〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

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本編

後日談 素直になった悪役と皇太子のその後

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「今日も大好きっ」

「もう分かったから、離れろ」

「・・・えー、寂しい」

「公務に行けないだろ。こら・・」

そんなラブラブな会話を繰り広げているのは、エルメとマリオンだ。最近の二人は、ずっとこんな感じだ。

エルメは“大好き”というセリフをマリオンと二人の時、恥じらうことなく口にするようになった。それに最初こそ戸惑っていたマリオンも、今では満更でもない様子でエルメの相手をしている。

エルメの態度を変えたのは、マリオンのせいだった。彼は毎晩ベッドの上でエルメに“愛している”という言葉を言わせた。恥ずかしそうに言葉を躊躇う彼女に、口にするまでマリオンは肉欲というお仕置きをした。それは、とても人には言えない激しいものだった。

そしてもう一つは、マリオンと結んだ真実の契約だ。マリオンが合図ひとつするだけで、エルメの口から出るのは真実。彼はまだその手を使ったことはないが、そうされるのが分かっているなら、無駄な抵抗はやめ、素直に気持ちを伝えようとエルメは決めた。

「分かった。それじゃあ、はい」

エルメはそう言うと、精一杯踵を上げた背伸びでマリオンの唇にキスをする。マリオンもそれに背を屈めて応える。軽いキスをしたマリオンは、エルメの笑顔に見送られ、執務室へと向かった。そして、閉じた扉を背にマリオンはひとり呟いた。

「ああ、くそっ。かわいいな・・・」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ある日の午後、エルメの部屋にアリスの姿があった。二人は美味しそうなお菓子の乗ったテーブルを囲んで、会話の花を咲かせていた。

「そう言えば、ずっと疑問に思ってることがあるんだけど」

そう口にするのは、エルメだ。それに「何ですか?」とアリスが尋ねると、エルメは話し始めた。

エルメの口にした疑問。それは、小説よりアリスの登場が随分早くなったことだった。そもそもアリスも転生者で、マリオンとアリスがくっつかず、エルメもバッドエンドを迎えていないのだから、ストーリーもへったくれもない。しかし、その疑問だけは消えることなく、エルメの心の隅にくすぶっていた。

そしてその答えは、呆気なくアリスの口から披露されることになる。

「だって、流行り病の種をまいたのは、私ですから」

「えっ?種をまいた?どういうこと?」

予想もしないアリスの言葉に、エルメは手にしていたカップを落としそうになる。

「私が病の種をまいたんです。だってそうすれば、推しのエルメ様に早く会えるでしょう?」

「そんな理由で?」

「えー、そんな理由だなんて、言わないでくださいよぉ。でも小説では多くの人が亡くなる話でしたけど、私がまいたのは軽い症状になるよう改良した菌ですからね。だからサクッと終わらせたし、犠牲者もいなかった。城に届けた知らせには、少しだけ盛って状況を書いてたはずですよ」

(はあ!?原因はアンタか!あんなに自分のせいじゃないかって、不安だったのに・・・・)

「そのことをマリオン様も知ってるの?」

「そうですね。聞いていた知らせと現場で目の当たりにする状況が違うので、白状させられました」

(何だってぇぇぇ。あの人、まだ私に隠しごとしてたの!?)

「これでエルメ様の憂いも取れましたかね?それより、マリオン様との雰囲気が変わりましたね」

上手く話題をすり替えたアリスは、ニヤニヤしながらエルメを見つめている。少し前の彼女なら、“そんなことない”と誤魔化しただろうが、今の彼女は違った。アリスの言葉を素直に認める。

「そうね。皇太子妃として生きていく覚悟を決めたら、気持ちが楽になったの。今は彼と離れたくないし、ずっと側にいたいと心から思ってる。こんなに恋愛脳だったのかと、自分でもビックリしてるのよ」

アリスはその言葉を満足そうに聞き、頷くと、エルメに質問を投げかける。

「エルメ様、いま幸せですか?」

その問いかけにエルメは太陽のような笑顔を向け、声を弾ませて答えた。

「ええ、とっても幸せ!」
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