、シリーズ!?シリーズってなに!!??」
今までも十分予想の上をいっていたが、更に遥か上をいく予想外すぎる話に、どこかで見た目ヂカラの強い芸人並に目を見開くエルメ。
「あっ、これはまだ話してませんでしたね」と言うと、ビアトリスはネット小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の作者の知らないその後の展開を語りだした。
二人の間に流れるのは、重苦しい沈黙だった。黙って睨みつけていると、先に口を開いたのはビアトリスだった。
「どこから話を始めましょうか・・もうすぐ観客が増えそうなので、その方に聞かれたらマズい話からしましょうか」
(観客が増える?他にも誰か連れてくるの?それとも助けかしら?)
エルメは、ビアトリスの発言の意図が分からずにいたが、とりあえず耳を傾けることにした。
「まず自己紹介からしますね。はじめまして。私は、本当のビアトリスではありません。日本から転移してきた女子高生です・・・ハンドルネームは『シャドーヴィラン』です!」
(はぁぁ!?転移ぃ!?日本!?女子高生!?ハンドルネーム!!??)
「あっ、色々と口を挟みたいのは分かりるんですけど、時間は限られてるんで、最後まで聞いてください。その後、質問を受け付けますね」
突拍子もないビアトリスの話に口を挟もうとしたエルメを遮り、ニッコリ笑顔のビアトリスは続ける。
「ネット小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』は、ご存知ですよね?」
ビアトリスの質問にコクっと頷くエルメ。知っていて当然だ。それを書いたのは、転生前のエルメ。日本で生きていた二十歳の大学生なんだから・・
ビアトリスは、当の作者に作品を知っているのかと、聞いていることになる。
「ですよね。エルメ様がその作者ですもんね」
「いっ!?だっ!?なっ!?何で・・あっ・・ ごめんなさい」と思わず声を出したエルメは、ビアトリスにシーッと黙るようにジェスチャーされ、咄嗟に謝罪する。
エルメの頭の中は、もう情報過多で混乱どころの騒ぎではなかった。めまいを起こしそうになりながらも、必死で頭を整理しようとする。
「そして、この世界はその小説そのもの。ただしエルメ様は悪役皇太子妃の運命から逃れ、見事大人気皇太子妃になり、ヒロインであるアリス様とも大の仲良しに・・・そして、その友人のアリス様もまた転生者ですね・・・・ここまで言えば、私が日本の女子高生だと信じてくれますか?」
もはやエルメの口から、肯定の言葉も否定の言葉も出てこず、ただコクコクと何度も頷く様子に、ビアトリスは苦笑した。
「ここまではご理解頂いたみたいで、よかったです。では次ですが、何で私がこんな拉致なんて、犯罪スレスレのことをやったのか」
(いやいや、犯罪スレスレ?めちゃくちゃ犯罪よ。アウトよ、これ・・・)
そう心の中で突っ込みながら、エルメはビアトリスの次の言葉を待った。
「それは、続編の執筆のためです!!」
そう言い切ったビアトリスの背後に“ドドーンッ”と、効果音がつきそうなほど自信満々な表情の彼女に、さすがにエルメも口を開く。
「・・・・はい?今なんて?えっ?続編?私の書いた物語の続編が書きたいの?そんなくだらないことで、私をこんなところに連れてきたの?
“書きたいならご自由にどうぞ”よ、ホント・・・」
あまりの話の内容に、驚きを通り越して呆れ顔のエルメ。“黙って聞け”というビアトリスとの約束など、もうどうでもいい。
(正直、暇つぶしのネット小説。作者でさえ、どれくらいの人たちに読まれてるか皆無だったのに、そんな作品の続編を書きたいとか・・・)
「変わってるわね。ビアって」
「そうですか?始めて言われましたよ」
「変わってるわよ。だって・・」とエルメが正直に自分の小説の感想を言う。
それは、転生したからこその感想だった。転生後に歩んだエルメの人生のほうが、何倍も何十倍も何百倍も濃密で、何より楽しいのだから・・・
「だから続編でも何でも書いてちょうだい」
「わぁ!嬉しい!私、あの小説の大ファンだから、シャドーヴィランとしてスピンオフを書いてたんですけど、それもネタ切れで限界になっちゃって・・・」
「えっ!ちょっと待って!スピンオフ!?」
「はい!『悪役皇太子妃シリーズ』のスピンオフを書かせてもらってま~す」
「シッ、シリーズ!?シリーズってなに!!??」
今までも十分予想の上をいっていたが、更に遥か上をいく予想外すぎる話に、どこかで見た目ヂカラの強い芸人並に目を見開くエルメ。
「あっ、これはまだ話してませんでしたね」と言うと、ビアトリスはネット小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の作者の知らないその後の展開を語りだした。
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