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本編
第12話 ついに現れたヒロイン
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翌日、マリオンたちは疫病が蔓延する地方へと出掛けて行った。
城で指示を出していては、どうしても後手に回る。現場を直接見て、指示を出したいとマリオンたっての希望だった。このマリオンの行動も小説通りの流れ。エルメは冷静に「お気をつけて」とマリオンを送り出す。そして、見送る背中にヒロイン登場までのカウントダウンが始まったことをそっと告げた。
「いよいよね。今は、カウントスリーってことろかな。次に貴方と会う時は、アリスと一緒だからね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから一週間、特に大きな動きもなく、エルメは城で穏やかに過ごしていた。内心は、目前迫った最初の山場にドキドキしていたが、誰かに話せるわけもなく、“癒やしの乙女出現”の知らせを一人待ちわびていた。
そして、程なくしてエルメは、その待ちわびた知らせを聞くことになる。
“美しい少女が現れた町の流行り病は、ウソのように消える”
(来たぁ。やっと癒やしの乙女アリスの登場!早くみんなの病を治して、帝国の女神になるのよ。それでマリオンと二人で帰ってらっしゃい!)
エルメはアリスの登場に心躍らせた。そして、一日も早く疫病が終息し、国に平和が戻ることを切に願った。
乙女の登場以来、城にもたらされる知らせも変化した。あらゆる地での疫病流行の知らせから、疫病消滅の知らせへと・・・そして、それはどうしたらこの国難を乗りきることができるのか悩んでいた皇帝たち皆の気持ちを鼓舞した。重苦しい雰囲気に包まれていた皇城に、僅かな光が差したのだ。
そして、それは現地にいるマリオンたちも例外ではなかった。突然の救世主登場の知らせに歓喜し、急ぎその少女のいる町へ馬を走らせる。しかし一足違いで会うことが叶わず、次に少女が向かったとされる町へまた馬を走らせた。
(今頃、どんな想いなかのかねぇ、マリオンは・・私から聞かされていた乙女が登場して、それを必死に追いかけて・・・あの俺様皇太子が女のケツを追いかけてるなんて、想像しただけでもワクワクしちゃうっ!どんな顔して戻ってくるのかしらね・・フフッ)
エルメは順調に進むストーリーに安堵し、上手くいくのかという抱えていた不安を忘れた。しかしその平穏は、早々に打ち砕かれることになる。何故なら、順調なストーリー展開がヒロインの行動によって崩されたからだ。
ストーリーの崩壊・・・それは皇帝ダリオンからの呼び出しで始まった。
「エルメ様、陛下が至急来るようにと仰せです」
こんな皇帝からの呼び出しなんて書いた覚えのないエルメに、不安がよぎる。そして、戦々恐々とする彼女が連れてこられたのは謁見の間だった。扉を前に頭がフル回転する。
(何で?ここに来たってことは、誰かに会わせたいってことよね。そんなイベントぶち込んだ覚えないけど・・・ヤバいなぁ。めちゃくちゃ嫌な予感がする)
心臓がうるさいくらいに早鐘を鳴らす中、謁見の間に入ると、帝国のお偉いさん方が勢ぞろいしていた。皇帝をはじめ皇妃、宰相、各大臣、各官長など、足がすくむ面子である。エルメの姿を見たダリオンが話しかける。
「そなたに確認したいことがあってな」
「私に何をお尋ねになりたいのでしょうか?」
「うむ。そなたはその娘を知っておるか?」
そう尋ねるダリオンの視線を追って見下ろすと、そこに一人の少女が立っていた。輝くピンクブロンドの髪と陶器のような白い肌、そしてワインのような深く赤い瞳を持つ少女。それは、エルメが生み出したヒロインそのもの・・・予想もしない出会いにエルメが動揺していると、少女は自ら名乗る。
「ガイアール帝国皇太子妃エルメ様。私はアリス。アリス・サルコールと申します」
アリスは真っ直ぐな眼差しをエルメへ向け、この重鎮が見守る中、堂々とした佇まいをしている。
(アリス・・やっぱりアリスだ。何でここにいるの?まだマリオンと一緒にいるはずじゃない?彼と一緒にみんなの病を治すんでしょう?そういえば、マリオンがいないわね。彼はアリスを追いかけていたはず・・まさか序盤でストーリー崩壊???)
ぐるぐると疑問が頭を回る中、再びダリオンが「どうだ?知っておるのか?」と問う。それに、エルメは「いえ、存じ上げません」と答えた。
厳密に言えば、答えは“知ってる”だ。なにせ自分が生み出したキャラクターなのだから、当のアリス本人より知っている。だが「知ってまーす!だって私が作り上げたキャラだもーん」なんて口が避けても言えない。すると、ダリオンの口から驚きの言葉が出る。
「そうか・・東の地域で流行り病が収まったのは知っておるな?それをしたのは、自分だと言っておる。現地から上がっている報告とも容姿は一致しておるが、なにせ一人でこの城へ乗り込んできおってな。その娘が本人かどうか誰も分からんのだ。本人なら手厚く饗し、引き続き病の根絶に尽力してもらいたいのだ。しかし、それを証明できるのはそなただけ、そなたのことも知っておると娘が言うでな。そして、そなたと二人きりで話がしたいと申しておるのだ」
(はいぃ???私を知ってる?・・あー、皇太子妃として知ってるってことね。でもサシで話がしたいとか、どーゆうこと?何を私に言うつもり?まさか“マリオン様を貴女から奪ってみせます”的な宣戦布告とか・・・うん、そういうのいらないから・・言われなくても熨斗つけてあげるし・・・)
「そうですか。彼女がそうおっしゃるのでしたら、私の記憶が間違っているのかもしれません。彼女の言葉が真実なら帝国の救世主。間違いがあってはなりません。ぜひ彼女と話をさせてください。私からもお願いいたします」
エルメがそう言うと、ダリオンは満足そうに頷いた。そして、エルメとアリスは近衛に別室へと案内された。
城で指示を出していては、どうしても後手に回る。現場を直接見て、指示を出したいとマリオンたっての希望だった。このマリオンの行動も小説通りの流れ。エルメは冷静に「お気をつけて」とマリオンを送り出す。そして、見送る背中にヒロイン登場までのカウントダウンが始まったことをそっと告げた。
「いよいよね。今は、カウントスリーってことろかな。次に貴方と会う時は、アリスと一緒だからね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから一週間、特に大きな動きもなく、エルメは城で穏やかに過ごしていた。内心は、目前迫った最初の山場にドキドキしていたが、誰かに話せるわけもなく、“癒やしの乙女出現”の知らせを一人待ちわびていた。
そして、程なくしてエルメは、その待ちわびた知らせを聞くことになる。
“美しい少女が現れた町の流行り病は、ウソのように消える”
(来たぁ。やっと癒やしの乙女アリスの登場!早くみんなの病を治して、帝国の女神になるのよ。それでマリオンと二人で帰ってらっしゃい!)
エルメはアリスの登場に心躍らせた。そして、一日も早く疫病が終息し、国に平和が戻ることを切に願った。
乙女の登場以来、城にもたらされる知らせも変化した。あらゆる地での疫病流行の知らせから、疫病消滅の知らせへと・・・そして、それはどうしたらこの国難を乗りきることができるのか悩んでいた皇帝たち皆の気持ちを鼓舞した。重苦しい雰囲気に包まれていた皇城に、僅かな光が差したのだ。
そして、それは現地にいるマリオンたちも例外ではなかった。突然の救世主登場の知らせに歓喜し、急ぎその少女のいる町へ馬を走らせる。しかし一足違いで会うことが叶わず、次に少女が向かったとされる町へまた馬を走らせた。
(今頃、どんな想いなかのかねぇ、マリオンは・・私から聞かされていた乙女が登場して、それを必死に追いかけて・・・あの俺様皇太子が女のケツを追いかけてるなんて、想像しただけでもワクワクしちゃうっ!どんな顔して戻ってくるのかしらね・・フフッ)
エルメは順調に進むストーリーに安堵し、上手くいくのかという抱えていた不安を忘れた。しかしその平穏は、早々に打ち砕かれることになる。何故なら、順調なストーリー展開がヒロインの行動によって崩されたからだ。
ストーリーの崩壊・・・それは皇帝ダリオンからの呼び出しで始まった。
「エルメ様、陛下が至急来るようにと仰せです」
こんな皇帝からの呼び出しなんて書いた覚えのないエルメに、不安がよぎる。そして、戦々恐々とする彼女が連れてこられたのは謁見の間だった。扉を前に頭がフル回転する。
(何で?ここに来たってことは、誰かに会わせたいってことよね。そんなイベントぶち込んだ覚えないけど・・・ヤバいなぁ。めちゃくちゃ嫌な予感がする)
心臓がうるさいくらいに早鐘を鳴らす中、謁見の間に入ると、帝国のお偉いさん方が勢ぞろいしていた。皇帝をはじめ皇妃、宰相、各大臣、各官長など、足がすくむ面子である。エルメの姿を見たダリオンが話しかける。
「そなたに確認したいことがあってな」
「私に何をお尋ねになりたいのでしょうか?」
「うむ。そなたはその娘を知っておるか?」
そう尋ねるダリオンの視線を追って見下ろすと、そこに一人の少女が立っていた。輝くピンクブロンドの髪と陶器のような白い肌、そしてワインのような深く赤い瞳を持つ少女。それは、エルメが生み出したヒロインそのもの・・・予想もしない出会いにエルメが動揺していると、少女は自ら名乗る。
「ガイアール帝国皇太子妃エルメ様。私はアリス。アリス・サルコールと申します」
アリスは真っ直ぐな眼差しをエルメへ向け、この重鎮が見守る中、堂々とした佇まいをしている。
(アリス・・やっぱりアリスだ。何でここにいるの?まだマリオンと一緒にいるはずじゃない?彼と一緒にみんなの病を治すんでしょう?そういえば、マリオンがいないわね。彼はアリスを追いかけていたはず・・まさか序盤でストーリー崩壊???)
ぐるぐると疑問が頭を回る中、再びダリオンが「どうだ?知っておるのか?」と問う。それに、エルメは「いえ、存じ上げません」と答えた。
厳密に言えば、答えは“知ってる”だ。なにせ自分が生み出したキャラクターなのだから、当のアリス本人より知っている。だが「知ってまーす!だって私が作り上げたキャラだもーん」なんて口が避けても言えない。すると、ダリオンの口から驚きの言葉が出る。
「そうか・・東の地域で流行り病が収まったのは知っておるな?それをしたのは、自分だと言っておる。現地から上がっている報告とも容姿は一致しておるが、なにせ一人でこの城へ乗り込んできおってな。その娘が本人かどうか誰も分からんのだ。本人なら手厚く饗し、引き続き病の根絶に尽力してもらいたいのだ。しかし、それを証明できるのはそなただけ、そなたのことも知っておると娘が言うでな。そして、そなたと二人きりで話がしたいと申しておるのだ」
(はいぃ???私を知ってる?・・あー、皇太子妃として知ってるってことね。でもサシで話がしたいとか、どーゆうこと?何を私に言うつもり?まさか“マリオン様を貴女から奪ってみせます”的な宣戦布告とか・・・うん、そういうのいらないから・・言われなくても熨斗つけてあげるし・・・)
「そうですか。彼女がそうおっしゃるのでしたら、私の記憶が間違っているのかもしれません。彼女の言葉が真実なら帝国の救世主。間違いがあってはなりません。ぜひ彼女と話をさせてください。私からもお願いいたします」
エルメがそう言うと、ダリオンは満足そうに頷いた。そして、エルメとアリスは近衛に別室へと案内された。
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