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新章
新章第3話 癒やしの乙女再び
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「殿下、お待たせしました。アリス・サルコール嬢をお連れしました」
アーノルドのこの報告に、マリオンはガタッと乱暴に椅子から立ち上がる。そして、扉から姿を見せた待ち人につかつかと歩み寄った。
「アリス嬢、待っていたぞ!何故、呼び出されたか話は聞いているのだろう?早速だが、エルメを診てくれ」
矢継ぎ早ににそう言いながら、マリオンはアリスを目で促し、エルメの元へ向かおうとする。
一方、アリスはいつも以上にマリオンから放たれる殺気に圧倒されながらも、彼がここまで取り乱している様を落ち着いて眺めていた。
マリオンに続き、廊下を歩いていると、エルメとばったり出くわす。
「エルメ!何をしている。寝ていろと言ったはずだ」
「あっ、マリオン。寝てるだけじゃ退屈なんだもの。それに出産には体力が必要だから、寝てばかりいたらダメなんだよ。少しは運動しないと・・・」
するとマリオンは、彼女の言葉を唇への触れるだけのキスで遮る。そして「運動は私の側でやれ。戻るぞ」と言うと、問答無用でエルメの身体を抱き上げた。唐突すぎるお姫様抱っこにエルメは「キャッ」と小さく声を上げる。
「ちょっとマリオン。下ろし・・・あっ、アリス様、ごきげんよう」
「エルメ妃殿下、ごきげんよう」
ここでようやくアリスの存在に気がついたエルメが挨拶をすると、その視界をマリオンがアリスに背を向け遮った。
「マリオンったら、もう・・・」
苦笑するエルメと、同じく困り顔のアリスを連れ、マリオンは足早に寝室へと向かったのだった。
◇◇◇◇◇
「何でアリスを呼んだの?検診なら、いつものお医者様で事足りるでしょ?」
「君に疲れが見えるからだよ。私が君の少しの変化も見逃さないのは、分かってるだろう?」
「殿下・・私を呼んだのは何故ですか?皇太子夫妻のイチャイチャを見せつけるためですか?」
部屋に入り、妻をベッドに横にするなり、ラブラブし始めた皇太子夫妻。
アリスがため息をつきながら夫婦の会話に唐突に割り込むと、ベッドに腰掛けるマリオンはこれ見よがしにエルメの肩を抱き寄せた。
流行り病で大変な時に共同戦線をはったマリオンとアリスの二人だったが、エルメを巡る争いは今も相変わらずだった。マリオンは妻への愛情、アリスは推しへの愛情だ。
「さっきのエルメ様へのキス・・あれは私に対する牽制ですよね?全く・・エルメ様のことになると、途端に大人気ない駄々っ子になりますよね、殿下は」
「アリス嬢、君だってそうだろう?いつも青いドレスを着ているのが、その証拠だ。相変わらず、私の妻の瞳の色そのものだな」
(“私の妻”をわざわざ強調して言うところが幼いのよ、マリオン・・・)
エルメは、拗らせ気味のマリオンの手を取り、「アリス、ドレス素敵よ」とフォローを入れた。
「ところで、アリス。何か用があって来たんじゃない?」
「あぁっ!そうでした!」
ハッとした様子でアリスは、マリオンを見ると、“出ていけ”と言わんばかりに無言の圧をかける。これにマリオンは、わざとらしく盛大なため息をつくと言った。
「時間はかかっても構わん。妻をしっかり診てくれ」
◇◇◇◇◇
診察を終えたアリスが部屋から顔を覗かせると、マリオンは足早にエルメの傍らに腰を下ろした。
「それで乙女の力でエルメの疲れを治せるのか?どうだ?」
この問いかけにアリスは、手に持っていたバスケットの中から小さな小瓶を取り出す。
「これがお役に立ちますよ」
「何だこれは?私はこんな怪しい小瓶ではなく乙女の・・・」
訝しがるマリオンをエルメが笑顔で遮る。
「マリオン・・いいじゃない。中身は何なの?」
マリオンは怪しげな表情を浮かべたが、エルメは興味津々といった様子でアリスから小瓶を受け取ると、蓋を開けて匂いを確かめる。
「まあまあ、殿下。これはただの万能薬です」
「そんなもの必要ない。彼女のお腹に赤子もいるんだ。治療は乙女の力でやれ」
「あら?信じられませんか?じゃあ、捨てちゃいますね」
そう言ってアリスはエルメの手から小瓶を奪うと、中身捨てようとする。しかし『万能薬』という言葉に遅れて反応したマリオンが、素早く手を伸ばしてそれを取り上げた。
「待て!それは有用だな」
「でも、要らないんですよね?」
「アリス嬢、わざとやってるだろう・・・」
眉間にシワを寄せて軽く睨みつけるマリオンに、アリスはニコニコと笑顔を崩さない。
そしてマリオンが「ずいぶんと準備がいいな。何故こんなもの持ってきた?」と尋ねると、アリスはニコッと笑顔を向けた。
「私がエルメ様のピンチに気付かないわけありません。これが入用だろうと持ってきただけです。それからお金がどうのではありませんが、あえて申し上げます。殿下、これは高くつきますよ」
そう言いながら、アリスはエルメに視線を向け、その瞳に込められた想いにエルメは目を細めた。
(フフッ、アリスったら、本当に変わらないんだから・・・)
マリオンは一瞬目を見開くが、すぐにフッと微笑むと「分かった。いくらだ?」と問う。それにアリスは指折り数えて答える。
「そうですね。まずは皇家御用達の画家によるエルメ様の肖像画。そしてエルメ様の直筆サイン色紙。それからエルメ様と私のツーショット写真。それと・・・」
マリオンは、「ちょっと待て」と額を押さえてアリスを止めた
「エルメばかりじゃないか・・」
「あら、今更ですよ、マリオン殿下・・というのは冗談です。私がエルメ様を助けるのに、対価を要求するはずありませんよ。ただ今後もし私が助けを求めたら、無条件で協力して下さいね」
このアリスの願いにマリオンはエルメに視線を送ると、彼女から満面の笑みと一度の頷きが返ってきた。こうしてマリオンは「いいだろう」と了承したのだった。
これで妻の心臓を治せると思い、ほっと安堵したマリオンだったが、次の瞬間アリスからとんでもない言葉を告げられる。
「それよりも殿下。エルメ様の魂が弱まってます」
アーノルドのこの報告に、マリオンはガタッと乱暴に椅子から立ち上がる。そして、扉から姿を見せた待ち人につかつかと歩み寄った。
「アリス嬢、待っていたぞ!何故、呼び出されたか話は聞いているのだろう?早速だが、エルメを診てくれ」
矢継ぎ早ににそう言いながら、マリオンはアリスを目で促し、エルメの元へ向かおうとする。
一方、アリスはいつも以上にマリオンから放たれる殺気に圧倒されながらも、彼がここまで取り乱している様を落ち着いて眺めていた。
マリオンに続き、廊下を歩いていると、エルメとばったり出くわす。
「エルメ!何をしている。寝ていろと言ったはずだ」
「あっ、マリオン。寝てるだけじゃ退屈なんだもの。それに出産には体力が必要だから、寝てばかりいたらダメなんだよ。少しは運動しないと・・・」
するとマリオンは、彼女の言葉を唇への触れるだけのキスで遮る。そして「運動は私の側でやれ。戻るぞ」と言うと、問答無用でエルメの身体を抱き上げた。唐突すぎるお姫様抱っこにエルメは「キャッ」と小さく声を上げる。
「ちょっとマリオン。下ろし・・・あっ、アリス様、ごきげんよう」
「エルメ妃殿下、ごきげんよう」
ここでようやくアリスの存在に気がついたエルメが挨拶をすると、その視界をマリオンがアリスに背を向け遮った。
「マリオンったら、もう・・・」
苦笑するエルメと、同じく困り顔のアリスを連れ、マリオンは足早に寝室へと向かったのだった。
◇◇◇◇◇
「何でアリスを呼んだの?検診なら、いつものお医者様で事足りるでしょ?」
「君に疲れが見えるからだよ。私が君の少しの変化も見逃さないのは、分かってるだろう?」
「殿下・・私を呼んだのは何故ですか?皇太子夫妻のイチャイチャを見せつけるためですか?」
部屋に入り、妻をベッドに横にするなり、ラブラブし始めた皇太子夫妻。
アリスがため息をつきながら夫婦の会話に唐突に割り込むと、ベッドに腰掛けるマリオンはこれ見よがしにエルメの肩を抱き寄せた。
流行り病で大変な時に共同戦線をはったマリオンとアリスの二人だったが、エルメを巡る争いは今も相変わらずだった。マリオンは妻への愛情、アリスは推しへの愛情だ。
「さっきのエルメ様へのキス・・あれは私に対する牽制ですよね?全く・・エルメ様のことになると、途端に大人気ない駄々っ子になりますよね、殿下は」
「アリス嬢、君だってそうだろう?いつも青いドレスを着ているのが、その証拠だ。相変わらず、私の妻の瞳の色そのものだな」
(“私の妻”をわざわざ強調して言うところが幼いのよ、マリオン・・・)
エルメは、拗らせ気味のマリオンの手を取り、「アリス、ドレス素敵よ」とフォローを入れた。
「ところで、アリス。何か用があって来たんじゃない?」
「あぁっ!そうでした!」
ハッとした様子でアリスは、マリオンを見ると、“出ていけ”と言わんばかりに無言の圧をかける。これにマリオンは、わざとらしく盛大なため息をつくと言った。
「時間はかかっても構わん。妻をしっかり診てくれ」
◇◇◇◇◇
診察を終えたアリスが部屋から顔を覗かせると、マリオンは足早にエルメの傍らに腰を下ろした。
「それで乙女の力でエルメの疲れを治せるのか?どうだ?」
この問いかけにアリスは、手に持っていたバスケットの中から小さな小瓶を取り出す。
「これがお役に立ちますよ」
「何だこれは?私はこんな怪しい小瓶ではなく乙女の・・・」
訝しがるマリオンをエルメが笑顔で遮る。
「マリオン・・いいじゃない。中身は何なの?」
マリオンは怪しげな表情を浮かべたが、エルメは興味津々といった様子でアリスから小瓶を受け取ると、蓋を開けて匂いを確かめる。
「まあまあ、殿下。これはただの万能薬です」
「そんなもの必要ない。彼女のお腹に赤子もいるんだ。治療は乙女の力でやれ」
「あら?信じられませんか?じゃあ、捨てちゃいますね」
そう言ってアリスはエルメの手から小瓶を奪うと、中身捨てようとする。しかし『万能薬』という言葉に遅れて反応したマリオンが、素早く手を伸ばしてそれを取り上げた。
「待て!それは有用だな」
「でも、要らないんですよね?」
「アリス嬢、わざとやってるだろう・・・」
眉間にシワを寄せて軽く睨みつけるマリオンに、アリスはニコニコと笑顔を崩さない。
そしてマリオンが「ずいぶんと準備がいいな。何故こんなもの持ってきた?」と尋ねると、アリスはニコッと笑顔を向けた。
「私がエルメ様のピンチに気付かないわけありません。これが入用だろうと持ってきただけです。それからお金がどうのではありませんが、あえて申し上げます。殿下、これは高くつきますよ」
そう言いながら、アリスはエルメに視線を向け、その瞳に込められた想いにエルメは目を細めた。
(フフッ、アリスったら、本当に変わらないんだから・・・)
マリオンは一瞬目を見開くが、すぐにフッと微笑むと「分かった。いくらだ?」と問う。それにアリスは指折り数えて答える。
「そうですね。まずは皇家御用達の画家によるエルメ様の肖像画。そしてエルメ様の直筆サイン色紙。それからエルメ様と私のツーショット写真。それと・・・」
マリオンは、「ちょっと待て」と額を押さえてアリスを止めた
「エルメばかりじゃないか・・」
「あら、今更ですよ、マリオン殿下・・というのは冗談です。私がエルメ様を助けるのに、対価を要求するはずありませんよ。ただ今後もし私が助けを求めたら、無条件で協力して下さいね」
このアリスの願いにマリオンはエルメに視線を送ると、彼女から満面の笑みと一度の頷きが返ってきた。こうしてマリオンは「いいだろう」と了承したのだった。
これで妻の心臓を治せると思い、ほっと安堵したマリオンだったが、次の瞬間アリスからとんでもない言葉を告げられる。
「それよりも殿下。エルメ様の魂が弱まってます」
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