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本編
第17話 結ばれた契約
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「君に身を引かれてもらっては、困るな。私はエルメを愛しているのだから・・・」
マリオンが口にした愛の告白にエルメは固まり、手にしていた紙とペンは静かに床に落ちる。それはただの物であるはずの紙とペンが、まるでエルメの運命から逃げ出したように見えた。
(はっ?いま“エルメ”って言った?エルメって、私?他にエルメさんって、いたかしら?・・居ないわっ!ちゃんと惚れ薬入れたよね?)
混乱するエルメに向けられる彼の眼差しは熱を帯びており、明らかに恋に溺れた目だ。アリスと視線を交差させると、彼女は“入れた”と目で語った。
(アリスはちゃんと入れてくれた。私は身を隠したし、マリオンはしっかりアリスを見ていたはず・・なのに、なんで!?告白する相手が違うじゃない!)
「エルメ・・私の気持ちに応えるのだろう?私たちは夫婦だ。恥ずかしがることはない」
どこまでも甘い声で吐くセリフに、エルメはブルッと身体を震わせた。いつもの俺様は影を潜め、見慣れぬマリオンの姿にエルメの足は自然と後ずさる。しかし離れようとする彼女の腕は、マリオンの力強い腕に捕らえられびくともしない。
「私から逃げようなどと、考えないことだ。私は君を手放すつもりはない。こんなにも愛しているのだから・・エルメ、君の口から愛していると聞かせてくれ。私は狂おしいほどに、君を愛しているんだ」
両腕を掴まれたエルメは動けずに、黙ってマリオンを見下ろしている。気付けば、アリスは姿を消していた。
掴む腕を片方だけ離したマリオンは、エルメの頬にそっと触れる。壊れ物に触るように優しいその手は、エルメの鼓動を一気に上げた。
「何も言ってくれないのか?君の口から望む言葉を聞くまで、離さないよ」
そう口にして立ち上がったマリオンの大きな身体を、エルメは行く手を阻む厚い壁のように感じた。その壁を力のない虚ろな瞳で見つめる彼女の頭上から、マリオンの信じられないセリフが降ってきた。
「離さないといえば、番の契約はまだだったな。いま結んでしまおうか。そうすれば、君はもう私から離れられない。誰かに取られる心配もない」
「番の契約・・やめてください。賭けは、まだ途中のはず」
呆然としたままやっと声という形にしたしたエルメのそれは、甘い甘い夫によって打ち砕かれた。
「ああ、やっと君の声が聞けた。賭けは、いまこの時をもって終了だ。私の勝ちだ。だってそうだろう?私はエルメ・・・君を愛したのだから」
そう言って勝者と愛情の入り混じった笑みを浮かべたマリオンは、エルメを横抱きにすると、ソファーへ彼女の身体を落とした。そしてその横に腰を下ろし、上半身は彼女の上に覆い被さり、動揺で瞳を揺らすエルメの顔を見下ろす。
「勝負だからな。覚悟はいいな?」
一方的な問いを口にしたマリオンは、襟元から何かを取り出す。見ると、大きく真っ赤な宝石の付いたネックレスだ。手にした石に口づけをすると、石に話しかけるように言った。
「我、古より伝わりし契約を我が妻エルメと交わす」
そして次に見上げるエルメの唇に石を持っていくと、唇とそっとキスをさせる。
石を胸元に戻したマリオンは「これで君は僕の側から逃げられない」と囁くように言葉を落とすと、口づけも同時に贈った。
「んう・・・んん・・」
エルメの吐息が漏れ、何度も落とされる口づけはやがて深くなり、彼女の気持ちを確かめるようにその舌を絡め取って離さない濃密な口づけへと変わった。
マリオンが口にした愛の告白にエルメは固まり、手にしていた紙とペンは静かに床に落ちる。それはただの物であるはずの紙とペンが、まるでエルメの運命から逃げ出したように見えた。
(はっ?いま“エルメ”って言った?エルメって、私?他にエルメさんって、いたかしら?・・居ないわっ!ちゃんと惚れ薬入れたよね?)
混乱するエルメに向けられる彼の眼差しは熱を帯びており、明らかに恋に溺れた目だ。アリスと視線を交差させると、彼女は“入れた”と目で語った。
(アリスはちゃんと入れてくれた。私は身を隠したし、マリオンはしっかりアリスを見ていたはず・・なのに、なんで!?告白する相手が違うじゃない!)
「エルメ・・私の気持ちに応えるのだろう?私たちは夫婦だ。恥ずかしがることはない」
どこまでも甘い声で吐くセリフに、エルメはブルッと身体を震わせた。いつもの俺様は影を潜め、見慣れぬマリオンの姿にエルメの足は自然と後ずさる。しかし離れようとする彼女の腕は、マリオンの力強い腕に捕らえられびくともしない。
「私から逃げようなどと、考えないことだ。私は君を手放すつもりはない。こんなにも愛しているのだから・・エルメ、君の口から愛していると聞かせてくれ。私は狂おしいほどに、君を愛しているんだ」
両腕を掴まれたエルメは動けずに、黙ってマリオンを見下ろしている。気付けば、アリスは姿を消していた。
掴む腕を片方だけ離したマリオンは、エルメの頬にそっと触れる。壊れ物に触るように優しいその手は、エルメの鼓動を一気に上げた。
「何も言ってくれないのか?君の口から望む言葉を聞くまで、離さないよ」
そう口にして立ち上がったマリオンの大きな身体を、エルメは行く手を阻む厚い壁のように感じた。その壁を力のない虚ろな瞳で見つめる彼女の頭上から、マリオンの信じられないセリフが降ってきた。
「離さないといえば、番の契約はまだだったな。いま結んでしまおうか。そうすれば、君はもう私から離れられない。誰かに取られる心配もない」
「番の契約・・やめてください。賭けは、まだ途中のはず」
呆然としたままやっと声という形にしたしたエルメのそれは、甘い甘い夫によって打ち砕かれた。
「ああ、やっと君の声が聞けた。賭けは、いまこの時をもって終了だ。私の勝ちだ。だってそうだろう?私はエルメ・・・君を愛したのだから」
そう言って勝者と愛情の入り混じった笑みを浮かべたマリオンは、エルメを横抱きにすると、ソファーへ彼女の身体を落とした。そしてその横に腰を下ろし、上半身は彼女の上に覆い被さり、動揺で瞳を揺らすエルメの顔を見下ろす。
「勝負だからな。覚悟はいいな?」
一方的な問いを口にしたマリオンは、襟元から何かを取り出す。見ると、大きく真っ赤な宝石の付いたネックレスだ。手にした石に口づけをすると、石に話しかけるように言った。
「我、古より伝わりし契約を我が妻エルメと交わす」
そして次に見上げるエルメの唇に石を持っていくと、唇とそっとキスをさせる。
石を胸元に戻したマリオンは「これで君は僕の側から逃げられない」と囁くように言葉を落とすと、口づけも同時に贈った。
「んう・・・んん・・」
エルメの吐息が漏れ、何度も落とされる口づけはやがて深くなり、彼女の気持ちを確かめるようにその舌を絡め取って離さない濃密な口づけへと変わった。
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