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新章
新章第4話 仲睦まじい二人は不変
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「どういうことだ!魂が弱まってるだと!?」
明らかに動揺を声に出し、アリスを見つめるマリオンから殺気がだだ漏れる。しかし、アリスの力で治せると思い込んでいたマリオンは、エルメの前だと気付き場所を変えようとしたが、今更過ぎた。
マリオンが口を開くよりも先にエルメがお願いした。
(アリスったら、そんなことも分かるの!?さすが癒やしの乙女!フフフッ)
「アリス、詳しく教えて」
これにアリスは躊躇することなく、打ち明ける。
アリスによると、エルメの中の魂の光が弱まっているというのだ。どんな人間でも器の中で魂が光を放っており、死期が近くなると、それが弱まるそうだ。だからエルメの心臓も弱くなっていると・・・
しかし、エルメの場合は少し違った。魂の放つ光が弱いのは変わらないが、その光の奥でもう一つの魂が鈍い光を放っているというのだ。まるで今の魂が消えたら乗っ取るかのようだと、アリスは言った。
更に弱くなっているのは転生者であるエルメ自身の魂で間違いないが、その奥の魂に心当たりがあるとまで言った。
「エルメの生命を吸い取るような愚かな魂は誰のものだ」
「申し訳ありませんが、殿下。まだ確証はありませんし、解決策を見出しておりませんので、この先はその策を得てからお話しします」
このアリスの言葉にエルメも「そうだよ。焦るなんてマリオンらしくないよ」と同意すると、マリオンも引き下がるしかなかった。
マリオンから「あ~、くそっ・・分かった。だがいつまでも私が待てると思うなよ」と釘を刺されると、アリスは飄々とした表情で言った。
「このアリス・サルコール、エルメ様のためでしたら苦労を厭わないですが、あまり乙女の力を頼りにしないで下さいね、マリオン殿下」
◇◇◇◇◇
「私、死んじゃうのかな」
アリスが帰った後、不安を口にするエルメ。しかしその表情は、落ち着いて見える。
「なっ!!馬鹿なことを言うな。私が君を先に逝かせるわけないだろう?」
「あら?じゃあ、いつかマリオンは私を置いて先に死んじゃうの?そんなの寂しい」
「私たちが死ぬと思うのか?そんなわけないだろう?」
「フフッ、私の旦那様は傲慢ね。人が迎える死は平等なんだよ」
そう言うと、エルメは優しく微笑み、そっと目を閉じた。
すぐに重なる唇は次第に激しさを増し、お互いを求め合うように舌を絡め合う。
「・・んぅ・・ 」
エルメの口から漏れ出る吐息。そしてマリオンの腕が彼女の壊れそうに細い身体を閉じ込めると、ベッドへと倒れ込んだ。
唇を離し、まっすぐに向けられる翡翠色の瞳を見つめ返すエルメに、マリオンは不満そうに言う。
「君を独占するお腹の子に嫉妬してしまいそうだな。君を早く抱きつくしたい」
第二子の妊娠が判明してから、当然夜の営みは途絶えていた。妻のことが誰よりも、何よりも大事なマリオンはひたすら耐えていたが、キスだけでエルメを欲する欲情を抑えるには不十分だった。
「それじゃあ、第二皇太子妃でも募集する?」
エルメの冗談混じりの提案に、マリオンは「私が君なしでは生きられないほど、惚れていることを知っているだろう?他の女などイモだぞ」と眉間にシワを寄せた。
(イモって、相変わらず俺様ね。まあ、それでこそ帝国皇太子マリオン・ガイアールなんだけどね)
「ふ~ん、そうなんだ。私はマリオンなしでも、生きていけると思うよ。たぶんね」
いたずらな笑みを浮かべるエルメの一言に、マリオンはやや大袈裟な驚きの表情をつくると、エルメの艶やかな髪を手に取り、口づけを落とした。
「心配する夫をからかった罰だな。私が薬を飲ませてやる」
そう言ってマリオンは、アリスから渡された万能薬の瓶の蓋を口で開けると、中の液体を口に含む。そしてそのままエルメの唇に自分のそれを押し当てて流し込むと、彼女の喉がゴクリと動いた。
「ぅん・・・・あっ、美味しい。ていうか、これは罰じゃなくて、ご褒美にしかならないと思うけど?」
エルメが愉快そうな声とともに尋ねると、マリオンはほんのり赤く染まった妻の頬を手で包み、こちらも楽しげに返した。
「それは奇遇だな。私もいま気づいたところだ」
再び美味だという薬を介した口づけが繰り返され、夫婦の甘い時間が続くかと思われたが、唐突に扉が開かれ学校を終えたリオルが乱入してきたことにより、後ろ髪引かれる思いでマリオンはベッドから下りたのだった。
◇◇◇◇◇
「う~ん、こっちも素敵だけど、これも捨てがたいわね」
そう悩んでいるのは、エルメだ。目の前には可愛らしい女性を連れたアリスがいる。
万能薬を飲んだエルメは、医者の診察でもとりあえず心臓が戻っているという御墨付をもらい、ようやくベッドから解放された。べったりだったマリオンも日中は公務に戻り、いつもの日常が戻っていた。
それでもアリスが、エルメの心臓治療の根本的な解決策を見つけ出すミッションは、継続されていた。
そして今のエルメの悩みのタネ・・・それは次の舞踏会で着用するドレスのデザインだった。
目の前にはたくさんのデザイン画が広げて置かれ、エルメは悩みに悩んで選んだ二点のデザイン画を両手に持ち、どちらにするか頭を悩ませていた。
アリスは前世の記憶を活かし、斬新なデザインのドレスを次々と発売。数年前から社交界で話題となっていた。今ではエルメの普段着からドレスまで彼女のデザインだ。
コルセットレスでも美しく見えるデザインに、貴族令嬢たちは心を奪われ、こぞって着用した。そして皇太子妃御用達という看板が、その人気に拍車をかけていた。
「どちらもエルメ様のためのデザインです。この際、両方作っちゃいましょうよ」
「あら、二着もいらないわよ。だって二着目を着る頃には、この子も生まれて体型変わってるし・・それに国民が働いて納めてくれた大事な税金。無駄使いできないでしょ?」
「え~、あの殿下なら、すぐに三人目を作りそうですけどねぇ」
アリスが恥ずかしげもなく言うと「フフフッ・・それはどうかしら」とエルメははぐらかし、マリオンが自分を欲したセリフを思い出していた。
明らかに動揺を声に出し、アリスを見つめるマリオンから殺気がだだ漏れる。しかし、アリスの力で治せると思い込んでいたマリオンは、エルメの前だと気付き場所を変えようとしたが、今更過ぎた。
マリオンが口を開くよりも先にエルメがお願いした。
(アリスったら、そんなことも分かるの!?さすが癒やしの乙女!フフフッ)
「アリス、詳しく教えて」
これにアリスは躊躇することなく、打ち明ける。
アリスによると、エルメの中の魂の光が弱まっているというのだ。どんな人間でも器の中で魂が光を放っており、死期が近くなると、それが弱まるそうだ。だからエルメの心臓も弱くなっていると・・・
しかし、エルメの場合は少し違った。魂の放つ光が弱いのは変わらないが、その光の奥でもう一つの魂が鈍い光を放っているというのだ。まるで今の魂が消えたら乗っ取るかのようだと、アリスは言った。
更に弱くなっているのは転生者であるエルメ自身の魂で間違いないが、その奥の魂に心当たりがあるとまで言った。
「エルメの生命を吸い取るような愚かな魂は誰のものだ」
「申し訳ありませんが、殿下。まだ確証はありませんし、解決策を見出しておりませんので、この先はその策を得てからお話しします」
このアリスの言葉にエルメも「そうだよ。焦るなんてマリオンらしくないよ」と同意すると、マリオンも引き下がるしかなかった。
マリオンから「あ~、くそっ・・分かった。だがいつまでも私が待てると思うなよ」と釘を刺されると、アリスは飄々とした表情で言った。
「このアリス・サルコール、エルメ様のためでしたら苦労を厭わないですが、あまり乙女の力を頼りにしないで下さいね、マリオン殿下」
◇◇◇◇◇
「私、死んじゃうのかな」
アリスが帰った後、不安を口にするエルメ。しかしその表情は、落ち着いて見える。
「なっ!!馬鹿なことを言うな。私が君を先に逝かせるわけないだろう?」
「あら?じゃあ、いつかマリオンは私を置いて先に死んじゃうの?そんなの寂しい」
「私たちが死ぬと思うのか?そんなわけないだろう?」
「フフッ、私の旦那様は傲慢ね。人が迎える死は平等なんだよ」
そう言うと、エルメは優しく微笑み、そっと目を閉じた。
すぐに重なる唇は次第に激しさを増し、お互いを求め合うように舌を絡め合う。
「・・んぅ・・ 」
エルメの口から漏れ出る吐息。そしてマリオンの腕が彼女の壊れそうに細い身体を閉じ込めると、ベッドへと倒れ込んだ。
唇を離し、まっすぐに向けられる翡翠色の瞳を見つめ返すエルメに、マリオンは不満そうに言う。
「君を独占するお腹の子に嫉妬してしまいそうだな。君を早く抱きつくしたい」
第二子の妊娠が判明してから、当然夜の営みは途絶えていた。妻のことが誰よりも、何よりも大事なマリオンはひたすら耐えていたが、キスだけでエルメを欲する欲情を抑えるには不十分だった。
「それじゃあ、第二皇太子妃でも募集する?」
エルメの冗談混じりの提案に、マリオンは「私が君なしでは生きられないほど、惚れていることを知っているだろう?他の女などイモだぞ」と眉間にシワを寄せた。
(イモって、相変わらず俺様ね。まあ、それでこそ帝国皇太子マリオン・ガイアールなんだけどね)
「ふ~ん、そうなんだ。私はマリオンなしでも、生きていけると思うよ。たぶんね」
いたずらな笑みを浮かべるエルメの一言に、マリオンはやや大袈裟な驚きの表情をつくると、エルメの艶やかな髪を手に取り、口づけを落とした。
「心配する夫をからかった罰だな。私が薬を飲ませてやる」
そう言ってマリオンは、アリスから渡された万能薬の瓶の蓋を口で開けると、中の液体を口に含む。そしてそのままエルメの唇に自分のそれを押し当てて流し込むと、彼女の喉がゴクリと動いた。
「ぅん・・・・あっ、美味しい。ていうか、これは罰じゃなくて、ご褒美にしかならないと思うけど?」
エルメが愉快そうな声とともに尋ねると、マリオンはほんのり赤く染まった妻の頬を手で包み、こちらも楽しげに返した。
「それは奇遇だな。私もいま気づいたところだ」
再び美味だという薬を介した口づけが繰り返され、夫婦の甘い時間が続くかと思われたが、唐突に扉が開かれ学校を終えたリオルが乱入してきたことにより、後ろ髪引かれる思いでマリオンはベッドから下りたのだった。
◇◇◇◇◇
「う~ん、こっちも素敵だけど、これも捨てがたいわね」
そう悩んでいるのは、エルメだ。目の前には可愛らしい女性を連れたアリスがいる。
万能薬を飲んだエルメは、医者の診察でもとりあえず心臓が戻っているという御墨付をもらい、ようやくベッドから解放された。べったりだったマリオンも日中は公務に戻り、いつもの日常が戻っていた。
それでもアリスが、エルメの心臓治療の根本的な解決策を見つけ出すミッションは、継続されていた。
そして今のエルメの悩みのタネ・・・それは次の舞踏会で着用するドレスのデザインだった。
目の前にはたくさんのデザイン画が広げて置かれ、エルメは悩みに悩んで選んだ二点のデザイン画を両手に持ち、どちらにするか頭を悩ませていた。
アリスは前世の記憶を活かし、斬新なデザインのドレスを次々と発売。数年前から社交界で話題となっていた。今ではエルメの普段着からドレスまで彼女のデザインだ。
コルセットレスでも美しく見えるデザインに、貴族令嬢たちは心を奪われ、こぞって着用した。そして皇太子妃御用達という看板が、その人気に拍車をかけていた。
「どちらもエルメ様のためのデザインです。この際、両方作っちゃいましょうよ」
「あら、二着もいらないわよ。だって二着目を着る頃には、この子も生まれて体型変わってるし・・それに国民が働いて納めてくれた大事な税金。無駄使いできないでしょ?」
「え~、あの殿下なら、すぐに三人目を作りそうですけどねぇ」
アリスが恥ずかしげもなく言うと「フフフッ・・それはどうかしら」とエルメははぐらかし、マリオンが自分を欲したセリフを思い出していた。
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