〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

文字の大きさ
上 下
30 / 74
アフターストーリー

アフターストーリー第4話 開けてはいけない扉だった

しおりを挟む
屋敷を回り、最後にアリスの私室へ案内されたエルメ。そこは相変わらず上質な調度品が置かれているが、他より豪華さは影を潜め、落ち着いた雰囲気の部屋だ。

「ここは他とは違って、落ち着くわね。アリスの部屋でしょ?」

「はい!ここだけは、私の希望を全面的に取り入れてもらいました!」

(なるほど・・こっちが足元を見た結果なんだ)

「本当に素敵。このソファーもかわいいし・・」

「やっぱりそう思いますか!?このソファーは、私も一目惚れしたんです。だからこれを中心に内装をコーディネートしたんですよ」

「へえ、そうなんだ。アリス、あなた趣味がいいわね!私の部屋もやってほしいぐらいよ」

「えっ!本当ですか!?呼んでくれたら、喜んでお手伝いします!いえ、させてください!」

「フフッ・・その時はアリスにお願いするね」

エルメのお願いにアリスは「やったぁ!エルメ様の過ごすお部屋を自分色に染めるとか鼻血ものだよぉ。あー、ヤバい・・私、明日死ぬかも」と相変わらずブツブツと不吉なことを呟いている。そして「まだエルメ様にお見せしたい部屋があるんですよ!」と言ったアリスは、隣室へ続くであろう扉に手を掛けた。

「まだ完成途中なんですが、今日はお見せしちゃいます。そして、エルメ様にも是非お手伝いいだきたいです!」

アリスの言葉にエルメは、さっき聞き流したセリフを思い出す。

(なるほど。アリスがさっき言ってた“ちょうどよかった”の原因はここか)

そしてアリスがゆっくりと扉を開き、「へえ、何だろう」と口にするエルメの目に映ったのは、エルメ自身だった。

「ゔっ・・・何これ・・」

そう声を漏らし、開かれた扉の先の光景にエルメの足が止まる。

「じゃ~ん!私の推し部屋&神部屋です!中に入れば、どこを見てもエルメ様!これなら、なかなか会えない二人の時間も寂しくないです!」

“どこを見てもエルメ”

アリスの言葉の通り、部屋中エルメだらけだ。自画像が大半だが、それも正面だけでなく、横から斜めから、そして後ろから・・後ろ姿なんて、もはや誰?状態だ。他にはクッションカバーには刺繍エルメ、極めつきは人形だ。足元から膝位の大きさのそれは、エルメそっくりだ。

エルメは、眼前の未知の世界に糸一本繋がった意識を必死に手繰り寄せ、どこが未完成なのかアリスに尋ねる。すると、アリスは誇らしげに語りだした。

「あとはぁ、刺繍が途中のクッションカバーですね」

「クッションカバーって、もうこんなにあるじゃない・・・」

「まだまだですよぉ。このクッションに埋もれるのが、夢なんです。毎晩、一針一針心を込めて刺してます!」

(ひぃぃぃ・・ホラーだ。間違いなくホラー)

そして、エルメが白目を向きそうな中、アリスのエルメグッズ自慢は止まらない。

「あっ、そうそう。エルメ様にぜひ最後の一筆をお願いしたいんです!」

そう言ってアリスが手にしたのは、エルメ人形だ。

「本当は等身大を置きたかったんですけど、マリオン様に速攻全力で却下されました。粘ってもダメでしたね。
それで、エルメ様にお願いしたいのは、ここです」

そう言ってアリスは、人形の頭を撫でる。エルメの背筋にゾワァ~と悪寒が走ったが、無理矢理笑顔をつくる。

「エルメ様ドールに瞳を入れてください!」

確かに見ると、エルメの印象的なブルーの瞳がない。

「はい!これでお願いします!」

そう言って、アリスに手渡された筆には青インクがついている。

(ダルマかっ!?願掛けか!?)

アリスの重すぎる推し愛にエルメは頭を抱えながらも、ゆっくりと筆を動かした。そして、エルメが筆入れの儀式を終えたことに、アリスは満足そうにしている。

「ありがとうございます!毎日、話しかけますね!」

(いやぁ!いらーん!!!)

この時、アリスの前世が気になったが、その蓋は決して開けてはいけない気がしたエルメだった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


次話、皇弟バロン登場します。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

処理中です...