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新章
新章第6話 悪戯かそれとも挑戦状か
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舞踏会でお披露目するドレスを決めた日の夜、エルメは部屋に見覚えのないものを見つける。
花瓶に花と一緒に生けられたそれは、こよりのように細く丸められた紙だ。見ると、ご丁寧に花瓶の水は抜かれている。
「何これ・・」
不思議に思ったエルメが紙を広げてみると、そこには謎の短文が書かれていた。
『皇太子ご夫妻の大事な思い出をいただきに参ります』
「皇太子夫妻って、私たちのことだよね。大事な思い出?えっ?何だろ・・・いっぱいありすぎて、分かんないよ」
思い出がありすぎて絞れないエルメは、とりあえずマリオンに手紙を見せることにした。
そして部屋に戻ってきたマリオンに早速切り出す。
「ねぇ、マリオン。ちょっと来て!大事件なんだけど!」
「大事件とは穏やかじゃないな。どうしたんだ?」
「いいから!」
怪しむ様子もなくやって来たマリオンは、渡された手紙を読むとすぐに顔色を変えた。
「ねっ、大事件でしょ?思い出って、何だと思う?」
真剣な表情のマリオンに呑気なエルメは尋ねるが、彼はエルメの質問には答えず、別のことを気にしていた。
「これが、どこにあったって?」
「えっと・・そこの花瓶の中だけど・・手紙が濡れないように中の水まで抜いてあったの・・・なに?マリオン、顔怖いよ・・・」
何やら思案しているマリオンに「悪戯かな」とか「ねえ、聞いてる?」とか話しかけるが、反応はない。
「もしも~し、マリオ~ン。聞いてますか~?」
そう言いながら目の前で手を振ると、マリオンは突然、エルメの頭を後ろから押さえ、キスをした。それは一瞬触れるだけのキスだったが、強引で力強かった。
唐突すぎるキスは、エルメの顔を一瞬にして真っ赤に染め、次に彼が言った願いを彼女に素直に聞き入れされせた。
「少し黙ってろ」
「・・はい・・・」
そのまま大人しくエルメがマリオンのシンキングタイム終了を待っていると、ようやく彼の瞳がエルメのそれと合う。
「悪戯の可能性も捨てきれないが、おそらく本物だろうな」
「!!やっぱり本物!?で?何が目的だと思う?」
マリオンの出した結論に途端に瞳をキラキラさせるエルメ。元来、好奇心旺盛な性格なのだ。
そんな彼女の態度に苦笑いしつつ、マリオンは真剣な表情に戻る。
「まだ分からんが、“いただきに来る”と言ってる以上、形あるものなのは確かだな」
「え~、何だろう・・宝石とか?」
「“大事な思い出だぞ。君の場合は、そんな物じゃないだろう?」
「うん。あっ・・もしかしてリオル?」
「確かに大事だが、思い出ではないな」
「う~ん・・じゃっ、じゃあ・・・あの家とか?」
“あの家”とは、エルメのためにマリオンが以前用意した小ぢんまりした家のことだ。彼女の性格から、皇太子妃の生活がエルメには窮屈だろうと気遣った彼が、たまに息抜きをするために王都に用意したのだ。
エルメが、城から逃げ出した際に案内された場所がそこだった。結婚したばかりの頃の懐かしい思い出には違いない。
「確かに大事な思い出に違いないな。君を初めて抱いた場所でもあるからな。だが大きすぎる」
(やんっ・・・初エッチとか思い出させないでよぉ。あれは、いきなりで恥ずかしかったな。別れるつもりで逃げたのに、あそこで仲直りしたんだよね・・・・・・・そういえばあの夜、全部が彼の手のひらの上の出来事だったって、気付かされたんだ・・)
マリオンとの初エッチには触れずにエルメは「・・それもそうよね。あとは・・・あっ、ナイフとか?」と話を続けるが、その耳は真っ赤だ。
しかしマリオンはその言葉に「ナイフだと!?」と驚いたようだ。
「うん、ナイフ。ほら、むかし私の足に仕込んでたあのナイフ。あれには何度助けられたことか・・・」
そう過去を回想している様子のエルメだが、マリオンは軽く微笑みながら怪しんだ。
「あれは却下だな。まさか、まだ足に隠してないだろうな」
「え~、まさか!もう足には隠してないよぉ。マリオンだって、知ってるでしょ」
「あぁ、よく知ってるぞ。君の身体のことは隅から隅までな」
ニヤリと笑うマリオンにエルメの顔が更に赤く染まる。
「もう!そういう意味じゃないから!いつもいつも妻をからかって楽しい?そっそれより、マリオンは何だと思うの?」
「うん?私か?」とマリオンは言うと、おもむろに立ち上がる。そしてそのまま机の下に腕を伸ばすと、彼の言う二人の思い出を取り出した。
それを見たエルメの口から「えっ!?マリオンはこれがそうだって言うの?まっさかぁ!」と思わず大きな声が出る。
しかし、マリオンは「君はそう言うが、分からんぞ」と至って真剣な表情でエルメを見つめると、どこかこの出来事を楽しむ妻に忠告した。
「まあ、とにかくこの件は忘れろ。君の
お腹の中には大事な子供がいるという事と、訳の分からん魂持ちだということを忘れるなよ」
花瓶に花と一緒に生けられたそれは、こよりのように細く丸められた紙だ。見ると、ご丁寧に花瓶の水は抜かれている。
「何これ・・」
不思議に思ったエルメが紙を広げてみると、そこには謎の短文が書かれていた。
『皇太子ご夫妻の大事な思い出をいただきに参ります』
「皇太子夫妻って、私たちのことだよね。大事な思い出?えっ?何だろ・・・いっぱいありすぎて、分かんないよ」
思い出がありすぎて絞れないエルメは、とりあえずマリオンに手紙を見せることにした。
そして部屋に戻ってきたマリオンに早速切り出す。
「ねぇ、マリオン。ちょっと来て!大事件なんだけど!」
「大事件とは穏やかじゃないな。どうしたんだ?」
「いいから!」
怪しむ様子もなくやって来たマリオンは、渡された手紙を読むとすぐに顔色を変えた。
「ねっ、大事件でしょ?思い出って、何だと思う?」
真剣な表情のマリオンに呑気なエルメは尋ねるが、彼はエルメの質問には答えず、別のことを気にしていた。
「これが、どこにあったって?」
「えっと・・そこの花瓶の中だけど・・手紙が濡れないように中の水まで抜いてあったの・・・なに?マリオン、顔怖いよ・・・」
何やら思案しているマリオンに「悪戯かな」とか「ねえ、聞いてる?」とか話しかけるが、反応はない。
「もしも~し、マリオ~ン。聞いてますか~?」
そう言いながら目の前で手を振ると、マリオンは突然、エルメの頭を後ろから押さえ、キスをした。それは一瞬触れるだけのキスだったが、強引で力強かった。
唐突すぎるキスは、エルメの顔を一瞬にして真っ赤に染め、次に彼が言った願いを彼女に素直に聞き入れされせた。
「少し黙ってろ」
「・・はい・・・」
そのまま大人しくエルメがマリオンのシンキングタイム終了を待っていると、ようやく彼の瞳がエルメのそれと合う。
「悪戯の可能性も捨てきれないが、おそらく本物だろうな」
「!!やっぱり本物!?で?何が目的だと思う?」
マリオンの出した結論に途端に瞳をキラキラさせるエルメ。元来、好奇心旺盛な性格なのだ。
そんな彼女の態度に苦笑いしつつ、マリオンは真剣な表情に戻る。
「まだ分からんが、“いただきに来る”と言ってる以上、形あるものなのは確かだな」
「え~、何だろう・・宝石とか?」
「“大事な思い出だぞ。君の場合は、そんな物じゃないだろう?」
「うん。あっ・・もしかしてリオル?」
「確かに大事だが、思い出ではないな」
「う~ん・・じゃっ、じゃあ・・・あの家とか?」
“あの家”とは、エルメのためにマリオンが以前用意した小ぢんまりした家のことだ。彼女の性格から、皇太子妃の生活がエルメには窮屈だろうと気遣った彼が、たまに息抜きをするために王都に用意したのだ。
エルメが、城から逃げ出した際に案内された場所がそこだった。結婚したばかりの頃の懐かしい思い出には違いない。
「確かに大事な思い出に違いないな。君を初めて抱いた場所でもあるからな。だが大きすぎる」
(やんっ・・・初エッチとか思い出させないでよぉ。あれは、いきなりで恥ずかしかったな。別れるつもりで逃げたのに、あそこで仲直りしたんだよね・・・・・・・そういえばあの夜、全部が彼の手のひらの上の出来事だったって、気付かされたんだ・・)
マリオンとの初エッチには触れずにエルメは「・・それもそうよね。あとは・・・あっ、ナイフとか?」と話を続けるが、その耳は真っ赤だ。
しかしマリオンはその言葉に「ナイフだと!?」と驚いたようだ。
「うん、ナイフ。ほら、むかし私の足に仕込んでたあのナイフ。あれには何度助けられたことか・・・」
そう過去を回想している様子のエルメだが、マリオンは軽く微笑みながら怪しんだ。
「あれは却下だな。まさか、まだ足に隠してないだろうな」
「え~、まさか!もう足には隠してないよぉ。マリオンだって、知ってるでしょ」
「あぁ、よく知ってるぞ。君の身体のことは隅から隅までな」
ニヤリと笑うマリオンにエルメの顔が更に赤く染まる。
「もう!そういう意味じゃないから!いつもいつも妻をからかって楽しい?そっそれより、マリオンは何だと思うの?」
「うん?私か?」とマリオンは言うと、おもむろに立ち上がる。そしてそのまま机の下に腕を伸ばすと、彼の言う二人の思い出を取り出した。
それを見たエルメの口から「えっ!?マリオンはこれがそうだって言うの?まっさかぁ!」と思わず大きな声が出る。
しかし、マリオンは「君はそう言うが、分からんぞ」と至って真剣な表情でエルメを見つめると、どこかこの出来事を楽しむ妻に忠告した。
「まあ、とにかくこの件は忘れろ。君の
お腹の中には大事な子供がいるという事と、訳の分からん魂持ちだということを忘れるなよ」
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