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アフターストーリー
アフターストーリー第18話 ラストエピソード2
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「どこにも居られません!」
「もっとよく探せ!」
何やら外が騒々しく、騒ぐ声が聞こえる。部屋から逃げ出したエルメは、いまドレスに囲まれていた。
今日は変なものを口にはしていない彼女だったが、この間の食あたりが長引いているのだろうと考えた。それ故、また皆をぬか喜びさせることに躊躇いを感じ、衣装部屋に隠れたのだ。
何故、エルメが今度も食あたりだと思ったのか、それはあれから一週間ずっと胸焼けのような気持ち悪さが残っていたからだ。
隠れているうちに眠ってしまったエルメは、外で起きている騒動に血の気が引いた。
(ヤバイなあ。これ私を探してるよね。寝てるうちに、大分大事になってる!あ~、マリオンにまた怒られる~。いっそ、本当に城から逃げちゃおうかな)
エルメがこの後どうすべきか頭を抱えていると、扉の直ぐ側で声がした。慌てて息をひそめるエルメ。
「殿下、そこはもう捜索しました」
「私がもう一度探す。ここの可能性が高いと思うがな」
(マリオンだ!ヤバい、ヤバい!うー、どうか見つかりませんように・・)
扉の開く音がして、コツコツと足音が近付いてくる。
(嗚呼、神様!仏様!どうか見逃して!)
「そこで何をしてるんだ!?私の姫は」
この台詞が聞こえたとき、祈りのポーズをしたエルメと怖いくらいの笑顔を浮かべたマリオンの視線がバッチリ合った瞬間だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「全く・・何故素直に診察を受けなかったんだ?」
「だって・・・あれからずっと気持ち悪かったから、絶対にまた食あたりだって言われると思って。それにお義父様とお義母様をもう悲しませたくなかったから・・・」
「だが、もしこのまま身体を放っておいたら、それこそ本当に取り返しのつかないほど悲しませたかもしれないんだぞ」
「うん・・分かってる・・ごめんなさい」
ベッドに横になるエルメは、布団で鼻まで隠し、その青い瞳をマリオンへ向け、シュンと落ち込んでいる。
マリオンに見つかった後、強制的に診察を受けされられたエルメは、予想とは違う診断結果を伝えられる。
「おめでとうございます。妃殿下のお腹の中に新しい生命が宿っております」
これにはダリオンとエリザベートは、抱き合って喜びを分かち合い、いつもの威厳はどこへいったのか、小躍りしそうなほど浮かれて出ていった姿は、忘れたくても忘れられない。
ここで、エルメはフッと占いの事を思い出す。
「ねえ、マリオン。あの占いで言ってた最後の“水の中に没む何か”って言葉、分かったよ。私たちの赤ちゃんだったのよ。赤ちゃんってね、お母さんのお腹の中の羊水っていう水の中で大きくなるの。フフッ・・ずっとモヤモヤしてだけど、スッキリしたね」
「まだあの占いを覚えてたのか」
「忘れられるわけないわ。だってマリオンとデートした記念だもの」
楽しそうに笑うエルメは、きっとあのデートのことを思い出しているのだろう。しかし突然その笑みを消すと、不安そうな表情を浮かべる。そして、口を開くのを躊躇うようにしていたが、意を決したように口を開いた。
「子供できたって・・私とマリオンの子供・・」
「ああ、知ってる」
「嬉しい?」
「当たり前だろう」
「本当に?」
「何故そう思うんだ?」
ここでエルメは、あの食あたり騒動の時、エリザベートが早とちりして“子供ができた”と言った言葉に、彼が微妙な表情を浮かべたことを話す。
「だから、本当はまだ子供欲しくないのかなと思ったの」
エルメの心配にマリオンは「馬鹿だな」と小さく呟く。そしてエルメの頬にそっと触れると、笑顔で答えた。
「違う。嬉しくない筈無かろう。もし、生まれてくる子供が男だったら、君の所有権で揉めそうだと思ったのだ」
「えっ!?そんな事?」
「“そんな事”ではないぞ!君は子供の母親である以前に私の愛する妻だ。その妻を例え子供にでも渡したくないと思うのは、当然だろう?生まれてきたら、確実に君との時間が減るのは目に見えているからな」
「そっか・・・ありがとう」
「礼など要らんぞ。私が礼を言わねば、ならんくらいだからな・・エルメ、子供を授かってくれて、ありがとう。これから大変だろうが、私が全力で支えてやる。だから安心しろ」
「フフフフッ・・」
マリオンの言葉にエルメからは、ひたすら嬉しそうな笑い声が聞こえる。マリオンが首を傾げると、エルメは楽しそうに言った。
「罰ゲームのはずの皇太子妃がこんなにも幸せで、楽しいなんてね。それもこれもマリオンが隣にいるからだなぁと思ったの・・マリオン大好き!・・・愛してる!」
エルメからの突然の“愛してる”発言に、マリオンは一瞬で表情を崩すと、優しい眼差しを向け応えた。
「エルメ・・私もだよ。愛している」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この数カ月後、マリオンとエルメの間に生まれてきたのは、元気な男の子だった。
やがてその子が大きくなり、マリオンそっくりな俺様小マリオンに成長する。
そしてマリオンの危惧したとおり、成長した息子と彼がエルメを巡って、微笑ましいバトルを繰り広げるのだが、それはまた別のお話・・・
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アフターストーリー本編完結です。
もう少しお付き合いくださいね。
「もっとよく探せ!」
何やら外が騒々しく、騒ぐ声が聞こえる。部屋から逃げ出したエルメは、いまドレスに囲まれていた。
今日は変なものを口にはしていない彼女だったが、この間の食あたりが長引いているのだろうと考えた。それ故、また皆をぬか喜びさせることに躊躇いを感じ、衣装部屋に隠れたのだ。
何故、エルメが今度も食あたりだと思ったのか、それはあれから一週間ずっと胸焼けのような気持ち悪さが残っていたからだ。
隠れているうちに眠ってしまったエルメは、外で起きている騒動に血の気が引いた。
(ヤバイなあ。これ私を探してるよね。寝てるうちに、大分大事になってる!あ~、マリオンにまた怒られる~。いっそ、本当に城から逃げちゃおうかな)
エルメがこの後どうすべきか頭を抱えていると、扉の直ぐ側で声がした。慌てて息をひそめるエルメ。
「殿下、そこはもう捜索しました」
「私がもう一度探す。ここの可能性が高いと思うがな」
(マリオンだ!ヤバい、ヤバい!うー、どうか見つかりませんように・・)
扉の開く音がして、コツコツと足音が近付いてくる。
(嗚呼、神様!仏様!どうか見逃して!)
「そこで何をしてるんだ!?私の姫は」
この台詞が聞こえたとき、祈りのポーズをしたエルメと怖いくらいの笑顔を浮かべたマリオンの視線がバッチリ合った瞬間だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「全く・・何故素直に診察を受けなかったんだ?」
「だって・・・あれからずっと気持ち悪かったから、絶対にまた食あたりだって言われると思って。それにお義父様とお義母様をもう悲しませたくなかったから・・・」
「だが、もしこのまま身体を放っておいたら、それこそ本当に取り返しのつかないほど悲しませたかもしれないんだぞ」
「うん・・分かってる・・ごめんなさい」
ベッドに横になるエルメは、布団で鼻まで隠し、その青い瞳をマリオンへ向け、シュンと落ち込んでいる。
マリオンに見つかった後、強制的に診察を受けされられたエルメは、予想とは違う診断結果を伝えられる。
「おめでとうございます。妃殿下のお腹の中に新しい生命が宿っております」
これにはダリオンとエリザベートは、抱き合って喜びを分かち合い、いつもの威厳はどこへいったのか、小躍りしそうなほど浮かれて出ていった姿は、忘れたくても忘れられない。
ここで、エルメはフッと占いの事を思い出す。
「ねえ、マリオン。あの占いで言ってた最後の“水の中に没む何か”って言葉、分かったよ。私たちの赤ちゃんだったのよ。赤ちゃんってね、お母さんのお腹の中の羊水っていう水の中で大きくなるの。フフッ・・ずっとモヤモヤしてだけど、スッキリしたね」
「まだあの占いを覚えてたのか」
「忘れられるわけないわ。だってマリオンとデートした記念だもの」
楽しそうに笑うエルメは、きっとあのデートのことを思い出しているのだろう。しかし突然その笑みを消すと、不安そうな表情を浮かべる。そして、口を開くのを躊躇うようにしていたが、意を決したように口を開いた。
「子供できたって・・私とマリオンの子供・・」
「ああ、知ってる」
「嬉しい?」
「当たり前だろう」
「本当に?」
「何故そう思うんだ?」
ここでエルメは、あの食あたり騒動の時、エリザベートが早とちりして“子供ができた”と言った言葉に、彼が微妙な表情を浮かべたことを話す。
「だから、本当はまだ子供欲しくないのかなと思ったの」
エルメの心配にマリオンは「馬鹿だな」と小さく呟く。そしてエルメの頬にそっと触れると、笑顔で答えた。
「違う。嬉しくない筈無かろう。もし、生まれてくる子供が男だったら、君の所有権で揉めそうだと思ったのだ」
「えっ!?そんな事?」
「“そんな事”ではないぞ!君は子供の母親である以前に私の愛する妻だ。その妻を例え子供にでも渡したくないと思うのは、当然だろう?生まれてきたら、確実に君との時間が減るのは目に見えているからな」
「そっか・・・ありがとう」
「礼など要らんぞ。私が礼を言わねば、ならんくらいだからな・・エルメ、子供を授かってくれて、ありがとう。これから大変だろうが、私が全力で支えてやる。だから安心しろ」
「フフフフッ・・」
マリオンの言葉にエルメからは、ひたすら嬉しそうな笑い声が聞こえる。マリオンが首を傾げると、エルメは楽しそうに言った。
「罰ゲームのはずの皇太子妃がこんなにも幸せで、楽しいなんてね。それもこれもマリオンが隣にいるからだなぁと思ったの・・マリオン大好き!・・・愛してる!」
エルメからの突然の“愛してる”発言に、マリオンは一瞬で表情を崩すと、優しい眼差しを向け応えた。
「エルメ・・私もだよ。愛している」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この数カ月後、マリオンとエルメの間に生まれてきたのは、元気な男の子だった。
やがてその子が大きくなり、マリオンそっくりな俺様小マリオンに成長する。
そしてマリオンの危惧したとおり、成長した息子と彼がエルメを巡って、微笑ましいバトルを繰り広げるのだが、それはまた別のお話・・・
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
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もう少しお付き合いくださいね。
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