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アフターストーリー
アフターストーリー第13話 的中した占い
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それから二日間、エルメはアリスに捕まることになる。
突然の来訪からしばらくすると、アリスはエルメの部屋を訪れた。
「エルメ様、突然来て怒ってますか?」
「ビックリはしたけど、怒ってないわ。それに私もアリスに同じような事したの覚えてるでしょ?」
「嗚呼、相変わらずお優しいエルメ様・・・あの時は、本当に嬉しかったんですよ。エルメ様から“会いたかった”なんて言葉を貰って・・それに、今回はどうしてもエルメ様にお見せしたいものがあるんです」
アリスの言う“見せたいもの”というワードに、エルメは自然と身構える。「見せたいものって、何?」と聞くエルメは笑顔を張り付けた。
(また新作のグッズとかじゃないよね。そんなのマリオンに知られたら、また何を言われるか・・アリス、アンタのためよ。大人しくしてなさい!)
「今日は時間もないので、明日お見せします!絶対にエルメ様も感動しますよ。私も初めて見たときは、泣いちゃいましたから!」
そう興奮気味に話すアリスに、エルメは内心思った。
(どうか等身大フィギュアでは、ありませんように・・・)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日、エルメとアリスは二人きりで馬車に乗っていた。何故こうなったのか・・・それはアリスがマリオンや別荘の者たちの目を盗んで、エルメを連れ出したからだった。強引なやり方にエルメが理由を聞くと、アリスは「これから行く場所は、エルメ様と私しか感動を共有できないからです」と答えた。
(感動の共有ねぇ。前のような推し部屋なら、私に感動なんて感情は、一ミリも湧かないけどね。まあ、馬車に乗っちゃったものは仕方ない。最後まで付き合うか・・・)
行く先も知らないエルメは、流れていく外の景色を眺めている。そんなエルメをホウッと見惚れた眼差しで、アリスが見つめていた。まるでミステリーツアーのような旅にもエルメは、不安を全く感じなかった。何故なら、強引なマリオンに今まで散々同じように連れ回されていたからだ。ここで彼の俺様に振り回された成果が、発揮されるとは皮肉なものだ。
順調に馬車が進む中、突然車輪のガタガタという音が止まる。停車した馬車の中で顔を見合わせるエルメとアリス。
「まだ目的地じゃないと思うけど」
そう呟いたアリスが確認しようと、扉に手を掛けたその時、それは開いた。
「助けてください」
開かれた扉から、助けを求める声が聞こえた。見ると、五歳ぐらいの赤毛の少年がこちらを見ている。他には人影がない為、どうやら助けを求めているのは、この子のようだ。赤毛を見たエルメの脳裏に占い師の言葉がよぎる。
『赤は渦を巻き、つむじ風を起こす』
しかし相手が幼子という事もあり、エルメの警戒心はすぐに解かれ、馬車を降り立つ。続いてアリスも降りてきた。
「助けてって、どうしたの?」
エルメが目線を合わせ少年に聞くと、「お母さんが・・」と今にも泣き出しそうな顔をした。そして、アリスはというと、キョロキョロと周囲を見回している。
「エルメ様、おかしいです。御者もいないし、付いている筈の護衛も見当たりません」
アリスの言葉に一瞬で凍りつくエルメ。エルメも周囲を見るが、確かに馬車に居るはずの御者の姿がどこにも見当たらない。嫌な予感がしたエルメが、赤毛の少年を見下ろすと、彼の口から謝罪の言葉が出てきた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。でも助けてっていうのは、本当です。お母さんが連れて行かれちゃったの。お姉さんを連れて行かないと、お母さん・・殺すって・・・ごめんなさい」
泣きわめく少年は、涙でかわいい顔がクシャクシャになっている。エルメはしゃがみ込み、溢れる涙をハンカチで拭う。
「ふええ・・・ごめんなさい、ごめんなさい」
「そんなに謝らなくてもいいのよ」
そこに嘲笑うかのようなセリフが流れてきた。
「おやおや、癒やしの乙女様は、お優しいねぇ」
突然の来訪からしばらくすると、アリスはエルメの部屋を訪れた。
「エルメ様、突然来て怒ってますか?」
「ビックリはしたけど、怒ってないわ。それに私もアリスに同じような事したの覚えてるでしょ?」
「嗚呼、相変わらずお優しいエルメ様・・・あの時は、本当に嬉しかったんですよ。エルメ様から“会いたかった”なんて言葉を貰って・・それに、今回はどうしてもエルメ様にお見せしたいものがあるんです」
アリスの言う“見せたいもの”というワードに、エルメは自然と身構える。「見せたいものって、何?」と聞くエルメは笑顔を張り付けた。
(また新作のグッズとかじゃないよね。そんなのマリオンに知られたら、また何を言われるか・・アリス、アンタのためよ。大人しくしてなさい!)
「今日は時間もないので、明日お見せします!絶対にエルメ様も感動しますよ。私も初めて見たときは、泣いちゃいましたから!」
そう興奮気味に話すアリスに、エルメは内心思った。
(どうか等身大フィギュアでは、ありませんように・・・)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日、エルメとアリスは二人きりで馬車に乗っていた。何故こうなったのか・・・それはアリスがマリオンや別荘の者たちの目を盗んで、エルメを連れ出したからだった。強引なやり方にエルメが理由を聞くと、アリスは「これから行く場所は、エルメ様と私しか感動を共有できないからです」と答えた。
(感動の共有ねぇ。前のような推し部屋なら、私に感動なんて感情は、一ミリも湧かないけどね。まあ、馬車に乗っちゃったものは仕方ない。最後まで付き合うか・・・)
行く先も知らないエルメは、流れていく外の景色を眺めている。そんなエルメをホウッと見惚れた眼差しで、アリスが見つめていた。まるでミステリーツアーのような旅にもエルメは、不安を全く感じなかった。何故なら、強引なマリオンに今まで散々同じように連れ回されていたからだ。ここで彼の俺様に振り回された成果が、発揮されるとは皮肉なものだ。
順調に馬車が進む中、突然車輪のガタガタという音が止まる。停車した馬車の中で顔を見合わせるエルメとアリス。
「まだ目的地じゃないと思うけど」
そう呟いたアリスが確認しようと、扉に手を掛けたその時、それは開いた。
「助けてください」
開かれた扉から、助けを求める声が聞こえた。見ると、五歳ぐらいの赤毛の少年がこちらを見ている。他には人影がない為、どうやら助けを求めているのは、この子のようだ。赤毛を見たエルメの脳裏に占い師の言葉がよぎる。
『赤は渦を巻き、つむじ風を起こす』
しかし相手が幼子という事もあり、エルメの警戒心はすぐに解かれ、馬車を降り立つ。続いてアリスも降りてきた。
「助けてって、どうしたの?」
エルメが目線を合わせ少年に聞くと、「お母さんが・・」と今にも泣き出しそうな顔をした。そして、アリスはというと、キョロキョロと周囲を見回している。
「エルメ様、おかしいです。御者もいないし、付いている筈の護衛も見当たりません」
アリスの言葉に一瞬で凍りつくエルメ。エルメも周囲を見るが、確かに馬車に居るはずの御者の姿がどこにも見当たらない。嫌な予感がしたエルメが、赤毛の少年を見下ろすと、彼の口から謝罪の言葉が出てきた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。でも助けてっていうのは、本当です。お母さんが連れて行かれちゃったの。お姉さんを連れて行かないと、お母さん・・殺すって・・・ごめんなさい」
泣きわめく少年は、涙でかわいい顔がクシャクシャになっている。エルメはしゃがみ込み、溢れる涙をハンカチで拭う。
「ふええ・・・ごめんなさい、ごめんなさい」
「そんなに謝らなくてもいいのよ」
そこに嘲笑うかのようなセリフが流れてきた。
「おやおや、癒やしの乙女様は、お優しいねぇ」
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