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新章
新章第9話 寸劇終幕
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「この中に魂があるのか?」
「はい。無事にエルメ様の中から引き抜くことに成功しました」
儀式を終えた喜びを三人で静かに分かち合った後、リオルが扉を開けると、今か今かと扉を睨みつけていたマリオンは、足早にエルメの元へ向かった。
「大丈夫か?身体は何ともないか?」
優しい手つきで頭を撫で、頭の先から足の先まで視線を移し、心配する様子は
エルメの予想以上だ。
「うん、この通り。ピンピンしてる。むしろ乙女の力で元気が出たくらいよ」
エルメは、心配してくれるマリオンを騙していることに少し申し訳なさを感じたが、もう後には引けない。もはや計画を完遂するしかないのだ。
そして妻の無事を一通り確認したマリオンに、アリスが儀式の流れを説明した後、彼の口から出てきたのが、先のセリフである。
乙女の力を使い、本来の魂が弱らないように力を注ぎつつ、邪魔な魂を引き抜いた。そして見事、ネズミの中に移した。そしてその邪魔な魂とは、転生者エルメの魂の前にこの身体に宿っていた魂・・・つまり真のエルメ姫の魂という設定だ。
ちょ~普通で無難な設定である。エルメ曰く「あまり突飛な話にしても、マリオンは信じないわ」だそうだ。
「リオル、見ていてどうだったんだ?お前の率直な感想を聞かせてくれ」
マリオンは真剣そのもので、息子からの言葉を待っている。
(ほぅら、やっぱり・・探りを入れたわね。だけど残念でした。リオルもこっち側なんだよ~)
エルメは、そう密かにほくそ笑んでいた。
「はい。なんと言うか、すごく綺麗でした。母上が不思議な光に包まれて・・それからアリス嬢が力一杯、母上の身体から魂を引っ張り出したんです。とにかくすごく不思議な光景でした。一生忘れられないでしょう」
(嗚呼、リオル!最高の答えよ!お母さんが200点満点あげちゃう!)
エルメはリオルの言葉に心の中で盛大に拍手を送った。
「そうか。どうやら本当に成功させたようだな。アリス嬢は・・・」
マリオンが納得した様子を見せ、エルメたちは計画の第二段階の成功を確信したが、一瞬でそれは冷や汗に変わる。
「ところで、その魂はどんなものだったんだ?私にも見せてくれ」
(はい・・・?)
マリオンのまさかの要求に固まる一同。これは想定外だ。
「どうした?妻の身体から取り出せたんだ。コイツから取り出すことなど、造作もないだろう?」とネズミを指差したマリオンは、焦るエルメたちに追い打ちをかける。その表情は心なしか楽しそうだ。
エルメとアリスは、この事態を打開すべく目配せをし、アイコンタクトを交わす。だが、すぐにお互いの思いが通じ合うはずもなく、何も解決しなかった。
「いえ、それが、そのぉ~」とエルメは言い淀む。しかし、そこに意外な救世主が現れる。リオルだ。
「父上、アリス嬢がお疲れなのが分かりませんか?あれだけの力を使ったのです。そのうえ、さらに父上のワガママで癒やしの乙女を困らせてはいけませんよ」
そう言ってマリオンを諌めるリオルに、エルメは内心ホッとした。
(さすが私の息子!よくやったわ!でもまさか八歳児に助けられるとはねぇ)
リオルの将来に背筋に凍るものを感じたエルメが、アリスをチラッと見るとそこには、目が点になっているアリスがいた。どうやら彼女も同じ思いをしたようだ。
(リオル、末恐ろしい・・・気がする)
「・・・・・・分かった。お前の言うとおりだな。アリス嬢、気を悪くしないでくれ」
マリオンは大人しく引き下がり、ようやくエルメは安堵したのだった。
◇◇◇◇◇
何とかマリオンを納得させたエルメ。彼女は今、アリスとお茶を飲んでいた。
「ねえ、アリス。この間、ビアから私の部屋に置かれた手紙のことを聞かれたんだけど、貴女も知ってるの?」
カップを口に運びながら、アリスはキョトンとする。
「手紙ですか?初耳ですね」
(どうやらアリスから話を聞いたわけじゃないようね。この前はマリオンが入ってきちゃったから、詳しく聞けなかったし・・一体、ビアはどこで小耳に挟んだのかな?)
アリスの答えにエルメは、あの手紙を彼女に見せた。
「はい。無事にエルメ様の中から引き抜くことに成功しました」
儀式を終えた喜びを三人で静かに分かち合った後、リオルが扉を開けると、今か今かと扉を睨みつけていたマリオンは、足早にエルメの元へ向かった。
「大丈夫か?身体は何ともないか?」
優しい手つきで頭を撫で、頭の先から足の先まで視線を移し、心配する様子は
エルメの予想以上だ。
「うん、この通り。ピンピンしてる。むしろ乙女の力で元気が出たくらいよ」
エルメは、心配してくれるマリオンを騙していることに少し申し訳なさを感じたが、もう後には引けない。もはや計画を完遂するしかないのだ。
そして妻の無事を一通り確認したマリオンに、アリスが儀式の流れを説明した後、彼の口から出てきたのが、先のセリフである。
乙女の力を使い、本来の魂が弱らないように力を注ぎつつ、邪魔な魂を引き抜いた。そして見事、ネズミの中に移した。そしてその邪魔な魂とは、転生者エルメの魂の前にこの身体に宿っていた魂・・・つまり真のエルメ姫の魂という設定だ。
ちょ~普通で無難な設定である。エルメ曰く「あまり突飛な話にしても、マリオンは信じないわ」だそうだ。
「リオル、見ていてどうだったんだ?お前の率直な感想を聞かせてくれ」
マリオンは真剣そのもので、息子からの言葉を待っている。
(ほぅら、やっぱり・・探りを入れたわね。だけど残念でした。リオルもこっち側なんだよ~)
エルメは、そう密かにほくそ笑んでいた。
「はい。なんと言うか、すごく綺麗でした。母上が不思議な光に包まれて・・それからアリス嬢が力一杯、母上の身体から魂を引っ張り出したんです。とにかくすごく不思議な光景でした。一生忘れられないでしょう」
(嗚呼、リオル!最高の答えよ!お母さんが200点満点あげちゃう!)
エルメはリオルの言葉に心の中で盛大に拍手を送った。
「そうか。どうやら本当に成功させたようだな。アリス嬢は・・・」
マリオンが納得した様子を見せ、エルメたちは計画の第二段階の成功を確信したが、一瞬でそれは冷や汗に変わる。
「ところで、その魂はどんなものだったんだ?私にも見せてくれ」
(はい・・・?)
マリオンのまさかの要求に固まる一同。これは想定外だ。
「どうした?妻の身体から取り出せたんだ。コイツから取り出すことなど、造作もないだろう?」とネズミを指差したマリオンは、焦るエルメたちに追い打ちをかける。その表情は心なしか楽しそうだ。
エルメとアリスは、この事態を打開すべく目配せをし、アイコンタクトを交わす。だが、すぐにお互いの思いが通じ合うはずもなく、何も解決しなかった。
「いえ、それが、そのぉ~」とエルメは言い淀む。しかし、そこに意外な救世主が現れる。リオルだ。
「父上、アリス嬢がお疲れなのが分かりませんか?あれだけの力を使ったのです。そのうえ、さらに父上のワガママで癒やしの乙女を困らせてはいけませんよ」
そう言ってマリオンを諌めるリオルに、エルメは内心ホッとした。
(さすが私の息子!よくやったわ!でもまさか八歳児に助けられるとはねぇ)
リオルの将来に背筋に凍るものを感じたエルメが、アリスをチラッと見るとそこには、目が点になっているアリスがいた。どうやら彼女も同じ思いをしたようだ。
(リオル、末恐ろしい・・・気がする)
「・・・・・・分かった。お前の言うとおりだな。アリス嬢、気を悪くしないでくれ」
マリオンは大人しく引き下がり、ようやくエルメは安堵したのだった。
◇◇◇◇◇
何とかマリオンを納得させたエルメ。彼女は今、アリスとお茶を飲んでいた。
「ねえ、アリス。この間、ビアから私の部屋に置かれた手紙のことを聞かれたんだけど、貴女も知ってるの?」
カップを口に運びながら、アリスはキョトンとする。
「手紙ですか?初耳ですね」
(どうやらアリスから話を聞いたわけじゃないようね。この前はマリオンが入ってきちゃったから、詳しく聞けなかったし・・一体、ビアはどこで小耳に挟んだのかな?)
アリスの答えにエルメは、あの手紙を彼女に見せた。
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