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本編
第23話 真実を知った悪役は胸の内を見せる
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「まだあるぞ」
マリオンの言葉にエルメは「嘘でしょ。まだあるの!?」と呟く。
(驚かされてばかりで、いい加減疲れてきたわ・・ていうか、どんだけ私、この人の手の上で転がされてたんだろ・・・・メンタル殺りにきてる!?)
そうして次にマリオンの口からネタバラシされたのは、エルメが今日城から逃げ出した原因である、マリオンの称号剥奪問題だった。聞かされる真相はエルメの想像を超えており、マリオンが腰を抱いていなければ今にも倒れそうだ。
彼によると、“マリオンの皇太子の称号を剥奪する”という皇帝の言葉は偽りであり、あの場にいた全員がグルだった。なぜエルメひとりを騙すようなことをしたのか。それは自分の気持ちに一向に気付かないエルメに、それを気付かせるためだ。
マリオンは自分を好きだと気付かせエルメの愛を手に入れるため。
そしてダリオンは、皇太子妃として迎え入れた娘に逃げられては国のメンツにかかわるため。
理由は違うが利害が一致した二人が手を組み、あの巧妙な芝居が仕組まれたのだ。
「私が皇太子の座を追われるとなれば、君は責任を感じて身を引こうとするだろう。そこまで予測していたわけだ」
「たった・・たった、それだけのためにあんなに無茶なことを・・・でもそれじゃあ、追放も処刑もないんですね?」
「処刑?なぜそうなる・・・あー、父上に啖呵きってたな。あれでか・・クックッ本当に君はおもしろい」
「それはそうですよ。だって、皇帝相手に喧嘩ふっかけたんですから・・でも、そっか・・バッドエンドなしかぁ。あっ、それはそうと私の行動は、簡単に予測できるほど単純ですか?」
「まあ、時と場合によるな。さっきのように恥じらいもなく、服の中からナイフを取り出すあたりは、私も予測不可能だ」
そう言って、マリオンはエルメの腰に回していた腕に力を入れる。密着するほど身体を引き寄せ、エルメを見下ろすその翡翠色の瞳には何か策する色を映している。
「まだ他に隠し持っているのでは、あるまいな」
そう口にするその声は色香を漂わせ、一瞬で彼の放つ雰囲気は甘く変化した。ドロッとしたその雰囲気はエルメを包み込み、彼女の心臓をうるさく鳴らす。
「隠し待っているか確認してやろうか・・・いや、それよりも君はもう気付いたんだろ?エルメのその気持ちを、この唇で聞かせろ。まさかここまできて、気付いてないとか言わないよな?このまま強引に連れ帰ってもいいんだぞ」
腰を抱き、唇に指で優しく触れるマリオンは、エルメの言葉を待っている。エルメは彼の待ち望むセリフを告げることに「・・・それは」と言い淀み、そんな彼女の様子にマリオンがたたみ掛ける。
「君とはちょうどいい契約もある。何なら、契約の合図を今するか?そうすれば、私はエルメのその胸の内を知り、君は真実の合図を知ることができる。さあ、どうする?」
引く様子のないマリオンにエルメは彼の視線に絡め取られたまま思案する。
(彼の言うとおり、彼を好きだという自分の気持ちに気付いちゃったし、もう言うしかないかぁ。どうせ本当のこと言わないと、“契約違反だ”とか言って、しっぺ返しがきそうだし・・倍・・十倍ぐらい跳ね返ってきそうだわね)
ついに諦めたエルメは、大きく息を吸い込み吐き出すと、ゆっくりと口を開いた。
「いいえ、降参です。白状します。どうやら私は、マリオン様のことを好きになってしまったようです」
「やっと認めたな。だが・・なんだ、その色気のない告白は。もう少し女らしく言えんのか?ムードもなにもないではないか」
(ムード!?マリオンの口からムード!?)
「・・・プッ・・プッ・・」
「こら何がおかしい。何か知らんが、笑いたければ笑え」
「アハハハハッ」
堪えきれずに、大笑いしだしたエルメをマリオンは落ち着き払って見つめている。ヒーヒー言いながらの爆笑もやがて収まると、エルメはマリオンの顔に浮かぶ不敵な笑みに気付いた。何度も見てきた彼の表情に、エルメは押してはいけないスイッチを押してしまったと直感で気付いた。
「あのぉ、そろそろ腕を離してくれませんか?」
「無理な願いだな。これから私たちは真の夫婦になるのだからな」
「真の夫婦・・って、えっ!?うそ!?やだ!ここで!?ムードは!?」
「どれだけ待たされたと思ってるんだ」
「えっと、でも!二年がほんの数ヶ月に短っ」
マリオンの唇で塞がれたエルメの言葉は、途中で途切れた。かわりに吐息を漏らし、強引なキスは今までに空いた隙間を埋めるように何度も何度も続いた。そしてマリオンはエルメを横抱きすると、奥の部屋へ姿を消した。
マリオンの言葉にエルメは「嘘でしょ。まだあるの!?」と呟く。
(驚かされてばかりで、いい加減疲れてきたわ・・ていうか、どんだけ私、この人の手の上で転がされてたんだろ・・・・メンタル殺りにきてる!?)
そうして次にマリオンの口からネタバラシされたのは、エルメが今日城から逃げ出した原因である、マリオンの称号剥奪問題だった。聞かされる真相はエルメの想像を超えており、マリオンが腰を抱いていなければ今にも倒れそうだ。
彼によると、“マリオンの皇太子の称号を剥奪する”という皇帝の言葉は偽りであり、あの場にいた全員がグルだった。なぜエルメひとりを騙すようなことをしたのか。それは自分の気持ちに一向に気付かないエルメに、それを気付かせるためだ。
マリオンは自分を好きだと気付かせエルメの愛を手に入れるため。
そしてダリオンは、皇太子妃として迎え入れた娘に逃げられては国のメンツにかかわるため。
理由は違うが利害が一致した二人が手を組み、あの巧妙な芝居が仕組まれたのだ。
「私が皇太子の座を追われるとなれば、君は責任を感じて身を引こうとするだろう。そこまで予測していたわけだ」
「たった・・たった、それだけのためにあんなに無茶なことを・・・でもそれじゃあ、追放も処刑もないんですね?」
「処刑?なぜそうなる・・・あー、父上に啖呵きってたな。あれでか・・クックッ本当に君はおもしろい」
「それはそうですよ。だって、皇帝相手に喧嘩ふっかけたんですから・・でも、そっか・・バッドエンドなしかぁ。あっ、それはそうと私の行動は、簡単に予測できるほど単純ですか?」
「まあ、時と場合によるな。さっきのように恥じらいもなく、服の中からナイフを取り出すあたりは、私も予測不可能だ」
そう言って、マリオンはエルメの腰に回していた腕に力を入れる。密着するほど身体を引き寄せ、エルメを見下ろすその翡翠色の瞳には何か策する色を映している。
「まだ他に隠し持っているのでは、あるまいな」
そう口にするその声は色香を漂わせ、一瞬で彼の放つ雰囲気は甘く変化した。ドロッとしたその雰囲気はエルメを包み込み、彼女の心臓をうるさく鳴らす。
「隠し待っているか確認してやろうか・・・いや、それよりも君はもう気付いたんだろ?エルメのその気持ちを、この唇で聞かせろ。まさかここまできて、気付いてないとか言わないよな?このまま強引に連れ帰ってもいいんだぞ」
腰を抱き、唇に指で優しく触れるマリオンは、エルメの言葉を待っている。エルメは彼の待ち望むセリフを告げることに「・・・それは」と言い淀み、そんな彼女の様子にマリオンがたたみ掛ける。
「君とはちょうどいい契約もある。何なら、契約の合図を今するか?そうすれば、私はエルメのその胸の内を知り、君は真実の合図を知ることができる。さあ、どうする?」
引く様子のないマリオンにエルメは彼の視線に絡め取られたまま思案する。
(彼の言うとおり、彼を好きだという自分の気持ちに気付いちゃったし、もう言うしかないかぁ。どうせ本当のこと言わないと、“契約違反だ”とか言って、しっぺ返しがきそうだし・・倍・・十倍ぐらい跳ね返ってきそうだわね)
ついに諦めたエルメは、大きく息を吸い込み吐き出すと、ゆっくりと口を開いた。
「いいえ、降参です。白状します。どうやら私は、マリオン様のことを好きになってしまったようです」
「やっと認めたな。だが・・なんだ、その色気のない告白は。もう少し女らしく言えんのか?ムードもなにもないではないか」
(ムード!?マリオンの口からムード!?)
「・・・プッ・・プッ・・」
「こら何がおかしい。何か知らんが、笑いたければ笑え」
「アハハハハッ」
堪えきれずに、大笑いしだしたエルメをマリオンは落ち着き払って見つめている。ヒーヒー言いながらの爆笑もやがて収まると、エルメはマリオンの顔に浮かぶ不敵な笑みに気付いた。何度も見てきた彼の表情に、エルメは押してはいけないスイッチを押してしまったと直感で気付いた。
「あのぉ、そろそろ腕を離してくれませんか?」
「無理な願いだな。これから私たちは真の夫婦になるのだからな」
「真の夫婦・・って、えっ!?うそ!?やだ!ここで!?ムードは!?」
「どれだけ待たされたと思ってるんだ」
「えっと、でも!二年がほんの数ヶ月に短っ」
マリオンの唇で塞がれたエルメの言葉は、途中で途切れた。かわりに吐息を漏らし、強引なキスは今までに空いた隙間を埋めるように何度も何度も続いた。そしてマリオンはエルメを横抱きすると、奥の部屋へ姿を消した。
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