34 / 74
アフターストーリー
アフターストーリー第8話 皇太子は欲情を遮られる
しおりを挟む
「おかえりなさい!」
そう嬉しそうな声を上げるのは、エルメだ。部屋へ戻ってきた彼女は、執務から解放されたマリオンを見つけ後ろから抱きついた。そして、その細マッチョな身体を堪能している。そんな愛する妻の抱擁にマリオンの目は、自然と細まる。
「私は抱かれるより、こうして抱くほうが好みなんだが・・」
そう言ってマリオンは身体を反転させると、エルメの身体をヒョイッと回転し、後ろから抱きしめた。「やはりこっちだな」と気持ちを言葉にしたマリオンは、エルメの頭に顎を乗せる。エルメは幸せそうな笑顔を浮かべると、後ろから身体を抱きしめる彼の手をそっと包んだ。
「フフッ・・私って幸せ者だよね」
「今更、何を言ってるんだ」
「今更でも何でも幸せなものは、幸せなんだもの。マリオンに好きになってもらって、果報者だよ・・好きになってくれて、ありがとう。私も大好き」
エルメの素直な言葉にマリオンの理性という名の糸が切れる。抱きしめる小さな身体を抱き上げると、ソファーへ横たえた。そして、愛情が滲む瞳で見上げるエルメの額にキスを落とし、そのまま唇を塞ごうとする。しかし、エルメが拒否をした。
「ダメ!もうすぐ夕食よ。呼びに来ちゃう」
エルメの言葉に「煽った君が悪い」と返し、首筋を撫でるように唇が動く。「っ・・ん」と色っぽい声と息を漏らすエルメに、マリオンの欲情は勢いを増すが、正気になったエルメは手を伸ばし、全力でマリオンの顔を追いやる。
「もう!本当にだめ!」と潤んた瞳で睨むエルメ。それにマリオンはコツンと優しく額を合わせ、「・・夜までお預けか?」と言葉を落とすと「そう、夜までね」とエルメは笑った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕食後、部屋へ戻ってきた二人。扉が閉まるやいなや、マリオンはエルメの身体を優しく強く抱きしめると、閉めたばかりの扉に彼女の背を預ける。そして「煽った罰だ」と息を吐くように言い、口づけをした。しかし、またもエルメは拒否をする。
「まだ夜じゃない」
「何を言ってる。もう外は暗いぞ」
「夜の意味分かってる?湯浴みもしてないし・・それに話があるの!」
エルメの言葉にマリオンは「後にしろ」と短く返すと、反論出来ないよう舌を捩じ込む。それはまるで生き物のように、エルメの舌を捕らえて離さない。
「んふっ・・ん」
身体を寄せ合う二人だけの部屋に乱れた息遣いが聞こえる。しかし、それもすぐに「いやっ!もう本当にお願い」と色気漂う声色に遮られた。エルメの二度目の拒絶にマリオンはため息をつく。
「ごめんね。でも話を聞いてくれたら、後で頑張るから・・ねっ?」
上目遣いにマリオンを見上げるエルメの瞳は、彼の色気にあてられて、色香を滲ませている。そんな目の前の彼女にマリオンは何か言いかけるが、諦めたようなため息をつくと、エルメの肩に顔を埋め、呟くように言った。
「あー、くそっ・・君には敵わん。分かったから、早く話せ」
マリオンの負けだった。エルメは早速、マリオンとソファーに腰を下ろすと、話し始める。
「ねえ、明日お休みでしょう?デートしよう!デート!」
エルメの誘いに「私は君とこうして部屋で過ごすのも悪くないが」とマリオンは言うと、触れるだけのキスをする。それにエルメは頬を膨らませ可愛く睨むが、マリオンは笑みを浮かべ、全く意に介す様子がない。
「もう!ちゃんと聞いて・・今、よく当たるって評判の占い師が皇都来てるの。普通は見てもらうのに、すごく並ぶんだけど、予約するとすぐに見てもらえるんだ。それで、何と!予約してたサラが行けなくなったから、代わりに私たちに行かないかって譲ってくれたの。ねっ?行こう!」
サラとは、エルメの侍女だ。エルメは彼女と気が合うらしく、よく友達のように話をしている。今回も二人がどんな会話を繰り広げたのか、想像に難くないマリオンは占いなど興味はなかったが、小さなため息をつくと、「分かった」と答える。それにエルメの顔には、満開の笑顔が咲いた。
「やったぁ。フフフッ・・マリオンとお出かけできるなんて、すごく楽しみ!あっ!何着ていこうかなぁ」
決まったばかりの明日の予定に心躍らせるエルメはそう言うと、立ち上がった。
「おいっ、どこ行くんだ?」
そう尋ねるマリオンの腕は、彼女の手をしっかり掴んでいた。捕まったエルメは、不思議そうな表情を浮かべ「どこって、明日の衣装選びに行くのよ」と当たり前のように答えるが、マリオンの腕は離すどころか一層力を強める。
「衣装など、明日でいいだろう」
「ダメよ。デートだよ!マリオンには、かわいいって思われたいし、言ってほしいもの」
「そんな事いつも思ってるし、いくらでも言ってやる。だから行くな」
エルメの頬は、マリオンのセリフに自然と赤くなる。そして腕を捕らえる彼の手にそっと触れると、はにかんだ笑顔を浮かべ言った。
「そっか、いつも思ってくれてるんだ。嬉しい・・・・湯浴みしてくる・・」
その言葉は、マリオンの拘束を解くのに十分だった。腕から逃れたエルメは、見下ろす彼の頭上に唇で軽く触れると、部屋を後にした。
そうして約束通り、エルメはこのあとマリオンのため一肌も二肌も脱ぐのだった。
そう嬉しそうな声を上げるのは、エルメだ。部屋へ戻ってきた彼女は、執務から解放されたマリオンを見つけ後ろから抱きついた。そして、その細マッチョな身体を堪能している。そんな愛する妻の抱擁にマリオンの目は、自然と細まる。
「私は抱かれるより、こうして抱くほうが好みなんだが・・」
そう言ってマリオンは身体を反転させると、エルメの身体をヒョイッと回転し、後ろから抱きしめた。「やはりこっちだな」と気持ちを言葉にしたマリオンは、エルメの頭に顎を乗せる。エルメは幸せそうな笑顔を浮かべると、後ろから身体を抱きしめる彼の手をそっと包んだ。
「フフッ・・私って幸せ者だよね」
「今更、何を言ってるんだ」
「今更でも何でも幸せなものは、幸せなんだもの。マリオンに好きになってもらって、果報者だよ・・好きになってくれて、ありがとう。私も大好き」
エルメの素直な言葉にマリオンの理性という名の糸が切れる。抱きしめる小さな身体を抱き上げると、ソファーへ横たえた。そして、愛情が滲む瞳で見上げるエルメの額にキスを落とし、そのまま唇を塞ごうとする。しかし、エルメが拒否をした。
「ダメ!もうすぐ夕食よ。呼びに来ちゃう」
エルメの言葉に「煽った君が悪い」と返し、首筋を撫でるように唇が動く。「っ・・ん」と色っぽい声と息を漏らすエルメに、マリオンの欲情は勢いを増すが、正気になったエルメは手を伸ばし、全力でマリオンの顔を追いやる。
「もう!本当にだめ!」と潤んた瞳で睨むエルメ。それにマリオンはコツンと優しく額を合わせ、「・・夜までお預けか?」と言葉を落とすと「そう、夜までね」とエルメは笑った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕食後、部屋へ戻ってきた二人。扉が閉まるやいなや、マリオンはエルメの身体を優しく強く抱きしめると、閉めたばかりの扉に彼女の背を預ける。そして「煽った罰だ」と息を吐くように言い、口づけをした。しかし、またもエルメは拒否をする。
「まだ夜じゃない」
「何を言ってる。もう外は暗いぞ」
「夜の意味分かってる?湯浴みもしてないし・・それに話があるの!」
エルメの言葉にマリオンは「後にしろ」と短く返すと、反論出来ないよう舌を捩じ込む。それはまるで生き物のように、エルメの舌を捕らえて離さない。
「んふっ・・ん」
身体を寄せ合う二人だけの部屋に乱れた息遣いが聞こえる。しかし、それもすぐに「いやっ!もう本当にお願い」と色気漂う声色に遮られた。エルメの二度目の拒絶にマリオンはため息をつく。
「ごめんね。でも話を聞いてくれたら、後で頑張るから・・ねっ?」
上目遣いにマリオンを見上げるエルメの瞳は、彼の色気にあてられて、色香を滲ませている。そんな目の前の彼女にマリオンは何か言いかけるが、諦めたようなため息をつくと、エルメの肩に顔を埋め、呟くように言った。
「あー、くそっ・・君には敵わん。分かったから、早く話せ」
マリオンの負けだった。エルメは早速、マリオンとソファーに腰を下ろすと、話し始める。
「ねえ、明日お休みでしょう?デートしよう!デート!」
エルメの誘いに「私は君とこうして部屋で過ごすのも悪くないが」とマリオンは言うと、触れるだけのキスをする。それにエルメは頬を膨らませ可愛く睨むが、マリオンは笑みを浮かべ、全く意に介す様子がない。
「もう!ちゃんと聞いて・・今、よく当たるって評判の占い師が皇都来てるの。普通は見てもらうのに、すごく並ぶんだけど、予約するとすぐに見てもらえるんだ。それで、何と!予約してたサラが行けなくなったから、代わりに私たちに行かないかって譲ってくれたの。ねっ?行こう!」
サラとは、エルメの侍女だ。エルメは彼女と気が合うらしく、よく友達のように話をしている。今回も二人がどんな会話を繰り広げたのか、想像に難くないマリオンは占いなど興味はなかったが、小さなため息をつくと、「分かった」と答える。それにエルメの顔には、満開の笑顔が咲いた。
「やったぁ。フフフッ・・マリオンとお出かけできるなんて、すごく楽しみ!あっ!何着ていこうかなぁ」
決まったばかりの明日の予定に心躍らせるエルメはそう言うと、立ち上がった。
「おいっ、どこ行くんだ?」
そう尋ねるマリオンの腕は、彼女の手をしっかり掴んでいた。捕まったエルメは、不思議そうな表情を浮かべ「どこって、明日の衣装選びに行くのよ」と当たり前のように答えるが、マリオンの腕は離すどころか一層力を強める。
「衣装など、明日でいいだろう」
「ダメよ。デートだよ!マリオンには、かわいいって思われたいし、言ってほしいもの」
「そんな事いつも思ってるし、いくらでも言ってやる。だから行くな」
エルメの頬は、マリオンのセリフに自然と赤くなる。そして腕を捕らえる彼の手にそっと触れると、はにかんだ笑顔を浮かべ言った。
「そっか、いつも思ってくれてるんだ。嬉しい・・・・湯浴みしてくる・・」
その言葉は、マリオンの拘束を解くのに十分だった。腕から逃れたエルメは、見下ろす彼の頭上に唇で軽く触れると、部屋を後にした。
そうして約束通り、エルメはこのあとマリオンのため一肌も二肌も脱ぐのだった。
30
お気に入りに追加
2,271
あなたにおすすめの小説

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~
八重
恋愛
【全32話+番外編】
「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」
伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。
ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。
しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。
そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。
マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。
※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております


強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる