〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

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新章第1話 災い

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「どういうことだ。もう一度言ってみろ!!」

「父上。そう声を荒らげては、彼らが怯えてしまいます」

「医者が病状を説明するのに、何故怯える必要がある。そんな医者に用はない!!」

「父上・・・落ち着いてください。憤ってどうにかなるなら、僕もここまで冷静ではいられませんよ」

「くっ・・・!」

白髪の老人たち数名を前に激昂しているのは、マリオンだ。ここガイアール帝国皇太子であり、超絶俺様キャラの彼は妻であるエルメを溺愛していることで有名だった。

そして、その皇太子をなだめているのは、まだ幼さの残る少年リオルだ。マリオンとエルメの子である。

マリオンの両親である皇帝夫妻が『孫が喋った』と喜んでいた頃から早七年、『母上は僕のものだ!』とマリオンと張り合っていた頃から三年の月日が経っていた。

相変わらず、親子して妻であり、母であるエルメを盲目的に愛し、お互いに彼女の愛情を独り占めしようと躍起になっていた。

そんな騒がしくありながらも、幸せな彼らに突然降って湧いた災い。そのせいでマリオンは憤り、目の前にいる医者たちに詰め寄っていた。

その怒りの原因、それはエルメの心臓が悪いと医者たちが告げたことだ。

「殿下、お望みとあらば、何度でも申し上げましょう。妃殿下の心臓は、弱っております。後の出産に耐えられるかどうか・・・」

医者がはっきりとした声でそう告げると、マリオンはキッと睨みつけ、リオルは静かに目を伏せた。

マリオンが、じゃじゃ馬と認めるほど元気だったエルメの心臓が弱っているなど、にわかに信じがたい。しかも彼女のお腹の中には、新しい命が芽吹いていた。

リオルが生まれてから、なかなか第二子に恵まれなかったマリオンとエルメだったが、リオルが八歳になってすぐ妊娠が判明した。それは今からまだ数ヶ月前のことだ。喜ばしいはずの出来事が、新たな災いをもたらすなど、誰が予想できただろうか。

「何故だ!?なぜ急にそのようなことに!!」

「分かりませぬ。しかし、これは紛れもない事実です」

「原因不明というのか?ふざけるな!!お前たち無能のせいでこうなったのではないか!!もっと早く知っていれば、いくらでも打つ手はあっただろう!!」

そう声を荒げ、机をドンッと叩いたマリオン。全くいつもの彼らしくない。仕える者を無能と呼ぶなど、愚かな主以外の何者でもない。

それだけ彼がエルメを愛しているということなのだが・・・

リオルは冷静さを失っている父親を言葉でなだめることを諦め、つかつかとマリオンに歩み寄ると、ついさっき父親がしたように机を思いっきりドンッと叩いた。

突然の行動に、幼い息子に驚きの眼差しを向けるマリオン。それに「父上、落ち着いてください」と、落ち着いた声でリオルが注意した。この言葉で冷静さを取り戻したマリオンは、ふぅっと小さく息を吐き出す。

「リオル・・・だが、この者たちが言うには、このままではエルメの命が危ないんだぞ・・・お前は平気なのか?」

「父上には僕が平気に見えますか?大体彼らを責めても何も変わりません。それよりも何か手を打ちましょう」

若干まだ八歳の子供に助け舟を出されたた医者たちは、深々と頭を下げた。

「申し訳ありません。しかし、我々も妃殿下の体調管理には最善を尽くしておりました。しかし今回のことは、本当に突然のことでして・・・」

「父上も分かってるんだよ。ただ母上のこととなると、周りが見えなくなるんだ。気にしないでね」

自分の祖父母より遥かに年上の者たちを気遣うリオルの言葉に、医者たちは再び深く頭を下げた。

そして、リオルはそんなやり取りを憮然とした表情で見つめるマリオンに向き直ると、言った。

「父上、お忘れですか?医者がお手上げの病でも、ものともしない人物がこの帝国にはいますよね?」

そうリオルがほのめかすと、マリオンはすぐに一人の人物を思いつく。

それはエルメと同じ転生者であり、むか~しむかしマリオンと共同戦線をはったこともある人物だった。

マリオンは側に控えていた側近アーノルドに鋭い眼差しを向けると、告げる。

「急ぎ癒やしの乙女であるアリス・サルコール嬢を呼べ!」


◆◆◆◆◆


何やら物々しい雰囲気のようですが、帰っきた転生皇太子妃と俺様皇太子。

僭越ながら、半年ぶりにエルメたちの物語を更新し始めました。

細々と書いていたので、こんなに時間が・・・

呼んでない・・・?なんて仰っしゃらずに、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
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