〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

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アフターストーリー

アフターストーリー第11話 癒やしの乙女襲来

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思いもよらない占い結果を知ってから、早二ヶ月が過ぎようとしていた。何事もなく過ぎ去る時間に、エルメの心に残っていた不安も徐々に小さくなる。

エルメはマリオンと共にこの日、休暇のため皇領にある別荘に向かう馬車に乗っていた。エルメは初めて過ごす別荘での休暇に胸を膨らませ、マリオンの膝の上という指定席から窓の外に広がる景色を見つめている。そして、マリオンが彼女の長い髪を撫でながら、そんなエルメの姿を愛おしそうに見つめていた。

「そろそろ着く頃だな」

マリオンの言葉を聞いていたかのように、エルメの視界に立派な建物が入ってきた。

「あれが、その別荘?」

指を差し、尋ねるエルメにマリオンは頷いた。

「別荘でも随分立派なのね。すごく大きい。楽しみだな」

エルメの出身カラマノ王家にも別荘はあったが、ここまで大きく立派なものではなかった。

「ねぇ、そろそろ下ろして・・別荘の人たちに見られたら恥ずかしい・・・」

「何を恥ずかしがるんだ」

「だって・・・大好きなマリオンの一番近くに居られて、嬉しいよ。嬉しいけど・・・ずっと膝の上にだなんて・・マリオンの足かツライんじゃ・・」

「私は慣れているからな。それに・・・せっかくの休暇、朝から晩まで君を独占できるんだ。身体が痛くては、この身体に触れられんだろう?」

マリオンはそうエルメの耳元で囁く。そして、膝の上の愛しい人の反応を楽しんでいた。

「クックッ・・エルメ、耳まで真っ赤だぞ」

マリオンの言葉通りエルメは、耳まで真っ赤にし手で顔を隠している。しかしその指の隙間から潤んだ眼差しを向け、可愛らしく睨むと「独占したいなんて、もう十分独占してるじゃない・・・」と言った。マリオンは、そんな彼女の額に軽いキスを送った。

馬車はそんな二人を乗せて建物の前に停車すると、エルメたちの世話をする使用人がズラッと並び、出迎える。

「殿下、妃殿下、お待ちしておりました」

そう言って出迎えた侍従長の顔は、穏やかでにこやかな笑みを浮かべている。そして、次にその笑顔に似つかわしくないセリフが侍従長の口から続けて出てきた。

「実はトラブルと申しますか・・ご来客がございまして・・・」

「来客?」

「はい。お約束されてないご様子でしたが、相手が相手だけに念のため、中でお待ち頂いております」

心当たりのないマリオンとエルメは、顔を見合わせる。今日からここに来ることは、あまり大っぴらにしていない。せっかくの休暇を邪魔されたくなかったからだ。しかし、今日皇太子夫妻がやって来ることを知っていたとあれば、どこからその情報を得たのか気になるところだ。

マリオンは「そうか。お前が待たせるぐらいだ。余程の人物なのだろう」と言うと、エルメをエスコートしながら建物へ入り、そのままその人物が待つという客間へ足を進めた。そして、部屋へ入ると、見覚えのある後ろ姿が目に入った。

「アリス様!?」

エルメの口から出た名前に、ソファーに座る人物が立ち上がり、振り返る。

「お待ちしておりましたわ。マリオン皇太子殿下、エルメ皇太子妃殿下、お久しぶりでございます」 

優雅な微笑みを浮かべ、挨拶の言葉を口にするアリスは、エルメと二人きりの時とは違い、余所行きの癒やしの乙女の仮面を被っている。

「何でいる?」

そうアリスに聞きながら、マリオンはエルメの手を取り、向かいのソファーに腰を下ろす。その時、マリオンを包む雰囲気が凍るのをエルメは感じた。そして、マリオンはエルメの手を離さずに、両手で包むように優しく撫でている。それはまるで、アリスに見せつけているかのようだ。そんなマリオンの挑戦的な仕草にも、アリスは乙女の仮面を崩さない。

「近くの町に滞在中、ご夫妻がここへいらっしゃると伺い、訪ねてまいりました」

「近く?」

「はい。ドーブルです。私があの町の町長と懇意にしていることは、ご存知でしょう?そこで知ったのです。特にエルメ様とは、大きな壁に阻まれてなかなか会う機会がありませんから」

マリオンの問いにそう答えるアリスは、視線をマリオンではなくエルメに送っている。

アリスの言うドーブルとは、帝国の最東端にある町だ。以前、皇都の屋敷を貰う前にアリスが住みたいと言い出した町。あれから彼女は、定期的に意気投合した町長の元を訪ねていた。エルメはアリスと意気投合する町長がどんな人物なのが気になったが、深く掘り下げないことに決めた。
何故なら、アリスの裏の顔を知っていた彼女は、もし意気投合したのがエルメ愛という点だったとしたら、自分にとって厄介な案件が増えるだけだと考えたからだ。

そして、またもう一つ別の理由が・・アリスと仲良しの町長よりも気になることがエルメの頭を過ぎったからだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


乙女の仮面のオンオフの落差が激しいアリスです。
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