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本編
第14話 ヒロインの帰還1
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「ふうぅ」
大きく息を吐き、心の乱れを落ち着かすエルメ。アリスとの面会を終え、自室で一息ついていた。侍女が煎れてくれたお茶で喉を潤すと、ソファーの背に体を預けアリスとのやり取りを思い返す。
アリスはあれから皇帝ご自慢シェフの料理でお腹を満たし、身支度を整えると、約束通り流行り病で苦しむ民の元へ戻っていった。
(何とかヒロインも戻したし、首の皮一枚繋がった感じかねぇ。でもあれヒロインよね。私のアリスは、もっと淑女で聖女で“THEヒロイン”って感じのはずだったのに・・アリスとマリオン、仲良くしてくれるかなぁ。イチャイチャしてくれるかなぁ。まぁ、陛下の前では猫被ってたし、大丈夫だよね。とにかく病を消して、マリオンと仲良く帰ってきて!補正・・物語補正がきっとある・・はずだから)
エルメの小説の中では、乙女の報告を聞いたマリオンがアリスを探し出し、二人は出会う。そして協力し、病で苦しむ民を救うのだ。役目を終えた二人は、仲睦まじく帰還する。そしてアリスの活躍はたちまち国中の噂になり、彼女は“癒やしの乙女”と呼ばれるのだ。民は彼女の存在を神と崇め、皇帝たちも厚遇する。アリスはその癒やしの力で帝国になくてはならない存在として、自らの立場を確固たるものにするのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから一ヶ月程して、流行り病終息の知らせが城へ届けられた。その知らせにダリオンを始め皆が安堵し、それはエルメも例外ではなかった。エルメは、心にあったこの国難は自分のせいという後ろめたさが少しだけ軽くなったのを自覚しながら、マリオンたちの帰りを待った。
それから一週間後、マリオンたち帰還の知らせがエルメの元に届けられた。再び謁見の間に集められたエルメは、ダリオンが労いの言葉をかける横でアリスとマリオンの様子を窺っていた。そしてその様子を彼女なりに分析した結果、どうも二人の間に恋愛感情が芽吹いていないと結論付けた。期待したイチャイチャどころか、寧ろ冷たい氷点下の空気が流れている気がした。そして、アリスの熱視線はマリオンではなく、エルメへと向けられていた。
謁見を終えたアリスを早速捕まえたエルメは、“身を粉にして働いてくれた彼女を労いたい”という体で、彼女を自室へと連れてきた。マリオンは事後処理とやらでまだ忙しく、都合が良かった。
美味しいお茶とお菓子を前に向かい合うエルメとアリス。聞きたいことが山のようにあったエルメは、人払いをすると早速、口を開いた。
「癒やしの乙女としての大役、お疲れ様。本当に助かったわ」
「いえ、エルメ様の為ですから・・それにあれくらい朝飯前です」
「ところで私の小説のファンだって話は、本当なの?」
エルメの質問にアリスは身を乗り出し「それはもう!何度も何度も読み返したんですよ」と言葉と全身で同意を体現する。そして、アリスの心からの褒め言葉に、エルメは少しむず痒くなる。
「それはありがとう。そんな風に言ってくれると、本当に嬉しいわ。やっぱり王子様とヒロインの恋物語は、女の子の夢よね」
「王子様とヒロイン?違いますよぉ。私がハマったのはエルメ様、貴女です!前にも言いましたよね。私の推しは、エルメ様だって!」
「悪いけど、私そっちの趣味はないから!それに貴女とマリオン様がくっつかないと、そのお気に入りの物語にならないわよ。いいの?」
「私と皇太子の恋なんて、どうでもいいんです!私の一番はエルメ様ですから!」
「どうでもいいって・・・ちょっと待ってよ。アリスがマリオン様とくっついてくれなくちゃ、私、離婚できないじゃない」
思いもよらない話の流れに、エルメは動揺する。最初に会った時、アリスは“俺様皇太子なんて無理”と確かに言っていた。そして、時間のなかったエルメは、その問題を先送りにし、二人が出会えば何だかんだ恋に落ちると楽観視していた。というか、そう思い込もうとしていた。そして今あの時、棚上げにした問題に頭を抱えることになったのだ。
大きく息を吐き、心の乱れを落ち着かすエルメ。アリスとの面会を終え、自室で一息ついていた。侍女が煎れてくれたお茶で喉を潤すと、ソファーの背に体を預けアリスとのやり取りを思い返す。
アリスはあれから皇帝ご自慢シェフの料理でお腹を満たし、身支度を整えると、約束通り流行り病で苦しむ民の元へ戻っていった。
(何とかヒロインも戻したし、首の皮一枚繋がった感じかねぇ。でもあれヒロインよね。私のアリスは、もっと淑女で聖女で“THEヒロイン”って感じのはずだったのに・・アリスとマリオン、仲良くしてくれるかなぁ。イチャイチャしてくれるかなぁ。まぁ、陛下の前では猫被ってたし、大丈夫だよね。とにかく病を消して、マリオンと仲良く帰ってきて!補正・・物語補正がきっとある・・はずだから)
エルメの小説の中では、乙女の報告を聞いたマリオンがアリスを探し出し、二人は出会う。そして協力し、病で苦しむ民を救うのだ。役目を終えた二人は、仲睦まじく帰還する。そしてアリスの活躍はたちまち国中の噂になり、彼女は“癒やしの乙女”と呼ばれるのだ。民は彼女の存在を神と崇め、皇帝たちも厚遇する。アリスはその癒やしの力で帝国になくてはならない存在として、自らの立場を確固たるものにするのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから一ヶ月程して、流行り病終息の知らせが城へ届けられた。その知らせにダリオンを始め皆が安堵し、それはエルメも例外ではなかった。エルメは、心にあったこの国難は自分のせいという後ろめたさが少しだけ軽くなったのを自覚しながら、マリオンたちの帰りを待った。
それから一週間後、マリオンたち帰還の知らせがエルメの元に届けられた。再び謁見の間に集められたエルメは、ダリオンが労いの言葉をかける横でアリスとマリオンの様子を窺っていた。そしてその様子を彼女なりに分析した結果、どうも二人の間に恋愛感情が芽吹いていないと結論付けた。期待したイチャイチャどころか、寧ろ冷たい氷点下の空気が流れている気がした。そして、アリスの熱視線はマリオンではなく、エルメへと向けられていた。
謁見を終えたアリスを早速捕まえたエルメは、“身を粉にして働いてくれた彼女を労いたい”という体で、彼女を自室へと連れてきた。マリオンは事後処理とやらでまだ忙しく、都合が良かった。
美味しいお茶とお菓子を前に向かい合うエルメとアリス。聞きたいことが山のようにあったエルメは、人払いをすると早速、口を開いた。
「癒やしの乙女としての大役、お疲れ様。本当に助かったわ」
「いえ、エルメ様の為ですから・・それにあれくらい朝飯前です」
「ところで私の小説のファンだって話は、本当なの?」
エルメの質問にアリスは身を乗り出し「それはもう!何度も何度も読み返したんですよ」と言葉と全身で同意を体現する。そして、アリスの心からの褒め言葉に、エルメは少しむず痒くなる。
「それはありがとう。そんな風に言ってくれると、本当に嬉しいわ。やっぱり王子様とヒロインの恋物語は、女の子の夢よね」
「王子様とヒロイン?違いますよぉ。私がハマったのはエルメ様、貴女です!前にも言いましたよね。私の推しは、エルメ様だって!」
「悪いけど、私そっちの趣味はないから!それに貴女とマリオン様がくっつかないと、そのお気に入りの物語にならないわよ。いいの?」
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「どうでもいいって・・・ちょっと待ってよ。アリスがマリオン様とくっついてくれなくちゃ、私、離婚できないじゃない」
思いもよらない話の流れに、エルメは動揺する。最初に会った時、アリスは“俺様皇太子なんて無理”と確かに言っていた。そして、時間のなかったエルメは、その問題を先送りにし、二人が出会えば何だかんだ恋に落ちると楽観視していた。というか、そう思い込もうとしていた。そして今あの時、棚上げにした問題に頭を抱えることになったのだ。
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